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外景 ポリネシアの村
ヤシの木が立ち並び、熱帯の鳥たちが鳴いている。さまざまな動物たちがよちよちと土の道を横切って歩いて行く。大きな泥水の池で裸の原住民の子供たちが遊んでいる。やがて、その池は巨大な爬虫類の足跡に雨水が溜まったものだということがわかってくる。
字幕が消えて行き、一団のアメリカ特殊部隊員たちが歩いて画面に入って来る。制服とベレー帽を身に付け、強力なカービン銃を振り回している。
先頭に立つのは口やかましそうな外見の士官、マクダーモット准将だ。おそらくは大学の予備士官訓練課程の大スターで、アーリア系のハンサムな顔と、明るい、ほとんどアルピノのような青い眼をしている。服のしわ一本の誤りもない、典型的なナチのようなタイプだ。
マクダーモットの部下たちが泥の中を歩いて行き、道の端では困った原住民たちがぶうぶう不平を言っている。遠くで犬が吠えている。兵士たちが立ち止まり、信じられないという顔で見つめる。
道沿いにある藁葺きの小屋が1軒、ぺしゃんこに潰れている。マクダーモットは周囲を見回す。
道の反対側。別の小屋がぺしゃんこに潰れ、こちらは黒こげになってくすぶっている。小屋の前の泥の中で、原住民の男が黒ずんだ焼死体を抱いてすすり泣いている。彼の妻だった死体だ。今ではマクダーモットでさえ怯えているようだ。
突然…ドスーンという轟音がして地面が揺れる。もう一度。そしてもう一度。原住民たちはパニックを起こし、金切り声を上げて逃げていく。特殊部隊員たちは混乱して見つめている。
原住民の女性が1人マクダーモットの元に走って来ると、彼の制服をつかんで早口のポリネシア語でまくし立てる。彼女はものすごい足音がした方角の空を指さす。彼女の顔には原始的な恐怖が浮かんでいる。
マクダーモットが顔を上げる。ショックを受けた表情だ。特殊部隊員たちは銃を下ろし、1人2人逃げ出す者もいる。女性が悲鳴を上げ、猛烈な甲高い咆哮が空気を裂き…
外景 サンフランシスコ 昼間 場所を印象づけて
港のそばにある美しい街。前のシーンの咆哮はこのシーンの冒頭まで響いて、それから交通や都市の音に変わっていく。
内景 新聞社のオフィス 昼間
メアリー・ウッドルフがテレタイプのプリントアウトを引き出し、机に戻りながら声に出して読み上げる。忙しい部屋の中では他の記者たちや編集者たちが働いている。
ワード・プロセッサーの前にはデイナ・クライヤーが座っている。彼女は20代の前半、必要以上に魅力的で、軽く舌を噛んだまま壁にかかった的に向かってダーツの狙いをつけている。彼女はカメラに向かってダーツを投げ、ザクッ、窓の横にある的に命中する。
彼女はダーツを投げる…ダーツはカツンと音を立てて窓に当たり、床に落ちる。
デイナは優しく笑って仕事に戻り、ワード・プロセッサーのキーをカタカタ打ちはじめる。愛想のいい年寄りの警備員、ウォルトがぶらぶら通りかかる。
デイナは微笑んでうなずく。彼女の机に影が落ちる。
トニー・オロークがデイナに新聞記事を手渡す。タイトルはこうある。「サン・ミゲルの近くでトロール漁船に怪現象」
興味を引かれ、またわずかに苛立ちながら、デイナはペンと紙を取りに行く。彼女はちらりとメアリーを見る。メアリーはにやにや笑いながら、親指と人差し指で「オーケー」のサインを作っている。意味は「アタックしちゃいなさい」。
彼は上着の中に手を入れる…メアリーは緊張してウォルトの方を見る。ウォルトは銃に手を伸ばそうとしている。そして…マットはビニール袋に入った何かを取り出す。彼はビニールを取り、デイナの机にその物体を置く。
それは紀元前の三葉虫だ。地球上で最初に生まれた生命体の一つで、3億年前に絶滅している。三葉虫はまだ濡れていて、体表の溝は海藻に覆われている。
デイナは当惑して、それをじっと見る。そして顔を上げ、他の記者たちを見る…
内景 大学の講義室 バリンガーのクローズ・アップから始めて
ジェラルド・バリンガー教授が写る。彼は30代の半ば、ワイシャツを着てネクタイ(曲っている)をして、プレッピーとだらしなさの中間といった服装だ。彼は黒板に言葉を一つ書き終え振り返る…
…講義室の方へ。講義室は退屈した学生たちでいっぱいだ。バリンガーは最前列の席の前を歩き回りながら、長い支持棒を振っている。彼はその棒で、ノートに落書きをしている友愛会タイプの学生を指す。
学生たちはこの講義に反応を示す。居眠りをしている者が多いが、熱心に聴いている者もいる。あの友愛会タイプの学生は、友愛会タイプの女子学生といちゃついている。
バリンガーが講義室の後方の何かに気づく。学生たちはクスクス笑う。
デイナが何でもない風を装ってドアから入ってくる。すぐにバリンガーと目が合ってしまい、彼女は失敗する。
話を続けながら、バリンガーは指示棒を下ろして黒板に行き、恐竜に似た生物のスケッチを手早く描く。デイナは講義室の後ろから熱心に聴いている。
彼は怪物の絵の中に胃袋に似た円を描き、巨大なエネルギーを発することを示す線を何本も引く。
デビーは目を覚まし、顔を赤くする。
学生全員がその答えを期待してバリンガーを見つめる。自分が話してきたことに誰ひとり興味がないとわかって、バリンガーは明らかにがっかりしている。
学生たちがまるで撃たれたみたいに立ち上がり、教室は恐ろしいほど騒がしくなる。バリンガーは教卓から講義ノートを片付け、上着を着る。たくさんの学生たちが彼に研究課題を手渡していく。デイナが講義室を出て行く学生たちをかき分けながら、バリンガーのところへ来る。
少しの間、バリンガーは呆けたように宙をにらみ、そして相手が誰だか思い出す。彼は自分の頭を銃で撃つジェスチャーをして、握手の手を差し出す。
外景 大学の中庭 昼間
美しい場所だ。青い空、緑の芝生、堂々たる周囲の建物群。そこらじゅうに学生たちがいる。バリンガーとデイナは歩いて行き、カメラは2人を追って行く。
元気そうな大学院生がそばを走って行く。
デイナは自分のバッグを探っている。
彼女は三葉虫を彼に手渡す。彼は受け取り、立ち止まって調べる。
彼はまだ三葉虫を調べている。興味を引かれ、我を忘れているようですらある。
ある建物の近くまで来ていたバリンガーとデイナが顔を上げる。2人の前の階段の上に、三つ揃いのダーク・スーツを着た気難しそうな役人が2人立っている。グリー・クラブ(合唱クラブ)ではない。
彼女はわずかにまごついて首を振る。
2人は握手する。その瞬間、2人が惹かれあっているのが感じられる。デイナは移り気なのだ。
デイナは「かまいませんよ」と肩をすくめる。
彼女はバリンガーと目配せを交わし、政府の役人を見て、帰って行く。
内景 空港 昼間
旅行客たちが荷物を運び、場内放送が旅客機の到着と出発を告げている。バリンガーは公衆電話に立ち、片耳をふさいで元気よくしゃべっている。足元には小さなダッフルバックがブリーフケースと一緒に置かれている。
内景 空港の待合室 少し後
バリンガーが出発エリアの待合ベンチに座っている。彼は腕時計を確かめ、顔を上げる。彼の表情が輝くような笑顔に変わり、彼は立ち上がる。
バリンガーのガールフレンドが見える。旅行向きの服装をして、小さなスーツケースを持っている。そして彼の言うことは正しい。彼女はすばらしく美しい。美しくて、そして少し怯えてもいる。
その女性はレスリー・アン・ダクストンだ。
フェード・アウト
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