医師の一般的な年収・給料はどのぐらいなのでしょうか?2019年8月に実施した医師1,855名のアンケート結果から、医師の最新の年収事情について紹介します(回答者の属性)。
目次
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調査した医師の勤務状況
今回のアンケートで回答した医師1,855名の医師の勤務状況は下表のようになっています。
病院(大学病院以外)に勤務する医師が55.8%で最も多く、次いでクリニック勤務医が16.1%、大学病院勤務医が15.3%という内訳となっています。その他、開業医や企業・介護施設で勤務する医師、休職中の医師等も多くはないものの一定数いる状況となっています。
以下では、休職中を除いた医師を対象に検証していきます。
アルバイト・副業も含めた現在の医師の年収
アルバイト・副業を含めた現在の年収を医師に聞いたところ、下表のような結果となりました。
1,400~1,600万円が12.9%で最も多く、それとほぼ並んで1,600~1,800万円が12.7%という結果となっています。年収の中央値は1,700万円[1]となっています。
また、1,000万円~2,200万円までの年収帯は比較的多くいるものの、2,200万円以上になると該当する医師が少ない傾向にあります。一方で、年収3,000万円以上の医師も全体の5.8%を占める結果となっています。
これを男女別で見ると、以下のようになっています。
男性医師の年収(副業・アルバイト込み)
男性医師では1,600~1,800万円の年収帯が13.8%と最も多く、1,400~1,600万円も13.6%と多くなっています。年収中央値は度数分布表のため1,700万円と、医師全体と同じ結果となりましたが、全体と比べると年収1,000万円未満の割合が少なくなっていることが見て取れます。
女性医師の年収(副業・アルバイト込み)
女性医師では800万円未満の年収が22.0%と最も多い結果となっており、800~1,000万円が17.2%と次に多くなっています。年収の中央値は1,100万円となっており、年収中央値で男性医師と比べると600万円ほど低い結果となっています。
女性医師の方が年収が低くなっている背景としては、男性医師より女性医師の方が平均的な年齢が10歳ほど若い[2]ということに加えて、育児や出産などの事情によって勤務時間・勤務日数の制約ができることが女性医師の方で多くなっていることが挙げられます。
医師がアルバイト・副業をしている割合
主たる勤務先での勤務の他に医師がアルバイト・副業をしている割合は、下図のようになっています。
アルバイトもしくは副業を行っている医師は全体の68%と7割近くになっています。年代別・男女別でも全体として6割~7割程度(下表)となっており、医師にとってアルバイトもしくは副業は年齢・性別問わず広く行われているものといえます。
主たる勤務先のみでの医師の年収はいくらか?
それではアルバイト・副業を除いた主たる勤務先のみでの医師の年収はいくらになるのでしょうか?回答では、下表のような結果になりました。
最も多いのは800万円未満で22.7%を占める結果となりました。年収の中央値は1,300万円となっており、アルバイト・副業込みの年収(中央値)と比べると400万円ほど低い結果となっています。逆にいえば、それだけ医師の収入においてアルバイトや副業が重要になりやすいといえます。
勤務医と開業医の年収の違いは?
今回の調査では開業医からも110名の医師が回答しています。そこで以下で勤務医[3]、開業医それぞれの医師の年収(主たる勤務先のみでの年収)を比較してみます。
勤務医
開業医
勤務医では、医師全体とあまり差は見られず、年収の中央値も1,300万円となっています。一方、開業医では800万円未満が17.3%と最も多いものの、3,000万円以上が16.4%を占める結果となりました。開業医の年収の中央値は1,700万円となっているもののの、バラつきが非常に大きい状況です。
年収帯だけでなく具体的な年収金額についても回答した開業医の中で、アルバイト・副業を除く年収が最も高かったのは40代の小児科医で1億5,000万円でした。
ただし、開業医は年収が大きく上がりやすい一方で、勤務医の年収の中央値に満たない医師も一定数いるため、リターン・リスクともに勤務医に比べて大きいといえます。
医師の年収はどのような基準で決められているのか?
医師が現在の年収を改善していくには、勤務先で年収が決定される基準を把握した上で、その基準における評価を上げるということが一つ有効な手立てになります。
それでは、医師の年収はどのような基準で決められているのでしょうか?「出来高払い(患者数や診療報酬に応じて変動)」、「医師年数」、「能力・スキル」、「勤務時間」、「業務量」、「経営層の判断」の6つの基準を仮定し調査を行ったところ、以下のような結果となりました。
「反映されている」「どちらかといえば反映されている」とする回答が多い順に、医師年数(43%)、経営層の判断(37%)、勤務時間(36%)、能力・スキル(24%)、業務量(19%)、出来高払い(13%)となっています。
実際に募集されている求人でも、経験年数が5年目か10年目かによって年収が異なるということは多くあります。医師の年収の決定にあたっては、業務量や能力・スキルが評価されるというよりも、医師の経験年数(年功序列)であったり経営層の判断が反映されていることが多いといえます。
しかし、担当している患者数や業務負担、能力やスキルがあまり年収に反映されないとなると、能力やスキルが優れていて任される仕事の多い医師ほど損をする、という状況も起こりえます。この場合の対処法としては「経営層の判断」に働きかける、つまり年収交渉を行うということが一つ考えられます。
年収を含め、医師が自分の勤務条件を改善する上で取り組んでいること
年収や勤務時間などの条件を出来る限り良くしたいと思うのは医師に限らず、働く人に共通の希望といえます。その希望を叶えるために医師はどのような取り組みをしているのでしょうか?医師の自由回答(一部)を紹介します。
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- 大学を退職し、一般の急性期病院へ転職予定。 (30代男性・内分泌・糖尿病・代謝内科、大学病院)
- バイトをはじめる.当直料の値上げ要求(外部医師と同額に) (40代男性・リハビリテーション科、病院(大学病院以外))
- バイトでものんびり勤務できるところを探している。疲れない程度に出来るバイトじゃないと長続きしない。 (29歳以下男性・精神科、病院(大学病院以外))
- 現勤務先には何も期待できないので、転職を交渉中です (40代男性・整形外科、大学病院)
- 育児中のため時間の制約がある勤務ですが、可能な限り頼まれた仕事は引き受けることを心がけています。その分、出勤、退勤時間を調整して頂いているので、適正な収入、条件で働いていると思います。 (40代女性・形成外科、クリニック(勤務医))
- お金よりも雑用を減らしてくれるよう、時間外勤務はある程度で正直に申告する (50代男性・整形外科、病院(大学病院以外))
- 医師以外の収入源を広げる。(50代男性・精神科、病院(大学病院以外))
- メインの勤務先よりも割が良く、専門性も生かせるところと掛け持ちするため、あえて非常勤にしている。 (40代女性・小児科、病院(大学病院以外))
- 常に勉強に励み、どんな勤務先でも対応できるようにする。より良い条件の勤務先があれば、検討する。 (40代女性・皮膚科、クリニック(勤務医))
- 今年度入職なので、ひとまずは頑張って働いて好印象と評判を得る (30代男性・老人内科、病院(大学病院以外))
現在の勤務先での条件交渉や働き方における工夫、アルバイト・副業における工夫、転職による条件の改善、またそのための自己研鑽など、医師によって様々な取り組みを行っていることが窺えます。
たとえ同じ職場で勤務していても、環境や自分自身が変化していくことで負担と待遇が見合わない状況になることはよくあります。その状況をもちろん「仕方ない」とそのままにすることもできますが、そうすることで失うものも出てくるかもしれません。
自身の将来や家族など、自分にとって大切なものをしっかりと大切にしていくことに対して後ろめたさを感じる必要はありません。本調査のような年収や勤務条件の情報収集を普段から行うことで、その都度その都度、キャリアにおいて納得のいく選択ができるような習慣をつけておくと良いのではないでしょうか。
【参考】回答者の属性
調査概要
調査内容 | 年収に関する医師のアンケート調査 |
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調査対象者 | 株式会社メディウェルに登録している医師会員 |
調査時期 | 2019年8月5日~2019年8月16日 |
有効回答数 | 1,855件 |
調査公開日 | 2019年10月10日 |
年齢
性別
診療科
地域
<注>
[1] 度数分布表のため年収1,600~1,800万円の階級値が中央値となっている。以下の中央値も同様。
[2] 休職中を除く男性医師、女性医師それぞれの年齢の中央値は、男性医師が47歳、女性医師が37歳となっている(5歳区切りでの度数分布表より算出)。
[3] ここでの勤務医は主たる勤務先を「大学病院」、「病院(大学病院以外)」「クリニック(勤務医)」と回答した医師の合計を指している。