兵庫県たつの市は1日、「播磨の小京都」とも称される同市龍野地区の約16ヘクタールを「龍野伝統的建造物群保存地区」に決定、告示した。江戸中期の旧町人地の地割り(=敷地の区画)を残し、江戸~昭和初期の町家や醤油蔵が多数現存するのが特徴。国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)選定を目指し、7月にも申請を行う。
重伝建地区は全国に118地区ある。選定されれば県内では神戸市の北野町・山本通、同県豊岡市の出石、同県丹波篠山市の城下町地区と福住、同県養父市大屋町大杉に続き6例目。
龍野地区は旧城下町の町並みを受け継ぎ、1990年に県の歴史的景観形成地区に指定された。近年は高齢化で空き家が増加。貴重な建物が老朽化し、取り壊される例も目立っている。
市は2016年度から同地区55ヘクタールを対象に建造物や町並みの文化財的な価値の調査に着手。住民代表や学識経験者らからなる保存審議会の意見などを踏まえ、対象地域を絞り込んだ。
保存地区は、城下町の中心部から揖保川沿いに広がる旧町人地が大半を占める。45(昭和20)年以前の伝統的建造物に該当する建築物、門や土塀などの工作物のうち、所有者の保存に向けた同意を取り付けているものは277件に上る。
他方、白壁の景観で知られる武家地は、地割りの保持が必要な重伝建地区の選定基準に照らし、保存地区から外れた。
市は地区内の保存の方針、建物や景観に関する保全整備の施策などを定めた保存活用計画も合わせて決定、告示した。
龍野町並み保存会の田中晋会長は「紆余曲折もあったがここまで来られて感無量」。山本実市長は「さらなる高みを目指し、住民と一体となったまちづくりを進めたい」としている。(松本茂祥)