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外景 メキシコの漁船の甲板
ロシア人の一人が漁師たちの死体を見張っている。彼は双眼鏡を眼に当てる。
外景 双眼鏡ごしの視点で 救助作戦の望遠映像
先に見た海軍の艦船。片方はナバホ級のタグボートで、ナバホ級の後ろにいる方は対潜フリゲート艦だ。海軍の兵士たちが甲板を走り回っているのが見える。
先頭のタグボートからは、タラップを利用した急ごしらえの潜水プラットフォームが水中へ伸びている。
双眼鏡が救助船から横に動いて、流線型の深海潜水艇「シガレット・ボート」をとらえる。潜水艇は速度を落とし、潜水プラットフォームに近づいてくる。
外景 救助作戦 潜水プラットフォーム 引いた画面で 昼間
潜水艇がプラットフォームに到着し、乗組員たちがてきぱきと作業して装備品などを積み下ろす。口やかましそうな外見の士官、ウィルキンス大尉が出迎えの先頭に立ってタラップを降り、乗組員たちが潜水艇をプラットフォームに固定する。
若い操舵手と別の士官が潜水艇から降りてくる。ウィルキンスと握手したその士官が我々の注意を引く。
彼はピーター・ダクストン中佐。年齢は40歳ぐらいだ。がっしりした外見で、短く黒い髪で、片眼にアイパッチをしている。彼は青いウェットスーツの上に革のフライト・ジャケットを着ている。そして口の端には煙草が、まるで生まれたときからそうしているみたいにぶら下がっている。
集まった者たちは黙って彼を見る。
内景 メキシコの漁船の船室 昼間
クラスチコフの口元に笑みが広がる。彼は双眼鏡を下ろして、先に見たロシア人工作員に手渡す。
彼らのロシア語の台詞は字幕で翻訳される。
クラスチコフは舵輪にもたれているパコ船長の死体が身に付けていたバンダナを取る。彼は海の向こうをノスタルジーと嬉しさの混じった視線で眺める。カメラが寄って、
彼はバンダナを使って、飛び出したままでギラリと光る手首の刃を拭い、ぱちんと鞘に納める。次に使う時に備えて…
外景 潜水プラットフォーム 救助作戦 昼間
ウェットスーツを着た5人のダイバーが、乗組員たちに手伝ってもらいながら装備を身に付けている。ダイバーたちはそれぞれ強力なサーチライトを装備している。ダクストンがウィルキンスと船員を1人伴ってタラップを降りてくる。ウィルキンスと船員が、ダクストンが潜水具を身に付けるのを手伝う。
ソナー手は気味悪そうに指さす。ダクストンはアクアラングを装備し終える。
ダクストンは顔を上げて水平線を調べる。ナバホ級に乗っている見張りが、フリゲート艦に乗っている士官に向かって叫ぶ。
ダクストンは重たげな眼で彼を見る。彼らの近くでは準備を済ませたダイバーたちが手早く輪になって、頭を下げている。
彼はブイの見張りに手で合図する。彼は水中に伸びているワイヤーのそばに立っている。ダイバーたちはフットボール選手のように一声叫んで分かれ、マスクをつけ、マウスピースを咥える。
水中 くぐもった音
透明な美しい景色。海上から光が差し込んでいる。少しの間がある。だしぬけにダイバーたちが一人ずつ画面に飛び込んでくる。海藻やプランクトンが彼らの周囲を舞い、彼らは海面のブイから海底に伸びているワイヤーを頼りに潜っていく。
さまざまなショット 水中 ダイバーたちが潜水していく
深度を増すにつれて海は暗くなっていく。ダイバーたちは視界を確保するためにサーチライトを点ける。
海面下深く ダイバーたち 彼らにクローズアップしていく
彼らは探しているものに近づいていく。不吉な、何ものかの危険を感じさせながら…なぜなら暗闇の向こう、眼下に巨大な塊があるのが見えるからだ。気泡が昇ってくる…。
初め、その湾曲した広い表面は粗く見える。そしてあちこちへ動くサーチライトの光線に部分部分を照らされて、その表面が滑らかであることがわかる。それが何であれ、ダイバーたちが小さく見えるほどの巨大さだ。やがて我々にもそれが何かがわかってくる…巨大な原子力潜水艦の船体だ…。
水中 エアロックのハッチ
ダイバーたちが泳いで画面に入ってきて、その1人が金属でできたごついエアロック・バルブをつかみ、回し始める。カメラは船体にあるロシア語の飾り文字へ移動する。「X-114-CCCP」の大きな文字。(CCCPはソビエト社会主義共和国連邦の略称)
ディゾルブ
内景 ソビエト潜水艦
中は狭苦しく、閉所恐怖症を起こしそうだ。非常灯が2つ3つ、ちかちか光っている。艦内には濃いもやがかかっている。ハッチの上にある小さなスピーカーからは空電のサーッという音が流れてくる。サーチライトの光線がもやを貫き、ダクストンを先頭にダイバーたちが姿を現す。ダイバーたちは、この区画の床に数インチ溜まった水をはね散らしながら歩いて来る。
ダイバーのうち二人が目配せを交わす。彼らはダクストンの言葉に説得力を感じていない…。
内景 ソビエト潜水艦 監視区画 暗闇
ハッチが大きく開き、ダイバーたちが入って来る。彼らのサーチライトが、片側の壁から一列に並んで張り出したビデオ・モニターを照らし出す。電源が切れかかっていて、モニターは点いたり消えたりを繰り返している。ダクストンはいぶかしげにコンソールに近づく。
内景 ソビエト潜水艦 通路区画 暗闇
少しの間がある。そして金属製のハッチががちゃんと開き、その音が鈍く反響する。おなじみになったサーチライトの光がカメラのレンズに反射する。ダクストンが前に歩み出て、他のダイバーたちは別々の方向へ散っていく。
ダクストンは暗がりの脱出ハッチの窪みに近づいていく。そこには頭上の暗闇に伸びている金属の梯子がある。彼はサーチライトで上を照らそうとするが、梯子の行方を見る前に彼のライトがちかちか点滅して消えてしまう。
誰かが自分のライトをダクストンのいる角に投げてよこす。まさにその瞬間、ダクストンの背後、暗い天井からロシア人将校の死体が落ちてきて、振り子のように揺れながら画面に飛び込んでくる。その青白い顔が、開いたままの死人の眼で恐ろしげにカメラを見つめる。
内景 ソビエト潜水艦 艦首バッテリー室 ボンベではなく潜水艦内の空気を吸っている
ダイバーたちは新しい区画に入っていき、サーチライトの光が別の死人の恐ろしい顔をちらりと照らし出す。ダイバーの2、3人が激しく咳き込む。濃いもや越しに、潜水艦の乗組員たちの死体が床に散らばっているのが見える。
死体たちが着ているソビエト軍の制服に気づいて、ダイバーたちは目配せを交わす。ダクストンがダイバーたちをかき分けて先頭に出る。あの心配そうな顔のダイバーがハッチからダクストンを呼ぶ。
ダクストンは前に出る。ダイバーたちの咳はさらに激しく、止まらなくなっていく。ダクストンは彼らに下がっているよう警告する。
彼はもう一度潜水マスクとレギュレーターをつけ、ハッチへ向かう。
内景 ソビエト潜水艦 魚雷室 濃いもやが立ち込めている
ダクストンはここを発見した、とても信じられないという表情のダイバーの横を通って、魚雷室に入る。彼らは潜水具を使って呼吸していて、気味の悪い音が金属の壁に反響している。床に巨大なロッカーのような箱があり、側面が開いたままになっていて…小型の、奇妙な外観のミサイルが2発突き出している。3発目があるはずのスロットは空になっている。
ミサイルの近くに、まるで卵を守る雌鶏のように、潜水艦の指揮官の死体が転がっている。その制服は乾いた血の色に染まっている…彼は喉を切られているのだ。
ダクストンは振り返って、レギュレーターを咥えたダイバーを見る。ダイバーはダクストンについてくるようしきりに手を振っている。
内景 ソビエト潜水艦 監視区画
ダクストンがよろけるようにしながら入って来る。彼の周囲では他のダイバーたちが空気を求めて喘いでいる。ダクストンもマウスピースを外し、喘ぎながら…
彼はダイバーたちが全員どうしていいかわからず、期待するように自分を見ていることに気づく。ダイバーの一人が仲間の肩をずるずる擦りながらくずおれる。その男は呆然として床に座り込む。
ダクストンはいぶかしげにビデオのコンソールに向き直る。電源は入っている。どう操作するのか全くわからない。ダイバー#1がダクストンを厳しい眼でじっと見て、そして前に歩み出て、「再生」ボタンを押す。
床に座り込んだダイバーが、体を揺すりながらぶつぶつ呟きはじめる。ビデオの画面は空電ノイズだけで、それからちかっと光る。ぼんやりした白黒の映像が映る。ぼやけてはっきりしない、黒と灰色のぼんやりしたものがビデオカメラのレンズを覆っている。
ダイバーたちは広がってくるガスのために咳込んでいる。ダクストンは瞬きもせず、鷹のように鋭い眼で画面を見つめている。
白と黒のぼんやりしたものがさらに増え、そして白い閃光。はっきり見えるものは何もない…そして…何かが…何とでも思える何かがビデオカメラの前を横切る。画面は真っ暗になる。
そしてその何かが戻って来る。まだはっきりとは見えない。だがほんの少しの間、それは…巨大な爬虫類の頭に見える。だがそんなのは馬鹿げている。少なくとも我々は馬鹿げていると考えるが、その頭に似た何かはカメラの方を向き、一瞬だけその両眼が見える。細められた爬虫類のような眼が恐ろしげにカメラの方に向いたそのとき…
モニターと全ての電力がショートして切れる。画面にノイズが走り、そして真っ暗になる。周囲の照明灯が、もう切れてしまったモニターのコンソールを薄暗く照らしている…。
外景 大平洋のどこか他の場所 昼間
灰色の水平線に小さな点が一つ現れる。遠いヘリコプターのローター音も聞こえる。
ローター音は大きくなり、小さな点は大きくなって形をとりはじめる。それが流線型をした、沿岸警備隊のヘリコプターであることがわかってくる。字幕が消える…。
ローター音は耳を聾するほどになり、ヘリは高い波の上を低空で飛んで、まっすぐカメラに向かってくる。そして…
外景 トロール漁船の甲板 カメラ反転してヘリコプターをとらえる
ヘリは機体を傾けながら飛び去り、爪楊枝を咥えたトニー・オロークが画面に入ってくる。彼はそのヘリを、敬意のようなものを感じさせる目で見つめている。トニーは流れ者だ。外見もそういう雰囲気だ。厚手のジャケット。風になびく髪。二日分の無精髭。彼の背後のブリッジから、潮に焼けた男、ニックが声をかける。
トニーはぼんやりとうなずき、海を眺めている。頭上でカモメが鳴いている。
外景 トニーの視点で 海
ブイが波間で揺れて、鐘を鳴らしている。
トニーに戻って
興味を引かれ、平静を失ってブイを見つめている。
外景 トニーの視点で 海 さらにアップで
またブイを見ている。同じ位置にある。背景でニックがぺちゃくちゃしゃべっている。
トニーに戻って 少しアップで
何かが決定的におかしい。緊張が高まる。トニーが口にくわえていた爪楊枝を取る。彼の眉がひくつく。不安。
外景 トロール漁船の甲板 昼間
トニーは振り返り、他のたくさんの漁師たちが互いに叫び合いながら甲板を走っているのが見える。
外景 トロール漁船 船尾 昼間
ここで、この漁船がかなり大型のものであることがわかる。大勢の甲板員がいる。その一人が手で口を囲って叫ぶ。
トニーが画面に駆け込んできて、周囲を見回す。
トニーは船の縁に行く。そこでは数人の漁師たちが必死に網と格闘している。網は水中にあって引っぱられている。緊急事態だ。
一連のカット 内景と外景 トロール漁船 昼間
A 水面から伸びる網。ぴんと張りつめている。そして…
B 操舵室。そこでは船長が「全速前進」と命令している…
C 船の強力なスクリューが水をかき回している…
D 船尾では、熟練の漁師たちが半狂乱になりつつある…
E 再び操舵室。船長も平静を失いつつある。部下の操舵員がどうしようもなくエンジンを吹かしているが、何の効果もない。
F 水中にコルクの浮きが一つ浮かんでいる。まるで下に引っぱられているみたいに激しく揺れている。
外景 トロール漁船 船尾 昼間
ある漁師が手袋をした手で網をつかんでいる。そして悲鳴を上げ、引っぱられて船べりを越え眼下の海に落ちる。そして…
外景 トロール漁船 船全体をとらえて 昼間
エンジンが痛々しく唸っているのが聞こえる。そして船が前進していないだけでなく、実際には、今では徐々に速度を増して後ろへ進んでいるのがわかる。船尾は不安定に沈み始め、水面に近づいている。
外景 トロール漁船 船尾 昼間
船尾が水に浸かりはじめ、船員たちはぎょっとして逃げ出していく。タフな網持ちたちは水に浸かっている。トニーは何が起きているか理解し、すばやく考え、道具箱の方へ駆け出す…
…そして大きな斧を持って船尾に戻ってきて、網のワイヤーに激しく切りつける。他の船員たちもそれに倣い、斧をつかんで切りつけ、網を切り離す。そして…
外景 トロール漁船 全景をとらえて
最後のワイヤーが切り離され、船尾が持ち上がり、船は水平を取り戻す。
外景 トロール漁船 船尾 甲板上
船長が現れ、他の乗員たちと一緒に驚愕の目で見つめている…
外景 水面 コルクの浮き
水中で揺れている。そして、まるで引っ張られたかのように漁船から離れていく。浮きは海面を北へ、本土の方へ移動していき、波の下に消える…
漁師たちは信じられない、という眼で見つめている。そして興奮から立ち直ると、互いの意見をやかましく話し合う。さきほど海に落ちた不運な漁師も、びしょぬれで船に助け上げられている。
トニーはこのすべてに少し茫然としたまま、残りの、ずたずたになった網を引き揚げる作業を手伝いに行く。その背景で、
トニーは漁網のある部分を引っぱる。彼はそこに何かが絡まっているのに気づく。彼は網を解いてそれを外してやる。我々にはそれが何かは見えず、トニーの顔が見えるだけだが、彼は自分が発見したものを当惑して見つめている…
画面、急に変わって
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