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外景 街路のタクシー乗り場 午後遅く
ランボーが5月のバンコクの息苦しい蒸し暑さの中に姿を現し、立ってタクシーを探している。
バンコクは情熱的で活動的な町で、街路は交通の混雑で大混乱になっている。ランボーはアジア人と旅行客の人だかりをすり抜ける。そして曲がり角に金属の肺魚みたいにうずくまった、へこみだらけのシトロエンのタクシーのドアに手を伸ばす。
誰かの手が軽く肩に触れて、彼は振り返る。
彼は二十代後半のアメリカ人の男で、あの好感を持てる南部訛りで話す。おそらくノースカロライナの訛りだ。
彼はのっぽだが筋肉質で、少年のようなかわいい顔をして、無精髭なみに短く髪を刈りこんでいる。派手なハワイアンシャツとマドラス綿のスラックスを着ているが、軍人であることがはっきりわかる。
彼は片腕に、華やかだが着飾りすぎたタイ娘を抱いている。
ランボーの両眼が細められ、彼は無言で背を向け、タクシーに乗り込む。
アメリカ人は気取った笑みを浮かべ、ランボーにバッグを投げ渡す。
内景/外景 タクシー
アメリカ男とタイ娘は広いフロントシートにくっついて座り、トカゲに似た運転手は悔しそうな顔をする。
ランボーはタイ語で、運転手に静かに話しかける。
アメリカ男の手がタイ娘のストッキングをはいた膝から腿の間へと這い上がっていき、彼女はクスクス笑う。
彼女は鳥のさえずりみたいにクスクス笑う。
彼はランボーに振り返る。ランボーは何も言わず、アメリカ男に特に注意も払っていない。
タイ娘が甘えた口調のピジン・イングリッシュでアメリカ男に話しかける。
彼は陰謀めかして声を低くし、彼女の方に身を乗り出す。
ランボーが乱暴にアメリカ男の襟首をつかむ。
アメリカ男は自分の名前を呼ばれて凍りつく。ゆっくりと振り返る。
ランボーはタイ娘に、鋭い口調のタイ語で話しかける。
運転手は当惑してタクシーを急停車させ、タイ娘は雑然とした商店街の喧騒の中へと車を降りる。彼女のスカートのスリットからちらりと見える脚と、遠ざかる罵り声だけを後に残してタクシーは発車する。
カット替わって
内景 インドラ・ホテルの部屋 夕暮れ
トラウトマンが窓際でジン・トニックをすすっている。ドアが勢いよく開き、彼は振り返る。ブリューワーが飛び込んできて、数歩うしろにランボーが続く。ランボーがドアを閉める。
カット替わって
外景 作戦のベースキャンプ 昼間
熱帯雨林の斜面に囲まれた草地に、小さな滑走路が作られている。日本の水彩画のような幽玄な灰色の陰の中、低い雲にとりまかれて山々が遠くへ延びている。
ハイ・テクのベースキャンプが設置され、一群の小さな建物のそばで熱心に作業が行われている。
大型のシコルスキーCH-54「スカイクレーン」ヘリコプターが、ウイネベーゴ(大型キャンピングカー)ほどのコンテナを吊って降下し、別の機が轟音を上げて飛び去っていく。ヘリのローターから吹き付ける風の中、上半身裸になった工兵部隊の作業員たちがちょこまか走り回っている。激しい気流が泥しぶきのカーテンを吹き上げ、上官が叫ぶ指示の声を聞こえなくしている。
ヴェトナム戦争時代のヒューイUH-1Dヘリコプターが、その近くに敏捷に着陸する。操縦席に座っていたランボーがヘッドセットを外して降りてくる。戦闘服姿のブリューワーとトラウトマンがヘリから飛び降りる。カークヒルが近づいてくる。
彼らをとらえたドリー・ショットで、一行はローターの騒音の中から出てくる。カークヒルが手振りで、ランボーたちを移動式作戦センター(MTOC)へ案内する。
彼らはテントに似たカモフラージュ用の天幕を通りすぎる。その下には真っ黒に塗装されたシコルスキーUH-60「ブラックホーク」ヘリコプターが恐ろしげに駐機している。ヘリには何のマークも標識もない。ヘリの向こうにも天幕があるが、そこに何があるかは見ることができない。
近くにはいくつか空輸用のコンテナがあり、そのうち2つは接続されてダブル・サイズのトレーラーハウスのような建物を形作っている。
別のコンテナには轟音を上げる発電機が入っていて、4つ目には追跡装置が載せられている。何本ものケーブルが泥の中を這って機器類をつないでいる。
カークヒルは近くで作業班の兵士が3人、騒ぎながらポケットカメラで互いの写真を撮っているのに気づく。彼は驚いた顔の若い伍長からカメラをひったくる。
彼はカメラを開けてフィルムを泥の中に捨てる。腹を立てた伍長がカメラを取ろうと手を伸ばす。カークヒルは何気ない風でカメラも泥の中に捨ててしまう。
彼は大型のコンテナのドアを開けて、トラウトマンたちを招き入れる。
内景 移動式作戦センター
コンテナ内は低く音を立てる電子装置の巣と化している。薄暗く調整された照明の下、ビデオ・モニターの列が輝き、立ち並ぶコンピューター装置のステータス・ライトが片側の壁に並んでいる。
追跡や通信、長距離連携を行う端末のために、組立式の機器ラックが閉所恐怖症になりそうなほど乱立している。
彼らは泥だらけの足を拭って、エアコンの効いた指令センターに入っていく。
ランボーは雑然と並んだ機器類をじろじろ見回す。彼が片手で一台のコンソールを軽く撫で、席についている技術者は彼をじろりと睨む。
カット替わって
内景/外景 擬装用の天幕
ランボーとブリューワーが、数本のポールから広がっている偽装網の下に入ってくる。偽装網の葉飾りを通して差し込む陽光が、前景にある黒いなにかに明るいまだら模様を作っている。
カメラが引き、ブーム・アップして、見えるようになったその何かにランボーは歩いていく。それは真っ黒に塗装されたジェット機だ。改造されたガルフストリーム製「ペレグリン」、小型で流線型をした、シングル・エンジンの個人用モデルだ。マークや標識はすべて消されている。
ランボーとブリューワーをとらえたミディアム・ショットで
2人はその飛行機について考える。
2人は振り返り、革のフライト・ジャケット姿の痩せた長髪の男が、機体の下をくぐって近づいてくるのを見る。
さらに2人の乗組員が、機体後部の開いた乗降ドアから飛び降りてくる。
ドイルは超クールな60年代の産物で、薬をキメた夜間作戦が多すぎたために、脳ミソが少々煮えてしまっている。副パイロットのファルマンはニヤニヤ笑いが大きすぎ、ライファーはひたすら臆病そうな眼をしている。
ランボーとドイルは目配せを交わす…実戦経験のない素人に対する連帯感。
外景 擬装用の天幕
地面のクローズ・アップ
トルクレンチの先端が手早く地面を掻き、東南アジアのおおまかな地図を描く。
一言ごとに、彼はトルクレンチで該当する地点を指していく。
ドイルをとらえたアングルで
身振りを交えながら彼は続ける。
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