【PR】この記事はソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社「Neural Network Console」のスポンサードコンテンツです。
古くは2、3世紀に大陸から伝わったとも言われている養蚕業。1930年ごろには国の主力輸出品だった生糸を支える蚕(カイコ)がいま、存続の危機に瀕している。
「年々規模が小さくなっている産業なので、これまで『どうにか新しい技術を導入したい』と思いを持つ人はいても、新しい挑戦はできなかったそうです。でも養蚕業は他の産業に比べて手作業が多い分、AIが役に立つ余地がある。カイコの世界にAIを入れることに抵抗はありませんでした」
こう語るのは、群馬県蚕糸技術センターの下田みさとさん。下田さんは蚕糸研究係として、カイコの品種育成や繭の品質調査、養蚕農家向けへの卵の提供を担当している。
縮小を続ける養蚕業において、下田さんはいかにAIを導入・活用し、技術の継承に挑んでいるのだろうか。事例を追った。
いま養蚕業が抱える「伝承」という課題
「カイコを育て、繭をつくる」養蚕業は、明治時代は日本の基幹産業として発達していったものの、化学繊維の登場などにより需要が減少。現在では生産量・養蚕農家数ともに減少の一途を辿っている。生産量は1930年の40万トン、養蚕農家数は1929年の221万戸をピークに、2018年には生産量110トン、農家数293戸にまで落ち込んだ※。
※「新蚕業プロジェクト方針」(農林水産省)外部リンク
現在、蚕糸業に携わる人材の高齢化と後継者不足により、経験に基づいたノウハウの継承が困難になっている。そうした技術のひとつが孵化卵の見分け作業だ。直径1.5mmにも満たないカイコの卵を、目視で正常なものとそうでないものとにひとつひとつ仕分ける。
卵1蛾区(卵300〜600粒)を見分ける時間は5〜10分と長くないものの数が多く、10名が1日中見分け作業に取り組んでも数日かかる状態だった。
見分けるコツが言語化しづらく、一朝一夕では伝承できない技術。高齢化している作業者の負担も少なくない。こうした現状をどうにかできないか、と考えていた矢先、下田さんは「画像認識」という言葉を思い出す。
「AI技術について詳しく知りませんが、”画像認識”という単語を聞いたことがありました。卵の画像から卵の状態を見分けられるAIがあれば、この作業を自動化できるのではと思ったのです」
Neural Network Consoleとの出会いと活用
AI導入を思い立った下田さんは、職場の後押しも受け、中小企業の技術支援を担う群馬県立群馬産業技術センターの町田晃平氏に相談をすることに。同センターでは2016年ごろからAI技術の活用に力を入れており、町田さん自身も技師として、県内・外の中小企業100社超にAI技術の導入支援を受け持った経験がある。
下田さんの相談にも「データを提供していただければ、画像分析AIを作れる」とふたつ返事で快諾した。
「AI開発を始める段階で真っ先に思いついたのが、ディープラーニングを詳しく知らない人でも操作できるNeural Network Consoleでした。まずはAIを試してみたい、という下田さんにぴったりだと思ったのです」
NNC導入の決め手は、操作性の良さと運用コストの低さ
Neural Network Console(以下NNC)は、ソニーが提供するAI開発ソフトウェアだ。
出典:SONY、深層学習プログラムを生成する「Neural Network Console スターターパック」でAI活用を加速化
画面上の関数ブロックをドラッグ&ドロップで動かすだけで、コードを書かずにAIの作成・テスト・性能アップの調整ができる。
関連記事:非エンジニアがソニーのNeural Network Consoleで画像分類モデルを作ってみた
無料ダウンロードできるソフトウェア版のほか、Chromeなどのウェブブラウザで利用できるクラウド版もあり、気軽に始められるといえるだろう。
町田さんが「ぴったりだ」と直感したもうひとつの理由が、ランニングコストの低さだ。
AIは導入して終わりではない。データを学習させたら実際に運用して成果を見て、さらに認識精度を上げるために調整し、再び運用する……というサイクルを回す必要がある。
加えて、AIの複雑な演算には、高速で演算を処理する装置(GPU)が必要だ。NNCは高性能の演算処理装置が低コストで活用でき、かつ学習・評価に使った分だけ利用料金が発生する仕組みになっている。
「専用の画像認識ソフトウェアを導入するのに、いきなり数百万円を投資するのは難しいな、と頭を抱えていたんです。だから町田さんからNNCの話を聞いて、低コスト・プログラミングなしでAIが作れると知ったときは、身を乗り出して『ホントにできるんですか?』と聞き返してしまったくらいです」
100枚の画像から熟練作業者並みに分類ができるAIが完成
こうして町田さんはNNCのサンプルを元に、孵化卵の状態を分類できるAIを制作。数十の卵がまとまった写真をアップロードするだけで、卵を分類し個数を数えられる仕組みだ。
「ディープラーニングの認識精度を高めるには大量のデータが必要」ともいわれる中、AIに学習させた画像は100枚ほど。分析精度も熟練作業者並みと、専用のAI画像認識ソフトに引けを取らない分析結果を出せるという。
下田さんが学習用に提供した画像データ
下田さんが「何よりありがたい」と感じているのが、作業工数の削減効果だ。AIを使った場合の分析時間は、画像1枚(卵300〜600粒)あたり1秒に短縮された。
これまではカイコの飼育1回分の孵化調査に10人、計60時間を費やしていた。しかしAIを使うことで、撮影前の処理や撮影、画像分析を含めての作業時間は6時間未満になり、たった1人で完結できるそう。
作業者の負担を減らしたいと考えていた下田さんにとっては、まさにAIによって課題解決ができたというわけだ。
直感的な操作で、プログラミング未経験者でもAIの調整ができる
NNCを使って感じる優れた点は操作性の良さだ、と二人は口をそろえる。「関数ブロックを選んで、ブロックを積み重ねるかピンを引くだけ」という分かりやすい操作は、AI開発のハードルを下げた。
「ブロックを動かして直感的に操作できるのが、いいところだと思っています。プログラミングの経験はありませんが、NNCの研修に参加し簡単なニューラルネットワークの組み立てなどは私自身でもできました」
実際に下田さんは、セミナーを1度受けただけでNNCの基本操作を理解できたという。
解説動画も無料で用意されている
恩恵を受けられるのは初心者だけではない。開発を担当した町田さんも、「AI開発スピードが段違いに早くなった」という。
「認識精度を上げるための数値(パラメータ)を修正すると、他の部分も自動的に調整してくれる自動補正機能が気に入っています。ブロック操作と合わせると、プログラミングの負担が減ります」
制作した画像分析AIは検証段階のため、本格的な導入はもう少し先、とのことだが、今後の展望についてたずねると目を輝かせて語ってくれた。
「養蚕農家へ安全な卵を提供するための微粒子病の検査など、孵化卵の見分けと同様に年々できる人が減っている技術があります。AI分析によって属人化を防ぎ、次世代の人への継承や教育に役立てたいです。
少し先になるかもしれませんが、ベテラン農家さんの経験と勘をどうにか数値化し、新しく養蚕を始めようという人に、『養蚕アプリ』のような形でわかりやすく情報提供できるようにしたいとも考えています」
「システムを作れる人を巻き込みながら、『産業用AIと言ったら群馬』と言ってもらえるような体制を整えている最中です。
産業の現場や中小企業の方々にNNCを知ってもらい、私たちはローコストで気軽にAIを活用するお手伝いをしていきたいですね」
NNCでAI開発を始めるには
NNCを使い始めるには、以下サイトの「無料で体験」をクリックし、GoogleアカウントもしくはSonyのアカウントでサインインするだけだ。
操作方法は動画や、サポートドキュメントで説明されているほか、社員が直接レクチャーするセミナーも開催している。
AI開発のハードルを下げるNNC。AI導入の最初の一歩として、利用を検討してみてはいかがだろうか。