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外景 大平洋 油井やぐら 夜
油井やぐらはごつごつした金属の構造物で、どこか恐竜に似ている。周囲には何マイルもの海と暗闇が広がっている。やぐらの小さな明かりがいくつも霧を通して見えている。穏やかな海を渡って、ブイの鐘の鳴る音が漂ってくる。
内景 油井やぐらの夜間警備員の詰所 夜
カビの生えた壁。部屋の中は暗い。黄ばんだペントハウスのカレンダーと、デスクの上にぶら下がった裸電球。デスクではやや若い警備員が、ポータブルのカセットプレーヤーで雑音の多い50年代のリズム・アンド・ブルースを聞いている。彼はパーカッションに合わせて、手のひらでデスクを叩いてリズムを取っている。
彼は灰皿から短くなったマリファナを取って、一口吸う…もう一人の年寄りの警備員が、神秘的な賢者か何かみたいに霧の中から戸口に現れる。
音楽が流れている。年寄りの警備員はコーヒーをすする。
年寄りの警備員はコーヒーを置き、カセット・プレーヤーをつかみ、壁から電源ケーブルを引きちぎる。
外景 油井やぐらのプラットフォーム 夜
年寄りの警備員がカセット・プレーヤーを担いで詰所から出て来て、手すりのガードレールの方へ行く。心配顔の若い夜警が彼を追って出てくる。まだマリファナを持ったままだ。
彼はプレーヤーを頭上に差し上げ、甲高い声で笑う…
年寄りの警備員はプレーヤーをプラットフォームから投げ捨てる。遠くで海に落ちる音がする。彼は嬉しそうにニコニコしながら振り返る。
彼は狂った満足感で興奮している。彼の背後で、海から巨大な怪物の頭が上がってくる。両目は夜の闇の中で輝き、口にはカミソリのように鋭い歯が何百本も並んでいる。恐ろしい、トカゲのようなゴジラの顔だ。今度は幼体ではなく成獣だ。彼の頭はプラットフォームの高さでは止まらず、さらに高く上がっていき、画面から出て…
若い警備員は顔面蒼白になり、立ち上がっていく怪物を追って、彼の首が上を向いていく。彼は手に持ったマリファナに目をやり、それを投げ捨て、恐怖に呆然として怪物を見上げ続ける。
彼は若い警備員の視線に気づき、ゆっくり振り返って、ものすごい怪物が頭上にそびえ立っているのを見る…
彼は恐怖でその場から動けなくなる。若い警備員が駆け出す。
内景 夜間警備員の詰所
若い警備員が駆け込んできて、ぶら下がっているホルスターからおぼつかない手つきでリボルバーを抜き出し、また走って出て行く。
外に戻って
怯えた年寄りの警備員はほとんど真上を見上げていて、それが怪物が実際にどれほど大きいかを示している。若い警備員は前に出て狙いをつけ、ピストルを撃つ。頭上から深く反響する「グルルルル」という唸り声が聞こえてくる。
それがどんなに馬鹿げたことかを悟って、若い警備員はピストルを投げ捨て、恐怖にすくんで動けない年寄りの警備員を押して我に返らせる。
外景 油井やぐらの操作プラットフォーム 夜
山を思わせる恐ろしい姿が油井やぐらのそばを通っていく…霧の中に巨大で不格好な背びれを見てとることができる。その前景で若い警備員がコントロール・パネルに駆け寄り、必死にスイッチを押している…
インサート・カット 一丁のハンマー
工具ラックにぶら下がっている。若い警備員の手がそれを握り…
外景 油井やぐら 夜
恐竜のような掘削ドリルが繰り返し上下に動き始める。場面が替わる寸前、ゴジラは前屈みになって原油タンクの上面と向き合う。怪物のいぶかしげな表情を霧が取り巻いている。
外景 第2コントロールプラットフォーム 年寄りの警備員のクローズ・アップ
怯えている年寄りの警備員が、必死に両手でダイヤルを回しながら、肩越しに背後を繰り返し見ている。小さなメーターが、オイルの圧力が上がっていることを示している。
外景 油井やぐらの最頂部
ポンプが上下に動き続けている。
外景 油井やぐらのプラットフォーム メイン・パイプ
若い警備員がパイプの方に登ってくる。彼の頭上から大きな、はっきりしない唸り声が聞こえてくる。彼はハンマーの尻についた爪を使って、全身の力でパイプに切りつける。
外景 第2コントロールプラットフォーム
怯えた年寄りの警備員は、何が起きているかを知らない…
外景 油井やぐらの最頂部に戻って
霧の中から巨大な爬虫類の爪が2本出て来て、その1本が、動くポンプにためらいがちに触れる。まるで愛おしむかのように。
外景 メインパイプに戻って
若い警備員がもう一度ハンマーを振るい、プシューッ!パイプが壊れてオイルの飛沫が噴き出す。そして…
外景 油井やぐらの最頂部
ゴジラの指の一本が丸められ、やぐらを殴りつける…
外景 第2コントロールプラットフォーム
年寄りの警備員はパニックを起こし始めている。
外景 メイン・パイプ 若い警備員
上着を脱いで、噴き出す石油をしみ込ませる。彼はもたもたとライターを取り出し、火を点け、上着が燃え上がる…
外景 油井やぐらの最頂部
ほとんど画面の外にいるゴジラが、怒って油井やぐらの頂部を殴りつける。大きな唸り声が純然たる咆哮に変わっていき…
外景 メイン・パイプ 若い警備員
燃えている上着を噴出するオイルの方へ投げる。そして…
メイン・パイプ 別の新しいアングルで
カメラに向かって炎が噴き出す。
外景 油井やぐら ロー・アングルから
噴き出す炎が一瞬、ゴジラの紀元前の姿を照らし出す。彼は驚きの咆哮を上げ、前肢で顔を覆い…
外景 第2コントロール・プラットフォーム 年寄りの警備員のクローズアップ
彼は恐怖に絶叫する。その声は狂気に近づいている。そして…
外景 第2コントロール・プラットフォーム ロー・アングルから
ゴジラが咆哮し、彼の巨大な拳がカメラに向かって振り下ろされる…
外景 油井やぐら 第2コントロール・プラットフォーム 引いたアングルで
ゴジラの爪が振り下ろされてプラットフォームをばらばらに粉砕し、年寄りの警備員の絶叫が途切れ、破片がカメラに向かって飛んでくる。そして…
外景 油井やぐら メイン・パイプ 夜
緊張に疲労困憊した若い警備員は、石油まみれになって、自分を落ち着かせようと独り言をつぶやいている。
彼は必死で、さっきの上着を使った仕掛けをもう一度やろうとしている。だが間抜けなライターは火が点かない。火花を散らすだけだ…
外景 油井やぐら 全体をとらえて 夜
霧を通してゴジラの巨大な姿がはっきりと見える。彼は怒りに燃えて咆哮し、油井やぐらを破壊していく。霧に取り巻かれているが、怪物は明らかに油井やぐらよりもはるかに大きい。彼のぎざぎざの背びれが発光しはじめて…
外景 油井やぐら メイン・パイプ 夜
若い警備員は必死になってライターで火を点けようとしている…
ライターに火が点く。それが彼の石油まみれの手に火をつけ、その火のために彼はライターを落とし、そのライターのためにデッキ全体が炎に包まれ、その炎のためにメイン・パイプが炎に包まれ…
外景 大平洋 油井やぐらを引いた画面でとらえて 夜
炎上する油井やぐらと、燃える炎に照らされる巨大なシルエットを遠くからとらえる。そして水面を渡って、ゴジラのあの咆哮が響いてくる。夜の水平線が巨大な放射能の光で明るくなり、それが消えて行き、油井やぐらは、暗い水面にオレンジ色の反射を写しながら燃え続けている。
フェード・アウト
内景 新聞社のオフィス 昼間 テレタイプのクローズ・アップ
コンピューターのカタカタいう音とともにプリントアウトが出てくる。油井やぐらの大惨事を発見した沿岸警備隊の報道発表だ。油井やぐらの損害の原因と、発見されない警備員たちの行方は「不明」とされている。
デイナ
彼女はその発表を読む。彼女の顔の筋肉がこわばっているのがわかる。彼女はページをめくり終え、自分の机に行き、荷物をつかんで決然とした様子で出て行く。途中でメアリーのデスクの前を通る。
内景 トニーのアパート 窓から歓楽街を見下ろして 昼間
バーやストリップ・クラブ、けばけばしく眩しいネオンや品のない売春婦たちが見える。
カメラはアパートの中へ引いていき、売春婦の大声がくぐもった低い声に変わっていく。部屋の中はひどく散らかっている。トニーがワイルド・ターキーの瓶を抱いて窓際の乱れた寝台に横たわり、白黒テレビで「空の大怪獣ラドン」を観ている。
ドアをノックする音がする。
開いた戸口に立っているのはデイナだ。彼女は部屋の中を見回す。
デイナは思い切って中に入る。
彼女はでこぼこした、救世軍からもらったラウンジ・チェアに腰かける。
彼はベッドの上の汚れた洗濯物に手を伸ばし、服を取り出すと、クロゼットのドアに取り付けてあるバスケット・ゴールに向かって投げる。洗濯物はゴールの下にある洗濯かごに落ちる。そうしながら彼は話を続ける。
彼はワイルド・ターキーをぐいと煽る。沈黙。
トニーは肩をすくめる。デイナは立ち上がって彼に近づく。
彼は想像の中でデイナ側から1点を取られ、言葉に詰まる。
トニーの顔にゆっくりと笑みが広がる。テレビの中でラドンが金切り声を上げる。
外景 プレシディオ軍用地 昼間 ミサイルをとらえたモンタージュ 緊張感のある音楽で
海兵隊員がミサイルを積み下ろして台車に降ろし、ミサイルがカメラに向かって突き出してくる。ダクストンが監督しているが、彼の友人でもある情報部員のチャーリーが実際の指揮をしている。付近には武装した警備兵たちが立っている。
画面、急に切り替わって
内景 大使館の会議室 昼間
外交官たちがテーブルを囲んでいる。カービー将軍もいて、いつものように緊張している。ソビエト大使がロシア語でぶつぶつ話している。
内景 スマートな通路 プレシディオの建物 音楽が続いている
殺風景な壁。未来的な球形の照明器具が天井に並んでいる。武装した警備兵に先導された兵士たちが、ミサイルの運搬台車をカメラに向かって押してくる…
兵士たちが角を曲がり、「ドラゴン」ミサイルをある研究室のドアの中へ運び込む。口に煙草をくわえているのはダクストンだ。カメラは彼に寄って…
外景 パシフィック・グローブ 昼間 場所を印象づけて 緊張感のある音楽は続いている
外景 海岸沿いの道 美しい海
前のシーンから音楽が続いて緊張感のある雰囲気のところへ、8歳から11歳の少年が3人、道をやってくる。年長の2人は一番幼い少年に何かを投げて「あっちいけ」の遊び(特定の子にボール等を投げ、捕られると投げる役を交替する遊び)をしている。
はるか遠くの海で…水面からゴジラの頭が現れ、周囲を見回し、また水中に没む。少年たちは気づかない。音楽が強まって…
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