夢の世界で、欲望は暴走する。
本作は、人が<ネザー/NETHER>と呼ばれるインターネット上の仮想空間で膨大な時間を過ごし、中には現実を捨てて仮想空間だけに生きる場を求める人も出てきてしまう……という、近未来の世界を舞台に「人の欲望の暴走」と「倫理の危うさ」という普遍的な問題を、たった5人の登場人物で鮮やかに描いた作品です。
英国The Royal Court Theatreで上演するや否や、批評家たちから絶賛され、2015年のローレンス・オリヴィエ賞では作品賞を含め4部門にノミネート(舞台装置で最優秀賞)されました。
この日本版の上演台本・演出を手がけるのは、振り込め詐欺、原発事故、イラク戦争など、目の前にある現実を描いてきた瀬戸山美咲。社会問題を題材にした作品を送り出し続ける瀬戸山が、人間の欲望や犯罪倫理だけでなく、近年、話題となった#MeToo運動やLGBTといった、性自認や性的指向に着目、主人公の性別を女性から、あえて性的なことに恐怖心や嫌悪感を抱く男性にすることで、男性vs.女性の構図に捉われない、人間と人間の物語として再構築します。