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※この記事では、本来の意味からはズレている気がしますが締まらないのでシンセサイズ・ヒューマナイズと表記してます。シンセ化、人間化くらいの意味で受け取ってください。またREAPERは日本語化したものを使っています。
人力タイムストレッチ
REAPERで音を伸ばし、使いやすいところを切り出して音程を合わせるという作業はピッチ変更を伴う音MADにおいてほぼ避けられません。
音を伸ばす為にPaul's Extreme Sound Stretchというソフトを使ってる方も多いと思います。コーラス素材や世界レベルの喘ぎ声のような素材にはピッタリです。(ar153955)
しかしタイムストレッチをすると音が崩れたり、基本的に無限には伸ばせない(無限に伸ばすこともタイムストレッチって言うのか?)ことも避けられない事実であります。ギィィィンというようなノイズが乗ったり、Paul's~の場合は音がぼやけてしまったり……それが面白さにつながることもありますが。
ならば人力でタイムストレッチをして、なるべくクリアに音を無限に伸ばしてみましょう。
そもそもタイムストレッチって何をしてるんだよ……音の1周期をシームレスにループさせたら音を伸ばせるということはなんとなく分かった。
1.1周期を探す
今回は例としてドラえもんバトルドームでアの音を探してみます。

ここで「出たぁ!」の「ぁ!」の部分を拡大して見てみましょう。

なんだか似たようなパターンの繰り返しであることに気付きます。
先頭1周期を重ねてみると分かりやすいですね。

この1周期をループさせれば無限に音が伸びてシンセサイズできそう。
※注意
シャウトのような複雑な音だとこの1周期を探し出すことが難しい場合があります。

この場合は、諦めたほうがいいんじゃないでしょうか。
ループ再生しながらループ範囲を短くしていって音程の変わらない最短部分を1周期とする、みたいな方法でゴリ押せばなんとかなるかもしれませんが、多分無理。
2.ループ素材にする
まず1周期を探しだしたらその部分を範囲選択してループ再生してみます。(PCの性能によっては処理落ちして音が途切れ途切れになるかも)
http://tmbox.net/pl/715795
聞いてみて、無機質で味気ない音に思う場合は2周期、3周期とループする範囲を増やしてみると、元の素材の雰囲気が残りやすくなる(?)。
範囲が決まったらアイテムを右クリックして[アイテムの選択範囲をループとしてコピー]を選び、適当なトラックにペーストするとその範囲がループ素材として新しいアイテムになります。必要な長さにしましょう。
また前後が繋がるようにループの始端と終端を0(真ん中)にするように心掛けるとプチプチしたノイズが抑えられます。それでも気になる場合はモノラル化して僅かにフェードイン・フェードアウトしたものを書き出して使ってみてはどうでしょうか。
1秒以下の音声のレンダリングについてはちょっと挙動が不安定で自分の環境では範囲を選択してRender boundsを[プロジェクト全体]から[時間選択]に変更すると余白無くレンダリングできるようになりました。
3.調整・確認
ループ範囲を増やした場合は低い周波数成分が生まれて邪魔になることが多いのでEQでの調整が必要になってきます。
またどの母音なのかハッキリしない、ハッキリさせたい場合はforma-8やVocalizerというEQ(多分)で母音を指定して薄めに掛けます。どちらもフリーのVSTプラグインです。
アイテムを選択してF2でアイテム設定が開くのでテイクエフェクトからアイテム単位でVSTを挿せます。
音感があれば必要ではありませんがReatuneやWaveToneで音程を確認しておくと便利です。
こんな手法でいろいろ伸ばしてみたものがこれ
http://tmbox.net/pl/716122
全てループ範囲は1周期です。
「イ」の音に関しては母音が変わっていく部分を抜き出したら丁度「イ」に聞こえるんじゃないかと思って試行錯誤してみましたが、あまり良い結果は得られなかったのでVocalizerを使って「エ」を無理やり「イ」にしました。
割りとクリアに伸ばせたのであとはお好みのピッチシフトエンジンを使えばほとんどシンセサイズ成功と言ってもいいんじゃないでしょうか。
ヒューマナイズ
簡単に言えば「イカニモ電子音」という状況を少しでも改善しようということです。
例えば伸ばした素材で自然に歌わせてみようとしたら、人間の声とシンセの違いは一体どこにあるのか、何が人間の声を生々しくしてるのかということが大事になってくると思います。
人間の声のピッチは一定ではない、声の音量は一定ではない、「ア」から「イ」に切り替わる中間の音は無いのか?、こぶしのきいた声も人間は出せる等々……いくつか思いつきます。
これら一つ一つを解消して少しでも人間っぽくしてみましょう。
1.ピッチは一定ではない
ビブラートを取り入れてみましょう。
おおまかなピッチ変更はREAPERで済ませて(1)、細かいピッチ変更はVocalShifterを使ってみます。フリーのLE版でありながら音MADには十分な機能を持っています。
ループで伸ばしただけだとREAPER付属のピッチシフトエンジンがうまく動いてくれないので、十分な長さを確保して右クリックからアイテムを結合します。
(2)まずはピッチを揃えることから。半音くらいの違いはVocalShifter側で直しちゃいましょう。

次に参考にするべく原曲をWaveToneに入れて解析させてみます。

要はこの音程をVocalShifterで描けばいいわけです。
まず分かる違いとして、ピッチがカクカクしてない!
VocalShifterで範囲選択して右クリックから平滑化を実行するとカクカクしたピッチをなめらかにすることができます。
次にビブラート。手動で描いてもいいんですが、範囲選択して右クリックからビブラート付加を実行するとデフォルトのパラメータでも自動で綺麗なビブラートを作り出すことができます。

ビブラート掛け過ぎたところやカクついたところは平滑化で抑えたり、足りなかったらまた書き足したりして調節する。
(3)こうなった。
オレンジが編集前で黄色が編集後。

原曲に厳密に合わせなくてもそれっぽかったらそれでよし。
2.音量は一定ではない
VocalShifterにはダイナミクス編集モードという音量をいじるツールがあります。これも原曲をWaveToneで見ながらマネていきましょう。

(4)こうなった。

紫が編集前で緑が編集後。
だいたいそれっぽくなったし、ちょっと汚くても多分大丈夫。
3.母音が変わる中間の音を作る
上の方に書いたVocalizerというVSTを使って作ります。
「エ」→「イ」という風に母音が切り替わるなら、「エ」の音を徐々に「イ」に変化させてやればいいわけです。オートメーションを書きましょう。

デフォルトのニュートラルな状態でも若干音質が変わるのでカーソルが[i]に近づくにつれてWetの数字も徐々に増やしていって「イ」の直前で100%になるようにしたら、擬似的に再現できるのでは?
(5)こうなった。

子音を挟まずに母音が移る箇所は気持長めにしたけど、普通に母音のクロスフェードでいいんじゃないかという気もしてきた。
4.こぶしのきいた声を作る
こぶし、シャウト、ダミ声、ガナリ声のようなグロウル効果を与えられるVocaScreamerというVSTを使います。詳細は解説動画があるのでそちらをどうぞ。
これをVocalizerと同じく欲しいところにだけエフェクトが掛るようにオートメーションを書きます。
(6)VocaScreamerの結果
パンチがきいて中々いい感じ。
あとはリバーブなんかを足して原曲に合わせる(7)。
一連の手順(1)~(7)でどう変わったのか実際に聴いてみてください。
人力タイムストレッチ
REAPERで音を伸ばし、使いやすいところを切り出して音程を合わせるという作業はピッチ変更を伴う音MADにおいてほぼ避けられません。
音を伸ばす為にPaul's Extreme Sound Stretchというソフトを使ってる方も多いと思います。コーラス素材や世界レベルの喘ぎ声のような素材にはピッタリです。(ar153955)
しかしタイムストレッチをすると音が崩れたり、基本的に無限には伸ばせない(無限に伸ばすこともタイムストレッチって言うのか?)ことも避けられない事実であります。ギィィィンというようなノイズが乗ったり、Paul's~の場合は音がぼやけてしまったり……それが面白さにつながることもありますが。
ならば人力でタイムストレッチをして、なるべくクリアに音を無限に伸ばしてみましょう。
そもそもタイムストレッチって何をしてるんだよ……音の1周期をシームレスにループさせたら音を伸ばせるということはなんとなく分かった。
1.1周期を探す
今回は例としてドラえもんバトルドームでアの音を探してみます。
ここで「出たぁ!」の「ぁ!」の部分を拡大して見てみましょう。
なんだか似たようなパターンの繰り返しであることに気付きます。
先頭1周期を重ねてみると分かりやすいですね。
この1周期をループさせれば無限に音が伸びてシンセサイズできそう。
※注意
シャウトのような複雑な音だとこの1周期を探し出すことが難しい場合があります。
この場合は、諦めたほうがいいんじゃないでしょうか。
ループ再生しながらループ範囲を短くしていって音程の変わらない最短部分を1周期とする、みたいな方法でゴリ押せばなんとかなるかもしれませんが、多分無理。
2.ループ素材にする
まず1周期を探しだしたらその部分を範囲選択してループ再生してみます。(PCの性能によっては処理落ちして音が途切れ途切れになるかも)
http://tmbox.net/pl/715795
聞いてみて、無機質で味気ない音に思う場合は2周期、3周期とループする範囲を増やしてみると、元の素材の雰囲気が残りやすくなる(?)。
範囲が決まったらアイテムを右クリックして[アイテムの選択範囲をループとしてコピー]を選び、適当なトラックにペーストするとその範囲がループ素材として新しいアイテムになります。必要な長さにしましょう。
また前後が繋がるようにループの始端と終端を0(真ん中)にするように心掛けるとプチプチしたノイズが抑えられます。それでも気になる場合はモノラル化して僅かにフェードイン・フェードアウトしたものを書き出して使ってみてはどうでしょうか。
1秒以下の音声のレンダリングについてはちょっと挙動が不安定で自分の環境では範囲を選択してRender boundsを[プロジェクト全体]から[時間選択]に変更すると余白無くレンダリングできるようになりました。
3.調整・確認
ループ範囲を増やした場合は低い周波数成分が生まれて邪魔になることが多いのでEQでの調整が必要になってきます。
またどの母音なのかハッキリしない、ハッキリさせたい場合はforma-8やVocalizerというEQ(多分)で母音を指定して薄めに掛けます。どちらもフリーのVSTプラグインです。
アイテムを選択してF2でアイテム設定が開くのでテイクエフェクトからアイテム単位でVSTを挿せます。
音感があれば必要ではありませんがReatuneやWaveToneで音程を確認しておくと便利です。
こんな手法でいろいろ伸ばしてみたものがこれ
http://tmbox.net/pl/716122
全てループ範囲は1周期です。
「イ」の音に関しては母音が変わっていく部分を抜き出したら丁度「イ」に聞こえるんじゃないかと思って試行錯誤してみましたが、あまり良い結果は得られなかったのでVocalizerを使って「エ」を無理やり「イ」にしました。
割りとクリアに伸ばせたのであとはお好みのピッチシフトエンジンを使えばほとんどシンセサイズ成功と言ってもいいんじゃないでしょうか。
ヒューマナイズ
簡単に言えば「イカニモ電子音」という状況を少しでも改善しようということです。
例えば伸ばした素材で自然に歌わせてみようとしたら、人間の声とシンセの違いは一体どこにあるのか、何が人間の声を生々しくしてるのかということが大事になってくると思います。
人間の声のピッチは一定ではない、声の音量は一定ではない、「ア」から「イ」に切り替わる中間の音は無いのか?、こぶしのきいた声も人間は出せる等々……いくつか思いつきます。
これら一つ一つを解消して少しでも人間っぽくしてみましょう。
1.ピッチは一定ではない
ビブラートを取り入れてみましょう。
おおまかなピッチ変更はREAPERで済ませて(1)、細かいピッチ変更はVocalShifterを使ってみます。フリーのLE版でありながら音MADには十分な機能を持っています。
ループで伸ばしただけだとREAPER付属のピッチシフトエンジンがうまく動いてくれないので、十分な長さを確保して右クリックからアイテムを結合します。
(2)まずはピッチを揃えることから。半音くらいの違いはVocalShifter側で直しちゃいましょう。
次に参考にするべく原曲をWaveToneに入れて解析させてみます。
要はこの音程をVocalShifterで描けばいいわけです。
まず分かる違いとして、ピッチがカクカクしてない!
VocalShifterで範囲選択して右クリックから平滑化を実行するとカクカクしたピッチをなめらかにすることができます。
次にビブラート。手動で描いてもいいんですが、範囲選択して右クリックからビブラート付加を実行するとデフォルトのパラメータでも自動で綺麗なビブラートを作り出すことができます。
ビブラート掛け過ぎたところやカクついたところは平滑化で抑えたり、足りなかったらまた書き足したりして調節する。
(3)こうなった。
オレンジが編集前で黄色が編集後。
原曲に厳密に合わせなくてもそれっぽかったらそれでよし。
2.音量は一定ではない
VocalShifterにはダイナミクス編集モードという音量をいじるツールがあります。これも原曲をWaveToneで見ながらマネていきましょう。
(4)こうなった。
紫が編集前で緑が編集後。
だいたいそれっぽくなったし、ちょっと汚くても多分大丈夫。
3.母音が変わる中間の音を作る
上の方に書いたVocalizerというVSTを使って作ります。
「エ」→「イ」という風に母音が切り替わるなら、「エ」の音を徐々に「イ」に変化させてやればいいわけです。オートメーションを書きましょう。
デフォルトのニュートラルな状態でも若干音質が変わるのでカーソルが[i]に近づくにつれてWetの数字も徐々に増やしていって「イ」の直前で100%になるようにしたら、擬似的に再現できるのでは?
(5)こうなった。
子音を挟まずに母音が移る箇所は気持長めにしたけど、普通に母音のクロスフェードでいいんじゃないかという気もしてきた。
4.こぶしのきいた声を作る
こぶし、シャウト、ダミ声、ガナリ声のようなグロウル効果を与えられるVocaScreamerというVSTを使います。詳細は解説動画があるのでそちらをどうぞ。
これをVocalizerと同じく欲しいところにだけエフェクトが掛るようにオートメーションを書きます。
(6)VocaScreamerの結果
パンチがきいて中々いい感じ。
あとはリバーブなんかを足して原曲に合わせる(7)。
一連の手順(1)~(7)でどう変わったのか実際に聴いてみてください。
(1)REAPERで大まかにピッチをいじったもの
(2)VocalShifterでピッチを揃えたもの
(3)ビブラートなどを足したもの
(4)音量の強弱を足したもの
(5)母音の変化をつけたもの
(6)グロウル効果を足したもの
(7)リバーブを掛けて原曲と混ぜたもの
http://tmbox.net/pl/716233
(1)に比べたら大分マシになったんじゃないでしょうか。自然かと聞かれると未だ不自然の範疇にあるとは思います。自然さへの道は険しかった。
いつもの音程合わせに一工夫加えるヒューマナイズ、余裕があれば、是非。
今回の記事も音MAD Advent Calendar 2014という企画に参加しています。
前回が音MAD成分少なめだったので、今回は濃くしてみました。
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次の記事これより新しい記事はありません。
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