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異世界最強の大魔王、転生し冒険者になる 作者:月夜 涙(るい)
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第十四話:魔王様は強くなっているようだ

 わざわざ下の階層を目指して進んでいた理由は一つ。

 アロロアが戦力として使えるのであれば、そのまま下の階層を目指して突き進むためだ。

 俺はそうなる可能性が高いと踏んでいた。

 なにせ、俺と同じロロアの肉体を持つ存在。ある意味、俺の妹に当たる。

 そして、俺の肉体はちょっぴり、人よりも成長しやすしく優秀だと察している。アロロアもそうだろう。

 ……にしてもロロアはすごいな。一から作り上げた体に、人工知能を宿すなんて。無から人を作り出しているのと同じじゃないか。

 それこそ神の領域を侵している。


「アロロアちゃんもロロアフォンⅦを持っているんですね」

「肯定。ロロア様からもらった」

「おそろいです。えっと、連絡先交換をしましょう」


 無邪気に、キーアとアロロアが連絡先交換をしている。

 パーティとして過ごすのであれば、お互いの連絡先は必須だ。

 ダンジョン内ではぐれるということは珍しくない。

 なので、俺も混ざっておく。別に仲間はずれが嫌だったというわけじゃない。


「じゃあ、先へと行こうか」

「ですね」

「質問。今日の目標を知りたい」

「第二階層を突破して、第三階層にたどり着く。そしてできるだけ地図を埋めて、できることなら四階層への入り口を見つけたい」


 俺たちの目的地は第六階層。

 そして、そこへいきなりたどり着くのはほぼ不可能。何日か泊まりながら進むにしろ最低限、マッピングをして最短ルートで進めるようにしてからじゃないと体力がもたない。


「了解。そのための行動を意識する」

「頼りにしてますよ。アロロアちゃん」

「受命。やるべきことをする」


 頼もしい限りだ。

 さあ、進むとしよう。

 日が暮れるまでにできるだけ進まないと。


 ◇


 第一階層から第二階層へと連なる青い渦に飛び込む。

 すると風景が一気に変わった。

 第一階層は緑豊かな草原だったが、ここは森だ。高低差がある上、木が生い茂っている。


 ただ進むだけでも、森を歩くのは疲れる。登ったり降りたりする上、泥に足が取られ草が絡みつくからだ。

 脛まで覆うブーツは必須、それがないと切り傷がついていただろう。

 ダンジョン慣れしているキーアはもちろん、アロロアもそのあたりのことは考慮している。

 当然のようにブーツを履いているし、太ももまでニーソックスで保護している。

 布一枚あるだけで、こういう探索ではだいぶ違うのだ。


「気をつけてください、敵は前後左右だけじゃなく上からも来ます」

「わかっているさ」

「了解」


 初めて、二階層へ来たときはそれに苦しめられた。

 上というのはほぼすべての生物にとっての死角なのだ。

 俺たちは陣形を作る。

 先頭が俺で、真ん中にキーア、そして後方にアロロア。

 陣形を組み、それぞれ警戒する方向を分担することで負担を減らす。

 そうでもしないと神経が持たない。


「それ、魔力が持つんですか」

「これぐらいなら、自然回復力で追いつく」


 ジャングルだけ会って、草木が生い茂っているのだが、俺は目の前にある草を植物操作の魔力で押しのけながら進んでいる。

 これだけで歩きやすさが全然違う。

 魔力の消費も、身体的な負担をほとんど感じないレベルだ。なんというか、息が乱れない程度のジョギングをやっているに等しい。


「日に日に魔力が上がっている気がします」

「鍛えれば、魔力量が上がるのは当然だろう」

「それはそうですが。いくらなんで、むぐっ、なっ、なにするんですか」

「無駄話、厳禁」


 アロロアが口を塞いでキーアの言葉を遮った。


「たしかにそうですね。集中しましょう」


 とくに大事なことではなかったようで、キーアはそのまま周囲の警戒を続ける。

 自然との戦いをしながら。

 すると、重低音が響き始めた。


「……一番会いたくない奴にあったな」

「ですよね、この音はあれ、ですよね」


 俺とキーアが顔を見合わせる。

 そして、そいつは現れた。

 黄色と黒のカラーリングの巨大昆虫。

 子供ほどの巨大蜂。それだけでかいと尻の針もでかい。まるで槍のようで先端には毒が滴っている。

 ロロアフォンⅦが振動する。


『キラー・ホーネット:蜂型の魔物。極めて強力な毒針を尾に持つ。刺されれば助からない。また、鉄をも噛み砕く強靭な顎も注意が必要。しかし、群れで行動するという点こそが最大の脅威。キラー・ホーネットのコロニーに近づくのは自殺に等しい。

 ドロップ品:ハチミツ(並) ローヤルゼリー 毒針』


 相変わらず、便利な端末だ。

 まだ、キラー・ホーネットはこちらに気付いていない。

 俺たちは大樹に隠れた。

 そして、詠唱を行い魔術を放つ。


「【炎弾】」


 炎の弾丸を音速で打ち出す魔術。

 射程が長く、威力と速度があるので非常に便利な魔術だ。

 とくにこういう不意打ちであれば。

 炎の弾丸が一直線に奴へ向かう。

 頭を撃ち抜く。そう確信した瞬間だった、キラー・ホーネットはネズミ型の魔物を木の上に見つけて、その捕食のため急上昇を始める。

 その結果、着弾位置がずれた。

 頭を撃ち抜くはずの弾丸が胴体に命中し、腹に大穴が空く。

 即死……ではない。やつは腹に穴が空いたぐらいなら数十秒は死なない。

 やばいっ。


「ピギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 鼓膜が破れるかと思うほどの絶叫。

 そう、キラー・ホーネットの最大の脅威は、毒針でも顎でもなく、群れであることだ。

 叫びに応えて、四方八方から各地に散っていたキラー・ホーネットが近づいてくる。

 これが嫌で、頭を撃ち抜いて即死させようとしたのに。


「キーア、アロロア、留まれ、ここは迎撃じゃない。守りを固める!」

「はいっ!」

「了解」


 二人が俺の裾を掴んだことを確認して、別の魔術を詠唱する。


「【石要塞】」


 土系魔術、石が生成し周囲を囲う。

 即席の石造りのドームが完成した。

 キラー・ホーネットたちがこちらに襲いかかってきて、石壁に激突して潰れる。


「悪い、ミスった」

「あれは仕方ないです。それで、これからどうするんですか」

「そうだな。ランチタイムにしよう。どうせ、奴らが散るまで出られないし」


 キラー・ホーネットは攻撃力が非常に高い上、群れで四方八方から襲いかかってくる。

 その包囲網を無傷で抜けられる可能性は低い。

 一度、見つかったらその時点でおしまい系の敵なのだ。

 なら、奴らが飽きるまでここで待つしかない。


「うわぁ、この状況で余裕ありますね、さっきからぷすっぷすって石の壁をチーズみたいに蜂さんの針が貫いている上に、この威圧的なぶーんって羽音でノイローゼになりそうなんですが」


 換気と外の様子が見えるように適度にいくつか穴が空いているため、俺達は外の様子が伺える。

 キーアの言う通り、蜂たちはその自慢の毒針を突き刺しまくっていた。


「問題ないな、奴らの針は石でも貫けるが、壁の厚さは二メートル、奴らの針は最大で一メートルで貫通はしない。好きなだけ刺したらいい。やばそうだったら継ぎ足すし。幸い、毒も人体にしか効かないタイプで石を溶かしたりしないしな」


 こうやって石のドームが発泡スチロールのように貫かれるのは想定内。

 奴らの針を防ぐ硬さにしようと思えば鉄の壁が必要だが、さすがにそんなもので四方を覆うだけの魔力はない。石と土では消費魔力の桁が違う。


「了解。でも、狙える敵はここからでも倒す」


 アロロアは背嚢から二つ折りの筒を取り出した。

 懐かしいな、確かロロアの発明で、ライフルというものだ。

 換気用の穴から銃身を出し、発砲。

 キラー・ホーネットの頭が木っ端微塵に吹っ飛んだ。

 俺が知っているときより威力が上がっている。


「ナイスショット」

「感謝。穴の数、位置から制限はあるけど、射線を通った魔物を撃ち抜くことは可能」

「なら、引き続き無理せず適当に殺ってくれ。キーア、俺たちは食事の準備だ。せっかくだし、ランチはイノシシの肉とこいつを使わないか」

「なんで、ハチミツがあるんですか!?」

「とっさに拾った。ハチミツには肉を柔らかくする効果があるらしい」


 一匹目を殺したとき、ハチミツをドロップしたので本来は捕縛用の魔力のロープを生み出す魔術でさっと回収した。

 俺は甘いものが好きだ。そして、こっちに来てからろくに甘いものを食べていない。こんなチャンス逃せるわけがない。


「もう、わかりました。じゃあ、お料理しますね。キラー・ホーネットに囲まれながらランチタイムなんて、ぜったい何かおかしいです」


 そう言いながらも、キーアは手早く鞄から調理器具を取り出し始めた。

 ちゃんと順応している。

 現地調達した肉とハチミツで作る料理、なかなか楽しみだ。

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