映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

「ランボー2」(キャメロン版)

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というわけで、ジェームズ・キャメロン単独名の「ランボー/怒りの脱出」脚本を訳し終わりました。

序盤で、何が欲しかったんだ?の問いに「よくやったよ」と言われたかった、というランボー。そのランボーが死闘を切り抜けた末に、救出した捕虜の「よくやったよ」という言葉を聞いて微笑んで見せるラスト。
私はこういう救いのある終わり方に弱いです。

この準備稿を元に修正が行われ、完成した映画の内容となったわけですが、この修正内容はやはり脚本に参加したスタローンの意向が大きかったんだろうなあと感じます。
ストーリーの大筋は変わらないものの、相棒のブリューワーをカットし、ユーモラスな部分を廃し、スーパー弓矢を持ち込み…結果として、時としてパロディの対象にさえなるような無敵すぎるスーパーヒーロー・ランボーの映画になったわけですが、「オレ様がカッコよく目立つことが最重要なんだよ」という感じが逆に潔いというか、スターというものはそのぐらいじゃないと務まらないんだろうなあと思います。

次のネタですが、ここのところ実際に製作された映画の準備稿が続きましたんで、製作されずに終わってしまったある怪獣映画のボツ脚本を訳するつもりでおります。

 

 
内景 ソビエトのヘリ 操縦席と兵器庫

パイロットがポドフスクに振り返る。

パイロット
(字幕付きのロシア語で)
彼らは国境に近づきつつあります。ラオス空軍に通報するべきでは?

ポドフスク
(頭に血が登っている)
だめだ。我々の手で仕留めるんだ。

コンピューター管理の兵器庫の中では、射撃手が追跡スクリーンをのぞき込んでいる。ランボーのヒューイは照準リングの向こうでちかちか光る点だ。

距離レーダーからは一定の調子で発信音がしている。その間隔が短くなっていく。


外景 ソビエトのヘリコプター

短翼の兵装パイロンから2発の空対空ロケットが発射され、2百メートル先のヒューイに向かって飛んでいく。

ヒューイをとらえたアングルで

ロケットはきわどい所で外れてヒューイを通り過ぎ、ジャングルの中で爆発する。

ランボーの肩ごしに

カメラはフロントガラスの向こうをとらえる。ヒューイはロケットが爆発した火の玉の中を通過する。

ランボーは必要なものを見つける。カ川の支流である細い川が、熱帯雨林を縫うようにして流れている。

ソビエトの大型ヘリが接近してくる。ランボーは木々の間をすり抜けてヘリを急降下させ、川面すれすれに低空飛行させる。
ソビエトのヘリは追尾することができない。

何本もの大木が左右から伸びて、川の上に張り出した壁を作っている。ランボーはそのジャングルの屋根の下をジグザグに飛行していく。濃い影の中からヘリの姿がちらりちらりと見え隠れしている。

ヒューイが旋回し、着陸スキッドが水面に触れて泥水のしぶきを上げる。また2発のロケット弾がヒューイめがけて飛んでくる。1発は頭上の木に当たって爆発する。もう1発はヘリを追い越していく。前方の川で爆発する。ヘリは水しぶきを突っ切って飛んでいく。

ブリューワーが「反逆の叫び声」を上げる。

ブリューワー
すげえや。こりゃまるで「スター・ウォーズ」みたいだぜ!

デ・フラビオ
(わけがわからずに)
スター・ウォーズって?

ブリューワーはその言葉の意味を理解して、にやっと笑う。デ・フラビオの肩を叩く。

ブリューワー
あんたもきっと気に入るよ。

ランボー
(叫ぶ)
ミニガンの残弾はどのくらいだ?

ブリューワーは大きな弾薬キャニスターを開ける。

ブリューワー
かなり少ない。いいところ、あと2秒分だ。

ランボーは異常な、予知能力のような状態に入り込んでいる。彼は曲がる前に曲がることを知っている。彼は恐るべき集中力でヘリを飛ばしている。


内景 ソビエトのヘリの操縦席

パイロットはランボーのヘリを追尾しようと大汗をかいている。

パイロット
少佐、我々はもうラオスに入っています。

ポドフスク
そんなことはわかってる!
(射撃手に)
ロケット弾を撃ちつくせ。あいつを撃墜するんだ!


内景/外景 ヒューイ

ヘリの周囲で森が爆発していく。ヘリも損害を受ける。操縦席の風防ガラスは破片で粉々になる。ランボーも肩と胸に破片を喰らう。
左腕は肘の上で折れている。
捕虜の一人は血まみれの額を手で押さえて呻いている。

ランボーは腕を貫く痛みを無視してコレクティブ・レバーを引く。ヒューイはジャングルから出て、くるくる回りながら上昇する。
ヘリは空中で横滑りし、操縦不能になっているように見える。
そしてまた旋回し、まっすぐカメラに向かって飛んでくる。


内景 ソビエトのヘリの操縦席

ポドフスクはランボーが旋回するのを見て、彼が戦う気でいることを悟る。

ポドフスク
(字幕付きのロシア語で)
奴も終わりだ。

パイロットは不安そうに見つめている。ヒューイが彼らに向かってくる。

兵器庫では距離レーダーが甲高い音を立てている。射撃手は発射に備えて身構える。


外景 ヒューイ

ランボーは一挙動でヘリを横滑りさせて上昇する…ミニガンを敵に向けようとして。

彼はサムライで、ヘリはその刀だ。

ランボーのアップで

彼は澄んだ目で、いわゆる「無心」でソビエトの巨獣に対している。
戦いは一撃で決まるだろう。彼は待つ。自分の呼吸を感じる。ヘリコプターが自分の身体の延長であるかのように感じる。

アングル変わって

ミニガンが炎を吐き出す。

ランボー

じっと見つめている。彼の上に影が差す。

画面引いて

ソビエトのヘリが轟音を上げてヒューイの頭上を飛び去って行く。

アングル変わって

ミニガンの銃身は回転を続けているが…回転しているだけで…もう弾薬は切れている。空転するラチェットのようにカチカチ音を立てている。

ソビエトのヘリコプター

穴だらけになり、ガラスが吹き飛んだ操縦席と…くずおれた死体が見える。

画面引いて

ミルMI-24はゆっくりと横滑りして堕ちていく。優美に、熱帯雨林の中へ。

ヘリは木々をなぎ倒し、ばらばらになり、めちゃめちゃに壊れ、壮麗に爆発する。


内景 ヒューイ

ランボーは千ボルトもの電流を流されているかのように身体を強張らせている。ゆっくりと彼の身体から力が抜けていく。彼は自分たちが生き延びた、とわかったのだ。

ブリューワー
(大喜びで)
勝利の興奮よ、敗北の苦悩よ!

ランボーはヒューイを旋回させ、スピードを上げる。あの山々へ、そしてその向こう、タイへ。

カット替わって


外景 待機エリア タイ 昼間

「ブラックホーク」ヘリコプターが発進準備を終え、タービンの暖機運転をしている。ライファーが機体側面のドアのところでくつろいでいる。

トラウトマン(声のみ)
どこかへ出かける準備ができたのか?

ライファーは振り向いて、ヘリの機体を回ってトラウトマンが歩いて来るのを見る。

ライファー
おい大佐。あんたはもうこの基地にいる許可がないはずだぞ。

トラウトマンのアップ

トラウトマン
(静かに)
わかっているよ。

カット替わって


外景 ラオス メコン川の近く 夕暮れ

字幕
作戦開始から60時間

ぼろぼろになったヒューイは操縦するのもやっとの様子で、よたよたと低空を飛んでいる。


内景/外景 ヒューイ

ランボーは青ざめた顔で座席にぐったり座り込み、気力だけでヘリを飛ばしている。

捕虜の何人かは眠っている。額に傷を負った男には包帯が巻かれている。
ブリューワーが喋りつづけている。

ブリューワー
…それで、黒いヘルメットに長いマントの男がいてさ、わかるだろ、そいつは剣を持ってる…ただそれは剣じゃないんだよ。刃が光になってて…

デ・フラビオ
メコン川だ。

彼らは前方を見る。尾根の向こう、1キロもないあたりに広々とした川が現れる。タイとの国境だ。歓声が起きる。家に帰れるのだ。

ランボーをとらえて

メコン川に近づきながら、彼は何かに気づく。


外景 メコン川 ジャングル

真正面の木々の上に、黒いシコルスキーがゆっくりと現れる。


内景 ヒューイ

ランボーのクローズ・アップ。ちらつく視界をはっきりさせようと瞬きをする。
浮かんでいる黒いシコルスキーは、死をもたらす大天使のようだ。
それは幻のように見える。彼はシコルスキーに向かって真っすぐに飛んでいく。


内景 移動指揮センター

カークヒルは指揮センターから人払いをしている。中にいるのは彼一人きりだ。

カークヒル
(マイクに)
その所属不明のヘリコプターが川を渡ってタイ国境を越えたら、空対空ロケットで撃墜しろ。それから墜落現場に進んで、残骸に残りのミサイルを撃ち込め。了解したか、ゼン・ハマー?

ドイル(声のみ)
(フィルターのかかった声)
ええと、それが…ちょっと耳が聞こえないもんで。

カークヒル
何を言ってる?どうしてだ?

ドイル(声のみ)
(フィルターのかかった声)
ええと、その…俺の耳に何か入っていましてね。


内景/外景 シコルスキー

ドイルの耳に入っているのは、トラウトマン大佐が持っているM-16の銃口だ。

彼らの背後、貨物室の床ではライファーが気を失っている。
積み上げた弾薬ケースにかけられていた防水シートがめくれ上がっている。トラウトマンはその下に隠れていたのだ。ドイルはトラウトマンに逆らわない方がいいと承知している。

カークヒルが支離滅裂なことを叫んでいるのが聞こえる。トラウトマンは無線のスイッチを切る。


内景/外景 ヒューイ

ランボーは黒いシコルスキーに接近し、ドイルの頭にライフルを向けているトラウトマンを見る。
彼はうなずいて離れる。


内景/外景 シコルスキー

ランボーのヒューイがシコルスキーから離れ、タイの国境を越える。

トラウトマン
彼らを護衛するんだ。


外景 移動指揮センター

シコルスキーに付き添われたランボーのヒューイが、着陸場に向かって降下してくる。技術者やほかの要員たちが立ったまま見つめている。カークヒルは大型の双眼鏡を眼に当てる。

カークヒルの視点から 望遠映像

望遠レンズを通して見るヒューイは幻のように揺れている。夕暮れの空をやって来るヒューイは死の船のように、悪魔が舵輪を握り、死者たちが船員を務める幽霊船のように見える。

カークヒルはゆっくりと双眼鏡を下ろす。
灰色の顔をして、カークヒルは司令センターに戻るとドアを閉める。

ヒューイは着陸場の上空で横滑りし、着陸スキッドが移動指揮センターの屋根にある通信アンテナをむしり取る。
ヒューイが接地する。バウンドする。
ぐるぐる回転して激しく地面を擦る。

そして、停止する。
その向こうにシコルスキーが着陸する。

2機のヘリコプターのエンジン音が静まっていく。トラウトマンはシコルスキーの操縦席のそばに立って、ラウドスピーカーを手に取る。

トラウトマン
基地の全員に告げる。医療設備の準備をして、アメリカ人捕虜たちを迎えるんだ。

地上要員たちから歓声が上がる。彼らが集まって来る。

ランボーをとらえて

彼が辛そうに操縦席から出てくる。ブリューワーは、ランボーが座っていた座席のくぼみに血溜まりができているのを見て唖然とする。

ランボーは貨物室のドアの方へ行く。デ・フラビオのAK-47を手に取る。

ランボーをとらえたドリー・ショット。彼は脚を引きずりながら、容赦ない決意を抱いて移動指揮センターへ向かう。歓迎しようと近づいてきた地上要員たちは後ずさり、彼を通らせる。

その背景で、トラウトマンがランボーの様子を見て止めようと大股で歩いて来る。

ランボーの肩ごしに

ドリー・ショットで、ランボーが移動指揮センターに近づいていく。黒いサングラスをかけたカークヒルの副官がランボーを止めようと近づいてくる。

ランボーはAKで彼に「どけ」と身振りする。
ドアのところへ行く。鍵がかかっている。


内景 移動指揮センター

ランボーがAKで長い銃撃を加え、ドアの錠が粉砕される。
ドアが蹴り開けられる。ランボーがシルエットになって立っている。

彼はまるで、あの「猿の手」の話の結末でドアの外にいたもののようだ。彼は機械が低く音を立てている司令センターに入っていく。ロケットの発射管制室のように機械が並ぶ中を、ジャングルと、血と、死の臭いをさせながら。

低いアングルから

ランボーはカークヒルに迫るように歩いて行く。立ち止まる。

カークヒルは縮み上がる。ランボーは彼の襟首をつかんで、後ろ向きに椅子へ放り出す。
彼はAKを構える。銃口をカークヒルの額に向ける。

ランボー
作戦、完了だ。

引鉄を引く。
銃はガチンと音を立てる。弾が切れている。

カークヒルをとらえて

彼は恐怖に震えている。


外景 移動指揮センター

沈んで行く夕陽の中へ、ランボーがよろめきながら歩み出てくる。
彼は深く、ゆっくりと息を吐く。歩き始める。彼はトラウトマンとすれ違いながら敬礼をするが、一言も話さない。

背景では、捕虜たちが担架や車椅子に乗せられて医療トレーラーに運ばれて行く。ランボーは、ブリューワーがジェンセンと別の捕虜と肩を組んで、冒頭に出てきた兵士の前でポーズをとっているのをじっと見つめる。兵士のポケットカメラがカチャリと音を立てる。

ブリューワー
(開けっぴろげに)
タイム・マガジンの表紙だぜ、ベイビー!

ランボーは歩いて行く…1人で。

デ・フラビオ(声のみ)
おおい、ランボー!

ランボーは振り返る。担架の上で肘をついて上体を起こしたデ・フラビオが、大きな感謝の笑みを浮かべている。

デ・フラビオ
戦友、あんたはよくやったよ。本当によくやったよ!

少しの間、ランボーは立ったままで眼をぱちくりさせる。彼は片手を上げて親指を立てて見せ、そして自分自身に、微笑むことを許す。

画面、暗転。

エンドクレジットが流れる。

 
 
内景 移動司令センター

カークヒルは何日も眠っていないような様子で、千杯目とも思える自動販売機のコーヒーをかき混ぜている。

カークヒル
それで、奴らは彼を仕留めたのか?

技術者は通話記録を読み返す。

技術者
ええと…まだです。彼は攻撃ヘリの1機を撃墜したようです…。

カークヒル
たまげたな。大したものだ。

技術者
…それから、ええと…もう1機のヘリを奪ったと。

カークヒル
(感情を爆発させて)
なんだと?

技術者
彼は…ヘリを奪ったんです。

カークヒルはゆっくりと椅子に沈み込む。


外景 捕虜収容所 ヴェトナム 午後

タイ軍曹が、まるで魂が抜けたように警備兵の小屋の階段に座っている。
ヘリコプターのローター音がだんだん大きくなってくる。

彼の上に影が差す。彼は眼を細めて上を見る。

太陽を背に…最初は影だけが、そして輪郭が見えてくる。
タイは不安になる。
そして…


外景 ランボーのヒューイ

ランボーがミニガンを発射する。左側の警備塔が飛び散る破片の雲となって消滅する。谷じゅうにミニガンの轟音が響き渡る。
ヒューイがすばやく向きを変える。もう一度ミニガンが咆哮する。オレンジ色の稲妻が右側の監視塔を蒸発させる。

キャンプを様々なアングルからとらえて

ミニガンの轟音が消えていく。

タイは走り出す。
囚人たちは物陰に飛び込んで隠れる。

警備兵小屋にいた非番の警備兵が3人、ライフルを取りに行く。
彼らは間に合わない。

ランボーの視点から

ミニガンが警備兵小屋を掃射していき、小屋は分解していくように見える…破壊の衝撃波だけを残して。後には火のついた破片が宙を舞っているだけだ。

彼は最後にもう一度ヘリの向きを変え、1秒間の連射でゲートの歩哨小屋を破壊する。警備兵が3人、ゲートのそばに止まったトラックの背後に逃げ込む。彼らは撃ち始める。

ヒューイをローアングルでとらえて

金臭い靄の中で轟音を上げる影だ。ミニガンが口を開く。

トラックは破片を飛び散らせながら、アルミホイルでできているかのように引き裂かれる。
警備兵たちは消滅する。

赤い血のしぶきとズタズタになった制服の残骸が地面に落ちる。

すべては数秒の間に終わる。

ヒューイは収容所の中央に着陸する。タイはローターの起こす風に耐えて目を細めてうずくまっている。眼を血走らせたビン大尉が崩れかけた建屋から出て来て、携行しているピストルを構える。

タイが怯えた叫び声を上げてそのピストルをひったくる。彼の怯えた表情はこう言っている。
「あんた頭がどうかしてるのか?」

軍曹はピストルを投げ捨て、ヒューイに振り返る。

湧き立ち吹きつける埃と煙の中から、人影がひとつ出てくる。

タイにとって、ランボーは人の形をした死神だ。

ランボーは乾いた泥と乾いた血にまみれ、流れる汗が身体に縞模様を描いている。彼の両眼は燃えるようだ。

ランボーはスリングで吊られたドア・ガンのM-60を取り外し、弾薬ベルトを肩に回して、ライフルのように構える。

彼は銃口を動かして指図する。タイとビンはうつ伏せに横になって、両手を頭の後ろで組む。

ランボーは収容所の残骸に用心深く目をやりながら、2人の横を通り過ぎる。


内景 隔離房

真っ暗だ。
ドアが蹴り開けられ、シルエットになったランボーがそこにいる。

ブリューワーはひどい有様だが、まだ生きている。彼は眼をしばたきながら頭を上げる。

ブリューワー
うへっ、あんたひどいざまだな。

ランボー
一緒に来るか?

ブリューワー
(立ち上がろうとして)
そのピチピチのズボンはあんたが履いとけよ。さあ、手を貸してくれ。

ランボーは痛みでほとんど片脚が使えないブリューワーに手を貸して立たせ、彼を助けながら隔離房を出る。


外景 収容所の中庭

7人の捕虜たちが助け合いながらヘリコプターに乗り込んでいる。ランボーとブリューワーが足を引きずってやって来る。

ランボー
ドア・ガンを任せてもいいか?

ブリューワー
軽いもんさ。

タイとビンはうつ伏せに横たわり、デ・フラビオが残骸から見つけたAK-47を向けて2人を見張っている。

バラックが燃え始め、回転するローターの風で煙が渦を巻く。

デ・フラビオ
俺は夢でも見てるのかな?これは現実じゃない、そうだろ?
(ビンたちに)
おまえらをぶっ殺すべきなんだろうが、付き合いが長すぎてやりにくいな。

ランボー
デ・フラビオ、行くぞ。急げ!

デ・フラビオが他の捕虜たちとすし詰めになって主貨物室に乗り込み、ランボーはM-60を元のドア・ガンのマウントに戻すと、操縦席に飛び乗る。

ランボーはエンジンの回転数を上げる。
タービンの甲高い音が大きくなっていく。

ブリューワーがランボーの背後に屈み込んで、前方に向かって声をかける。

ブリューワー
敵さんが来た。離陸した方がいいぞ、相棒。

彼らの背後で、太陽の中から姿を現したのはポドフスクが乗る巨大な攻撃用ヘリコプターだ。

ランボーはヒューイをさっと離陸させ、森との境界線めざして飛ばしていく。

ミルMI-24の機首の機関銃が撃ち始め、ヒューイの背後の地面がヒューイを追って土を噴き上げていく。ヒューイは上昇する。

出力をいっぱいに上げて上昇し、ヒューイはなんとか木々を飛び越える。ランボーはすぐに急旋回して、攻撃ヘリの機銃の射界から逃れようとする。

ソビエト製のヘリは急旋回するが、回転の半径が大きい。ランボーはらせんを描いてヘリを後退させる。
ブリューワーはドア・ガンを向けて長い連射を加える。眼下で地面はめまいがするほど回転し、地平線が傾く。

ランボー
(叫ぶ)
ブリューワー!あいつが何を積んでいるかわかるか?

ブリューワー
あれはソビエト軍のミルMI-24だ。たぶん機首の12.7ミリ機関銃と、熱追尾ロケット、有線誘導ミサイル、それから…

ランボー
もういい。

ランボーはヒューイの鼻面を下げてスピードを上げる。ヘリは尾部を高く上げて樹幹の間を飛び、機首の無線アンテナが樹幹部の葉を切り裂いていく。

ソビエトのヘリコプター

その大きさにもかかわらず、機体を横に傾けて小さく旋回してみせる。

大きさもエンジン出力もヒューイの2倍、最高速度もより速い高性能の攻撃ヘリコプターは恐るべき敵だ。だがランボーは機体の身軽さを武器に、技術でテクノロジーに対抗する。

アングル戻って

さっと身をかわすヒューイをカメラは追い越していく。ソビエトのヘリはヒューイの背後をとり、距離を詰めてくる。

ブリューワー

彼は縮み上がっている。木々は時速120マイルで、数インチしか離れてないところを通り過ぎていく。ヘリは急降下し、急旋回し、捕虜たちはみな隔壁にしがみついている。

デ・フラビオ
飛行機酔いしそうだよ。

 
 
内景/外景 ヒューイ1

パリューシンの親指が火器管制スイッチを押す。

ものすごい轟音が空を満たす。ミニガンの回転式の銃身が霞んで見えるほどの高速で回転し、オレンジ色の火の柱が発射される。

ベトナム戦争で使用された対人用兵器の中で最も恐ろしい物の一つであるジェネラル・エレクトリック製M-134ミニガンは、1分間に6千発の7.62ミリ弾を発射する。弾丸は5発ごとに曳光弾になっており、射撃時にはヘリと地上の間にずっと炎の柱が立っているように見える。

イメージ 1
(ミニガンの夜間射撃の様子)


発射音は機関銃のそれではなく、雷鳴の音がずっと続いているように聞こえる…まるで神が長々とげっぷをしているようだ。ミニガンに付けられたニックネームの一つは「パフ・ザ・マジックドラゴン」だ。
(正しくは「パフ・ザ・マジックドラゴン」は、ミニガンを複数搭載して高空から地上掃射を行うAC-130ガンシップに付けられた愛称だそうです。)


外景 遺跡

ミニガンの地上に対する破壊力は信じられないほどだ。木々はばらばらになって吹き飛ぶ。木の葉が粉々になり、霧のように空中に吹き上がる。

曳光弾がオレンジ色のカーテンのように地表を打って岩を粉砕し、岩の破片がジャングルを白く染める雲となって舞い上がる。

ランボーとコーは岩の下の窪みで折り重なって耳をふさいでいる。
2人の周りで岩の欠片や木の破片が飛び回っている。

だしぬけに轟音が止む。

ランボーが転がり出てくる。彼は慎重に狙いをつけ、後退するヒューイに向かってAK-47を連射する。


内景 ヒューイ1

パリューシンはヘリの下腹で弾丸が跳ねる音を聞く。彼はパイロットに向かって穏やかに引き返せと命令する。


外景 遺跡 窪み

ランボーは窪みの入口に屈み込んで、ヘリが戻って来るのを見ている。

コー
(怯えて)
あれは何だったの?

ランボー
ミニガンだ。来るんだ。移動しよう。奴は盾がない方から来る。

2人は全力疾走で中庭を横断し、再びミニガンが吠える。2人は走り、破壊のカーテンが彼らの方へ迫って来る。2人はなんとか片方の像の陰に入る。同時に死の雨が仏像の表面を撃って通り過ぎる。銃弾は穏やかな仏像の顔から古い岩の表面を吹き飛ばす。

ランボーの背後、木々の上に突然2機目のヒューイが現れ、通常型の搭載機関銃であるM60を撃ってくる。
ランボーは撃ち返す。
彼の周囲に曳光弾が飛んでいる。彼はマガジンを交換して、また撃つ。

コーが悲鳴を上げる。彼女は石垣に叩きつけられる。2機目のヒューイは旋回して去って行く。ランボーはぐったり倒れたコーのそばに屈み込む。


内景 ヒューイ1

パリューシンは操縦士に振り返る。

パリューシン
(字幕付きのヴェトナム語で)
基地に戻るんだ。弾薬が切れた。


外景 遺跡

ランボーはコーを両手で抱きかかえる。彼女のブラウスは血で濡れている。ランボーはどうすることもできずに彼女を抱き、その手に彼女の血が流れていく。

彼女の肌はジャングルの蘭のように白くなっている。彼女の眼がゆっくりとランボーを見る。

コー
(ほとんど聞き取れない声で)
ディンキー・ドゥのランボー。

ランボーはコーの中から生命が消えぬようにと願いながら彼女を優しく揺すってやる。
彼の表情は苦しみに満ちている。

ランボー
ジョンだ。俺の名前はジョンだ。

コー
(ひどく弱々しく)
痛くないの。どうして痛くないのかしら?


内景 ヒューイ1

パリューシンが航空作戦の調整をしている。

パリューシン
(字幕付きのヴェトナム語で)
ヘリ2号機へ、地上制圧パターンで旋回しろ。
(字幕付きのロシア語で)
3号機へ、位置についたか?


内景/外景 ミルMI-24ヘリコプター

機体下部にある半球型のウエポン・ベイを見下ろす広々としたコクピットの中。ポドフスクがロシア人のパイロットと共に座っている。

パイロット
(字幕付きのロシア語で)
準備よし。

パリューシン(声のみ)
(字幕付きのロシア語で)
攻撃を開始しろ。

パイロットはポドフスクに振り返る。

パイロット
(字幕付きのロシア語で)
地上には何人敵がいるんですか?

ポドフスク
(冷やかに)
1人だ。

パイロットはいぶかしげにポドフスクを見る。巨大な攻撃ヘリコプターは鼻面を下げながら、轟音を上げてジャングルの上空を横切って行く。


外景 遺跡

ランボーのクローズアップ。彼の身体がやさしく揺れている。

ランボー
…君はあそこが気に入るよ。すごくいい所だ。俺たちは何でも好きなことができる…君と俺で…浜辺へ行って…ングエンも連れて…彼が波に乗るのを見るんだ…

コーの眼はぼんやりして、わずかに開いている。彼女はもう死んでいる。

ランボーはすすり泣く。この悲劇のためなのか、周囲のすべてが青白く見える。

ランボー
(続けて)
ああ、神さま…

彼は彼女の口に激しくキスをする。彼女を生き返らせようとして、彼女の冷たくなっていく身体に自分の愛を注ぎこもうとして。


内景 ミルMI-24

パイロット
(字幕付きのロシア語で)
あと500メートル。最終航程に入る。


外景 遺跡

ランボーはコーを石仏の膝の上に優しく寝かせる。石仏の膝には手の平を上にしてわずかに開いた片方の手があり、ミニガンが吹き飛ばした木の葉が載っている。
その手の中いっぱいに、コーは横たわっている。

時おり、ランボーを狙った銃弾が彼の近くに飛んでくる。
彼は気づかない。

ランボーは彼女の首から仏教徒の祈りのメダルを取り、身に付ける。彼女の服を直してやる。堂々たる仏像の表情を顔を見上げる。

その表情はいつものように謎に満ちている。

攻撃ヘリコプターがまっすぐ彼の方へ突っ込んでくる。彼は振り返る。

2個の長い金属の円筒が短い翼から切り離されて落下し、あの特徴的な回転を始める。

ランボー
(驚嘆して)
ナパームだ。

彼は背を向け、ライフルを置いたまま走り出す。


外景 熱帯雨林

ランボーは狂ったようにジャングルの中を突っ切り全力で走る。

彼の背後で、ナパーム弾の円筒が遺跡の端の地面に落ちる。

巨大な火の玉がジャングルを貫いて噴き上がる。ナパーム弾は慣性で転がって行き、弧を描いて20メートルの長さに炎をまき散らす。逃げるランボーの小さな姿が背後から照らされて浮かび上がる。

炎が彼のところに達すると同時に、ランボーは必死で堤防を跳び越える。彼は流れの激しい幅5メートルの川に飛び込む。

水中の場面

ランボーは川底まで潜る。くぐもった轟音とともに、太陽のように明るい炎の屋根が水面を覆う。

川は深さが2メートルほどしかないうえ、流れが速い。水面のナパームの炎が、日光のかわりに川底をオレンジ色に照らす。ランボーは炎の渦に囚われてしまったように見える。

カメラはランボーを追って移動して、まるで奇妙の遊園地の乗物のように目もくらむスピードで曲がりくねった川床を越えていく。
ランボーは川底の滑らかな丸石の間を転がって行く。

彼は必死で息を止めている。頭上の炎の勢いが弱まって行く。
そして炎は消える。彼は助かったのだ。

突然、川底の岩が消え、川の流れが落ち込む。


外景 峡谷 滝

ランボーは流れ落ちる水から放り出され、前に登場した滝の表面を落ちていく。

彼は大きな水飛沫を上げて、滝壺に落ちる。

水面をとらえたアングルで

激しく泡立つ滝壺。ランボーが喘ぎながら水面に浮き上がる。
彼は弱々しく水面に浮かび、水の流れが彼を運んでいく。

頭上の斜面ではナパームの炎が荒れ狂い、ジャングルを照らしている。

あの石仏は炎の只中にあり、ヴェトナム戦争に抗議して焼身自殺した僧侶を思い出させる。コーの火葬は壮大なものだった。


外景 黒い水の河口

あの滝壺はカ川の近くの沼地に続いている。徐々に遅くなる水の流れに運ばれるままになっていたランボーは、見覚えのある物を見つける。放棄された、川の海賊たちのサンパンだ。まだ大木の根っこに舫われたままになっている。


外景 沼地 サンパン

ランボーはサンパンに乗り込み、船室に入って行く。
木箱の中にはまだRPG-7ロケットランチャーと、携行用の袋に入った数発のロケット弾頭がある。ランボーはすばやく弾頭の袋を背負い、ランチャーを手に取る。彼は船尾へ向かう。薄汚れた船外モーターの始動用ロープを強く引く。

イメージ 2
(PPG-7ロケットランチャーとロケット弾頭の携行キャリアー)


河口の向こうから、ヒューイの1機が森を越えて接近してくる。三度目にロープを引くと、船外モーターが作動する。


内景/外景 ヒューイ2

ヴェトナム人のパイロットは旋回して、ドア・ガンナーに手振りで指示する。彼らの眼下ではサンパンがバタバタとエンジン音を立てながら河口を渡っている。

パイロットが機体を降下させ、ドア・ガンナーが機関銃を撃ち始める。30口径の機関銃がサンパンを穴だらけにし、木の破片を飛び散らせる。

サンパンが爆発し、積まれていた信じられない量のガラクタも燃えながら沼に飛び散る。

ヒューイはさらに高度を下げ、ローターの風で水面が白く湧き返る。

ヘリのパイロットたちは飛び散った破片を調べ、死体が一つ浮いているのを見つける。

水面近くからのアングルで

死体がゆっくりと裏返る。イカれた海賊の首領、キンだ。


外景 近くの沼地

水面近くからのアングル。40メートル向こうでホバリングしているヒューイが、こちらを向き始める。

前景で、もつれた木の根の間から泡の浮いた水面を破って何かが立ち上がる。
水と泥と沼の水草を垂らした、たくましいその姿。

ランボーだ。

肩にはロケットランチャーを担いでいる。

カメラ反転して、ランボーのクローズ・アップ

彼は眼から泥水を拭い、再びスコープ式の照準器をのぞき込む。まばたきして、慎重に狙いをつける。

画面引いて

ヒューイのM-60機関銃が撃ち始め、銃弾は水面に水飛沫を上げながら彼に近づいていく。

ランボーが撃つ。
猛烈な後方噴射とともにロケットが火のついた矢のように飛び出し、ヒューイの風防の真ん中に命中する。

閃光!爆発!ヒューイは沼に墜落し、ローターがねじれ、ちぎれ飛ぶ。燃料タンクが爆発する。

ランボーはくるりと向き直って新しい弾頭を装填する。彼は狙いをつけてもう一度撃つ。ロケットはジャングルの中へ飛んでいき、その爆発で接近してくる兵士たちはちりぢりになって逃げ出す。

彼はロケットを再装填する。ロケットの発射煙にたじろぎながら、もう一度発射する。彼の表情は冷たく、その行動は冷静だ。
彼はまたくるりと向きを変え、撃つ。
彼の周囲に弾丸が命中し始める。彼は後退しない。
またロケットを装填する。
撃つ。

木々の向こう、川沿いの道の外れに数台の兵員輸送トラックが停まっている。そのそばにヘリコプターのための給油トラックが停まっている。
ランボーの撃ったロケットがそのトラックを直撃する。
ジャングルを満たすほどの火の玉が湧き起こる。


内景 ヒューイ1

パリューシンがミニガンの弾薬補給を終えて戻って来る。彼は前方の大虐殺の場から煙が立ち登るのを目にする。
彼はパイロットに手で合図して、半ば水没したヒューイ2の残骸の上でヘリをホバリングさせる。


外景 沼地

ランボーをすばやいパンでとらえる。彼は倒木の水平になった幹の上を走る。
倒木の端で彼は跳ぶ。
彼は片手でヒューイ1の着陸用スキッドにつかまる。

パリューシン機のドア・ガンナーはスリングで吊るされたM-60機関銃を向けようとする。間に合わない。
ランボーの手がさっと伸びて彼を捕まえ、ヘリの外へ放り出す。

イメージ 3
(マウントで床に固定するのではなく、このように天井からスリングでM60機関銃を吊っているようです。)


内景 ヒューイ

パイロットは重量バランスが変わったのを感じ、後方を見て、ランボーがスキッドにつかまっているのに気づく。彼はピッチ・レバーを強く引く。ヒューイは急上昇し、激しく方向を変える。


外景 ヒューイ

ランボーは滑り、振り回される。
彼は森の樹幹部の枝に激しくぶつかる。ヒューイが高度を上げ急角度で旋回する。
ぶら下がったランボーの脚の下でジャングルが回る。
彼は身体を引き上げる。


内景 ヒューイ

パリューシンはよろけながら操縦席を出る。
彼は振り返って、汚れ、血まみれで恐ろしい姿のランボーが貨物室のドアから入って来るのを見る。

彼はランボーに突進して蹴りを出すが、ランボーは身を屈め、ドアに設置されたM-60をぐるりと回してロシア人の攻撃を防ぐ。
2人はにらみ合い、天井の低い貨物室で腰を落として格闘の構えをとる。

パイロットは振り返り、その様子を見て驚愕し、ヘリを横滑りさせてしまう。

ヘリが激しく傾き、パリューシンが突進する。ランボーはそれを少林拳の動きで受け流し、逆にパリューシンの顔に強烈なパンチを打ちこむ。
2人は激しく打撃と防御を繰り返し、最後にレスラーのように組み合う。

2人は一緒になってミニガンの弾薬缶のそばの隔壁に激突する。ヒューイはかた揺れし、また体勢を立て直す。2人は揺れるフロアの上で必死にバランスを取りながらドアの近くで組み合い、開いたドアからは轟音が流れ込んでくる。

パリューシンはドアから落ちかけるが必死にしがみつき、また中に戻る。
彼はランボーに体当たりし、冷酷に彼を弾き飛ばす。強烈な蹴りを喰らってランボーは腰を落とす。ブラック・ベレーはランボーの髪をつかみ、両手で彼をドアへ投げ飛ばす。

ランボーはドアに取り付けられたM-60の銃把に必死でつかまり、空中に放り出されずに済む。スリングで吊るされたM-60は彼の重さでぐるりと回り、銃口がヘリの中に向く。

ランボーは完全に身体がヘリの外に出た状態で、片手で銃把につかまっている。彼はもう一方の手で機関銃の装填ハンドルを引く。

そして至近距離からパリューシンに長い連射を撃ち込む。パリューシンは血しぶきをまき散らして反対側のドアから吹っ飛ぶ。

ランボーはパイロットに近づく。パイロットは怯えた顔で振り返る。ランボーは気楽な様子で、コレクティブ・スティック(ローターの角度やエンジンの回転数を操作するレバー)にそっと手をかける。

ランボーは反対側に手を伸ばしてパイロット側のドアを開ける。そしてパイロットを放り出す!


外景 沼地

低空飛行のヘリコプターから人影がひとつ転げ落ち、河口の水面に水飛沫が上がる。ヒューイはすこし上下し、そして安定を取り戻して飛び去る。パイロットが喘ぎながら水面に顔を出す。

カット替わって

 
 
外景 熱帯雨林 昼間

曇り空の下、ランボーは険しい山肌に挟まれた峡谷に出る。峡谷の向こう、ジャングルの中の坂道との間には、ロープと蔓草でできた吊り橋が揺れている。

その坂道を登った先に、高台に築かれたあの寺院の遺跡がそびえている。風になびく霧の渦に包まれて。

そう遠くないところに滝があり、眼下の峡谷へと注いでいる。

ランボーは橋を渡りきると立ち止まり、橋を支える蔓草を調べる。
彼はポケットから手榴弾をいくつか取り出し始める。


外景 捕虜収容所 昼間

パリューシンが収容所を大股で横切り、着陸したばかりのヒューイ攻撃ヘリの方へ行く。背景でもう1機のヒューイが森の上に浮かんでいる。

大男のロシア人は乗降口にボルト留めされたミニ・ガンを感謝するようにポンと叩き、ヘリに乗り込む。
パリューシンは操縦席に入るとヴェトナム人のパイロットに離陸しろと合図し、黒いベレーの上からヘッドセットを付ける。
ヘリは離陸し、2機のヘリは森の上を旋回して飛び去っていく。

イメージ 1
(ヒューイ・ヘリに搭載されたミニガン)


内景 移動指揮センター

字幕
作戦開始から58時間

カークヒルが入ってきて、通信技術者が振り返る。

技術者
(カークヒルに数枚の紙を渡して)
早期警戒機がさらに通信を受信しています。ロシア語の翻訳に時間がかかっていますが。

カークヒルは長い通信記録のプリントアウトを読んでいく。

カークヒル
奴はあいつらを大いに手こずらせているな。ダナンからヒューイが2機派遣されたそうだ。ヴェト公どもがヒューイを持っているとは知らなかったな。

技術者
あいつらの空軍の半分は我々の機材です。ろ獲されたんですよ。

カークヒル
まったく…。

技術者
他にもあるんです…通信衛星から中継されたものです。いま入ってきました。

カークヒル
何だ?

彼は技術者からその紙を引ったくる。

プリントアウトされた紙の超クローズアップ

そこにはこうある。

「カークヒルへ/おまえのところへ行く/ランボー」

カークヒルをとらえて

その紙をじっと見つめている。


外景 熱帯雨林 寺院の遺跡の近く 昼間

ランボーは衛星通信機を分解し終える。彼は分解した通信機を隠し場の穴に戻す。先に彼とブリューワーが、ジャングルの中を逃げる前に通信機を埋めたところだ。

彼は穴に土をかけて埋め戻し始める。美しい紫色の欄の花が一輪、彼の手のそばの地面に落ちる。彼は凍りつく。

あなたを追うのは難しくなかったわ、ディンキー・ドゥのランボー。

ランボーは崩れかけの石垣にそって上を見上げる。石垣の一番上の陰の中、樹の枝に座っているのはコーだ。チェシャ猫のように嬉しそうだ。

ランボー
(緊張を解いて)
驚いたな。どうやってここまで来た?

コー
(木から下りながら)
ほとんどはバスに乗ってね。あなたがここへ来るってわかってたから。

ランボーは彼女が最後の数フィート降りるのに手を貸し、立って感嘆したように彼女を見る。

ランボー
それに、どうやってそんな風に忍び寄ったんだ?

コー
用心深くね。あなたに撃たれたくなかったから。悪い業というやつね。ともかく、あなたには私が必要だわ。

ランボー
俺に?

コー
あなたは自分が…(彼女はヴェトナム語の単語を使う)だと思っている。

ランボー
(その単語を訳して)
「不死身」だと。

コー
フジミだって。だけど私がいないと、あなたはケツを蹴飛ばされるわよ。

ランボーは笑わざるをえない。

ランボー
そうだな。俺たちはなかなか良いチームだ。

コーはランボーを注意深く見る。彼女は彼の額に触れる。

コー
あなた、ひどい有様よ。傷からばい菌が入ってる。遺跡に来て。救急キットがある。

ランボーは彼女に従って、丘の小径を登っていく。


外景 寺院の遺跡

石仏たちが満ち足りた顔でこちらを見ている。コーがランボーの小さな傷の手当をしている。次の会話の間、彼女は有刺鉄線の切り傷や、イバラやギザギザに尖ったチカラシバでついた掻き傷を消毒し、薬を塗り、包帯を巻いていく。

コー
あなたはラオスを横断するの?タイまで行くの?

ランボー
(うなずいて)
そうだ。タイにちょっと用がある。
君はどうするんだ?

コー
(肩をすくめて)
アメリカに行くわ。ングエンに会う。経済学を教える。キャデラックを買って、「ダイナスティ(有名なメロドラマ)」を見る。

ランボー
どうやって行くんだ?君を引き抜いたスパイどもを信用するなよ。あいつらは君を利用するだけ利用して捨てるんだぞ。

コー
わかってるわ。あなたと一緒に行く。

ランボー
俺には君を入国させることはできないよ。

コーは手を止めて、ひどく静かに返事をする。

コー
いいえ、できるわ。

ランボー
どうやって?

コーはランボーの目をじっと見つめ、チェシャ猫の笑みがちらりとのぞく。

コー
妻としてよ。

ランボーは彼女が真剣なのだと悟る。ランボーはその考えがどれだけ素晴らしく聞こえるか悟り、2人の間には沈黙が続く。そして、それは彼女に対する見返りとしてどれほど小さなことだろうか。

ランボー
(きっぱりと)
よし。それでいい。わかったよ。

彼女は少し驚いたようだ。そしていたずらっぽく笑う。

コー
あなた、簡単に決めすぎるわ。

今までコーの手は彼の体じゅうに触れていた。だが今、ランボーは肩に置かれたその手を意識している。

彼女は自分の顔をランボーの顔に近づけるが、ランボーは身体を引いてキスから逃げる。彼はコーが自分に触れている手をゆっくりどける。コーは困惑している。

コー
ランボー、あなたは愛を感じないの?

彼は背後の壁に寄りかかる。

ランボー
いいかい、コー…

コー
どうしてあなたは愛を感じないの?自分に許さないの?
(彼女の口調は攻撃的になっていく)
もしかしてあなたの中身は死んでいるの?あなたはもう自分自身を殺していて、だからあいつらはあなたを殺せないの?フジミになったの?ばかげているわ!

彼女は前に出て、顔をランボーの顔に近づける。彼女の言葉がランボーの心を打っている。

コー
(続けて)
ブー・クー(すごく)ばかげてるわ!
(少しの間)
私はもう十分に死を経験した。
夫。母。父。兄弟たち。死はどこにでもある。

彼女は近くの藪の、もつれた蔓草の中で幻のように咲いている花を指さす。

コー
見える?あんな花が育つには良い土が要る。土の下にはたくさんの動物や…人間の骨が埋まっている。ジャングルで死んだものたちの。それが土を肥えさせる。とても美しい花たちを育てる。あなたたちが蘭と呼ぶ花を。ジャングルではたくさん人が死んだ。ヴェトナム人も、ヴェト・コンも、アメリカ人も。そして、たくさんの美しい花を咲かせた。

ランボーはじっと彼女を見る。彼は心を動かされている。彼はコーの整った顔を手で包み、彼女を引き寄せる。
突然。彼の首がさっと回る。遠くからヘリの重いローター音が聞こえはじめ、だんだん大きくなってくる。

ランボーはさっと立ち上がり、崩れかけの手すり壁に駆け寄る。
眼下の谷で、2機のヒューイがまるで怒った虫のようにゆっくりと探索を行っている。


外景 吊り橋

一列縦隊になったヴェトナム兵が小走りで吊り橋を渡っている。

前景の何かをとらえて

ほとんど橋を渡り終えた先頭の兵士が近づいてくる。前景の何かは、いくつかまとめて木に縛り付けられた手榴弾だ。その木には、吊り橋を支えるケーブルの1本が結ばれている。

吊り橋の通り道を横切って、細いワイヤーが張られている。

ピーン。ワイヤーが手榴弾の安全ピンを抜く。


外景 寺院の遺跡

ランボーはさっと顔を背け、爆発がジャングルを貫く。


外景 吊り橋

ケーブルが切れた吊り橋が落ち始め、片側が崩れて兵士の半分が峡谷に落ちる。残りは走って戻る。2本目のケーブルが切れる。橋は残りの兵士たちをばらまきながら落ちる。


外景 熱帯雨林 樹々の上

2機のヒューイが急旋回してカメラめがけて猛スピードで直進し、頭上を飛び去っていく。


外景 熱帯雨林 寺院の近く

ランボーとコーは、高台の裏手につながる小径へ向かっている。ベトナム軍正規兵の一個小隊が彼らの方へ進んでくる。

ランボーが撃ち、兵士たちを小径から追い払う。ランボーとコーは寺院に引き返す。応射する兵士たちの銃弾がジャングルを貫く。

ランボーは丘の下の兵士たちの方へ手榴弾を2つ投げ込み、コーを連れて入り組んだ修道院の遺跡の奥へ走る。

手榴弾が兵士たちの前方で爆発し、彼らは後退する。


内景/外景 ヒューイ1

パリューシンがヘルメットに内蔵された無線で通話している。

パリューシン
(字幕付きのヴェトナム語で)
部下を後退させろ。これから攻撃に移る。

ヒューイは轟音を上げて遺跡に向かい、ミニガンを照準するために弧を描いて旋回する。


外景 遺跡

ランボーはヒューイが高空を弧を描いて飛来するのを見て、危険な状況であることを悟る。彼はコーを引きずって、庇のような形に崩れた石壁の下の隙間にもぐり込む。

 

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