映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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内景 研究所の廊下 昼間

スーツ姿でブリーフケースを手にしたバリンガーが角を曲がってくる。彼はだしぬけに記者たちの取材に取り囲まれる。

記者#1
バリンガー博士、バークレーの教職から急に休暇を取られた理由を教えていただけますか?

記者#2
バハ・カリフォルニアで極秘の発見がされたという噂についてはいかがですか?

バリンガー
(歩きながら)
ノー・コメントだ。

不愉快な記者
ねえ、わたしゃ新聞業界が長いんで知ってるんですが、「ノー・コメント」はつまり隠蔽工作をしてる、ってことですよねえ。

バリンガー
(ほほえんで)
ノー・コメントだよ。

彼は「第7研究室」と表示されたドアの方へ行き、ノックする。


内景 研究室 昼間 レスリーのクローズ・アップ

彼女は物思いに沈んで煙草を喫っている。彼女の周囲にはテーブルやビーカー、グラフのプリントアウト等がある。彼女のそばの実験テーブルにあの三葉虫が置かれている。彼女はノックの音を聞いてドアを開けに行く。バリンガーが入ってきて、記者たちのやかましい声がする中、ドアを閉める。

バリンガー
30年代の映画の中にいるみたいだったよ。「ねえ教授、本当なんですか?特ダネをくださいよ」ってね。

レスリー
あなたを困らせたくはなかったのよ…

バリンガー
馬鹿なことを言うなよ…

彼は彼女の頬に軽くキスしようと近づく。彼女は身体を引く。

レスリー
ゆうべはね、あなたの留守番電話と楽しくおしゃべりしてたわ…

バリンガー
なあ、ハニー、僕はこの研究室にいたんだよ。そうなるって言っただろう…
(少しの間)
バハでのことで君はまだ動揺してる、そうだろう?

レスリー
いいえ!ちがうわ、あれはただの珍しい偶然だわ。それはわかってるのよ。

バリンガー
じゃあ、何が気に入らないんだい?

彼はブリーフケースを置き、彼女だけに神経を集中する。

レスリー
よくわからない…わたし。あなた。あなたはゆうべも、今日も、そして昨日もここにいる。そして…私はいつまでも学ばないらしいわ。それだけのことよ。

バリンガー
レスリー、もし君が僕の思っているようなことを言いたいのなら、周りを見回してごらんよ?僕はスパイ映画みたいに世界を飛び回るんじゃなく、顕微鏡をのぞいているのが仕事なんだぜ。

レスリー
あなたを夫と比べてるわけじゃないのよ。
私は強迫観念の話をしてるの。

バリンガーはだんだん感情的になりながら歩き回っている。彼は三葉虫のところへ行き、そっと持ち上げる。

バリンガー
まったく…聞いてくれ、レスリー・アン。これが見えるかい?これが何だか知ってるかい?これは三葉虫だ。三葉虫の化石じゃなく、本物の三葉虫だ。この意味がわかるかい?こいつは4百万年近く前に絶滅してるんだよ!

彼は三葉虫をレスリーの鼻先に突きつける。当然ながら彼女はそれを払いのける。

レスリー
わざわざありがとう!

バリンガー
レスリー、わからないのかい?ここで起きていることは、僕にとっては夢が実現したようなものなんだ。

レスリー
それはわかっているわ、ジェラルド。わかってるの。それに、あなたの夢を分かち合えればいいのにと思うわ。でもできないのよ。
(急に感情的になり、席を立って)
わたし、行かなきゃ…

彼女はドアを開け、外で待っている記者たちの渦に飲み込まれる。バリンガーは後を追うが、思い切って外に出ることはしない。彼は彼女に向かって叫ぶ。

バリンガー
君が悪いんじゃない!

どうすることもできず、彼はドアを閉め、また一人きりになる。彼は三葉虫を見る。彼の心は空回りしている。


内景 オフィスのロビー 昼間

明るく照明されたオフィス区画で、バリンガーが電話をかけている。彼の背後で、事務員たちをかき分けてデイナとトニーが姿を現す。

バリンガー
編集部を頼むよ…ああ、デイナ・クライヤーを探しているんだ。クライヤー。頭に「K」がつく。

デイナとトニーが彼のすぐ後ろに来る。デイナが彼の肩を叩くが、彼はいらだって二人にあっちへ行けと言う身振りをする。

バリンガー
ちょっと待ってく…

そして肩を叩いたのが誰かに気づき、彼は電話を落として三葉虫を差し出す。彼の態度はおそろしく差し迫った様子だ。

バリンガー
これをどこで見つけたんだ?

デイナ
(やさしく)
元気ですよ、ありがとう。私もお会いできてうれしいわ。

バリンガー
これをどこで見つけたんだ!?

デイナ
(トニーを指して)
彼が見つけたの。実際にはね。

バリンガー
君がポパイか?

トニー
何だって?

デイナ
(説明しようとして)
あの漫画の水夫よ、知ってるでしょ?…もういいわ、忘れて。

バリンガー
これをどこで見つけたんだ!?

トニーが答える一方、デイナはハンドバッグから油井やぐら事故の報道発表の紙を取りだして、読んでくれとバリンガーに手渡す。バリンガーは恐ろしく熱心で、トニーからまったく視線を逸らさず、上の空でデイナからその紙を受け取る。

トニー
海でだよ。俺の乗ったトロール漁船が何かに沈められそうになった後で、網の中にいるのを見つけたんだ。

バリンガー
正確な位置はどこだ!?

トニー
(肩をすくめて)
サン・ミゲルの近くで…

バリンガー
サン・ミゲル!?カリフォルニアのか!?いつのことだ!?

トニー
3日前かな?

バハの海岸でも見た、不安そうな顔の研究助手がバリンガーのところへ走ってくる。

不安そうな研究助手
バリンガー博士、早く来てください!

バリンガーは事故発表の紙を片手にひらひらさせながら駆け出す。トニーはたった今ジェット・コースターから降りたような顔でデイナへ振り返る。

トニー
あんなスピードのある男だとは言わなかったよな。


内景 研究室の廊下 昼間 バリンガーたちを追って行く

バリンガーと助手はほとんど走りながら角を曲がる。白衣を持った別の研究技術者が現れ、2人と一緒に走りながらその白衣を差し上げてバリンガーに着せてやる。

彼らは厳重に警備されたドアのところへ来る。「観察/分析室 許可なき者の入室厳禁」とある。バリンガーは事故の報道発表の紙を白衣のポケットに突っ込んで財布を取り出し、IDをドアの脇に立つ制服姿の警備兵に見せる。バリンガーと助手は入室を許され、二人目の警備兵がそれを見つめている。

警備兵
すいませんねバリンガー博士、手続は守らないといけないもので…

バリンガー
いいんだよ、ハーブ…


内景 観察室/気密区画 昼間

大きな窓のある白い気密室。窓はバスケットボール・コートほどの広さの競技場に面しており、そこには足場と調査機器に囲まれたゴジラの幼体の死体が置かれている。

バリンガーと助手が入ってくる。襟元をゆるめた研究所の医師が見える。そして医師が手当している2人の研究助手は明らかに、疲労か、神のみぞ知る何らかの理由で苦しんでいる。

バリンガー
あの中の悪臭のためじゃないのは確かなんだね?

研究所の医師
彼らはマスクを着けていました。
(自分のカバンのところへ行って)
彼らは呼吸が浅いんです。血液検査をします。

他の技術者たちが周囲に立っている。バリンガーは考え、技術者の一人に振り返る。

バリンガー
この建物にガイガー・カウンターがあるかね?

研究所の技術者
手に入れられますよ。

バリンガー
すぐにやってくれ!
(技術者は走り出す)
ここから避難しよう。みんなここから出てくれ!


内景 研究所の競技場 昼間 ガイガー・カウンターの探査棒

カメラには探査棒だけが写っている。そしてカメラが引いて、ガスマスクと放射線防護服を着てガイガー・カウンターを持ったバリンガーが見えるようになる。他の技術者たちが観察窓の向こうから彼を見守っているのが見える。それを除けば、広い競技場の中に彼は一人きりだ。

彼は巨大なゴジラの幼体の死体に近づいていく。死体がじょじょに腐敗しつつあるのがわかる。いや、それほどじょじょにではない。バリンガーはガイガー・カウンターの探査棒を上げ、怪物の装甲板のような外皮にそって動かしていく。

初めのうち、ガイガー・カウンターの小さな針は動かず、スピーカーからも音はしない。そして、バリンガーが怪物の下腹部に近づくと、放射能を検知したガイガー・カウンターがガリガリとげっぷのような音をたてはじめる。

バリンガー
(ガスマスクごしに)
くそっ!

ガリガリいう音が弱まり、バリンガーは立ち止まって休息する。それから彼は怪物の腹と胸の方へ進む。そのあたりでは怪物のウロコのような皮膚が剥がれ、ひび割れている。

ガイガー・カウンターがまた音をたてはじめ、バリンガーは怪物の外皮にある裂け目に探査棒を向ける。彼がそうするとガイガー・カウンターの音は大きくなり、彼が探査棒をさらに近づけ、裂け目の中へ差し入れると、音は耐えられないほど大きくなる。そして…

画面急に変わって 


内景 観察室/気密区画 バリンガー

バリンガーはガスマスクを投げ捨て、手のひらで壁を叩く。他の研究員たちは彼の周囲に立っている。

バリンガー
くそっ!隔離しておくべきだったんだ。隔離しておくべきだとわかっていたはずなのに!どうしてこれまで誰も考えつかなかったんだ…

彼は腹を立ててポケットに手を突っ込む。彼は何だろうと眉をひそめ、デイナがくれたテレタイプの事故報告を取り出す。彼はそれを持って読み始める。彼の両眼が見開かれる。

画面急に変わって


内景 会議室の外 昼間

かんかんに怒ったバリンガーが現れ、その後ろにデイナとトニーが続いている。彼はすごい勢いでとある会議室のドアへ向かう。警備兵が彼を止めようと駆け寄ってくる。

警備兵
そこには入れませんよ!

バリンガー
賭けるか!?

彼はドアを押しあけて通る。腹を立てた警備兵の相手をするデイナとトニーを後に残して。

警備兵
あんたたち、あの人の仲間ですか?

デイナ(トニーと同時に)
ええと、そうよ。それが何か?つまりね、もちろん、ええと…そうかも。
よくわからないわ。
トニー
ちがうよ、どこからそんなこと思いついたんだい?つまりそうなんだよ。
待ってくれ。俺たちがか?ええと…


内景 軍の会議室 昼間

ダクストンが落ちつかなさげに歩き回っていて(もちろん煙草を喫っている)、マクダーモットやほかの士官たちはテーブルの周りに座っている。バリンガーが入ってきて、ダクストンはバリンガーと顔を合わせることが辛そうなのがわかる。

バリンガー
(激しい口調で)
ようし、どうしてあの生物を殺したのが核ミサイルだったと誰も教えてくれなかったんだ!?

我々はマクダーモットのこずるそうな副官、アッカーマンに注目する。

アッカーマン
(口ごもりながら)
その報告は明日一番にされるはずで…

マクダーモット
(それに押しかぶせて)
率直に言うがな、バリンガー、ミサイルの件は君には関係のないことだ。

バリンガー
僕の同僚たちが放射能に被曝して倒れているときには関係あるんだ!
(ダクストンに)
なんだい、あんたは今度は個人的な理由でこいつの味方になるつもりなのか?

ダクストンは冷静さを保つ。

ダクストン
教授、今まで誰も「個人的」だったことはないよ。

バリンガーの次の言葉には彼の罪悪感が感じられる。彼は背を向け、そして三葉虫を取り出して、ダクストンたちにそれを振ってみせる。

バリンガー
わかったよ、見てくれ…これはこの惑星で最も初期の生物の一つだが、それが完全な状態で見つかったんだ。ロサンゼルスの北の漁船の上でね!

マクダーモット
だから何だ?あの怪物は死んでるんだ。

バリンガー
あの怪物はグアダルペの近くで一週間前に発射された核ミサイルのせいで死んで、それが3日前にバハで打ち上げられたんだ!地理が苦手なら教えてやるが、メキシコでだぞ!

マクダーモット
何が言いたいんだ?

バリンガー
僕が言いたいのはこういうことだ。もしあの生物が5日前に南太平洋で殺されていたんなら、どうやって北太平洋で漁船を襲うことができたんだ?理屈に合わない、そうだろう?それに加えて僕は、モンテレイ沖の油井やぐらの事故の件を見つけた…なんとまあモンテレイだぞ…この油井やぐらは粉々に破壊されたんだ。そして誰も、その件について話そうともしない!

マクダーモットの顔が蒼白になる。彼は何かを知っているのだ。ダクストンはバリンガーの話の続きを待つ。

バリンガー
オーケー、さて…あそこにある死体は放射能を帯びている。そして崩壊しつつある。あの機密事項のドラゴンミサイルがあの生物を吹き飛ばしたからか、あの生物がもともと放射能を帯びていたからか、またはその両方か、いずれにしてもまずい状況なんだよ!

ダクストン
教授…

バリンガー
まだ終わってないんだ。僕の検査で、あの生物は死んだ時点でまだ成長の途中だったことが確認された。あれは幼体なんだよ。いま僕はね、あの生物が一匹しかいないと推定するなんて僕らはなんて甘かったのかと考えてる。とりわけ、あの生物にまだ成長する余地があるのならね。僕の言いたいことがわかってもらえればだが。

ダクストン
わかった、ちょっと待った。待ってくれ。俺がちゃんと理解できているか確かめさせてくれ。君が言っているのは、古代の、原子力で活動する、体高がおそらく…ええと、500フィートの怪物が生きていて、都市部を目指して沿岸を移動しているということだな。

バリンガー
なるほど、あなたの口から聞くと、こいつは人生で聞いた中で最高にバカげた話に聞こえるね。

ダクストン
しかしそれが、君が俺たちに話していることだ。

バリンガー
まさにそれが、僕があなたたちに話していることなんだよ。

画面急に替わって


内景 会議室の外 昼間

バリンガー
彼らは信じなかった。

デイナとトニーは同情するように見ている。

デイナ
それで、私たちはどうするの?

バリンガー
僕たちで証拠を見つけるんだ。あの油井やぐらに行って、何が起きているのかを調べよう。
(陰謀を企むみたいに)
ヘリコプターを手配することはできるかもしれないが、パイロットをどうするかが難しいところだな。

デイナの顔に笑みが浮かび、彼女はトニーを見る。

デイナ
その心配はいらないと思うわよ。

 

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