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根本宗子さん「ケガをきっかけに国指定の難病に。手術への決断は自分だけではできなかった」

文:田中春香 写真:柴崎まどか
2019/11/30
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2019年12月13日から新国立劇場で初日を迎える舞台「今、出来る、精一杯。」は、思春期の怪我によって車椅子生活を余儀なくされた女性とヒモの彼氏、そして彼女たちをとりまく登場人物たちの様々な愛や死を描いた作品。
脚本、演出をつとめるのは、月刊「根本宗子」主宰、劇作家の根本宗子さん(30)。13歳の時のケガをきっかけに患った、「大腿骨頭(だいたいこっとう)壊死症」による車椅子生活の話、父親のように慕っていた故・十八代目中村勘三郎さんとの思い出をうかがいました。

  • 記事末尾でコメント欄オープン中です!

震災のその先にある、日常を描きたかった

劇団をはじめて今年で10周年。12月13日に初日を迎える「今、出来る、精一杯。」は2013年に初演、2015年に再演をした作品です。
2013年当時、演劇業界では震災にまつわる作品が数多く上演されていました。

震災を取り扱った作品をいくつか観ている時に「震災がすごく特別扱いされている」と感じました。東京で生まれ育ち、震災時も東京に住んでいた私にとって、震災は「特別」であることには変わりないけれど、「日常の中にやってきたもの」という感覚だった。だから、自分が今書くなら、そこにだけクローズアップしたものじゃなくて、「日常にやってきた衝撃。の、その先の日常」を書きたいと思っていました。

「演劇」という、照明や装置で電力をたくさん使用するエンターテイメントに対して、やや自粛ムードも続いていましたし、業界内全体が揺れ動いていた印象もあり、私自身の中にも「どんなものを書いていこうか」という迷いがあった時期で。自分の実感が込めやすいものを書いてみようと思い、中高時代の車椅子生活の話、なぜ車椅子になったのか、それから、当時していた恋愛の話や、バイト暮らしの日々を織り交ぜた戯曲を作りました。

当時の彼とは感情を共有し合えなかった

この作品を書いている2012年に、幼少期から第二の父のように慕っていた中村勘三郎さんが亡くなりました。勘三郎さんの奥様と私の母が古くから親交があり、私も子どもの頃から歌舞伎を観に行ったり、お食事をご一緒していました。

勘三郎さんの訃報は、もちろん私以上にショックが大きい方はたくさんいたと思うのですが、私にとってもすごくすごく大きな出来事でした。今作の中で、登場人物の女の子がお葬式から帰ってくるシーンがあるのですが、それは勘三郎さんのお葬式に行った時の自分の心情を書いたもの。

演劇界という意味でも、私個人として考えても、あまりにも大きな存在である勘三郎さんがいなくなってしまった。でも、その当時同棲していた彼にその話をしても、他人の大変さを受け止められないタイプの人で。むしろ自分の日々の大変さや生きづらさをぶつけられたり、どうにも気持ちを共有し合えなかったんです。彼がかけてきた言葉がかなり衝撃的で、そのセリフなども作品に入れ込んでいます。笑うしかないような言葉だったんですけど。

中学生の時、国指定の難病を患う

私が車椅子生活を送るきっかけとなったのは、中学1年生の体育祭のリレー。バトンを受け取る時に人とぶつかり、転んだことがきっかけでした。打ち所が悪く、股関節を骨折。転んだ瞬間、無理に立ち上がろうとしたこともよくなかったようで、骨折自体は手術で良くなったんですが、骨折の際、骨の中の血管が切れていて、「大腿骨頭(だいたいこっとう)壊死症」につながりました。本当に誰のせいでもない、ただ運が悪かったと言うしかないような出来事でした。
私の場合は転んだことでの外傷性の怪我がきっかけですが、突発性国指定の難病で、いまだに抜本的な治療法が見つかっていません。
最近では、元俳優の坂口憲二さんがこの病気を発症したと公表し、ニュースなどで取り上げられたこともありましたよね。
壊死した状態が続くと歩けなくなるので、それを止めるための大きな手術が必要でした。

「骨折」と告げられた時は、せいぜい数カ月ギブスをしたらまた普通に歩けるようになり、日常生活に戻れると思っていました。
ところが実際は、二度の手術とリハビリと回復のために、約6年間の車椅子生活を余儀なくされました。

幼少期からモーグルをやっていて、選手を目指していたんです。

「スポーツのできる女の子」から180度真反対の側になった時、自分自身の性格も含めて、周りが自分を見る目が変わったことで、人生が変わった感覚がありました。

クラスメイトたちも始めは「大変そうだな」という雰囲気だったのが、徐々に私が車椅子でいることが普通になってきて。授業中、私のことを書いた手紙が間違ってまわってきて「心配して欲しくて車椅子乗ってる」というようなことが書いてあったこともありました。ドラマみたいですよね(笑)。

当時は今よりまだ精神も弱かったのでショックでしたが、今振り返れば、病気のことを会う人会う人全員にきちんと説明できていたわけではないので、「ただの骨折」だと思っている子たちからすると、国指定の難病のことも知らないし、そんな想像力も持てないですよね。もちろん仲の良い友達にはたくさん助けられたのですが。

車椅子ということで、物理的に他人より低い位置から物を見ていたので、冷静な子どもになっていったように思います。冷静に物事を見るしかない瞬間もあったし、ちょっとみんなとは違う目線を持つようにもなり、観察するのが好きな子になりました。

勉強もできず、読書も好きじゃない。本当にスポーツしかしてこなかったのですが、唯一、母が演劇を観るのが好きで、私にとっても身近な存在でした。

怪我をして車椅子生活がはじまった中学1年生の時、勘三郎さんが大人計画の舞台に出演されるタイミングで。「おもしろい集団がいるから観に来た方がいい」と言われ劇場に行きました。
ただ、その時の正直な感想は「呆気にとられているうちに終わった」と思いましたね。目まぐるしく人が出てきて、阿部サダヲさんや宮藤官九郎さんみたいな「テレビで見てた人」が「演劇の人」だというのを知る時間、という感じでした。なんとなく楽しかった記憶はある、でも内容は覚えていないというような。すごく笑えたけど、自分の中で何がおもしろかったのかわからなかった。
だからこそ、「また観たい」って、思ったんです。「なんだったんだ!今の!!」と。
これがその後、演劇の世界へとのめり込んでいくきっかけとなりました。

勘三郎さんが10円玉を取り出して……

一度目の手術をして、歩けるようにリハビリをして、最後に骨をとめていたボルトを抜く。その時はそれが終われば、モーグルはできないにしても、また普通に歩けるようになり、体育や簡単な運動ができる程度には戻れると思っていました。

ところが、ボルトを抜くための検査で、状態が悪化していることが判明。回復への道のりが遠いことを知りました。
この病気は手術法がいくつかあり、どれが最適かというのが、現在もまだ明確にはなっていません。高齢であれば、人工の股関節に変えるなどの方法もあるのですが、人工関節の老朽化の関係もあり、若いとそれができないのです。

股関節の手術で有名な先生は日本にも何人かいらっしゃいます。最終的に私を手術してくれた先生はすごく良い先生で「これが一番良い手術法かは明言できないけれど、自分はそうだと信じてやっている。不安ならセカンドオピニオンを」と言ってくださって、他にも何人かの先生に会いに行きました。

その中のひとりの先生が「ある手術法で、またスキーをできるようになった人がいる」と言いました。ただ、失敗すると二度と歩けなくなる可能性もあります。
その手術は、レントゲンだけで全てを判断できず、一か八のような部分がありました。それでも「スキーができるようになるかもしれない」という言葉が私の心を揺さぶりました。

私が診察室を出る時に、その先生から「頑張ってね」と声をかけられました。でもその時「私に頑張れることはない」って、思ったんですよね。
最初の先生は「僕が頑張ります」と言ってくれた。子ども心に、なんとなくこっちの先生にお願いしたいなと感じたのを覚えています。

「スキーができるかもしれないけどリスクを伴う手術」と「歩ける可能性がより高い手術」のどちらを選ぶかを決めるには、その頃の私はあまりにも若すぎました。後者の方が安心で成功の可能性も高い。でも、母も私も最後まで決められずにいました。その話を聞いた勘三郎さんがおもむろに取り出したのが10円玉でした。
「表が出たら“スキーができると言った先生”、裏が出たら“最初の先生”」そう言ってコイントスをしたんです。

手をひらくと「表」。一瞬の間(ま)の直後に勘三郎さんは「やりなおし!」と叫んで、もう一回コインを投げました。

二度目も「表」。勘三郎さんは「もう一回もう一回!」と言って、再びコインを投げました。

手を開くと、今度は「裏」でした。そして、「三度目の正直だから、その先生の方が良い」と勘三郎さんは言ってくれました。

そして手術の日、私はその時の10円玉を握りしめて、手術室に入りました。

***後編に続く。

「今、出来る、精一杯。」

日時:2019/12/13(金)~12/19(木)
会場:新国立劇場 中劇場

作・演出:根本宗子
音楽:清 竜人
出演:清 竜人、坂井真紀、 伊藤万理華、瑛 蓮、内田 慈、今井隆文、川面千晶、山中志歩、春名風花、小日向星一、根本宗子、riko、天野真希、田口紗亜未、水橋研二、池津祥子
演奏:岩永真奈、大谷愛、二ノ宮千紘、三國茉莉
http://www.village-inc.jp/imadekiru/

田中 春香 ( たなか・ はるか)
現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
柴崎 まどか ( しばさき・ まどか)
1990年生まれ、埼玉県出身、東京都在住。 フリーランスフォトグラファー・デザイナーとして雑誌、広告、カタログ、アーティスト写真など幅広く活動。
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