映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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外景 街路のタクシー乗り場 午後遅く

ランボーが5月のバンコクの息苦しい蒸し暑さの中に姿を現し、立ってタクシーを探している。

字幕
作戦開始まで51時間
タイ バンコク

バンコクは情熱的で活動的な町で、街路は交通の混雑で大混乱になっている。ランボーはアジア人と旅行客の人だかりをすり抜ける。そして曲がり角に金属の肺魚みたいにうずくまった、へこみだらけのシトロエンのタクシーのドアに手を伸ばす。

誰かの手が軽く肩に触れて、彼は振り返る。

悪いなあんちゃん、俺が先に見つけたんだ。

彼は二十代後半のアメリカ人の男で、あの好感を持てる南部訛りで話す。おそらくノースカロライナの訛りだ。
彼はのっぽだが筋肉質で、少年のようなかわいい顔をして、無精髭なみに短く髪を刈りこんでいる。派手なハワイアンシャツとマドラス綿のスラックスを着ているが、軍人であることがはっきりわかる。

彼は片腕に、華やかだが着飾りすぎたタイ娘を抱いている。

(愛想よく)俺、大事なデートがあるんだよ。

ランボーの両眼が細められ、彼は無言で背を向け、タクシーに乗り込む。

アメリカ人は気取った笑みを浮かべ、ランボーにバッグを投げ渡す。

かまわないよ。相乗りと行こうや。そこにお尻を乗せるんだ、かわいこちゃん。


内景/外景 タクシー

アメリカ男とタイ娘は広いフロントシートにくっついて座り、トカゲに似た運転手は悔しそうな顔をする。

(運転手に)
愛想よしくん、インドラ・ホテルだ。観光用のルートは通るなよ…この街の道は知ってるんだ。おわかりか?

ランボーはタイ語で、運転手に静かに話しかける。

ランボー
(字幕付きのタイ語で)
俺も同じ行き先だ。

アメリカ男の手がタイ娘のストッキングをはいた膝から腿の間へと這い上がっていき、彼女はクスクス笑う。

ああ、君は本当に東洋の華だよ。

彼女は鳥のさえずりみたいにクスクス笑う。

(続けて、ランボーに)
彼女は俺の言うことは何でも冗談だと思ってるんだ。そうだろ、エンジェル・パイ?まったく、タイの女は最高だよ。俺好みの脚だしな…一方の端に足があって、反対側の端にはプッシーがある。

彼はランボーに振り返る。ランボーは何も言わず、アメリカ男に特に注意も払っていない。

(続けて)
あんたは無口なんだな?英語は話せるかい?

ランボー
(冷たく)
たまにな。

タイ娘が甘えた口調のピジン・イングリッシュでアメリカ男に話しかける。

タイ娘
おカネある?あたし、一週間ずっと一緒にいてあげる。

かわいこちゃん、君と一週間ずっと「ウガウガ」する以上にやりたい事なんかないけどな、今夜しか時間がないんだ。

彼は陰謀めかして声を低くし、彼女の方に身を乗り出す。

(続けて)いいかい、俺は秘密任務を負っていて、明日の朝には出発しないと…

ランボーが乱暴にアメリカ男の襟首をつかむ。

ランボー
やめろ、ブリューワー。

アメリカ男は自分の名前を呼ばれて凍りつく。ゆっくりと振り返る。

ブリューワー
(状況を理解して)
あんたがランボーか?
(少しの間)
なんてこった!

ランボーはタイ娘に、鋭い口調のタイ語で話しかける。

ランボー
(字幕付きのタイ語で)
降りろ。今すぐ!

運転手は当惑してタクシーを急停車させ、タイ娘は雑然とした商店街の喧騒の中へと車を降りる。彼女のスカートのスリットからちらりと見える脚と、遠ざかる罵り声だけを後に残してタクシーは発車する。

ブリューワー
(明るく)
まったく、俺には全然わからなかったよ。あんたは潜入諜報員なんだろう?すげえ変装だ。

カット替わって


内景 インドラ・ホテルの部屋 夕暮れ

トラウトマンが窓際でジン・トニックをすすっている。ドアが勢いよく開き、彼は振り返る。ブリューワーが飛び込んできて、数歩うしろにランボーが続く。ランボーがドアを閉める。

ブリューワー
(トラウトマンに)
彼は自分がこの任務の指揮官だと言ってます。

トラウトマン
その通りだ。

ブリューワー
(怒りを抑えながら)
大佐、大変申し訳ありませんがね、次の任務では私が指揮を執ると聞いていたんですが。

トラウトマン
この任務では違う。君は無線と撮影の担当だ。去年エルサルバドルで使った増感映像装置と同じものだ。

ランボー
このお調子者は街で作戦の機密をばらしちまうところだったんです。俺はこいつと一緒に降下はしませんよ。

ブリューワー
(振り向いて)
お調子者だと?おい、いいから引っ込んでろよ…

トラウトマン
(鋭く)
聞くんだ。おまえら2人は今から結婚したも同じだ。それに慣れてもらう。

ランボー
(トラウトマンに)
こいつはガムテープで椅子に縛りつけとくべきですよ。

カット替わって


外景 作戦のベースキャンプ 昼間

字幕
作戦開始まで36時間
タイ バン・ブン・クラ

熱帯雨林の斜面に囲まれた草地に、小さな滑走路が作られている。日本の水彩画のような幽玄な灰色の陰の中、低い雲にとりまかれて山々が遠くへ延びている。

ハイ・テクのベースキャンプが設置され、一群の小さな建物のそばで熱心に作業が行われている。

大型のシコルスキーCH-54「スカイクレーン」ヘリコプターが、ウイネベーゴ(大型キャンピングカー)ほどのコンテナを吊って降下し、別の機が轟音を上げて飛び去っていく。ヘリのローターから吹き付ける風の中、上半身裸になった工兵部隊の作業員たちがちょこまか走り回っている。激しい気流が泥しぶきのカーテンを吹き上げ、上官が叫ぶ指示の声を聞こえなくしている。

ヴェトナム戦争時代のヒューイUH-1Dヘリコプターが、その近くに敏捷に着陸する。操縦席に座っていたランボーがヘッドセットを外して降りてくる。戦闘服姿のブリューワーとトラウトマンがヘリから飛び降りる。カークヒルが近づいてくる。

彼らをとらえたドリー・ショットで、一行はローターの騒音の中から出てくる。カークヒルが手振りで、ランボーたちを移動式作戦センター(MTOC)へ案内する。

カークヒル
ヘリの操縦もできるとは知らなかったよ、ランボー。

ランボー
俺は攻撃ヘリの訓練も受けたんだ。

トラウトマン
(カークヒルに)基地の設営を始めてからどのくらいだ?

カークヒル
ここに入ってから、約22時間だ。

トラウトマン
上出来だ。

彼らはテントに似たカモフラージュ用の天幕を通りすぎる。その下には真っ黒に塗装されたシコルスキーUH-60「ブラックホーク」ヘリコプターが恐ろしげに駐機している。ヘリには何のマークも標識もない。ヘリの向こうにも天幕があるが、そこに何があるかは見ることができない。

近くにはいくつか空輸用のコンテナがあり、そのうち2つは接続されてダブル・サイズのトレーラーハウスのような建物を形作っている。

別のコンテナには轟音を上げる発電機が入っていて、4つ目には追跡装置が載せられている。何本ものケーブルが泥の中を這って機器類をつないでいる。

カークヒルは近くで作業班の兵士が3人、騒ぎながらポケットカメラで互いの写真を撮っているのに気づく。彼は驚いた顔の若い伍長からカメラをひったくる。

カークヒル
これは極秘作戦なんだぞ、間抜けどもめ。

彼はカメラを開けてフィルムを泥の中に捨てる。腹を立てた伍長がカメラを取ろうと手を伸ばす。カークヒルは何気ない風でカメラも泥の中に捨ててしまう。

カークヒル
(トラウトマンたちに)作戦室も見てくれ。

彼は大型のコンテナのドアを開けて、トラウトマンたちを招き入れる。


内景 移動式作戦センター

コンテナ内は低く音を立てる電子装置の巣と化している。薄暗く調整された照明の下、ビデオ・モニターの列が輝き、立ち並ぶコンピューター装置のステータス・ライトが片側の壁に並んでいる。
追跡や通信、長距離連携を行う端末のために、組立式の機器ラックが閉所恐怖症になりそうなほど乱立している。

ブリューワー
ヒューストン、応答せよ!ってね。

彼らは泥だらけの足を拭って、エアコンの効いた指令センターに入っていく。

ランボーは雑然と並んだ機器類をじろじろ見回す。彼が片手で一台のコンソールを軽く撫で、席についている技術者は彼をじろりと睨む。

ランボー
これ全部、俺たちのためなのか?

カークヒル
その通りだ。

ブリューワー
(ランボーに)
俺たちを野戦チーム「ロボット人間」と呼ぶってさ。

カット替わって


内景/外景 擬装用の天幕

ランボーとブリューワーが、数本のポールから広がっている偽装網の下に入ってくる。偽装網の葉飾りを通して差し込む陽光が、前景にある黒いなにかに明るいまだら模様を作っている。

カメラが引き、ブーム・アップして、見えるようになったその何かにランボーは歩いていく。それは真っ黒に塗装されたジェット機だ。改造されたガルフストリーム製「ペレグリン」、小型で流線型をした、シングル・エンジンの個人用モデルだ。マークや標識はすべて消されている。

ランボーとブリューワーをとらえたミディアム・ショットで

2人はその飛行機について考える。

ブリューワー
ジェット機から降下したことはあるかい?

ランボー
いいや。

(声のみ)
簡単だよ…

2人は振り返り、革のフライト・ジャケット姿の痩せた長髪の男が、機体の下をくぐって近づいてくるのを見る。

(にやっと笑って)
すばやく飛べばいい。

さらに2人の乗組員が、機体後部の開いた乗降ドアから飛び降りてくる。

ランボー
あんたがパイロットか?

(握手の手を差し出して)
ああ。ドイルだ。
(ドアの中にいた2人を指して)
ライファーと、ファルマンだ。

ドイルは超クールな60年代の産物で、薬をキメた夜間作戦が多すぎたために、脳ミソが少々煮えてしまっている。副パイロットのファルマンはニヤニヤ笑いが大きすぎ、ライファーはひたすら臆病そうな眼をしている。

ランボー
あんたらは空軍か?

ドイル
海兵隊だ。「元」だけどな。今は個人で契約を受けてる。

ライファー
あんたはヴェトナムには何回行ったんだ?

ランボー
二回。ほとんど「第1軍団」(南ヴェトナム軍の一部隊)だった。

ドイル
(ブリューワーに)
あんたは?

ブリューワー
(受け身になって)
ヴェトナムには年齢がちょっと足りなかった。朝鮮戦争もだ、わかるだろ?

ランボーとドイルは目配せを交わす…実戦経験のない素人に対する連帯感。


外景 擬装用の天幕

地面のクローズ・アップ

トルクレンチの先端が手早く地面を掻き、東南アジアのおおまかな地図を描く。

ドイル(声のみ)
ここがタイ。メコン川。ラオス。ヴェトナム。

一言ごとに、彼はトルクレンチで該当する地点を指していく。

ドイルをとらえたアングルで

身振りを交えながら彼は続ける。

ドイル
安南山脈を通過して、ラオスの細い突出部を高速で横断する…少々危険な地域だが…そして降下地点に至るわけだ。行きも帰りも18分間は共産主義者どもの領空を通ることになる。

ランボー
レーダーを避けて低空飛行で行くんだろう?

ドイル
ああ、藪の中を通るぐらい低くな。

ファルマン
(ニヤッと笑って)
芝刈りしながらだ。

ライファー
地面を掘り返してな。

 

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