No.6 短期大幅上昇の条件表を作る

2005年6月に執筆 ・・  HP目次へ.. 講座目次へ.


①よく質問がある条件表



こういう条件はどうのようにして設定したらよいのかの質問で、何人かの人(この1年で10人くらいか)が、尋ねられた条件があります。それは
  1. 当日の終値が、昨日までの過去9日間のザラバ高値を上回り、
  2. 当日の出来高が、昨日までの過去9日間の出来高平均の2倍以上できた

銘柄を検索したいというものです。この条件を《カナル2》で設定すると次のようになります。簡単です。




No.4行の「描画する」「線色は薄紫」という設定は不要です。(説明のためにつけた)


この条件表を使ってグラフを描くと、図のようになります。
  1. が出た日の終値は181円。翌日の始値は183円。16日かけてaの207円まで上昇しました。13.1%の上昇率です。(翌日始値を基準)

  2. が出た日の終値は203円。翌日の始値は202 円。この日の高値207円が最高値です。1日かけて2.4%の上昇率です。

  3. が出た日の終値は206円。翌日の始値は204円。今日まで8日経っていますが最高値はcの216円で、5.9%の上昇率です。
この条件の特徴は、①新高値になれば買い、②出来高が急増すれば買い、というのですから「順張り」の典型です。しかも短期で決着することを目差しているはずです。

となれば、例えば10日間で買値から(ザラバ高値で)10%上昇したら勝ち、(ザラバ安値)で-10%下落したら負けというルールで検証するとどうなるのか?この検証は《Qエンジン24》を使えば簡単にできます。


②この条件表を検証してみる



《Qエンジン》を立ち上げます。
  1. 東証1部の銘柄(1640ほど)を選択しておいて

  2. 「新規検証」をクリック。

  3. 検証する期間は2005年3月31日までの1000日間としましょう。約4年分です。

    (次にだす《Qエンジン24》は最大3000日分のデータが扱えます)

  4. 売買ルールは以下のようにしました。


  1. 買いマークが出たら「翌日の始値」で買う。

  2. 買って10日目になったら「当日の終値」で売却する。

  3. その間に買値から+10%高の値段がついたら「ザラバ」で利食いする。

  4. その間に買値から-10%安の値段がついたら「ザラバ」で損切りする。
つまり①+10%の利益がでるか、②-10%の損失がでるか、③10日経って時間切れになるかです。


検証は22分を要しました。買いを仕掛けた件数はなんと28819件。1銘柄あたり17.5回。これは4年間の検証なので1年に約4回でた勘定です。

この条件表の成績を見てみましょう。

  1. 利食い回数は6097回(全体の21.2%が利食いできた)
    損切り回数は4502回(全体の15.6%が損切りとなった)
    時間切れは18220回(全体の63.2)で、平均して-0.65%の損失になった
  2. 全トレード数は、28819回。うち勝ちトレードは13566回、負けトレードは15253回。
  3. 1回当たりの平均利益率は、0.09%。勝ったときは6.25%の利益だが負けたときは-5.39%の損失。
  4. 勝率は、47.1%。
  5. プロフィット・ファクターは、1.03倍

    プロフィット・ファクターというのは、(総利益÷総損失)で計算します。「損失の何倍の利益がでたか」です。この例だと、総利益は6.25%×13566回=84787、総損失は-5.39×15253=82213なので、84787÷82213=1.03 となるわけです。(わずかに利益が勝っている)
こういったところです。トレードのシステムの評価の(私の)目安ですが、このように全銘柄を対象としたときは
  1. 件数は、1銘柄あたり1年に0.1~1回。(1600銘柄なら1年に160回~1600回。4年間の検証では640回~6400回)がメド。
  2. 利益率は5%。
  3. 勝率は70%。
  4. プロフィット・ファクターは2.0倍
としています。この条件表が出す買いマークを唯一の買いの根拠にしていては、成績のように28800回の売買をしても利益は0.09%しかでないことがわかりました。この条件表に何かをプラスして、精度の高い買いマークがでるようにしてみましょう。方法はいくつもあります。
  1. 銘柄を絞っておく(①小型株だけに使う、②割安株だけに使う)
  2. 「9日間の新高値」がよいのか検討する。
  3. 「出来高倍率が2倍以上」でよいのか検討する。
  4. ほかのチャートを加えて、条件をきつくする。
などです。まずは最も簡単なことからやってみましょう。


③最適なパラメータを調べてみる



この条件表には2つのパラメータがあります。1つは「9日 最大値」で、もう1つは「9日 出来高倍率」です。9日出来高倍率は、このままでよいように思いますが、「9日 最大値」は検討の余地があります。

たかだか昨日までの9日間のザラバ高値を上回ったからといって、10日で10%上昇するはずはありません。(「検証」では全体の21.2%がそうなったが、あとの約80%はそうならなかった)


9日よりももっと長い期間の新高値のほうが上昇する確率は高いのではないか? これは《Qエンジン》の「最適パラメータ」で見つけることができます。

《Qエンジン》を立ち上げます。
  1. 東証1部の銘柄(1640ほど)を選択しておいて

  2. 「最適パラメータ」をクリック。


  3. 検証する期間は2005年3月31日までの1000日間としましょう。約4年分です。

  4. 現在は「9日間の 最大値」となっていますが、

  5. この9の数字を、5,10,,15,20,25,.....,95,100と変化させて、どのパラメータのときに成績が最高になるかを調べます。
最高の成績を出したときのパラメータが最も役にたつわけです。次のようなことになりました。(33分かかった)


  1. 縦にパラメータが表示されています。5,10,15,20,....95,100日(の最高値を更新したら買い)
  2. はそのパラメータのとき、+10%の上昇があった回数。(利食いA)
  3. はそのパラメータのとき、10日間が経過して利食いも損切りもできなかった回数。(時間切れ)
  4. はそのパラメータのとき、-10%の下落があった回数。(損切りZ)
  5. は全トレード数
  6. は平均利益率
  7. は勝率
  8. はプロフィット・ファクター
図の青枠が「10日間 の最大値」のときの成績です。もとの9日に近いパラメータなので、「売買検証」の数値とよくにています。各項目で最もよい数字をみると、
1)最高の利益率を出すパラメータは、90日のとき。(0.44%)
2)最高の勝率出すパラメータは、60日~90日の間。(49.5%)
3)最高のプロフィット・ファクターを出すパラメータは、60日~90日の間。(1.15倍)
です。総合的に評価すると「90日」が最もよい、と《Qエンジン》は判断し、このパラメータの行が紺色になっています。9日と90日を比較すると、( )内は90日の数字
  1. 利食いA(+10%)となったのは全トレードの21.2%→(24.6%)
  2. 損切りZ(-10%)となったのは全トレードの15.6%→(16.4%)これは増加した。
  3. 利益率は 0.09%→(0.44%) 5倍になった
  4. 勝率は 47.1%→(49.5%) 少しアップ
  5. プロフィット・ファクターは 1.03倍→(1.15倍) 大幅アップ
です。しかし好成績の基準である、①利益率 5%、②勝率 70%、③プロフィット・ファクター 2.0倍には全然及びません。


④最適な以上以下を調べてみる



「9日 最大値」よりも「90日 最大値」のほうがよいことがわかりました。次に「「9日 出来高倍率 が 2倍以上」というのが適当かどうかを検討してみましょう。 出来高というものは、株価と違って明瞭なトレンドはありません。急に増えて急に減少するすることが多いので、あまり長期の出来高をうんぬしても無駄でしょう。ここでは「9日 出来高倍率」の「9日」はこのままにしておいて、「2倍以上で買い」がよいのかどうか、3倍,4倍,5倍のときはどうなるのかの検討をして見ます。

《Qエンジン》を立ち上げます。
  1. 東証1部の銘柄(1640ほど)を選択しておいて

  2. 「最適以上以下」をクリック。

  3. 検証する期間は2005年3月31日までの1000日間としましょう。約4年分です。

  4. 90日がよいことがわかったので「90日間の 最大値」と変更しています。



  5. 現在の出来高倍率は「2倍以上で買い」となっていますが、

  6. この9の数字を、1.0,1.5,2.0,2.5,,.....,9.5,10.0と変化させて、何倍以上のときに成績が最高になるかを調べます。
最高の成績を出したときの「X倍以上」が最も役に立つわけです。 次のようなことになりました。



  1. 縦に「X倍」が表示されています。1.0,1.5,2.0,2.5,....9.5,10.0 倍(の出来高倍率になったら買い)
  2. はX倍以上のとき、+10%の上昇があった回数。(利食いA)
  3. はX倍以上のとき、10日間が経過して利食いも損切りもできなかった回数。(時間切れ)
  4. はX倍以上のとき、-10%の下落があった回数。(損切りZ)
  5. は全トレード数
  6. は平均利益率
  7. は勝率
  8. はプロフィット・ファクター
各項目で最もよい数字をみると、
1)最高の利益率を出すX倍は、2.0倍と3.5倍のとき。(0.44%)
2)最高の勝率を出すX倍は、3.5倍のとき。(49.9%)
3)最高のプロフィット・ファクターを出すX倍は、1.5倍~3.0倍のとき。(1.15倍)
です。総合的に評価すると「2.0倍」が最もよい、と《Qエンジン》は判断し、このパラメータの行が紺色になっています。


ただ数字を仔細に見ると、1.5倍~3.5倍の成績はほとんど同じであり、2.0倍以上のときが特によいわけではありません。

むしろ5.0倍以上になると成績は悪化しているので、「1.0倍以上 5.0倍以下」としたほうがよいのではなかろうか。

そこで図のように出来高倍率を0倍以上~5倍以下までの範囲で最適以上以下を探ってみました。

0、0.5,1.0,1.5、.....4.5,5.0以下についての成績を調べると次のようになっています。(この例は「90日間 の最大値」です。)



  1. 最も成績がよいのは、(0倍以上 0.5倍以下)で、①利益率が0.69%、②勝率が53.3%、③プロフィット・ファクターが1.30倍 です。ただしトレード件数が460回と少ない。私の基準によれば640~6400件はほしいので、やや件数が不足しています。

  2. 1.0倍以下から5.0倍以下の成績は大きく違うところはありません。1.5倍以下がやや劣りますが、だいたいが①利益率は0.33%~0.41%、②勝率が49.1%~50.2%、③プロフィット・ファクターが1.13倍~1.16倍 と似たようなものです。
ということはこの場合の「出来高倍率」はほとんど意味がないということです。「出来高倍率が2倍以上」の条件は成績を上げるために役立っていません。出来高倍率よりもほかのチャートを使ったほうがよいのではないか。

ともあれ「9日間の新高値」と「9日出来高倍率が2倍以上」という2つの条件ではとても実用に供することはできないことは判然としています。


⑤初めて新高値になったものに絞る



「X日間の新高値で買い」の方針をとるならば、「90日間の新高値」がよいということがわかりましたが、実はこれは問題を含んでいます。

図で90日間の新高値になって買いマークを出す日は、A,a,B,bの4回あります。「検証」は、「買ってから10日目で時間切れ」としているので、
  1. Aの買いマークで「翌日始値」で買う

  2. aでも買いマークが出たが、すでにAで買っていてまだ決着がついていないので買わない(「検証」には取り上げられない)

  3. Bで買いマークが出たが、Aでの買いは決着がついている(時間切れ)ので、ここで買いとなる

  4. bで買いマークがでたが、すでにBで買っていてまだ決着がついていないので買わない(「検証」には取り上げられない)
ということになります。A,a,B,bのうち「検証」されるのはA,Bの2つだけです。 A,a,B,bの買いマークのうちで最も重要な買いマークは初めて出たAでしょう。Aだけを採用し、a,B,bを無視するには次のような条件表にします。



  1. 「出来高倍率が2倍以上で買い」という条件は意味がないのでカットしました。
  2. No.5行で「90日間の新高値で買い」を設定してあります。
  3. No.6行で「90日間の新高値が過去90日以内にあったときは無効とする」という条件をつけています。


これによって、90日間で初めて新高値をとったときだけに買いマークがつくことになります。(Aだけが出て、a,B,bでは出ない)

上記の条件表はとてもシンプルですが、これを同じ売買ルールで検証すると次のようになります。



  1. 利食い回数は1294回(全体の20.02%が利食いできた)
    損切り回数は792回(全体の12.3%が損切りとなった)
    時間切れは4368回(全体の67.7)で、平均して-0.42%の損失になった

  2. 全トレード数は、6454回。うち勝ちトレードは3209回、負けトレードは3245回。
  3. 1回当たりの平均利益率は、0.45% (0.09%)。勝ったときは5.90%の利益だが負けたときは-4.49%の損失。
  4. 勝率は、49.7% (47.1%)。
  5. プロフィット・ファクターは、1.18倍 (1.03倍)
(( )内は「元の条件表」の成績)

これだけでも、ここまでやった「最適パラメータ」「最適以上以下」によるどの条件表よりも成績はよいのですが、そのレベルは低い。「X日間の新高値」という条件では限界があります。すでにユーザーは「上昇トレンドにあるもの」の条件を加えればよいのに、とかカイリ率の条件をつけ加えればよいのに、とウズウズしているかたもあるでしょう。

その通りです。ではどういう条件を追加すれば成績がよくなるのか。


⑥カイリ率を追加してみる



平均線からのカイリ率を条件に加えてみましょう。「90日間の新高値」をとったときに、「X日平均線より上位(カイリ率が0以上)なら買い」とするわけです。


ただし買いマークでた日の当日に200日線より上位にあるかどうかではなく、買いマークが出た「前日」に上位にあるかどうかを条件とします。

図で買いマークが出た日aの終値は200日線を超えて(カイリ率がプラス)いますが、その前日bの終値は200日線より下に(カイリ率がマイナス)あります。

「90日間の新高値」になったということは、その日に株価が上昇したわけで、多くはXX日線を超えていると思われます。そこで前日のカイリを問題にしたほうがよいと思われます。

条件表は次のようになります。




  1. No.7行で200日平均線を計算し、
  2. No.8行でカイリ率を計算しています。
  3. 前日のカイリ率を問題とするために「注目1」「注目2」の欄には1~1となっていることに注意してください。「注目日」の数字が0は「当日」、数字が1のときは「前日」、0~1のときは「当日または前日」を意味します。
  4. 「以上」欄に0以上としているので、「前日のカイリ率が0以上のときに買い」という設定になっています。

この条件表を使って「検証」すると、次のようになりました。(「売買成績」の全部ではなく「成績の評価」の部分だけを掲げます。)



  1. 全トレード数は、4792回。うち勝ちトレードは2457回、負けトレードは2335回。
  2. 1回当たりの平均利益率は、0.69% (0.45%)。勝ったときは5.72%の利益だが負けたときは-4.61%の損失。
  3. 勝率は、51.3% (49.7%)。
  4. プロフィット・ファクターは、1.31倍 (1.18倍)
(( )内は前回(カイリの条件がないとき)の成績)

ようやくにして勝率が50%を超えてきましたが、まだまだ成績は不満足なものです。ここでは「200日線からの(前日の)カイリ率が0以上で買い」 としましたが「0以上」は検討した数字ではありません。「0以上」が最もよいのか?検討してみましょう。


⑦カイリ率の最適な以上以下を調べてみる




最適な「以上以下」の数字は《Qエンジン》の「最適以上以下」で見つけることができることは、すでに述べました。

右図では、
  1. 前日の200日線からのカイリ率がどの範囲であれば成績がよいのかを知るために、
    「以上」欄の数字を-50,-40,-30,-20....0,10,20,....90,100と変化させ、

  2. 「以下」欄の数字を同様に-50,-40,-30,-20....0,10,20,....90,100と変化させます。
最終的には、カイリ率が(XX以上 XX以下)のときが最適であるという結論が得られるはずです。

次のようなことになりました。



  1. 10%以上 は①件数が1200件ほどあり、②利益率が1.2%くらい、③プロフィット・ファクターは1.5を超えています。
  2. 0%以上となると、①件数は4700件、②利益率0.68%、プロフィト・ファクター1.3と、②利益率が落ちています。
  3. 20%以上となると、①件数は300件、②利益率1.3%、プロフィト・ファクター1.5と、①件数が極端に少なくなります。
総合的に評価すると「(前日の)200日線からのカイリ率は10%以上あるとき買い」とするのがよさそうです。

より細かい「X%以上」を知るために、図のように4%~16%の範囲で「最適な以上以下」を探ってみました。

次のようになりました。





「最適以上以下」は、「前日の200日線からのカイリ率が8%以上で買い」の条件が最も優れていると指摘しました。このときの成績は
  1. トレード件数は、1668件
  2. 利益率は、1.36%
  3. 勝率は、55.0%
  4. プロフィット・ファクターは、1.59倍
です。利益率をみると、「4%以上」は1.03%、「5%以上」は1.07%とたいしたことはありませんが、「7%以上」からは1.26%とよくなっています。勝率を見ると、どの「X%以上」も53~54%あってこれはかわりません。プロフィット・ファクターは「6%以上」~[10%以上」のときが1.5倍以上の数値になっています。

全トレード1668件のうちで、①買って10日以内に+10%以上上昇したのは 450件(27.0%)、②-10%以上下落したのは207件((12.4%)、③時間切れが1011件(60.6%)です。 利食い・時間切れ・損切りの割合のメドは
  1. 利食い 50% (40%でも可)
  2. 時間切 30% (40%でも可)
  3. 損切り 20% (20%)
と思っていますが、この例では損切りの12.4%がOKで、利食いは不足、時間切れは多すぎます。ここまでで以下のような条件表になりました。



⑧「オートマ」で役立つチャートをみつける



上記の条件表は次のような試行をしてできました。
  1. 「最適パラメータ」は「9日間の新高値」でなく「60日~90日」のほうがよいと指摘したので「90日」を採用した。
  2. 「最適以上以下」は「9日出来高倍率が2倍以上」の条件はあまり役立たないことを指摘した。
  3. これに代わるチャートとして、「(前日の)200日線からのカイリ率が0%以上」という条件を加えると成績が向上した。
  4. 「最適以上以下」は、「カイリ率が8%以上」がよいと指摘した。
問題なのは、「どのチャートを追加すればよいのか」ということです。ここでは「200日線からのカイリ率」を使いましたが、9日線カイリではどうなのか、25日線カイリはどうか、75日線カイリはどうか?

さらには9日順位相関は役にたたないか?平均線の向きは役立たないか?いくらでも追加すべきチャートの候補があります。これらチャートの1つ1つを追加して、「最適パラメータ」で「X日」がよいとか、「最適以上以下」で「XX以上 XX以下」がよい、ということを調べようとするなら、非常な長時間をかけねばなりません。簡単に役立つチャートを見つけることができないのか?


《Qエンジン》の「オートマ」はこの問題を解決してくれます。

いまやろうとしていることは、
  1. 「90日間の新高値になり」、「前日の200日線からのカイリ率が8%以上であった」ときに買いマークを出したい(順張りです)。

  2. しかしこの買いマークは、(成績H)にあるように1668件ほど買いマークをだすが、利食いできたのは450件で全体の27.0%にすぎない。4回に1回しか当たらない。

  3. そこでほかのチャートによる条件をつけて、当たる確率を高めたい。
ということです。このことを「オートマ」にやれせるには2つの条件表が必要です。1つは1.の 「①90日間の新高値になり、②前日の200日線からのカイリ率が8%以上であった日に買いマークを出す」ための条件表です。次のものです。これはすでに掲げた「条件表D」と同じものですが、「QE描画1」の条件ファイルの条件表No.40に複写しました。



もう1つは、3.の「どういうチャートを追加すればよいのか」のために、役立つかもしれないというチャートを集めたものです。ここでは説明を簡単にするためにX日線からのカイリ率だけを設定しました。(計算2)条件ファイルのNo.40に設定した)


  1. No.2行~No.6行で、9日・25日・75日・100日・200日の平均線を計算し、

  2. No. 7行で、9日線からのカイリ率
    No. 8行で、25日線からのカイリ率
    No. 9行で、75日線からのカイリ率
    No.10行で、100日線からのカイリ率
    No.11行で、200日線からのカイリ率
    No.12行で、9日線と25日線のカイリ率
    No.13行で、9日線と75日線のカイリ率
    No.14行で、25日線と25日線のカイリ率

    を計算しています。この8つのカイリ率を役立つチャートの候補とするために「条件」欄に「買い」と設定しています。

  3. (前日の)200日線からのカイリ率は役立つことは、「条件表D」でわかっていますが、残念ながら「オートマ」では(当日の)チャートの数字についてしか調べることができません。(前日のチャートの数字は扱えない)

この2つの条件表は、次の「オートマ指示書」で統合されます。




上の指示書の内容は、
  1. 「買い」の条件をつくる。
  2. 050331(2005年3月31日)までの過去1000日間のデータを使う。

  3. 買いマークを出したい位置は、「描画に使う条件表の売買マークがでた日」とする。(描画に使う条件表は、図の⑤のNo.40「HP 新高値抜け⑤」)
  4. ただし、その買いマークが出てから「10日間に10%以上上昇し、-10%下落しなかったものに限り、買いマークがでるような条件表を作りたい。

  5. この条件表(上図の「条件表E」)が出す買いマークのうちから、
  6. この条件表(上図の「条件表F」に用意されているチャートによって、よい買いマークだけが出るように制限(条件)をつけ、
  7. 「QE拡張5」条件ファイルの条件表No.25 に条件表をつくる。

  8. 「新規実行」をクリックすれば、あとは手を加えることなく、条件表が出来上がります。


21分ほどで条件表No.25が生成されました。簡単です。


⑨オートマが生成した条件表を検証する



次のような「条件表G」ができていました。




  1. のNo.1行~No.7行は、「描画用条件表」(「条件表E」)の内容がそのまま設定されています。No.4行とNo.5行とNo.7行によって買いの条件が決められているわけです。

  2. は、「計算用条件表」(条件表F」)に設定してあった8つのチャートのうちから3つが役立つチャートとして選ばれて設定されています。

  3. チャートは役立つ順に条件表に設定されています、ここでは「75日線からのカイリ率」が最も役立つと判定され、「26%以上で買い」と「以上以下」欄に「最適な以上以下」の数字も決っています。

  4. が2番目に役立つチャートで、「9日線と75日線のカイリ率が18.1%以上で買い」とされています。

  5. が3番目に役立つチャートで、「25日線からのカイリ率が21%以上で買い」とされています。

    これ以外のチャートは採用されませんでした。

生成された「条件表G」の検証をしてみると次のようになりました。(元の成績は「成績H」にあります。




元の成績を( )に表示します。
  1. 利食いは全体の58.3%に倍増した。(27.0%)
    時間切れは全体の20.8%と1/3になった。 (60.6%)
    損切りは全体の20.8%と増加した。(12.4%)

  2. トレード数は48件に激減した。(1668件)
  3. 利益率は3.46%に大幅向上した。(1.36%)
  4. 勝率は66.7%に向上した。(55.0%)
  5. プロフィット・ファクターは2.30倍へ向上した。(1.59倍)
当然のことながら成績はよくなりましたが、トレード数が48件というのは不満です。条件表E(条件表Dも同じ)は検証期間(2005年3月31日までの1000日間)に1668件の買いマークを出していましたが、オートマが3つの条件をつけ加えたことによって、48件の買いマークしか出さなくなったわけです。


⑩売買マークはある程度の数が出なければならない



前にもいいましたが、1銘柄が1年間に0.1回の売買マークをだすとしても、4年間で0.4回→1640銘柄なら延べ656回のマークを出すことになります。48回というのは絞りすぎです。ある程度の売買マークがでないと、いくら成績がよくても再現性がないと思わねばなりません。


オートマが生成した「条件表G」がより多くの買いマークを出すようにするには、追加した3つの条件を最下行から順に削除してみることです。

買いマークを抑制していた条件がなくなることによって、買いマークは出やすくなります。

追加された条件がどのように買いマークを抑制しているのかは、「オートマ指示書」の「ログ」ボタンをクリックすれば知ることができます。


  1. 「条件表E」ではもともと371個の成功例を出します。

    この成功というのは、オートマの基準(①買いマークがでた日の終値を基準にして、②10日以内に、③株価が終値ベースで+10%以上上昇し、④-10%以上下落していない)によるものす。(「成績H」で使った売買ルールはザラバで売買するので利食い件数は450件になっているが、それとは異なる。)

  2. 「75日線からのカイリ率が26%以上」の条件をつけることで、成功例は371件→97件に減ります。(その分勝率や利益率は高まる)

  3. の条件がつくことによって、97件→49件となり、
  4. では29件にまで絞られています。
最後のd.で49件→29件に半減しているので、d.の条件を削除すれば、トレード数は倍増すると予想できます。次のように最下位の「25日線からのカイリ率が21以上で買い」の条件を削除しました。




削除した「条件表H」の成績は次のようになりました。


  1. トレード数は 98件に倍増する(48件)
  2. 利益率は 2.95%へ低下。(3.46%)
  3. 勝率は 61.2%へ低下。(66.7%)
  4. プロフィット・ファクターは 2.08倍へ低下。(2.30倍)
件数を増加させれば当然に成績はダウンしますが、ある程度のトレード数を確保するにはしかたがありません。(少ない件数で高い成績を出す条件表よりも、ある程度の件数があってソコソコの成績を出す条件表のほうが信頼できます。)


⑪より多くのチャートを用意してオートマにかける



どういうチャートを追加すればよいのか」のために次のような「計算用条件表」を使います。(これは《Qエンジン》にサンプルとして付属している「QE計算2」条件ファイルのNo.11「QE 重要A(標準)」です。ほかに13個のサンプルの計算用条件表がついています。)



図では18行しか見えませんが、50行を使って42個のチャートが設定されています。オートマはここの42個から役立つチャートを見つけることになります。(別の計算用条件表にはまた別のチャートが設定されているので、それらを使えば別のチャートを役立つとすることになります。いろいろな計算表条件表を使って、条件表を作らせてみればよい。)

「オートマ指示書」は次図のようにしました。


  1. 記憶する注雑ファイルは「No.41」とした。(意味はありません)
  2. 計算用条件表は(サンプルの)No.11「QE 重要(標準)」(上に掲げた条件表)を使う。
  3. 出来上がる条件表は、「QE拡張5」のNo.27 へ記憶させる。
  4. 「新規実行」ボタンをクリックすれば、あとは条件表が生成されるのを待つだけです。

  5. No.27へ条件表が生成されました。

  6. 先に「ログ」を見てみましょう。


  1. 「条件表E」ではもともと371個の成功例を出します。

  2. 「75日線からのカイリ率が26%以上」の条件がついて371件→97件に減ります。(75日線カイリは先の条件表でも1番につかわれていた)

  3. の「75日前過去比率 が40%以上」の条件がつくことによって、97件→57件となり、

  4. の「9日線と25日線のカイリ率が12.9%以下」の条件つくことで、57件→55件となり、

  5. の「9日順位相関 が88以上」の条件つくことで、55件→23件へと絞られています。
先の例では29件まで絞ると、トレード数は48件しかありませんでしたから、e以下の条件はつけ過ぎでしょう。


⑫オートマが生成した条件表を検証する②



ともかくはオートマが生成した次の条件表を検証してみましょう。




成績は次のようになりました。(  )内は基礎にした「条件表E」の成績。



  1. 利食いAは全体の81.8%。(27.0%)
    時間切れが9.1%。 (60.6%)
    損切りも9.1%。(12.4%)
  2. トレード数は 22件。(1668件)
  3. 利益率は 7.53%。(1.36%)
  4. 勝率は 90.9%。(55.0%)
  5. プロフィット・ファクターは 8.72倍。(1.59倍)
まあここまで条件をつけ加えれば成績が向上するのは当然ですが、条件を加えれば加えるほど、買いマークが出る日が偏ってきます。次の検証のリストを見手下さい。

赤枠の買い仕掛けは2004年3月のものです。22回のトレードのうちなんと 10回がこの時期に集中しています。2004年4月を加えると12回で、半数以上がこの時期の仕掛けです。




この「条件表J」は成績を高めようとするあまり、ある特定の時期に集中して買いマークを出しています。長い間買いマークが出ず、出るときは集中してでるというのでは、日頃使う条件表としては失格です。


⑬ある程度のトレード数を確保する



「条件表J」のNo.14行~No.18行の条件(4つ)を削除して、次の「条件表K」にしました。


この「条件表K」の成績は次のようになりました。


(  )内は基礎にした「条件表E」の成績。
  1. トレード数は 97件。(1668件)
  2. 利益率は 2.95%。(1.36%)
  3. 勝率は 63.9%。(55.0%)
  4. プロフィット・ファクターは 1.91倍。(1.59倍)
なお利食いは全体の59.8%、時間切れは15.5%、損切りは24.7%でした。


図は「売買時期」のグラフです。ここにはその月に何回の買いマークがでたかが表示されています。
  1. 買いマークで成功したものはピンク色の棒グラフ
  2. 買いマークで失敗したものは赤色の折れ線グラフ

    図にはありませんが、
  3. 売りマークで成功したものは空色の棒グラフ
  4. 売りマークで失敗したものは青色の折れ線グラフ
でその件数を表します。

図では2004年3月は確かに多くの買いマークがでていますが、さきほどの絞りこんだ条件表のように半数がここに集中していることはなく、各年(2001年~2005年)のまんべんなく買いマークがでていることがわかります。

この条件表は日頃使うことができる条件表であることが確かめられます。

だいたいここまでの過程で「短期大幅上昇」の条件表はできたようです。(「条件表K」)「計算用条件表」を代えてオートマを実行させてみれば、これ以上によい成績がでる条件表が出来上がるかもわかりませんが、これはユーザーが試して下さい。


⑭この条件表の応用



(05.6.24) TOPIX 1173P(-0) 日経平均 11537円(-39) 11.9億株 (1兆 203億円)

さっそくこの条件表を使って検索されいるユーザーがあるようです。熱心なユーザーがあると私も嬉しい。

この(QE拡張8)の条件表No.56「短期大幅上昇」は、2005年3月31日までの1500日間について調べて作り上げたものです。作った後でスグに現在の相場で使えるかどうかを確かめられるように、わざと05年03月31日までのデータしか使いませんでした。

で、2005年4月1日から今日までの期間で検証をしてみると、16銘柄が買いマークを出していました。次のものです。




売買成績は次のようになります。


  1. トレード数は16件。勝ちが10件、負けが6件。
  2. 利益率は1.95%。(元は2.95%)
  3. 勝率は62.5%に向上した。(元は63.9%)
  4. プロフィット・ファクターは1.51倍。(元は1.91倍)
やや数字は悪くなっていますが、元の成績に近い数字です。勝率が50%をきるとか、利益率がマイナスになるとかの極端な悪い成績ではありませんでした。この条件表は使えそうであるの感触です。

さて、上の検証のリストの右端に青○をつけた銘柄があります。これは①買いマークが出た日の終値より、②翌日の始値が安かった、銘柄です。

この条件表は「短期」で「大幅」を狙っているのですから、買いマークがでたら、そこからズンズン上昇しなければ困ります。強い上昇であれば買いマークがでた日より安く始まるはずがありません。


2321「Sフロン」は買いマークが出た翌日も高寄りして、急上昇です。これはOK。

2926「篠崎屋」は、買いマークが出た日の終値と同値で寄って、少し上昇。この銘柄は16銘柄のうち唯一「時間切れ」になりました。

3587「IBダイワ」は買いマークが出た翌日も高寄りして、今日まで大奔騰です。


6716「中央無線」は買いマークが出た日の終値より安く寄りついて2日反落。この間に買値より-10%の下落をしたので「損切り」となっています。検証リストの青○銘柄です。

8192「中川無線」は買いマークが出た翌日も高寄りして、急上昇です。これはOK。

9360「鈴与シン」は買いマークが出た日がピークでした。翌日は安寄りしているのでいけません。検索リストの青○銘柄です。

このように買いマークが出た翌日の寄り付きを見れば、検証リストの青○の3銘柄がダメであるとわかります。

この3銘柄を排除できれば、10勝6敗が10勝3敗となるわけで、利益率・勝率・プロフィットファクターも大きく向上します。

実際の売買に際しての工夫、応用です。


HP目次へ.. 講座目次へ.

株式会社 東研ソフト

執筆:坂本 正治