目がすげえかすむ。
これもJJ(熟女)業界でホットな話題だ。「夕方になると目が見えない」「わかる! 鳥にシンパシーを感じる」と話していると、医者のJJから「とにかく目を休めるのが一番」と言われたので、執筆の合間に六甲山を眺めている。
かつ、眼精疲労に効くツボも押している。前にテンガさんからサンプルでもらったVI-BO(バイボ)を使って。これはツボを押すのにとっても便利。
ただし、素人はうっかり秘孔を突かないように注意しよう。児鳩胸(目の遠近感を失わせる秘孔)や瞳明(目玉が裏返る秘孔)を突くと逆効果になる。
最近、若い女子から「ツイッターを見るのがしんどくて控えてるんです」とよく聞く。「わかる! 目がかすむもんね」と言うと「いやじゃなくて、私自身はフェミニストだけど、フェミ系の話題を見るのがしんどくて」とのこと。
その気持ちもわかる。フェミ系の話題が盛り上っているのは、非常に喜ばしいことだ。数年前まで「ジェンダー、何それおいしいの?」「ミソジニー、それどこの汁物?」みたいな人が多かったことを思うと、時代の変化を感じる。
前回のコラムもバズって、多くの女性から共感の声をいただいた。これも数年前には考えられなかったことだろう。
女性が性差別について声を上げられるようになったのは、ツイッターのような「声を上げても直接ぶん殴られない場所」ができたからだ。それ自体はすばらしいことだが、疲弊している女子が多いのも事実。
議論が活発になると、さまざまな意見が見える化する。すると「えっ、この人こんなこと言っちゃうの?」と価値観やアップデート具合の違いにショックを受けることも多い。
私も仲良しのJJが「今の若い子は性差別とかセクハラとか騒ぎすぎ! おじさんをうまく転がせばいいのに」とツイートしてるのを見て「女王蜂になっちゃったのか……」と脳内ツイートした。
彼女はおじさん転がしやおじさん受けキャラを武器にして、男社会をサバイブしてきたのだろう。でも「自分はこうして成功したから、みんなもそうしろ」と押しつけるのは、クインビー症候群である。
「自分は先輩のしごきに耐えたんだから、後輩も耐えろ」みたいな発想では社会は変わらないし、声をあげる人の口をふさぐ発言はやめた方がいいぞ……!!
と彼女に念を送ったが、私はスタンド使いじゃないので届かないだろう。
だからといって、彼女を敵認定したりはしない。「あなたはそういう考えなんですね、私とは違いますね」botになるだけだ。
なぜなら、私が戦うべき敵はもっと他にいる。それは「女の敵は女ww」と嬉し気に煽る人々、女を分断させて団結させまいとする人々だ。
女を同士討ちさせれば、真の敵から目をそらせられる。彼らはMeTooのように女が声を上げるのが怖いのだ、差別や搾取をできなくなるから。
そんな敵の策略に乗せられてなるものか。シスターフッドを邪魔されてたまるかよ。皆の者、グレッチを持て―! ブオオーー!!(法螺貝)
というのが我の戦なので、フェミニズムの誤解あるあるを解きたいと思う。
本来、フェミニズムは「女はこうあるべき」と押しつけるものではない。それとは真逆で「女はこうあるべき」と押しつけられず、それぞれの女性が好きに生きられる社会を目指すものだ。
つまり、フェミニズムの旗には「選択の自由」と書かれているが、残念ながら誤解している人もいる。
たとえば、#KuTooの石川優実さんは「職場でのヒールの強制に反対してるのであって、ヒールを否定してるんじゃない」と6万回は説明してきただろう。それでも「ヒール」や「ヒールを履く自分」を否定されている、と感じる女性もいる。
違う違う、そうじゃ、そうじゃなーい♪ブオオーー!!(法螺貝)
「私はヒールを履きたいし、かわいい服装やメイクが好きだし、男性に甘えて頼りたい」という女性がいたら「どーぞどーぞ!」とダチョウ倶楽部になるのが、本来のフェミだろう。
「メイクもせずヒールも履かず、男に甘えて頼らない女が正しい」なんて一言も言ってない。そして「メイクもせずヒールも履かず、男に甘えて頼らない女」が生きづらいのが、ヘルジャパンの現状である。
そんな彼女らが「女らしくない」「女子力が低い」「そんなんじゃモテないぞ」と否定されて傷つく、この地獄の瑞穂の国を変えたい。すべての女性が好きに生きられる選択の自由を!! ブオオーー!!(法螺貝)
マジで法螺貝が欲しくなってきたので、アマゾンで調べたら49500円もした。たっけえ!!
それで「法螺貝 体験」でググると、滝行や山寺で座禅など厳しい修業がセットのプランが多かった、JJには無理!!
エア法螺貝片手に続けると、うちの夫はフェミニズムのフェの字も知らぬ御仁だが、#KuTooの説明をしたら「俺も男がスーツ着なくていいように運動しよかな」と言っていた。
「さすが貴様!」と褒めたらキョトンとしていたが、「男だってスーツにネクタイで我慢してるんだ、女だって我慢しろ」というクソリプ勢が多すぎるのだ。
年貢に苦しむ農民同士で「オラの方が苦しい、おめえずるいぞ!」と殴り合って何になる。そもそも、その苦しめるルールを作ったのは誰なのか? それで利益を得ているのは誰なのか?
それを見極めたうえで、一揆を起こすべきじゃないのか。オラたちみんなが生きやすい社会にするために、ブオオーー!!(法螺貝)
こうして私は元気はつらつ法螺貝を吹いているが、フェミが元気玉を維持するコツは「俺のフェミニズムはこうだぜ!」と自分のスタンスを明確にすることだろう。
当然フェミにもいろんな意見があるが、自分のスタンスが明確であれば「オッス、オラフェミニスト!」と胸を張っていられる。
私のフェミニズムは「性差別をなくしたい」「大人の責任を果たしたい」というシンプルなものだ。
私は「男」じゃなく「性差別」を憎んでいる。性差別や性暴力に加担する人々、それらに無自覚な人々が許せない。そこがハッキリしていれば、ミサンドリー(男性嫌悪)にならずにすむ。
また私の考える「大人の責任」とは、次世代に差別のない社会、より良い社会を引き継ぐことだ。
先日、ヒストリーチャンネルでアメコミヒーローの歴史に関するドキュメンタリーを見た。その番組では、マーベルやDCが時代に合わせて変化してきた歴史を描いていた。
1960年代には公民権運動が広がるアメリカに、黒人のヒーローであるブラックパンサーやファルコンを誕生させた。
1970年代には『X-MEN』初の黒人かつ女性のリーダー、ストームを誕生させた。彼女の登場は「リーダーは白人の男性」という古い常識を覆した。
またかつては「職場の花」的なお飾りキャラだったジーン・グレイを、フェニックスという最強の女性ヒーローに進化させた。「女と男は対等に仕事をする同志である」と世に示したのだ。
そして21世紀に入ると、9.11以降、イスラム系の人々に対する差別やヘイトが拡大する中、新時代のヒーローを誕生させた。16歳のパキスタン系アメリカ人の少女、ミズ・マーベルだ。
初のイスラム系ヒーローの物語は全世代の男女に支持されて、ベストセラーになる。
サンフランシスコのバスに貼られたヘイト広告を、市民が「言論の自由を差別に利用するな」というメッセージと共に、ミズ・マーベルの絵で隠すというニュースもあった。
こうして彼女は差別やヘイトと戦う人々の象徴になった。
……という番組を視聴して、JJは感極まって貝を吹いた。これが大人の責任だろう、ジャンプもがんばってくれよな! ブオオーー!!
拙者は幼少期からジャンプを読んで育った者として、編集部の皆さんに聞きたい。
エロを出せば売れるって、そもそも読者を舐めてませんか? エロがなきゃ売れないのか、ちゃんと検証したことはあるんですか?
アンケアンケと言うけれど、ハガキを書いて投函する読者って全体の何割なんですか? その人たちが事業の売上を支えてるって、本気で思ってますか?
私が小学生の時から亀仙人のぱふぱふやブルマのポロリとかあったけど、「あれがあったからドラゴンボールは売れた」とか言ったら鳥山先生も怒りませんか?「クリリンのことかー!!!」ってなりません? それって作者にも失礼じゃないですか?
あとこれが一番聞きたいんですけど、「ジャンプは少年のための雑誌」というけど、本気で少年たちのこと考えてます?
私の大学時代も「修学旅行で女湯を覗いた」とか笑い話にしてる男子がいて、性犯罪を娯楽として消費する文化があったけど、現実に男子学生が女湯を覗いて逮捕されて退学になったりしてますよね?
そういうニュースを見た時、何を思うんですか?
少年も少女も守ること、被害者にも加害者にもならないようにすること、それが大人の責任じゃないんですか?
「少年たちのため」と言ってるけど、本音は自分たちが変わりたくないだけ、自分たちの立場や権力を守りたいだけなんじゃないですか?
誤解しないでくださいね、私は「規制しろ」ではなく「本気で考えてほしい」と言ってます。これはメディアの規制ではなく、メディアの責任の話です。
思考停止した方が楽だし、変わるのは勇気がいるでしょう。でも人間讃歌は勇気の讃歌。諦めたらそこで試合終了だってばよ。
私は古い常識を覆すような作品、新時代のヒーロー、アップデートしたジャンプを見たいです。
以上をアンケートハガキに書いて送ったら、編集者は読んでくれるだろうか? 読まずにシュレッダー行きだろうか。集英社の社長宛てに送った方がいいのかな。
前回のコラムを読んだ友人からメールをもらって、その流れで飲みに行った。
彼女は「私はジャンプ漫画大好きなオタクだから、最近の炎上を見てると複雑でつらいです」と言って、しばらく黙ってから話し始めた。
「小学生の時に『まいっちんぐマチコ先生』の再放送をやってて、男子の間でスカートめくりが流行ってたんですよ。スカートをめくられて泣いてる女子もいて、私は友達を守らなきゃと思って、男子と戦ってたんですね」
「そしたらある日、6人の男子に組み伏せられて、両手両足を押さえられて、下着までずり下ろされたんです。もがけばもがくほど『見える、見えるー!』とはやし立てられて。私は恐怖で泣くことしかできませんでした」
「このことは親にも誰にも言えなかったけど、この前、夫に話そうとしたんです。何十年も前のことだし大丈夫と思ってたけど、いざ話そうとすると心臓がバクバクして体が震えて手足が冷たくなって、パニック発作みたいでした。夫は何も聞かずにハグしてくれて、なんとかおさまりましたけど」
話しながら彼女は泣いていて、私も泣いてしまった。「絶対誰にも言わないから」と手を握ると「いえ、もしよかったらコラムに書いてください。私みたいな被害に遭う子を減らしたいから」と言われた。
マーベルヒーローの『スパイダーマン』に有名なセリフがある。
「Remember, with great power comes great responsibility」
(忘れるな。大いなる力には、大いなる責任が伴う)
「地獄のような未来はもうたくさんだ」とトランクスも言っている。私も目がかすむJJだけど、未来を地獄にしないために、こつこつと書き続ける。アルテイシアは死んでも法螺貝を離しませんでした、の覚悟で。
俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ! ブオオーー!!(未完)
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※同時連載中!「アルテイシアの59番目の結婚生活」もお楽しみください。
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人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!
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