会員制交流サイト(SNS)で知り合った小中学生を誘拐する事件が相次ぐ。危険性を教えることはもちろん必要だ。同時に、ネットに脱出口を求める子どもたちの心の奥底にも目を向けたい。
「知らない人にはついていかない」。大人は子どもたちに繰り返し教えてきた。危険な大人は今やネット空間にもいる。社会は便利さと引き換えに困難な課題を抱えたと自覚し、対策を講じていく必要がある。
大阪市の小学六年女児の誘拐事件で容疑者の男は、非公開でやりとりできるツイッターのダイレクトメッセージを使って接触したという。さいたま市の女子中学生を誘拐した罪で起訴され、兵庫県の女子中学生の誘拐容疑で再逮捕された埼玉県の不動産業の男は「勉強するなら養ってあげる」と誘い出したとされる。中学生はツイッターに家出希望と投稿していた。
ツイッターで「#家出」で検索すると「泊めてくれる方いませんか?」などの書き込みが多数見つかる。SNSが、困っている少女たちと、それに付け込む大人が出会う場となっている現実の延長線上で事件は起きている。
まずできる手だてはいくつかある。子どもが使うスマホに保護者がSNSなどの使用制限を設定することは可能だ。警察庁によると昨年SNSで児童が巻き込まれた事件の九割近くで、閲覧制限をするフィルタリングの機能は使われていなかった。保護者が機能をきちんと理解し、子どもに何をすることが危険かを具体的に伝えられるようになることも大切だ。
災害時の連絡手段にしたいという保護者からの要望もあり、小中学校へのスマホなどの持ち込みを解禁する方向で、文部科学省の有識者会議が議論を進めている。
スマホを使う小学生は三割強だが、持ち込みを認めたことがきっかけで所持率が増加することも考えられる。管理する教員の業務が煩雑になることや、ゲーム依存を助長することへの懸念の声も出ている。事件に巻き込まれるリスクも考慮した上で、持ち込みを許可する場合はどんなルールや教育が必要か、慎重な議論が必要だろう。
子どもたちにとって、SNSが悩みのはけ口になっていることを深刻に受け止めたい。家庭でも学校でも自分を受け止めてもらえないと感じてはいないか。安心できる居場所や聞いてくれる大人がいる環境をどう広げるか、議論を深めていく必要がある。
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