今日の材料:物語、知恵を集める、創造力
少し前に「理屈よりも深い納得を生む物語の力」という記事を書いたのですが、自分史上最高のブックマーク数を頂きました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。
物語が持つ力に共感される方が多いんだな、ということに改めて私自身が深く納得しました。
こう書いておいてなんですが実は私、読み物の中でもフィクションはあまり得意ではありません。文字を見ても全く情景が浮かんでこないのです(苦笑)。国語のテストでも説明文とか論説文は得意なのに、小説とか随筆になるとさっぱりわかりませんでした。読むのが苦手なので、もちろん書くことも出来ません。
そうこうしているうちに大学院で文章を書き始めてからは、いかに論理的に組み立てるか、ということをたくさん考えるようになりました。(実際にそう教えられますし。)
でも論理的な文章でも相手に伝わらない、ということが多々あることに気付くようになりました。もちろん、私の力不足です。ただある時、読み手に何かを伝えるために考えるべきところは、違うところにあるのではないかと思うようになったのです。
論理性は、ある意味では客観的な説明と言い換えることが出来るかもしれません。でも「客観的」なんて、本来あり得ないのです。この記事でも書きましたが、人というのはどう頑張っても、自分自身の視点から逃れて物事を見ることは出来ません。興味も知識も異なるより多くの人に何かを伝えたいと思ったとき、論理性というのは数多くある基準の一つに過ぎないのです。
私は研究者に向かないわけですね(苦笑)。
そんな私がたくさんの論文を読んだ中で心に残ったのは、分析や検証方法の正確性とか発見事実の希少性を訴えるものより、研究の目的や見出されたことに対する執筆者の想いが伝わってくるようなものでした。
そしてその想いは、筋書きを持つ物語として自然に沁み込んできたのです。想像力のない私のような人間でもやはり、ストーリーの要素を持つ文章にひかれていきました。
より多くの人の心を動かす物語、それは現代社会で、もっと多くの場でその力を発揮するものなのではないでしょうか。
単一民族国家と言われてきた日本ですが、時代の変化と共に多様性はますます増しています。まだまだ多数派が生きやすいものの、「多様性が創造力を生む」といった潜在的可能性も、あちこちで叫ばれるようになりました。
でも実際には、さまざまな志向や経験を持つ人たちの知恵を集めて一つのものを創り上げるということは、言うほど簡単なことではありません。
例えばいろいろな住民が住んでいる地域コミュニティ、必ずしも目的意識が共有されていないグループや組織などでそれを実現するのは、本当に難しいことです。その難しさを経験したことがある人は、たくさんいるでしょう。
そこで一つ提案です。こうした場で、物語を創ってみるというのはどうでしょう。
初めから誰もが納得するアイディアを見つけ出すより、参加する人が楽しみながら一つのものを創り上げるプロセスを共有することが、共感を生み出すきっかけになるかもしれません。そういう意味で、試す価値があるように思えるのです。
例えばあるコミュニティやグループ、組織の過去から現在までの歴史とか、参加者が共有する出来事をみんなでストーリー化してみるところから始めてみてはいかがでしょう。
そのストーリーが、もともとの目的に向かって取り組む良いきっかけになるかもしれません。あるいはそのストーリーそのものが、目的につながる可能性もがあると思います。
ストーリーの要素は様々です。出会いや別れ、笑いや怒り、ハッピーエンドや意外な展開―物語をどう面白くできるかを考えることは、結論をださなければならない話合いよりずっと心のハードルを下げるものだと思うのです。
※ここまで書いておいてなんですが、もしかしたらそういう方法が既にあるかもしれませんね。改めてじっくり調べて見つかったら、記事を更新します。
実は論理的な思考が自分を支配していた頃、私自身もチーム活動があまり得意ではありませんでした。今思えば若く未熟ですが、まとまらない方向に話を持って行ったりいくら説明しても意図を理解してくれない人がいると、最初から最後まで一人でやった方がましだと良く思ったものです。
でも今は、結論を出すことよりも一人ひとりの想いやアイディアをじっくり聞くことの方が大事だと思うようになりました。
もちろん、期限がある仕事ではそういう訳にはいきません。「そもそも論・再考」と言う記事でも書きましたが、時と場合を見極めることは絶対に必要です。
でも今のように複雑な社会の中で意味を持つアイディアは、単一的な物の見方からは絶対に出て来ないでしょう。多くの人の知恵を集めるということに、私たちは今まで以上に注力する必要があると思うのです。
そしてその時、物語はきっと想像以上にその力を発揮するはずです。
私自身これからもっとその経験を増やし、それを改めて発信していきたいと思っています。