この春にメッセージアプリ大手に就職した新人エンジニアのA氏。大手銀行におけるデジタル部門向けの選考に進んだが、最終的に断った。
給与は悪くないし、親は「銀行への就職ならいいのでは」と勧めた。それでもA氏は金融業界を選ばなかった。理由をA氏はこう話す。「新しい企画やサービスを提案しても、保守的で文句をつけられそうだから」。
業界をよく知らない一個人のイメージにすぎないと切り捨てるのは早計のようだ。ある人材会社の担当者は「ここ1、2年ほど、金融系企業にデジタル人材が行きたがらない。金融パッシングとも呼ぶべき現象が起こっている」と証言する。
原因はエンジニアかいわいでの評判だ。FinTechブームに乗り、金融系企業のデジタル部門に転職したものの、リスク、リスクと言われてスピード感に欠ける上、規制も厳しい。自分が面白いと思うことはできず、Web系企業に出戻るエンジニアが増えているという。こうした情報がエンジニアの間で広まり、金融業界はますます選ばれなくなる。これが金融パッシングを生み出す構図だ。
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)のデジタル子会社iBankマーケティングはブロックチェーン技術を活用したポイント機能など、画期的なサービスを矢継ぎ早に打ち出している。スマホアプリ「Wallet+」は70万ダウンロードを超えている。
地方銀行の中で、同社はデジタル化で突出した存在と言える。福岡へのUターンを希望するエンジニアが多く、現状ではそれほど採用に苦労していないが、その同社でさえ「ウチが先端の金融サービスをやっていることさえ知られていない」(永吉健一代表取締役)。ただでさえ業界にマイナスイメージが染みついており、デジタル分野での知名度も低いとなると、デジタル人材の確保は困難だ。メガバンクは「CEATEC」などのテックイベントに出展するなど、エンジニアへのアピールに余念がない。ただ、多くの金融機関はエンジニアの選択肢に入りづらいと言わざるを得ない。
デジタル人材確保に向け、打開策はあるのか。参考になるのはSOMPOホールディングスの取り組みだ。
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