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カスタマーレビュー
凧
5つ星のうち1.0
スマホの危険性についての統計的な説得力が弱い
2018年3月28日
形式: 新書
Amazonで購入
スマホと学力の関係に関してはグラフ3-1の結果を見ただけで一目瞭然です
1、スマホを使用しようがしまいが偏差値は1程度の範囲内でしか上下していない
2、スマホを2年に渡り使用し続けた群と2年目から導入した群において最大でも約ー0.2という数値でしか偏差値は下がっていない
この結果を見てあなたはスマホが学力低下の要因として非常に危険だと思いますか?
「スマホをやめるだけで偏差値が10上がります。」(LINE等を全く使用しない群の平均偏差値50.8と4時間以上の使用群の平均偏差値40.6の差)というのがそもそも誇大広告であって、これは本来はスマホ使用群と非使用群の平均偏差値の差で示さねばならないはずです。
よって「スマホをやめるだけで偏差値が1程度上がります。」というのが本当は正しい。
わざわざスマホの危険性を誇張せねばならないのは、著者にとってスマホが親の仇か何かの憎い存在なのか、あるいは世間の注目を集めて本の売り上げも伸ばしたいのか、どんな意図があるにせよ学者としての誠実性という点からはあまり感心できません。
他にも調査結果の統計処理の解釈に関しては納得できないものが多いです。
例えば表4-6(P89)の調査結果において約ー0.2といったレベルの相関係数しか出ていないのに「LINE等の使用時間が学力と影響しているのは間違いない」といった感じで断言されているのは良く理解できない。
相関係数でー0.2というのはほぼ無相関か弱い負の相関があるといったレベルのものでしかなく、散布図を描いてみてもあまり相関性が感じられないはずです。
しかも「勉強時間と学力」,「睡眠時間と学力」のそれぞれの相関係数も示してくれればもっと分かりやすいのに、せっかくの調査データが上手く生かされていない。
これはあくまでも私の推測だが「勉強時間と学力」の方が「LINE等の使用時間と学力」よりも強い相関係数が出て、「LINE等の使用時間が勉強時間や睡眠時間に影響してではなく直接学力に影響している」という結論の欲しい著者にとっては都合の悪いデータ(「勉強時間と学力」の相関係数が高ければスマホがどうこうよりも結局は勉強するかしないかの方が重要となるので)なので意図的に載せなかったのではないかという気がする。
この本全般に言えることだが、初めに結論ありきのポジショントーク的な論の進め方が強すぎて、著者の主張にあまり説得力がないし信用できない。
あとグラフ1-1の結果より、群同士の等質性が保証されていない(元々は同レベルの学力の集団だったという保証がない)にも関わらず、異なる個体群の結果を比較したうえで「スマホの長時間使用が脳に何らかの悪影響を与えて家庭での学習はおろか学校での学習効果すら阻害しているのではないか?」といった内容の仮説(珍説?)を立てられているのは正直苦笑するしかない。
スマホが3時間使用しただけで2時間の学習効果を相殺してしまう程に危険なものであるならば、未成年限定ではなく成人含めて世界中で即使用禁止にせねばならないレベルの危険度の高さですし、この本で取り上げる以前に既に社会問題化しているはずです。
成績の良い学生さんでも休日にスマホを長時間使用して遊んでいる人などざらにいるのであって、それが原因で成績が急降下したという話も聞いたことがない。仮に昼にスマホで6時間遊んでいたら夜に4時間勉強してやっと±0ですか、ありえないですね。
そもそもグラフ3-1の結果において、スマホ使用群の平均偏差値が最大でも約ー0.2などどいう微々たる数値のレベルではなく、大幅に下降していなければならないはずだと思うのですが。
そういった事を考慮すると「元々学力の低い学生にスマホを長時間使用する者が多かった」というオチなだけの様な気がしないではありません。
川島先生も、「スマホが学力を押し下げるのか、学力が低い生徒のスマホ親和性が高いのか」といった事は当然考慮されているのですが、それにもかかわらず(第3章における、有意差があるかすら明示されていない、僅かな数値でのスマホ使用,不使用による偏差値の変動のデータを根拠として)『スマホを3時間使うと2時間の学習が無駄になる』という『ゲーム脳』も真っ青なレベルの珍説を唱えておられるのは本当に理解できません。
第3章のデータ(グラフ3-1,2,3,4,5,6,7)はむしろ「スマホは学力には微々たる影響しかないから普通に使用している限りは大きな害はない」という事を示しているのに、そのデータを基にスマホ使用群が全て偏差値が下がり(最大でも約-0.4)不使用群が全て偏差値が上昇している(最大でも1未満)というだけの事を根拠にして、逆に「スマホは非常に危険であり脳に悪影響さえ与えている可能性すらある」といった無茶苦茶な論理展開がされており、とにかく牽強付会な論の進め方があまりにも酷すぎると思います。
最後に
帯には「・スマホを4時間以上使用すると、2時間分の学習効果が消える」と書いてありますが、著者の主張(P18,11~14 行)をより正確に反映すると「・スマホを3時間以上使用すると、2時間分の学習効果が消える」という事になるので、ここではそれに従って表記しました。PRESIDENT Onlineのサイトでも同様の数値で書いてあります。
恐らくは川島先生自身も本音ではそんな事はありえないと重々承知しながら、スマホの危険性をより誇張して大衆に伝える為にわざとこの様な主張をしている可能性が高いと思われますが、それはそれで権威ある学者という社会的に強い影響力を持った立場の人間でありながらあまりにも無責任だと思います。
万一本気で主張しているとしたら、殆どトンデモ本の世界ですね。
まあ、どっちだったとしても賛同できませんが(笑)
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Smartphone with Extended Constructed To Destroy (Shueisha 新書)
川島 隆太
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