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外景 バハ・カリフォルニア 昼間
黄色く乾燥した不毛な土地。焼けつくような砂と低木が広がっている。柔らかな風が吹いて、字幕が表示される。「バハ・カリフォルニア」
字幕が消え、四輪駆動車がエンジンを吹かして近づいてくる音がする。数マイルに渡って見えるのは砂漠だけで、その音には不思議な感じを受ける。音が大きくなり、小さなトカゲたちが隠れ場所を求めてちょろちょろ走って行く。カメラの前に砂丘があるのがわかる。そして突然…
どこからともなく、屋根なしの軍用ジープが砂丘を跳び越える。4つのタイヤが一瞬地面を離れ、ジープはこちらへ向かって飛んでくる…
外景 砂漠 ジープを追って行く 昼間
ジープは勢いよく着地する。サスペンションが揺れ、車の後ろに砂煙が立つ。恐怖に硬直した陸軍の士官が、助手席に座っているダクストンをにらんでいる。ダクストンは申し訳なさそうに笑っている。運転しているのはケビンだ。彼はジャイアンツの帽子をかぶっている。彼は楽しんでいるのでは?と考えるならそれは正しい。彼は狼のように雄叫びを上げる。
ジープからの視点で 猛スピード
ジープは次から次へ丘を越えていき、砂といくつもの岩が我々に迫ってくる。そしてついに…カメラが最後の坂を越え、広がる大平洋が視界に入ってくる。
外景 海岸 バハ・カリフォルニア 昼間
ケビンはジープをほかの軍用車の隣に停める。そこら中で軍人たちが歩き回っている。うんざりした陸軍の士官はダクストンを射るような眼で睨みつけるが、すぐに背を向けてジープを降りる。ダクストンはケビンに昔ながらの親指を立てるサインを見せ、ケビンは気取りのない大きな笑顔を見せる。
軍人たちがダクストンに会いに来て、ダクストンとケビンは車を降りる。抑制された切迫感が急に感じられる。騒ぎの声だけが聞こえてきて、ダクストンとケビンはそれがどこから聞こえるのだろうと周囲を見回す。
外景 海岸 その近く
別のジープが停車する。同乗しているのは眼を回したバリンガー1人だ。運転手と彼がジープを降りると、保安係の士官が1人、ペンとクリップボードを持ってバリンガーに駆け寄る。別の海兵隊員が彼らを案内していき、カメラは一行を追う。
バリンガーたちはディクソンが軍人たちと打ち合わせをしているところまで来る。先頭の海兵隊員が保安係士官の話をさえぎり、簡潔に紹介する。
二人はあわてて握手をする。
冒頭に登場したカービー将軍が額を拭いながら現れ、バリンガーの言葉はそこで終わる。
そして一行を案内していく。バリンガーは前よりももっと混乱する。ダクストンはケビンを探して周囲を見回す。
外景 崖のふもと バハ・カリフォルニア 昼間 ケビンを追って行く
彼は好奇心に駆られて、軍人たちのそばを通ってあの騒ぎの源へと向かう。メキシコの地元民たちの脚をかきわけ、カメラはブームアップする。
数十人の地元民たちが、一列に並んだメキシコの警官たちに叫び、争っている。制服を着た警官たちは、地元民たちが崖から眼下の海を見る事ができないように押しとどめている。
ケビンに戻って…カメラは寄って行く
彼は地元民たちをかき分けて進んで行き…
崖のふもと 群衆たちの最前列
ケビンが出てくる。警官隊の注意は彼よりも群衆の方に向けられている。実際のところ、その「注意」は暴力沙汰ぎりぎりのところまで来ている…
ケビンはうまく這って警官たちのそばをすりぬけ、砂浜を見下ろす崖を登っていく。そこでは…
外景 砂浜を見下ろす崖 昼間
ケビンが坂を上がってきて、クローズアップになり…そこで見ているものに彼の顔は蒼白になる。
外景 砂浜 別のアングルから 軍人たち
ダクストンとバリンガー、その他の面々が画面に入ってくる。ケビンと似たような反応を見せる。カメラはバリンガーをクローズ・アップする。彼はまるで、これまでの人生すべてはこの瞬間のためにあったのだ、と言わんばかりの顔をしている。
ケビンに戻って
その光景にまだショックを受けている。そしてやっと、
外景 砂浜 主観映像の引いた画面で 昼間
浜辺では、ほぼ家ほどの大きさがある巨大な爬虫類が、横腹を下にして胎児のような姿で丸くなっている。その周囲には何台ものジープが停まっていて、軍の科学者や軍人たちがすぐそばを歩き回り、驚嘆しながら、測定した値を互いに叫んでいる。その生物はどうやら幼体であるようだ。節くれだった短い爪をして、前腕は昔ながらの死人のように重ねられている。短い幅広の尾は内側に湾曲し、先端に向かって尖っている。奇妙な、ごつごつした隆起が背骨にそって並び、眼窩の中で生命を失った黄色い眼を剥いている。
ミイラのようなその巨獣の死体には、どこか哀れを誘うものがある。その口からは海藻がぶら下がり、鎧のような皮膚は太陽に灼かれている。あるべき場所、あるべき時代から離れて、その死体はひどく場違いなものに感じられる…
内景 会議室 夜 ダクストンのクローズアップから
画面が引いて、軍人たちの姿が見える。そのうちの数人は海岸で見た顔だ。彼らは一つきりの照明の下、長いテーブルの周囲に座っている。
会議室はおしゃべりと興奮した議論の声で収拾がつかなくなる。
部屋中が話す声と議論で一杯になる。
バリンガーのクローズ・アップ。興味を引かれ、疑い、驚嘆している。
いかめしい顔つきをした、青い眼の士官が物陰から照明の下に身を乗り出す。すぐに我々は彼が誰かがわかる。オト島の遠征部隊の指揮官、マクダーモット准将だ。
バリンガーは馬鹿みたいにニコニコして、今にもアレン・フントが飛び出してくるぞと予期しているみたいにマクダーモットを指さす。(アレン・フントはアメリカのドッキリ番組のプロデューサー。日本で言えば「元祖どっきりカメラ」の野呂圭介?)
この後の彼の台詞の間、カメラはマクダーモットに近づいていき、オト島の遠征部隊のカット、怪物の存在を証明する直接的な証拠のカットが瞬間的に何度も挿入され「マクダーモットは嘘をついている」ということを印象づける。
会議は再び大混乱に陥り、全員が一斉にしゃべりはじめる。その騒音の中から、
人々が話を続ける中、カメラが照明器具にクローズ・アップする。そこに小さな、ペンダントの飾りのようなマイクがちらりとのぞいているのが見える。
内景 薄暗い部屋 夜 カメラは電線を追って行く
カメラは電線から…ヘッドフォンとテープレコーダーへ。テープのリールが回っている。機械の前に座っているのは、あのメキシコの漁船をハイジャックしたロシア人工作員の一人だ。クラスチコフがうろうろ歩いている。
スピーカーから会議の騒音が聞こえてくる。クラスチノフはサディスティックににやりと笑う。
外景 バハ・ホテル 中庭 夜
スパニッシュ・ギターの曲が流れている。ダクストンとバリンガーは噴水と、ホテルの客がカクテルをすすっているテーブルの前を通り過ぎる。前景に太い柱が見える。頭上には見事な星空が広がっている。
2人はある柱のそばを通り過ぎる。その柱にはケビンがしっかりとロープで縛りつけられている。彼が「縄抜け」をしようとしているのがわかる。
ケビンが縄から抜け出し、走って画面に入ってくる。得意げな表情だ。
3人はホテルのロビーのすぐ外で立ち止まる。
ダクストンの顔が蒼白になる。彼が見つめているレスリーが画面に入ってくる。彼女は夜会服を着て、ダクストンと同じくらい驚いている。ダクストンとレスリーはじっと見つめ合う。
ケビンは状況を理解し、走って行ってしまう。
外景 中庭の隅 夜
ケビンがある柱のそばを走り去る。その柱の陰には邪悪なクラスチノフが、にやりと笑いながら立っている。
ダクストンたちに戻って
彼は賢明にも、見え見えの口実を使ってこの場からすみやかに逃げ出す。
外景 崖のふもと 夜
前景で陸軍の警備兵が2人、おしゃべりしているのが見える。彼らの後ろをケビンがこっそり通っていき、そして…
外景 海岸を見下ろす崖 夜
ケビンが斜面を登ってきて、草の上に腰を下ろし、眼下の海岸に横たわる巨大な怪物の死体を見下ろす。
外景 崖 ケビンにクローズ・アップして
ぼんやりと怪物を見つめている。風が彼の髪を乱す。彼の背後の闇から一本の手が伸びてくる。
ケビンはぎょっとする。
彼は落ち着きを取り戻したケビンのそばに座る。
外景 バハの海岸 夜 ケビンとバリンガーの背後から
紀元前の怪物の死体は、巨大な防水シートで覆われている。シートが風にはためく音が聞こえる。すべては柔らかな青い月明かりの下で波に揺られている。とても穏やかで、平和だ…。
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