築 20年のマンションをフルリノベし、住み始めてから(あっという間に!)1年が立ちました。
1年たったということは、春夏秋冬すべての季節を新しい家にて経験したってことです。
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1年住んでみて、特に「お金をかけた価値が大きい」と感じるのは、ツイッターで何度か言及している「二重窓(内窓の追加)」です。
この件についてはリノベ協議会の設立発起人でもある島原さんとも対談しているので、参考にしてみてください。
さて、二重窓については質問を受けることも多いので、今日はその使用感をまとめておきます。
まず我が家の状況について。
1.築 20年の鉄筋鉄骨マンションで、上下左右に家があります。このため上下左右の壁は、外気に接していません。
外気に接しているのは、大きな窓のあるベランダ側の壁と、共用通路に面して小さめの窓がある玄関側です。
2.今回のリノベで、外気に面している部分の断熱吹きつけをやり直し、かつ、全ての窓に内窓を付け、二重窓としました(下記の写真参照)
3.外側の窓は(一般にマンションでは)区分所有者の一存では変更できません。このため、外側の窓は「20年前、新築時からついていた窓」です。
サッシ枠がアルミ、ガラスは網入りガラスで、かなり分厚いです。
この「アルミサッシ」が問題で、いまや他の先進国では、アルミはサッシ枠に使っていいような素材ではありません。これを樹脂枠(もしくは木枠)に変えるのが、まずは必要なのですが、残念ながら分譲マンションの場合、既存の窓は(枠も含め)変更できません。
4.そこで今回のリノベでは、既存の窓の内側に、あらたに内窓(インナーサッシ)を取り付けました。
新たに付けた内窓は、サッシ枠が樹脂、ガラスは Low-E複層ガラスと言われるもので、「2枚のガラスの間にアルゴンガスが入ったペアガラス」かつ「UVカット機能」のついた商品を選びました。
内窓に使われるガラスには様々なグレードがあるのですが、これは高機能な部類だと思います。
ただし、本当は「ペアガラスの間のスペーサーもアルミではなく樹脂」のほうがいいのですが、我が家のは(どうやら)アルミに見えます。もっと早くに知識を得ていれば、樹脂スペーサーを指定できたのかもしれません。
5.二重ガラスの設置費用は窓 5ヵ所の合計で 70万円くらいでした。
ただし、8万円の助成金をいただけたほか、(床のバリアフリー化と合わせてですが)所得税や固定資産税の減免が 35万円くらい受けられました。
※内窓は省エネ効果が極めて高いため、多くの自治体に助成金の制度があります。税金の減免のほうは(住宅ローン減税などと同様)それだけの税金を払っていない人には恩恵がありません。
なお、「内窓を付けて、二重窓にする」のと「ペアガラスの窓にする」は意味が違います。
重要なのは「アルミサッシではなく樹脂枠に、Low-E複層ガラスを使った窓」を付けることです。
★★★
そして以下が、二重窓にした家に 1年住んでみての感想です。
<冬>
驚くほど暖かくなりました。外気が10度未満でも、家の中の温度は(暖房なしで)21度程度に保たれます。
朝起きたとき、布団の外の気温が「さむっ!」と感じられ、(ふとんの)外に出たくないと思える日は一日もありませんでした。(リノベ前にはそういう日がよくありました)
以前は夜、指が寒くて手袋をしてキーボードを打っていたことも(↓)あったのですが、昨冬は、そんな日は一日もありませんでした。
キッチンに立つと足下が寒くて・・・というのもなくなりました。
結果、分厚いフリースの家着も要らなくなり、処分してしまいました。
エアコンやガスファンヒーターなど部屋全体を温めるための器具は、12月から2月の寒い日の夜になんどか使いましたが、1時間くらいつけると部屋が暖まり、その暖気が長時間保たれるため、付けっぱなしにする必要がありません。
昨冬でいえば「一日中つけっぱなし」の日はゼロでした。
通常は足下だけ温める電気膝掛けや、小型ファンヒーターを、洗面時や仕事時=動かず座っている時のみ使っています。
当然ですが、暖房にかかる電気代もかなり安くなります。電気代も高騰しているので、これは嬉しいですよね。
<結露>
以前はひどい結露が真冬には毎日、発生していました。これはリノベ前の冬に撮った写真です。
↓
昨年の冬も、この外側の(既存の)窓への結露はなくなりませんでした。ただし水滴の量はリノベ前の半分以下となり、結露する日も半分ほどに減りました。
また、室内側に新設した内窓はいっさい結露しませんでした。
結果として結露の処理は圧倒的にラクになりました。
<夏>
こちらも驚くような効果がありました。
リノベ前は仕事にでかけて夜戻ってくると、玄関を開けたとたん、
もあっ!
とした蒸し暑い空気が部屋の中に充満していて、家に入ったとたん汗が噴き出しました。
外出中に、部屋の空気が窓を通して入る熱で暖められてしまい、かつ、空気の流れが全くないので、そのまま滞留してしまうのです。
このため以前の夏は、外から帰宅した後は常にエアコンを最強にし、急速に部屋を冷やす必要がありました。
でも今年の夏はまったく違いました。
暑い日に外出先から戻ってきて玄関をあけても、部屋の中は(涼しいまま、とはいいませんが)、すっきりした空気のままです。
もあっ!っとした空気が充満していることはありません。
冷房を切ってでかけても、外出中に外の暑い空気が部屋の中まで及ばないため、室内が暑くならないのです。
これには本当に感激しました。
しかもこのことには、「帰宅時に気持ちがいい」以上の効果があります。
たとえば、家の中においている常温保存食材の傷みが圧倒的に少なくなりました。
当たり前です。
あんな(人間だったら熱中症になりそうな温度の中に出しっぱなしにしていたら)常温保存できる食材だってすぐに痛んでしまいます。
生きた植物や小型ペットなど生き物を飼っている家なら、よりその効果は大きいでしょう。
熱に弱いハードディスクが使われているパソコンや録画機についても同じ。
誰もいない時でも、部屋の中が灼熱地獄にならないというのは、家の中のいろんなものの傷みが少なくなるってことなんです。
さらにエアコンの効きもものすごくよくなりました。
(冬とは異なり)エアコンは付けっぱなしにすることも多かったのですが、ほとんどの日は弱除湿で過ごせました。
冷房運転にしたのは、お客様のある日など、週に数回だったと思います。
一夏を通し、クーラーの設定温度も必要なパワーも、リノベ前に比べるとかなりゆるめでOKでした。こちらも電気代を大きく下げてくれています。
<それ以外の効果>
1.極めて高い遮音(防音)効果があります
東京で二重窓が設置されているのは、幹線道路沿いのマンションだけですが、これは防音のためです。
静かな環境を求める人の他、夜型の人など、家の中の音を外に漏らしたくない人にも二重窓はお勧めです。
2.一戸建てや低層階のマンションの部屋では、防犯効果もあります。
泥棒には玄関の鍵を破って入ってくる泥棒と、窓を割って入ってくる泥棒がいます。
後者の場合、二重窓だとガラスをふたつ割らないと侵入できません。当然、そんな家をわざわざ狙いたいとは思わないでしょう。
我が家なんて二枚目の窓は「アルゴンガス入りのペアガラス」にしたので、実際には 3枚割らないと泥棒が侵入できなくなりました。
★★★
次に、友人知人、そして、講演会などで聞かれた質問に答えておきましょう。
1.内窓を設置すると、窓が内側にせり出してくるので、部屋が狭くならないか
内窓は、既存の窓から 7センチくらい内側に付けるので、たしかに部屋の中の空間はその分、狭くなります。
ただ、私の場合はリノベと同時に設置したため、リノベによって「天井が高くなったり、デッドスペースをなくした分で増えた居住空間」のほうが、「内窓をつけたことによって減った居住空間」より大きかったので、全体として部屋は狭くなっていません。
たんに「内窓を付ける」だけなら、その分、室内空間は狭くなるでしょう。
2.窓と窓の間の掃除が大変ではないか?
まったく大変じゃないです。そんなとこ汚れないし、ウエットティッシュでさっと拭くくらいできれいになります。
ただ、ガラスの枚数は倍になるので、掃除が必要なガラス面積は倍になります。
我が家の窓はそんなに汚れるわけでもなく、せいぜい年に一、二回しか窓掃除をしないので、たいした問題ではないですが、
たとえば業者に窓掃除を頼んだりすれば、料金は倍になるのかもしれません。
3.一戸建ての場合は?
一戸建ての場合は、窓だけでなく壁や床からも外気の温度が伝わってきます。
昔の古い家では壁や床の断熱さえまともになされていないので、窓だけ改善しても機密性は高まらないかも。ここは専門家に相談してください。
ただし、今どき新しく建てられた一戸建てで「壁の断熱なし」なんてちょっと考えられないので、新しい家なら窓だけ二重にすれば効果があると思います。
もちろんマンションの場合も、一階住居なら床、最上階住居では天井側から外気温度が伝わってくるので、そちらの断熱も必要です(が、こちらも新しいマンションなら、心配しなくていいと思います)
あと、マンションの場合は既存の窓が外せないので、高機能な窓は「内側に追加」するしかなく、結果として「二重窓」になりますが、
一戸建てを「ゼロから建てる」なら、二重窓にしなくても、高機能な窓(樹脂枠、樹脂スペーサー、Low-E複層ガラス)をつけ、あとは雨戸やシャッターをつけるとか、いろんなバリエーションがありそうなので、その辺も専門家に相談してみましょう。
★★★
もうひとつ、とても大切なことがあります。
二重窓にして家の気密性が高めると同時にぜひ実現すべきなのが、家の中の温度差を無くすことです。
私は断熱・内窓設置に合わせ、間取りを回遊型にして、ふたつあるドアはどちらも引き戸にしました。
開き戸は開けっ放しにするとみっともないですが、(もしくは邪魔になりますが、)
引き戸なら開けっ放しにしてもドアが壁の中に収まるため、スッキリしています。
下記のように、リノベ後の我が家は、
・エンタランスホール
・パウダールーム(サニタリー)
・メインルーム
の3室構成で、引き戸ふたつをあけると全てのエリアがつながります。
こういう間取りで気密性を高めると、60平米くらいのマンションならエアコンひとつで夏も冬も「家全体が適温」に保てます。
リノベ後の我が家では、冬でも玄関も洗面所も寒くないし、夏のトイレも暑くありません。
一度、快適な温度にしてしまえば、(外気の影響を受けにくくなるので)その温度が家中で、長く保てるのです。
これは本当に快適です。
以前は、真冬の洗面室が寒すぎるため、長い時間かけてしっかり歯みがきするのが億劫だったり、寒いから歯みがきしながらリビングに戻ってきて、床にしぶきが飛んだりしてました・・・
加えて夏はトイレが暑く、座っている間に汗が噴き出したり、掃除をしていると額の汗がトイレの床にポタポタ落ちるほどだったんですが、今はそんなこともまったくなくなりました。
しかも家の中の温度差を無くすと、快適なだけではなく、ヒートショックによる事故も抑制されます。
こちらも(特に高齢者にとっては)健康寿命を延ばすために極めて効果的です。
窓から外気温が直接伝わってくるような気密性の低い家で「すべての場所を適温」にするには、冷暖房費がかかりすぎますが、
内窓を追加し、断熱さえしっかりしておけば、「あらゆる場所を適温に」が、遙かに低い電気代で実現できるのです。
★★★
以上、内窓をつけた効果について「個人的な感想」をまとめておきました。
なにか質問がありましたら、ツイッターで聞いていただければこちらに回答を追記します。
より詳しく知りたい方は、(ちょっと言葉は難しいですが)専門家の書かれた本なども読まれるとよいかも。
私はリノベ済みの部屋に 1年住んでみて、「内窓を付ける」のは、内装に凝ったり、(キッチンやユニットバスなど)住宅設備へ投資することに比べて圧倒的に価値ある投資だと確信できました。
今から振りかえれば、「これから家を建てたりリノベをするなら、二重窓の効果や種類についてきちんと説明してくれないような建築会社や設計事務所、そしてリノベ会社には、そもそも工事を依頼しないほうがいい」とさえ思います。
だって素人である客側から「窓はアルミサッシではなく樹脂枠に、Low-E複層ガラスを使った窓で、できればスペーサーも樹脂のものを付けたい」などと指定しないといけないなんて、変じゃないですか?
そういうのは、(たとえ客側に知識がなくても)プロ側から進んで説明&提案すべきだよね?
助成金についての情報も(施主側が自分で調べなくても)業者側から説明すべきでは!?
と、今なら思います。
以上、これから家を建てたり、リフォームやリノベをされる方の参考になれば幸いです。
リノベ会社の方からも「お客様にぜひ読んでいただきたい一冊」というご推薦をいただいてます。リノベや一戸建ての購入、建築を予定されている方はぜひご一読を。
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