先日、「漫画1コマのダウンロード容認へ」みたいな記事が公開されました。
漫画1コマのダウンロード容認へ 海賊版サイト対策で文化庁 | 共同通信
で、このあたり、結構ややこしいのですね。。
で、いろいろな人がいろいろな誤解をしていて、僕のやっている「アル」というマンガサービスについても言及してくれている人がいたので、よければ僕の理解を書こうと思っています。複雑な話なので、丁寧に説明をしていければと思っています。
alu.jp結論でいうと「マンガのコマとかをブログに使っていいようになったんだね!」とか「ソーシャルアイコンを好きなアニメを使っても大丈夫」みたいなのは誤解だと思います。
背景
まず、この話は何なのか?というと、、、
海賊版問題とかがあるから、音楽・映像のダウンロードの規制を、書籍やマンガなど、「静止画のダウンロード」も違法化することを文化庁が検討していたりしていたのですね。
まず、「違法と知りながら私的にダウンロードする行為」は、音楽や映像だと、著作権法違反になるよ、というのは知っている人も多いと思います。
【改正法119条3項 条文】
第30条第1項(※)に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
法律なので読みづらいんですが、詳しくはSTOP!違法ダウンロードのサイトに書いてあります。
①「CD、DVD、ブルーレイ等として販売され、またはインターネットで有料配信されているなど、有償で公衆に提供・提示されている音楽や映像」を、 ②「有償で公衆に提供・提示されていると知りながら」、 ③「ダウンロードする行為(デジタル方式による録音又は録画)」は、個人的に使用する目的であっても刑事罰の対象になりました
んで、、、漫画村問題などをはじめとして、違法海賊版サイトが非常に盛り上がってしまったので、書籍やマンガもダウンロード違法にしようよ、というのが出発点だったのですけど、、、
今年の3月13日に自民党が、今通常国会での法案提出を見送ったりして話題になりました。
なんで見送ったかというと、、、違法海賊版サイトによって被害を受けているマンガ家さんたちなどからも反対意見があがったりしていたのですね。たとえば、のだめカンタービレの二ノ宮知子先生は
などと述べていますし、マンガ家の赤松健さんは「漫画家を守るためにやっていると言われると、ちょっと違うなと思う」などと述べています。
また、マンガ学会も反対しています。
なんで?というと、いろいろ理由はあるんですが、「漫画村みたいなストリーミング形式は対象外になるから意味ないんじゃない?」だったり「違法ダウンロードの範囲が広すぎると、普通のネット利用をしてても意図せず法律を犯しちゃうことになるので、警察が悪用できたりしちゃうかもよ?」などがあげられています。要は、「海賊版から権利者を守るため、というのはわかるけど、過激な制限しすぎ、萎縮しちゃうのでは?」という感じでしょうか。
今回は不特定多数を対象にしたインターネット上の「自動公衆送信」や「デジタル方式の複製」などが対象となるが、漫画村のようなストリーミング方式で閲覧・視聴できる海賊版サイトや、印刷物、印刷物のスキャンなどは含まれない。これについても「漫画をダウンロードさせないタイプの海賊版サイトには効果がなく、印刷物はOKなどの基準にも疑問が残る」と話す。
また、静止画やテキストなど違法ダウンロードの対象が拡大していくと、インターネット利用者のほとんどが意図せず法を犯してしまう可能性が起こり得る。大屋さんは「日本の警察がこれを悪用しないと信じているが、刑事事件なら捜査当局がとりあえず怪しい人を捕まえ、別件で捜査を行うといった可能性もあり得る」と懸念をもらす。
「意味のない法改正」「イラスト界が壊滅する」 違法ダウンロード対象拡大で漫画家らが“反対集会” (1/2) - ITmedia NEWS
という流れがあったりして、今回のニュースだったのです。
どんな内容?
2019年の11月27日に、文化庁は「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」を開催して、そこでの話がニュースになったという感じです。
まず、今回の件は「ダウンロード」です。そして、ダウンロードの中に「スクリーンショット」が入っていたのですが、、今の文化庁のダウンロード違法化案では、たとえば「アニメのキャラクターを勝手にアイコンに使ったツイッターのアカウントをスクリーンショットをとっても違法ではない」という内容になっています。
つまり
- ソーシャルの誰かが、勝手にアニメのアイコンをプロフィールにしていた
- その人の投稿が写っている画面をスクリーンショットした
- これは合法!
ということです。
逆にいうと、
- ソーシャルアイコンを、無断にアニメのアイコンにしていた
は今回の話とは関係ありません。これはアップロードの話なので、全然違う話です。 以下の記事では、文化庁の担当者の人は
――では、アップロードするのはOK?
アップロードは全然違う行為で、現行の著作権法で違法です。
といっています。
というので、どうしたらいいのか・・・という話なんですが、、、
アルでやっていること
アルでは、マンガのコマ投稿を「著作者さま、出版者さまの許可をもらって出来るようにしている」というのをやっています。これをやっている理由としては
- 海賊版サイトや、ネタバレブログのような、著作物に勝手に乗っかって稼ぐようなサイトをなくしていきたい
- でもネットユーザーの萎縮はしないようにしたい
- むしろネットユーザーがもっとマンガの周辺で楽しめるようにしてマンガの売上もあげたい
などです。
海賊版が問題になっていることを知ってからマンガが好きな僕は、「どうしたらいいのだろう?」といろいろ考えていました。
もちろん、法律を整備して、厳しく取り締まる、というのはあるでしょう。しかし、個人的には「法律は作れば作るほど普通に楽しんでいる人が萎縮していく」だったり「権力者の権限が増えることになる」だったりするなーというのはあります。
で、出版者も、マンガアプリを出したり、無料で読めるようにしたりと、業界内の自助努力はすごいしているわけです。電子で読めるマンガは本当に増えましたし、それに触れる場所も多く作っています。
じゃあ何が足りないのか・・・。それはネットに詳しい人が、ネットユーザー側の利益と、マンガ家さん、出版者の利益の双方を守るために、アイデアを絞ってサービスを提供することじゃないかと思ったのですね。
そんなこんなで「アル」というサービスを作っていました。
さらに、アルでは今、コマの投稿の画像から、違法サイトやネタバレブログを自動的に検知し、DCMAの通報を権利者の人がしやすくしたり、アドネットワーク業者に通報できるようなものも開発しています。以下の画像は開発中ののものですが
ネット上にある、同じコマを使ったサイトを自動的に数百件、リスト化することに成功しています。これを使えるようになると
- 違法に使っているサイトを検知して、通報などをしてなくしていける
- 合法的なコマがネットに残るようになり、著作者がコントロール可能になる
という風になるかなーと思って、地道にやっています。
ということで、ネット業界側から、マンガ家さんも出版者も、そして楽しみたいネットユーザーも得しつつ、違法サイトで稼いでいる人たちは潰していく、というのがヘルシーにできるようになると、わざわざ法律を頑張って作らなくてもいいんじゃない?というところまで持っていきたいと本気で思っていたりするのです。
なので・・・
alu.jpマンガのコマの投稿だったり、それをブログに貼り付けたりするところを強化しているこの頃なのです。
なんか、語りたいことを語っていくと、だんだん宣伝みたいになってくるので、記事はここでお終いです!僕もまだこのあたり、知識が十分とは言えず、常に勉強しているので、論点違うよ!とか、解釈が間違っているよ!というのは、ガンガンといってもらえると嬉しいです!
alu.jp