毎日使うし人目にも触れる。だから大人には長く愛せる“良い財布”が必要だ
食事後の支払いや買い物時など、思った以上に財布は人目に触れるもの。いくらセンスの良い服やバッグでスマートに装ったとしても、バッグから年齢に不相応な財布が覗いていては詰めの甘さがにじみ出てしまいます。財布は日常に寄り添う必需品ですから、大人であれば誰に見られても恥ずかしくない上質な一品を普段使いするべきでしょう。素材や仕立てに長けたハイクオリティな財布は壊れにくいため、長い目で見ると元が取れるもの。賢い大人ほど一級品を愛用するのには、ワケがあります。
(左)新品、(右)3年間使用
クラス感や上質感を前提としつつ、経年変化の味わいも考慮するのであれば、おすすめしたい財布はずばりコードバン。馬の臀部からごく僅かのみ採取できるコードバンは、“革のダイヤ”とも称される高級皮革の代表格です。極めて密な繊維構造で風合いも滑らかなうえ、皮革の中で指折りの強靭さも有しています。つまりは見た目と実用性、いずれの面でも恩恵が大きいということ。また、左右を見比べればわかる通り、エイジングによって生まれる奥深い“コク”も格別です。ただし魅力満載であるがゆえに、コードバン財布は決して安価ではありません。選ぶなら素材も技術も信頼できる、その道のリーディングブランドがベストです。
日本におけるコードバン財布の第一人者。『ガンゾ』を知っているか
昨今ではさままざなブランドから展開され、百花繚乱の様相となっているコードバン財布。ゆえに選択肢も実に多彩ですが、その中において有力ブランドとして名を馳せる存在が『ガンゾ』です。1917年創業の老舗皮革メーカーAJIOKA.による最高級革製品ラインとして1999年に発足した同ブランドは、設立当初より国内他社に先駆けコードバン財布を手掛けてきた、いわば日本でのパイオニア。それだけに品質面において抜きん出ています。
ブランドデビューから一貫して“MADE IN JAPAN”を掲げる『ガンゾ』だけあって、コードバン財布もそのすべてが国産。厳選されたコードバンだけを用いて最高峰の職人技術を駆使して作り上げる財布は、大人の男性が好む高級感&耐久性、そして美しいエイジングの三拍子を叶えています。しかも、適正な手入れを行えば長きにわたって愛用していけますから、大人にとってこれほど好都合な財布はないでしょう。
第一線の熟練職人が語る『ガンゾ』のコードバン財布、その真髄とは
『ガンゾ』のモノ作りを濃く深く知るのであれば、製作に携わる職人に聞くのが最も近道。ということで、ガンゾ本店に勤務するベテラン職人の小平陽介さんに同ブランドが手掛けるコードバン財布についてお話を伺いました。15年以上第一線で活躍する職人が語る、こだわりや魅力とはいかに。
「ウチの財布製品は、とにもかくにも“職人泣かせ”の一言に尽きます。そこまでやらないとダメなのか、というぐらい作業工程が多いんです(笑)。本当に完成するまでは苦労の連続ですが、その代わり何年、何十年と使っていける財布に仕上がっていると自負しています。特にブランドの“顔”であるコードバン財布は自信を持って推奨できる商品ですね」。
まず小平さんが詳しく話してくれたのは、コバ磨きへの徹底ぶり。細かな部分のように感じますが、コバの仕上げには財布のクオリティが如実に表れると語ります。
「コバとは簡単にいうと革の裁断面。この部分は専門の職人がすべて手作業で磨いています。コバは組み立ての段階ではガタガタと不均一な状態なので、1度裁断し、その後磨きをかけています。顔料をたっぷりコバの上に塗って断面そのものを隠すという手法もあるのですが、仕上がりの美しさを考慮するなら手で磨いて面を均一に仕上げるのが最善策。そのぶん、どうしても工数は増えてしまうんですけどね」。
さらに、財布の堅牢性において重要なカギとなる縫製も実に職人気質。特にカード段はことさら神経を使う箇所なのだそう。
「縫製は財布の寿命を左右する工程。ステッチを入れる箇所やピッチ幅には、『ガンゾ』独自の規定が設けられています。最も大変な箇所の1つといえるのはカード段のソーイング。“渡り縫い”という、段と段の間を糸がまたぐような縫製を施すのですが、この際に段のキワ(縁部分)に縫い穴が来てしまうと、カードの出し入れ時に革切れを起こしやすくなります。だから、キワを避けて細かくピッチ調整して縫う必要があるんですよ。縫い穴の位置次第では財布の堅牢度にも関わるため、気を使う作業です」。
ブランドの注力はディテールや縫製だけでなく、当然素材にも及びます。財布製品では2種のコードバンを使用していますが、そのどちらも申し分ない一級品です。
「使用するコードバンは高品質として名高い2種類。米国の老舗タンナーであるホーウィン社製の“シェルコードバン”と、日本の新喜皮革社がなめしたコードバンを使い、レーデルオガワ社が染色・加工を施した国産の“水染めコードバン”です。オイルの含有量が多いシェルコードバンはやわらかな光沢で、水性染料で仕上げる水染めコードバンは透明感があるツヤを特徴としています。どちらにも違った魅力がありますね」。
(上)3年間使用、(下)新品
コードバン財布をはじめとした革製品の醍醐味は何といっても経年変化。だから『ガンゾ』は良いものを作るだけで完結せず、長く愛用できるよう無料保証期間も設けています。
「レザーの中でもコードバンはとりわけ経年変化が美しい素材ですから、味出しの過程もじっくり楽しんでいただければと思います。ちなみにこれは「シェルコードバン2」のエイジングサンプルで、下が新品、上が3年モノ。使い込むとこれだけ雰囲気が変わるんだから面白いですよね。1つのモノを味が出るまで長く愛用してほしいので、『ガンゾ』では1年の無料保証期間を設けています。期間内であれば、糸のほつれや接着のりのはがれといったトラブルは無料で修理できます」。
長くコードバン財布を使い続けるためには、日々のお手入れも重要。最後に、小平さんが自宅でできる“ガンゾ流”メンテナンス法も教えてくれました。
「2種のコードバンは、基本的なケアは同一。毎日行っていただきたいこととしては、表面の毛並みを整えステッチに詰まった汚れを掻き出すブラッシングと、付着した皮脂を拭き取る乾拭きです。ブラシ素材は柔らかい山羊毛か馬毛がおすすめ。乾拭きには、『ガンゾ』の皮革製品に付属するネル素材の収納袋を使っていただくこともできます。あとは表面がカサついたとき、コードバン専用クリームを薄く塗り込んであげてください。マメなケアにより寿命は大きく変わります」。
米国か、日本か。2種のコードバンから選ぶ、一生モノ財布
同じコードバンといえども、各自が異なった特性を備える米国産シェルコードバンと国産の水染めコードバン。ここからはシェルと水染め、それぞれの代表的なシリーズをピックアップして、素材からディテールまで深掘りしていきます。両シリーズとも一生モノであることは共通項なので、自身の嗜好に合うほうを選んでみましょう。
シリーズ1(シェルコードバン)オイルをたっぷり含み重厚な光沢を楽しめる「シェルコードバン2」
「シェルコードバン2」は、その名の通りホーウィン社のシェルコードバンを贅沢に使ったブランド屈指の人気シリーズ。オイルが多く含まれた素材なので、ソフトかつツヤやかなタッチを楽しめます。やわらかな光沢も見どころで、表面からは“ピンホール”と呼ばれる毛穴・毛細血管の跡が見られるほど。しなやかな素材を最大限に引き立てるべく、あえて芯材を使わず仕上げています。折りジワやヒビ割れに強いというメリットも、オイルの効いたシェルコードバンならでは。
※上から
■ファスナー小銭入れ付き長財布
W19×H9.7×D2cm
■ラウンドファスナー長財布
W19.5×H9.7×D2cm
■小銭入れ付き二つ折り財布
W10.3×H9.5×D2.5cm
外装だけでなく内側にも惜しみなくシェルコードバンを使用。開いた際にも高級感が漂い、ブランドネーム&ホーウィン社の刻印もクラス感に拍車を掛けます。そして、クラフトマンシップ溢れるディテールワークにも注目です。美しくカード段をまたぐ渡り縫いは言わずもがな、カード段のコバの下“ネン引き”された直線状の溝も見逃せないポイントです。熱した鉄のコテを用いて付けられるこの溝には、見た目を引き締め、耐久性を高める作用があります。
シリーズ2(水染めコードバン)時を重ねるにつれ色が変化し、深い愛着が生まれる「コードバン」
もう1つの定番シリーズが「コードバン」。素材にはレーデルオガワ社のオリジナルレシピで染色・加工された、水染めコードバンを駆使しています。アニリンという水性染料でフィニッシュするこのコードバンは比較的色の変化が早く、育てていくと独特の表情に変化。最初こそ硬めながら、愛用するとともに柔らかくなり、手に馴染むというのも男心をくすぐるポイントです。使い始めの光沢に加えて、毎日使っていると少しずつ透明感が増していきます。コードバンの風合いをダイレクトに感じられるよう、「コードバン」シリーズも財布自体のデザインはどれもシンプルです。
※上から
■小銭入れ付き二つ折り財布
W11.3×H9.2×D3.2cm
■ファスナー小銭入れ付き長財布
W19.0 ×H9×D1.8cm
■ラウンドファスナー長財布
W19.5×H10×D2.5cm
渡り縫いやネン引き、手作業によるコバ磨きといった『ガンゾ』らしい徹底ぶりはさすがの一言。内装にはナチュラル感たっぷりな牛革を採用し、コードバンとの絶妙なコントラストを演出しています。カジュアル感を強める要因となる小銭入れのファスナーはあえて正面から見えにくいようレイアウトするなど、高級感を損なわないための細かな気配りもうれしい限りです。
最高の素材を、信頼の置けるブランドで。『ガンゾ』のコードバン財布に酔いしれる
日々を共にする財布は、所有者のライフスタイルを物語るアイテム。ゆえに上質さに満ち溢れたコードバンを選ぶのは、大人にとって理に叶った選択といえるでしょう。せっかく極上のレザーを手に入れるなら、選ぶのはその扱いを熟知した最高峰のブランドで。日本におけるコードバン財布の第一人者である『ガンゾ』の逸品ならば、きっと末長く付き合える盟友となってくれます。店舗に足を運んで、思わず惚れ惚れしてしまう珠玉の財布をぜひ手にしてみてください。
Photo_Yuichi Sugita[POLYVALENT]
Interview&Text_Satoshi Yamasaki