映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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ランボー2:ザ・ミッション



作 ジェームズ・キャメロン



1983年12月22日



フェード・イン

タイトル・シークエンス


外景 復員軍人病院 昼間

ドアに「アメリカ陸軍」と標識のある暗緑色のセダンが一台、要塞のようなコロニアル様式の建物の前で停車する。
建物の窓には鉄格子がはめこまれている。
芝生の給水スプリンクラーが、無機的にぱちんと停止する。

画面の下にデジタル風の文字が表示される。

作戦開始まで117時間
ノースカロライナ州 ファイエットビル

セダンをとらえたアングルで

ドアが開き、2人の屈強な憲兵-片方は車を運転していた-が出てくる。もう一方の憲兵が後部ドアを開けて、サミュエル・トラウトマン大佐が降りてくる。彼は立って、病院の堂々とした正面を見る。
トラウトマンは50代の初め、指揮官らしい厳格な雰囲気をまとっているが、尊大さは感じられない。

彼は力強い足取りで階段を登って行き、憲兵たちは後に取り残される。

彼らは中に入っていき、画面が玄関ドアの上の標識を写す。

復員軍人局病院


内景 病院

神経精神病棟」という標識のある灰色の金属ドアが勢いよく開き、白い服を着た大柄な用務員が通って行く。
彼の後ろには2人の憲兵とトラウトマン、そして小柄な医者が続いている。医者は皆についていこうと必死だ。

一行を前方からローアングルでとらえるドリー・ショット。彼らは大股で進んでいく。
憲兵たちはいかめしい顔をして、歩調をそろえて歩いている。

トラウトマンとシングルテリー医師は、静かに通路を歩いていく。

一行はドアの開いた談話室を通りすぎる。そこでは夢遊病のような患者たちが身動きもせず座り込んで、「ザ・ヤング・アンド・ザ・レストレス」(アメリカのTVドラマ)を見るか、壁紙の色あせをじっと見つめるかしている。
鉄格子のはまった窓を通って、曇り空の寒々しい陽光が差している。

退役軍人たちは彼らの年齢よりも年老いて見える。戦闘で肉体的な傷を負った者もいるが、彼らの負った最もひどい傷があるのは、疑いなくその両目の奥なのだ。

一行は「長期入院者棟」の開いたドアを通り過ぎ、取り憑かれたような視線が彼らに向けられる。

一行は「長期入院者棟」のナース・ステーションにやってくる。用務員がうなずく。
主任看護師が自分のコンソールに向き直る。

インサート・カット-看護師の手

コンソールにあるボタンを押す。

保安ドアのクローズ・アップ

大きなブザーが鳴って、電動式ロックのボルトが外れる。
ガチャン。
用務員の手がドアを押し開ける。


内景 「暴力的患者」棟

一行は、施錠されたドアが並んでいる長く狭い通路へ入っていく。

彼らの視点から 通路に沿ったドリー・ショットで

ドアにはめ込まれた安全ガラスからときおり顔が覗く。心を失ってしまった男たち。
カメラは通り過ぎていき、彼らの視線はそれを追いかける。

紐を結んでない病院衣と裸足という格好のやせ衰えた男が一人、まるで迷子のように通路の真ん中に立っている。

カメラ、反転して一行をとらえるアングルになり

ドリー・ショットで移動していく。かぎ爪のような手が伸びてトラウトマンのコートをつかみ、一行はその男を迂回する。
ドアの一つからしゃがれた、狂ったような叫び声が聞こえてくる。別のドアからは死に物狂いで泣き叫ぶ声がする。


内景 吹き抜け階段

ドアの錠のクローズ・アップ。鍵ががちゃがちゃ音を立てて、ドアが開く。

画面引いて、暗い吹き抜け階段に一行が入ってくる。蛍光灯の光がちかちか点滅している。薄暗がりが脈を打っている。

ルイス
まったく。管理人はここまで降りて来やしないんです。

一行は階段を2階降りて、鉄格子のはまった引き開け式のドアのところへやってくる。

憲兵たちがルイスの左右を固め、彼はドアの錠を開ける。

シングルテリー医師
では私はどうすればいいんです?彼をレブンワース(軍刑務所)に移送することはできません。彼は民間人なんですから。だから彼を、スペイン異端審問の頃から使われてなかったような隔離房に入れているんです。

鉄格子のドアのクローズ・アップ

ドアが金属のレールの上を滑っていく。ガチャン。


内景 通路

病院の地下室のこの区画は、最近ではほとんど使われず物置となっている。古い道具類には埃が積もり、わずかに歩くスペースがあるだけだ。

鋼鉄のドアは大きく開かれ、最後のドアが残っているだけだ。

トラウトマン
君は彼に「怠惰」に対する罰を与えるべきだったかもしれんな。

ルイスが施錠された隔離房のそばにあるキャビネットを開け、小型のライフルを取り出す。彼は単発式ボルト・アクションの銃に、注射器に似た弾薬を装填する。

トラウトマン
(続けて)それは何だ?

シングルテリー医師
麻酔銃です。動物管理部から借りました。

トラウトマンは軽蔑するように鼻を鳴らして麻酔銃の銃身を押しのけ、隔離房のドアに歩み寄る。

トラウトマン
よしてくれ。
(ドアを顎で指して)
開けろ。

2人の憲兵はドアの左右に立つ。一人が錠のレバーを引く。錠のボルトがスライドする。ドアが大きく開く。中は真っ暗だ。

ルイス
(つぶやく)あいつは「暗闇の王子さま」らしいな。

憲兵の一人が隔離房のそばにあるスイッチを入れ、何度かカチカチいわせる。明かりは点かない。

彼はもう一人の憲兵に不安そうに目配せし、2人は暗い隔離房の中へ足を踏み入れる。


内景 独房

ぼんやり見える手のクローズ・アップ。その手がソケットの電球を半回転させる。

急に明かりが灯り、憲兵たちは人影に直面してぎょっとする。

薄汚れたジーンズだけを身につけたジョン・ランボーが、憲兵たちの前で「構え」の体勢をとって立っている。低い天井から下がった裸電球が、彼の鍛えられた身体にぎらぎらした陰影を投げている。彼は一つの手ごわい機械のようだ。

長いもつれた髪が彼の肩にかかり、手入れをしていない髭は両眼の下の頬骨まで伸びている。その両眼は深く、爬虫類のようで、熱を帯びている。

彼の姿勢はあからさまに危険なわけではないが、警告なく攻撃するのを厭わないことを暗示していて、憲兵たちは動くことができない。

トラウトマンが憲兵たちの間に歩み出る。

トラウトマン
休め、ランボー。

ランボーをミドルショットで

ランボーはやや腰を落とした姿勢から落ち着いて身体を伸ばし、バランスを取って…「休め」の姿勢になる。

トラウトマン
(続けて、憲兵たちに)
外で待つんだ。

彼はドアを閉じる。

トラウトマン
やあ、ジョン。

ランボー
大佐。

トラウトマン
座っても構わないかね?

ランボーが狭い寝棚を指し、大佐は腰掛ける。ランボー自身は東洋式にあぐらをかいて床に座る。

トラウトマンのランボーに対する物腰は親しげで、どこか父親のようでもある。わずかに皮肉っぽい笑みが時おり浮かぶ。

トラウトマン
(続けて)
君はここにいるのを楽しんでいない、と聞いたよ。

ランボー
耐えることも、気にしないでいることもできます。

トラウトマンは溜め息をついて、後ろにもたれる。

トラウトマン
私はいつも君をいまいましい便所かどこかから出してやるらしい。そうだろう?

ランボー
俺はここを出るんですか?

トラウトマン
それは君次第だ。
(少しの間)
まったく、自分のざまを見てみろ。君が任務につけるようになるまで、この簡単な職務を与えてやっているんだ…君はアイスクリームを食べてテレビを見ているだけでいい…これが君の最後のチャンスだと思えよ。

ランボー
俺はきちがいみたいに扱われたんです。

トラウトマン
信じがたい話だな。君は50口径機関銃でオレゴンの小さな町を撃ちまくった…ちっぽけな田舎町ひとつだ…それだけのことで、みんなは君が狂っていると思ったわけか。ユーモアのセンスがないよなあ。
(少しの間)
何を期待していたんだ?商工会議所から感謝状でももらえると思ったのか?

ランボーは自分の両手を見る。彼がやっと口を開くと、その声は遠く、肉体から離れたものに聞こえる。

ランボー
ヴェトナムじゃ攻撃ヘリを飛ばせました。百万ドルの機材を。こっちに帰ってくると駐車場の仕事もさせてもらえません。俺は、いつかまともになれると考え続けてきました…だけど6年も放浪しても、まともになれません。ときどき、自分の体から自分が抜け出したような気分になるんです。

大佐はゆっくりとうなずく。彼はベッドのそばの床に、潰れた靴の箱があるのに気づく。それ以外に、独房の中にはまったく個人的な品はない。

トラウトマン
君の荷物か?

ランボー
それだけです。俺の人生です。

靴箱のクローズ・アップ

トラウトマンは数枚のくたびれたスナップ写真をめくっていく。ランボーの特殊部隊にいた兵士たちが写っている、

彼らは軍服のまま、あるいは私服で馬鹿騒ぎをしている。今より若く、髭も剃っているランボーがその中にいる。写真の一枚では、彼は開けっぴろげな笑顔を見せている。その顔はいま我々が見ている無表情な男とはまったく似ていない。

トラウトマン
筋金入りの連中だな。私が訓練した中でも最高だった。

ランボー
(冷たく)
そいつらは、みんな死にました。

トラウトマン
(ちらりと目を上げて)
君はちがう。

トラウトマンはランボーの人生の哀れな破片の中から、何かを拾い上げる。

トラウトマン
(続けて)
議会名誉勲章か。

ランボー
(苦々しく)
はい。最高のときでした。

トラウトマン
それ以外に、何だ?銀星章が二つ、銅星章が四つ、軍人褒章が二つ、ヴェトナム勇猛十字章が四つ…それに、戦傷章もいくつかあるな。

ランボー
五つです。俺は、そういうものは欲しくありませんでした。

トラウトマン
何が欲しかったんだ?

ランボー
(たどたどしく)
俺はただ…なんというか…結局のところ…俺が欲しかったのはたった一人、たった一人、俺のところへ来て「ジョン、おまえはよくやったよ」と言ってくれる人でした。本当です。それだけでした。
(少しの間)
結局のところはね。

トラウトマン
君は、英雄になるべき戦争を間違えてしまったんだ。

大佐はしばらくランボーを見て、そして不意に立ち上がる。

トラウトマン
(続けて)
少し歩こう。

カット変わって

 

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