映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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外景 滑走路 夜

字幕
作戦開始まで28分

ターボジェット・エンジンの吸気口のクローズアップ

黒く口を開けている。タービンが回り始める。甲高い音が大きくなり、一定の轟音へと変わっていく。

燃料ホースの接続部分のクローズ・アップ

地上整備員たちが、黒い流線型の機体から燃料ホースを取り外す。

画面引いて、ペレグリン機をとらえたアングル

噴射口の中で青い炎が吠えている。空気が激しく振動する。

画面引いて 一台のバンを追っていく

バンは黒いジェット機の横を通り、翼をすぎ、後部ドアの方へ向かう。

バンに寄って

バンが停車して画面はバンのサイドドアで一杯になる。ライファーが画面に入ってきて、ドアのハンドルに手を伸ばす。


内景 バン

ドアが開いていくにつれ、真っ暗な車内に光が入ってくる。
ランボーが彫像のように座っている。手を膝に置き、黒い目隠しをして。夜目が効くように眼を暗さに慣らしているのだ。彼は作戦に備えた服装になっている。タイガーストライプ柄の迷彩服。降下用のバックパック。パラシュートを収めたバックパック。両手と顔は迷彩用のペイントでまだらに塗られている。彼は残忍に見える。まるで悪魔のように。

ライファーが彼を車から降ろす。


外景 滑走路

ランボーを前方からとらえたドリー・ショット。
彼はまるで処刑されるかのように連れて行かれる。彼が飛行機に近づくと、点滅する青と赤の駐機灯が彼の顔を照らす。


内景 ペレグリン機

ランボーはブリューワーの隣の席に案内される。トラウトマンがライファーを手伝い、ランボーの安全ベルトを締める。機内通信機のプラグを挿す。

ブリューワーは用心深くランボーを見ている。
彼は他の席に移りたいが、他の座席は全て撤去されてしまっている。

ドイル(声のみ)
(フィルターのかかった声)
中尉、発進準備完了だ。

ランボーはヘッドセットを調節する。

ランボー
やろう。

トラウトマン
ランボー、命令どおり任務を果たすんだぞ。でないとおまえの生皮を物置に釘付けにしてやるからな。

ランボー
任せて下さい。

トラウトマンは機を降り、乗降ステップが機体に収納される。


内景 操縦席

ドイルは完全にパイロットの顔になっている。

ドイル
「ゼン・ローラーコースター」(コードネーム)離陸許可を求める。

(フィルターのかかった声)
「ゼン・ローラーコースター」へ、離陸を許可する。


外景 ペレグリン機

車輪止めが引き抜かれる。
ジェット機が前へ動き出す。

外景 滑走路

ジェット機はスピードを上げながら滑走路を走る。
機首が持ち上がる。
機は滑走路の端で離陸し、木々の2、3フィート上を越えて行く。


内景 旅客区画

ドアの上にある赤いライトのほか、旅客区画の中に照明はない。
ブリューワーは開いている入口から、眼下の森をじっと見ている。
ドアそのものは取り外されている。
ジェット気流の轟音は恐ろしいほどだ。


外景 ペレグリン機

月明かりに照らされる森の上に、流線型の影が一つ。ジェット機は木々をかすめて猛スピードで飛行していく。

ジェット機は地形に合わせて高度を上げ下げし、カメラは機体と一緒に動いていく。眼下の熱帯雨林は霞み、猛スピードで過ぎ去っていく。非常に難しい飛行だ。


内景 操縦室

ドイルは前のめりになり、風防ガラスに鼻をくっつけんばかりだ。
目を見開いている。
彼はジャングルに対して集中しきっているのだ。
操縦室内はすべての明かりが消されている。

ファルマンはテープを貼って光度を落としたペンライトを使って計器を読んでいる。
ドイルは計器など見ていない。

ファルマン
通信をバースト・モード(短時間データ発信モード)に切り替える。


内景 移動指揮センター

カークヒルとトラウトマンが、主コンソールの前で背中を丸めている。

技術者
早期警戒機2-5がレーダーで補足しました。彼らは予定通り進行中です。

トラウトマンは、コンピューター表示の中部ラオスの地図上を、降下用ジェットを示す光点がほとんど気がつかないほどゆっくり横断しているのを見つめる。


外景 ペレグリン機

流線型のジェット機は、前方にそびえる安南山脈に向かって猛スピードで飛んで行く。


内景 操縦室

ファルマンがにやにや笑っている。危険な状況なのだ。

ドイル
(マイクに)
ここからが際どいところだぞ。


内景 旅客区画

落ち着いて座っているランボーが、目隠しを取る。飛行機が上下に激しく揺れはじめる。

ブリューワーは「反乱の雄叫び」を上げる。

ブリューワー
フゥーヤァ!気に入ったぜ!


外景 ペレグリン機

ジェット機は曲がりくねった峡谷をナイフのように切り裂いていく。カメラはそれを追って移動する。機は山肌の間を這うように進んでいく。


内景 旅客区画

ランボーは自分の荷物とハーネスを念入りに確認している。機外の恐ろしい状況に気づいていないかのようだ。

ドイル(声のみ)
(フィルターのかかった声)
いまヴェトナム領空に入った。紳士諸君、ラオスの突出部まで8キロだ。

ランボー
(ヘッドセットでブリューワーに)
俺から離れるなよ、ブリューワー。おまえを探すことになりたくないからな。

ブリューワー
了解。


内景 移動指揮センター

技術者が2つ目のコンソールから振り返る。

技術者
サビック湾にいる早期警戒機9-1が、彼らは突出部に接近中だと報告してきました。順調です。


外景 ペレグリン機

字幕
作戦開始まで2分間

山々は後方へ過ぎ去り、小さなジェット機は山の麓の丘を飛び過ぎて、低空で地形にぴったり沿って飛行していく。


内景 旅客区画

ランボーは降下用のゴーグルをつける。

ドイル(声のみ)
(フィルターのかかった声)
急上昇に備えろ。


外景 小径 ヴェトナム

天秤棒で重いバケツ二つを肩に担いだヴェトナム人の農夫が、とぼとぼと道を歩いてくる。彼方の甲高い音が、近づいてくる轟音に変わる。
黒いジェット機は高度30フィートですぐ先の丘を越え、稲妻のように飛び去っていく。

農夫はジェット機の噴射を受けて転んでしまう。
彼は上を見上げる。
ジェット機はタマが破れそうな垂直上昇に移っていて、すぐに星々の中へ消えてしまう。

農夫
(字幕付きのヴェトナム語で)
ばかやろうめ!


内景 旅客区画

ドイルの声は、激しいGがかかっているにも関わらず淡々としている。

ドイル
まもなく高度1万。突出部まで11秒だ。10秒、9秒…230まで減速…

待機ランプが赤から黄色へ変わる。ランボーは安全ベルトを外す。立ち上がる。
ブリューワーも後に続く。
ライファーがドアのところで2人を支える。

ドイル
(続けて)
…3秒。2秒。1秒。よい一日を。

待機ランプが緑色に変わる。

ライファー
行け!

ランボーは反対側の壁から力強く一歩走って、ドアから飛び出す。見えなくなる。
ブリューワーもすぐ後に続く。


外景 ペレグリン機

2人の漂う人影の上空、ジェット機はすぐに小さくなり見えなくなってしまう。

ランボーは降下姿勢を安定させている。
彼はバックパックに付いているストロボライトのスイッチを入れる。

ランボー
(マイクに向かって叫ぶ)
ブリューワー。聞こえるか?

ブリューワー(声のみ)
(かすかに)
聞こえるぞ。

ランボー
俺のストロボを目印に接近しろ。

ブリューワーをとらえたアングル

慣れた様子で降下していく。彼は下方にランボーのストロボライトの光を見つけ、その方向へと戦闘機のように急降下する。

彼はチーム・リーダーの横に並び、2人は一緒に降下していく。ランボーがストロボ・ライトを切る。

下方を見下ろすアングル。濃い雲の層がせり上がってくる。2人が雲を突き抜けると、その下の風景はすばらしい眺めだ。暗い熱帯雨林の広がりと、銀色のプラチナのリボンのように細く曲がりくねった川。

ランボーは遠くの川の湾曲部を見て、足を開いて急降下していく。ブリューワーは後を追う。
2人はぐんぐんせり上がってくる地面を時速135マイルのスピードで横切っていく。

インサート・カット ランボーのLED高度計

数字がちかちか変わっていく。1200フィート。1000フィート。800フィート。

ランボーが合図する。
くぐもった音がして、2人のパラシュートがほぼ同時に開く。

ランボーの視点

ぶらぶら揺れる足の向こうを見下ろしている。月明かりに照らされるジャングルがせり上がってくる…上がってくる…

1本のマホガニーの木が大きな手のようにせり上がってくる。暗い口がカメラを暗闇へ飲み込む。


外景 熱帯雨林

大木の葉を通して月明かりが差し込み、渦を巻く夜霧の中に何本もの光の柱となって見えている。

ここは世界最古の原生林の一つで、猛々しく茂る植物と死に満ちた影の世界だ。

巨大な木の根が大地をつかみ、その幹には蔓草が巻きついて、ねじれながらドーム型の樹冠部へ伸びている。一定の調子で水滴が落ちる音がする。

そしてここには生命が満ちあふれている。ひそかに。永遠に。生命は水たまりをわき返らせ、樹皮の下に隠れ、しずくを垂らす果実に潜り…頭上でもつれ合う樹冠の中を飛び回っている。

朽木の向こうから人影がひとつ立ち上がる。まるで宇宙から来た生命体のようだ。ランボーはゴーグルとヘッドセットを取り、肩をすくめてパラシュートのハーネスを下ろす。

彼は周囲をゆっくり見回し、状況を理解する。

ランボー
(自分自身に)
おまえ、こんなところに戻って何をやってるんだ?

ヘッドセットからブリューワーの声がか細く聞こえる。彼はヘッドセットを耳に当てる。

ランボー
大丈夫か?

ブリューワー(声のみ)
静かにしててくれ。ちょっと問題が起きた。

カット替わって


外景 熱帯雨林 納屋の庭

ブリューワーはみすぼらしい豚と顔を突き合わせている。豚はこの邪魔者に向かって不平の鳴き声を上げている。
彼は数匹の豚と鶏がいる柵に囲まれた庭で、膝の上まで泥にはまって動けなくなっているのだ。

この庭は大きな茅葺きの小屋に隣接していて、坂を下ったずっと先の森の中には、他に4軒か5軒の家が固まっているのが見える。

ブリューワーは指を1本口に当てて、豚を静かさせようとする。暗い森の中の光の島のような、いちばん近い家の戸口に、パジャマのような農民服を着たヴェトナム人の男がやってくる。ブリューワーは黒い泥に仰向けに横たわって身を伏せる。

男は煙草を吸いながら周囲を見回す。おそらく、少し前に聞こえた、物がぶつかるかすかな音がどこからしたのかを探しているのだ。

小径よりも少し細い、住居と住居を結んでいる泥道を通って一人の老女が近づいてくる。彼女は裸足で、大きな薪の束積んだ錆だらけの自転車を押している。

ブリューワーは音を立てないようにしながら、泥から抜け出そうと身をよじる。豚は馬鹿にしたように彼の周りを歩きまわっている。

男は煙草を投げ捨てる。彼は老女が言った何事かに騒々しく笑い、彼女が薪を家の中に運びこむのを急いで手伝う。

ブリューワーは上を見上げる。頭上の枝で、彼のパラシュートが静かにはためいている。

老女は戸口で立ち止まり、ビンロウの実を噛んだ唾を庭に吐いて、家の中へ入る。
ドアがバタンと閉じられる。

ブリューワーのクローズ・アップ

安堵の溜息を漏らす。

突然、黒っぽい物が画面に飛び込んできて彼を捕まえる。ブリューワーの首がさっと回る。画面に飛び込んできたのは、緑色に塗られたランボーの手だ。

ずぼっ、という音を立てて、ランボーがブリューワーを泥から引っぱり出す。

チーム・リーダーが睨みつける。

ランボー
(冷たくささやく)
一つめだな。

ブリューワーはしばらく身動きせず、その暗黙の警告を噛みしめる。そしてパラシュートを外すためにハーネスのバックルに手を伸ばす。


カット替わって

 

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