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 政府は、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先として無人島の馬毛(まげ)島鹿児島県)を購入する方向で、地権者と大筋で合意した。購入金額は約160億円。契約が結ばれれば、訓練移転に関する2011年の日米合意以来8年にわたる交渉が決着し、防衛特化の島として整備する計画が動き出すことになる。

 複数の政府関係者と地権者関係者が明らかにした。島をめぐっては今年1月、政府と、島の99%の土地を所有する開発会社「タストン・エアポート」(東京)が、国が購入することで基本合意。しかし、同社の社長が交代するなどして交渉は難航し、5月には同社が政府側に交渉の打ち切りを通告していた。

 関係者によると、11月に入り、防衛省関係者が改めて同社幹部と接触。同社の経営が悪化して島を売却せざるをえなくなっていることや、政府側も訓練用地の確保を米側から強く求められていたことなどから、交渉が動き出した。島内の4万坪(約0・13平方キロ)だけは同社がしばらく所有し、将来的に国に売却する条件で折り合ったという。

 馬毛島は、種子島の西約12キロにある同県西之表市の無人島で、広さは約8平方キロ。11年の日米合意で、FCLPが行われている硫黄島東京都)から訓練を移転させる候補地とされた。防衛省は当初、評価額を約45億円と算出したが、同社側の主張する額と10倍ほどの開きがあり、同社が島内に投資した造成費用なども踏まえて購入金額が算定されたとみられる。

 政府は島の買収後、米軍のためだけでなく、中国の海洋進出も見据えて南西諸島防衛の拠点としても活用したい考え。ただ、島の1%ほどを所有する西之表市は訓練の受け入れに慎重な姿勢を示している。(伊藤嘉孝、相原亮)