映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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外景 大平洋 油井やぐら 夜

油井やぐらはごつごつした金属の構造物で、どこか恐竜に似ている。周囲には何マイルもの海と暗闇が広がっている。やぐらの小さな明かりがいくつも霧を通して見えている。穏やかな海を渡って、ブイの鐘の鳴る音が漂ってくる。

字幕 カリフォルニア州 ポイント・サー


イメージ 1
(参考:油井やぐら こんな感じでしょうか?)


イメージ 3



内景 油井やぐらの夜間警備員の詰所 夜

カビの生えた壁。部屋の中は暗い。黄ばんだペントハウスのカレンダーと、デスクの上にぶら下がった裸電球。デスクではやや若い警備員が、ポータブルのカセットプレーヤーで雑音の多い50年代のリズム・アンド・ブルースを聞いている。彼はパーカッションに合わせて、手のひらでデスクを叩いてリズムを取っている。

彼は灰皿から短くなったマリファナを取って、一口吸う…もう一人の年寄りの警備員が、神秘的な賢者か何かみたいに霧の中から戸口に現れる。

年寄りの警備員
…1945年8月5日のことだ…

若い警備員
言わなくてもいいよ。「スピットファイア」にダン・ボリングだろ…

音楽が流れている。年寄りの警備員はコーヒーをすする。

年寄りの警備員
(昔を懐かしむように)
「スピットファイア」は最高だったんだぞ、若造め。俺たちは予定より1日早く爆弾を運んだ。だがダン親父は発進の1時間前まで、爆撃機に爆弾を積み込ませなかった…
(日付からして「爆弾」は広島に投下された原子爆弾を指しているようです)

若い警備員
(デスクに両足を載せて)
この話をするのがだんだん上手になってるね。千回も話してるもんなあ。

年寄りの警備員はコーヒーを置き、カセット・プレーヤーをつかみ、壁から電源ケーブルを引きちぎる。

年寄りの警備員
もうたくさんだ、若造め!おまえも、お前のくだらないロック音楽も…

若い警備員
よせよ、おい…落ち着けよ!


外景 油井やぐらのプラットフォーム 夜

年寄りの警備員がカセット・プレーヤーを担いで詰所から出て来て、手すりのガードレールの方へ行く。心配顔の若い夜警が彼を追って出てくる。まだマリファナを持ったままだ。

年寄りの警備員
年寄りを敬うこともしないで…

彼はプレーヤーを頭上に差し上げ、甲高い声で笑う…

若い警備員
やめろ、そのプレーヤーは200ドルもするんだぞ…

年寄りの警備員はプレーヤーをプラットフォームから投げ捨てる。遠くで海に落ちる音がする。彼は嬉しそうにニコニコしながら振り返る。

年寄りの警備員
だいたい、俺たちが戦争に勝ったことをどう考えてるんだ?黒んぼの音楽なんぞ聞きやがって!?

彼は狂った満足感で興奮している。彼の背後で、海から巨大な怪物の頭が上がってくる。両目は夜の闇の中で輝き、口にはカミソリのように鋭い歯が何百本も並んでいる。恐ろしい、トカゲのようなゴジラの顔だ。今度は幼体ではなく成獣だ。彼の頭はプラットフォームの高さでは止まらず、さらに高く上がっていき、画面から出て…

若い警備員は顔面蒼白になり、立ち上がっていく怪物を追って、彼の首が上を向いていく。彼は手に持ったマリファナに目をやり、それを投げ捨て、恐怖に呆然として怪物を見上げ続ける。

年寄りの警備員
(ゴジラに気づかずに)
さあ、おまえは本物の音楽を語りたいんだよな。ベニー・グッドマンを!グレン・ミラーを!ドージー・ブラザースを!

彼は若い警備員の視線に気づき、ゆっくり振り返って、ものすごい怪物が頭上にそびえ立っているのを見る…

年寄りの警備員
なんてこった!神さま!

彼は恐怖でその場から動けなくなる。若い警備員が駆け出す。


内景 夜間警備員の詰所

若い警備員が駆け込んできて、ぶら下がっているホルスターからおぼつかない手つきでリボルバーを抜き出し、また走って出て行く。

外に戻って

怯えた年寄りの警備員はほとんど真上を見上げていて、それが怪物が実際にどれほど大きいかを示している。若い警備員は前に出て狙いをつけ、ピストルを撃つ。頭上から深く反響する「グルルルル」という唸り声が聞こえてくる。

それがどんなに馬鹿げたことかを悟って、若い警備員はピストルを投げ捨て、恐怖にすくんで動けない年寄りの警備員を押して我に返らせる。

若い警備員
圧力ゲージだ!圧力ゲージのところへ行くんだ!


外景 油井やぐらの操作プラットフォーム 夜

山を思わせる恐ろしい姿が油井やぐらのそばを通っていく…霧の中に巨大で不格好な背びれを見てとることができる。その前景で若い警備員がコントロール・パネルに駆け寄り、必死にスイッチを押している…

インサート・カット 一丁のハンマー

工具ラックにぶら下がっている。若い警備員の手がそれを握り…


外景 油井やぐら 夜

恐竜のような掘削ドリルが繰り返し上下に動き始める。場面が替わる寸前、ゴジラは前屈みになって原油タンクの上面と向き合う。怪物のいぶかしげな表情を霧が取り巻いている。


外景 第2コントロールプラットフォーム 年寄りの警備員のクローズ・アップ

怯えている年寄りの警備員が、必死に両手でダイヤルを回しながら、肩越しに背後を繰り返し見ている。小さなメーターが、オイルの圧力が上がっていることを示している。


外景 油井やぐらの最頂部

ポンプが上下に動き続けている。


外景 油井やぐらのプラットフォーム メイン・パイプ

若い警備員がパイプの方に登ってくる。彼の頭上から大きな、はっきりしない唸り声が聞こえてくる。彼はハンマーの尻についた爪を使って、全身の力でパイプに切りつける。


外景 第2コントロールプラットフォーム

怯えた年寄りの警備員は、何が起きているかを知らない…

年寄りの警備員
若造!?何をやってるんだ?ゲイリー!


外景 油井やぐらの最頂部に戻って

霧の中から巨大な爬虫類の爪が2本出て来て、その1本が、動くポンプにためらいがちに触れる。まるで愛おしむかのように。


外景 メインパイプに戻って

若い警備員がもう一度ハンマーを振るい、プシューッ!パイプが壊れてオイルの飛沫が噴き出す。そして…

外景 油井やぐらの最頂部

ゴジラの指の一本が丸められ、やぐらを殴りつける…


外景 第2コントロールプラットフォーム

年寄りの警備員はパニックを起こし始めている。

年寄りの警備員(続けて)
ここから出してくれ!この鉄くずのクソ穴から出してくれ…


外景 メイン・パイプ 若い警備員

上着を脱いで、噴き出す石油をしみ込ませる。彼はもたもたとライターを取り出し、火を点け、上着が燃え上がる…


外景 油井やぐらの最頂部

ほとんど画面の外にいるゴジラが、怒って油井やぐらの頂部を殴りつける。大きな唸り声が純然たる咆哮に変わっていき…


外景 メイン・パイプ 若い警備員

燃えている上着を噴出するオイルの方へ投げる。そして…

メイン・パイプ 別の新しいアングルで

カメラに向かって炎が噴き出す。


外景 油井やぐら ロー・アングルから

噴き出す炎が一瞬、ゴジラの紀元前の姿を照らし出す。彼は驚きの咆哮を上げ、前肢で顔を覆い…


外景 第2コントロール・プラットフォーム 年寄りの警備員のクローズアップ

彼は恐怖に絶叫する。その声は狂気に近づいている。そして…


外景 第2コントロール・プラットフォーム ロー・アングルから

ゴジラが咆哮し、彼の巨大な拳がカメラに向かって振り下ろされる…


外景 油井やぐら 第2コントロール・プラットフォーム 引いたアングルで

ゴジラの爪が振り下ろされてプラットフォームをばらばらに粉砕し、年寄りの警備員の絶叫が途切れ、破片がカメラに向かって飛んでくる。そして…


外景 油井やぐら メイン・パイプ 夜

緊張に疲労困憊した若い警備員は、石油まみれになって、自分を落ち着かせようと独り言をつぶやいている。

若い警備員
…俺は言ったんだ、夏だけのアルバイトだって。俺はもうやめるぞ。30分でここから出て、何時間かしたら…(等々)

彼は必死で、さっきの上着を使った仕掛けをもう一度やろうとしている。だが間抜けなライターは火が点かない。火花を散らすだけだ…

若い警備員
点けよ、このくそったれの馬鹿野郎、点くんだ、この…


外景 油井やぐら 全体をとらえて 夜

霧を通してゴジラの巨大な姿がはっきりと見える。彼は怒りに燃えて咆哮し、油井やぐらを破壊していく。霧に取り巻かれているが、怪物は明らかに油井やぐらよりもはるかに大きい。彼のぎざぎざの背びれが発光しはじめて…


外景 油井やぐら メイン・パイプ 夜

若い警備員は必死になってライターで火を点けようとしている…

若い警備員
お願いです神様お願いです、多くは望みませんから…

ライターに火が点く。それが彼の石油まみれの手に火をつけ、その火のために彼はライターを落とし、そのライターのためにデッキ全体が炎に包まれ、その炎のためにメイン・パイプが炎に包まれ…


外景 大平洋 油井やぐらを引いた画面でとらえて 夜

炎上する油井やぐらと、燃える炎に照らされる巨大なシルエットを遠くからとらえる。そして水面を渡って、ゴジラのあの咆哮が響いてくる。夜の水平線が巨大な放射能の光で明るくなり、それが消えて行き、油井やぐらは、暗い水面にオレンジ色の反射を写しながら燃え続けている。

フェード・アウト 


内景 新聞社のオフィス 昼間 テレタイプのクローズ・アップ

コンピューターのカタカタいう音とともにプリントアウトが出てくる。油井やぐらの大惨事を発見した沿岸警備隊の報道発表だ。油井やぐらの損害の原因と、発見されない警備員たちの行方は「不明」とされている。

デイナ

彼女はその発表を読む。彼女の顔の筋肉がこわばっているのがわかる。彼女はページをめくり終え、自分の机に行き、荷物をつかんで決然とした様子で出て行く。途中でメアリーのデスクの前を通る。

メアリ
デイナ?ノースビーチのポルノの件の取材に行くの?
(だがデイナはそのまま出て行ってしまう)
仕事熱心な記者のお通りね。それとも、クズ男とデートかな。


内景 トニーのアパート 窓から歓楽街を見下ろして 昼間

バーやストリップ・クラブ、けばけばしく眩しいネオンや品のない売春婦たちが見える。

売春婦の声
見て行ってよ!サービス料なし!あんた、こっちだよ…男でも女でもいいよ。見るのはタダだよ!

カメラはアパートの中へ引いていき、売春婦の大声がくぐもった低い声に変わっていく。部屋の中はひどく散らかっている。トニーがワイルド・ターキーの瓶を抱いて窓際の乱れた寝台に横たわり、白黒テレビで「空の大怪獣ラドン」を観ている。
ドアをノックする音がする。

トニー
部屋賃ならないんだ、だから…
(ドアの方を見て)
おっと…ブレンダ・スター(アメコミの主人公で、敏腕女性記者)のおでましとなれば、のんびりと酔っぱらってもいられないな。何の用だい?

開いた戸口に立っているのはデイナだ。彼女は部屋の中を見回す。

デイナ
いいお住まいね。

トニー
ごみためさ。座ってくれ。

デイナは思い切って中に入る。

デイナ
私は…ええと…あなたが持ってきたものについて、どうしてあなたからその後の問合せがないのか知りたくて来たの…

彼女はでこぼこした、救世軍からもらったラウンジ・チェアに腰かける。

トニー
いいかい…お嬢さん…俺があんたに来てくれと頼んだわけじゃないし、いま俺の一部はだめになってる。だからこうしよう。俺はここに座って日課の運動をして、あんたに話をしてやる。もし退屈したらさっさと帰って構わないよ。どっちにしろ俺は気にしないからな。

彼はベッドの上の汚れた洗濯物に手を伸ばし、服を取り出すと、クロゼットのドアに取り付けてあるバスケット・ゴールに向かって投げる。洗濯物はゴールの下にある洗濯かごに落ちる。そうしながら彼は話を続ける。

トニー
いいかい、それほど遠くない昔、俺がヘリを飛ばしていた頃だ…ヘリと言えば、俺はこの惑星で作られたあらゆるヘリを飛ばせる。記録に残しといてくれ…。俺はある女に出会った。よくある話だろう?だけど本当にかわいい女だった。あんたにすごく似てたよ。
(にっこり笑って)
とにかく、何もかもオーケ-で、何もかもすばらしかった。だがある日、彼女はスキー狂だか何だかと一緒に逃げちまった。俺に残ったのはヘリを飛ばす仕事だけ。そして、ドカン!…だしぬけに俺には何もわからなくなり、そのことが俺を苦しめるようなった。俺はヘリを飛ばす。だがその理由はわからない。そして俺はその理由を考えついた。いいかい、人はただ何かをすることはできないんだ。自分のことを真剣に考えてくれる人が必要なんだ。わかるかい?俺の上官?俺をクビにしたさ…それが、彼がどれだけ俺のことを真剣に考えていたかってことなんだ…そして海の底から何かを見つけて、そいつを何とかしようとしたら何が起きるか?きれいな服を着て新聞社のオフィスに座ったあんたが、キチガイを見るみたいな眼で俺を見る。

彼はワイルド・ターキーをぐいと煽る。沈黙。

デイナ
私があなたの気持ちを傷つけたと言いたいのね。

トニー
実に物書きらしい片付け方だな。だけどその通りだ。あんたは俺のプライドを傷つけた。

デイナ
そんなつもりはなかったの。ごめんなさい。

トニーは肩をすくめる。デイナは立ち上がって彼に近づく。

デイナ
ねえトニー…トニーよね?私も、あなたは何か重要なものを見つけたと考えてるの。証拠が見つかったら自分の頭を殴ったっていい、って言いかねないバークレーの科学者もいるわ。

トニー
どんな証拠を?

デイナ
大平洋で、なにかすごく奇妙なことが起きている。でもいい、私は証人としてあなたが必要なの。あなたが実際にあれを発見したということ、何かが実際に起きたということを証明するためにね。

トニー
おいおい、待てよ…あんたはこの件に記事になるネタがあると思ってるようだけど…

デイナ
だけど、あなたは何があると思ってるの?

彼は想像の中でデイナ側から1点を取られ、言葉に詰まる。

デイナ
私にもわからないわ。何もないかもしれない…あなた、他に何かすることがあるの?

トニーの顔にゆっくりと笑みが広がる。テレビの中でラドンが金切り声を上げる。


外景 プレシディオ軍用地 昼間 ミサイルをとらえたモンタージュ 緊張感のある音楽で

海兵隊員がミサイルを積み下ろして台車に降ろし、ミサイルがカメラに向かって突き出してくる。ダクストンが監督しているが、彼の友人でもある情報部員のチャーリーが実際の指揮をしている。付近には武装した警備兵たちが立っている。

アメリカの外交官(声のみ)
大使閣下、お忘れなく。あなたの国の潜水艦および装備されていたミサイルの存在は、プラハ平和条約に対する明瞭な違反となるのですよ…

画面、急に切り替わって


内景 大使館の会議室 昼間

外交官たちがテーブルを囲んでいる。カービー将軍もいて、いつものように緊張している。ソビエト大使がロシア語でぶつぶつ話している。

大使館の通訳
彼は、我々は南太平洋での核実験の噂に対処して行動しているにすぎない、と言っています。


内景 スマートな通路 プレシディオの建物 音楽が続いている

殺風景な壁。未来的な球形の照明器具が天井に並んでいる。武装した警備兵に先導された兵士たちが、ミサイルの運搬台車をカメラに向かって押してくる…

大使館の通訳(声のみ)
大使はミサイルがどこにあるか知りたがっています…

兵士たちが角を曲がり、「ドラゴン」ミサイルをある研究室のドアの中へ運び込む。口に煙草をくわえているのはダクストンだ。カメラは彼に寄って…

アメリカ外交官(声のみ)
ミサイルはこの件に関するすべての政治的問題が解決されるまで、研究のために保管されます。ですがご安心ください…優秀な人員が対応していますから…


外景 パシフィック・グローブ 昼間 場所を印象づけて 緊張感のある音楽は続いている

字幕 カリフォルニア州 パシフィック・グローブ

イメージ 2


外景 海岸沿いの道 美しい海

前のシーンから音楽が続いて緊張感のある雰囲気のところへ、8歳から11歳の少年が3人、道をやってくる。年長の2人は一番幼い少年に何かを投げて「あっちいけ」の遊び(特定の子にボール等を投げ、捕られると投げる役を交替する遊び)をしている。

はるか遠くの海で…水面からゴジラの頭が現れ、周囲を見回し、また水中に没む。少年たちは気づかない。音楽が強まって…

幼い少年
みんな!投げてよ!お願いだよ!

 

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ヘボ訳者
ヘボ訳者
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