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怪獣王ゴジラ
3D
脚本
フレッド・デッカー
原案
スティーブ・マイナー
準備稿 改訂済第一稿
真っ暗な画面
フルートの独奏で、単調で耳障りな曲が流れている。
黒い画面に青い文字で字幕がフェード・インする。
字幕が消える。
フェード・イン
外景 深宇宙 宇宙空間 まったくの静寂
はるかな暗黒の海に広がる、星々のパノラマの立体映像。
画面が我々を呑み込もうと迫ってくる…
そして、はるか彼方でひとつの物体が太陽の光を受けてきらめく。それは回転しながら宇宙空間をカメラに向かって飛んできて…ごつごつした鉱物の塊であることがわかる。その小惑星は速度を上げ、われわれが身を伏せる間もなく、こちらへ向かって飛んでくる。
外景 宇宙空間 カメラが反転して-彼方の美しい地球
小惑星は我々のそばを通り過ぎ、回転しながら地球へ向かう。
外景 宇宙空間 地球を見下ろして
地球の外縁部-はるか下に海と陸地が見える-から回転する人工衛星へゆっくりパンアップする。それは核ミサイル衛星で…細い金属棒で組まれた本体に大型のパラボラアンテナと、二列に並んだ6発の核ミサイルを備えている。
衛星のクローズ・アップ
アメリカの国籍標識と、万国共通の警告標識「危険」「放射能」のそばに、制御ランプが並んだパネルがある。出しぬけに、そのランプの一列が緑色に点滅し始める。
内景 NORAD(北米防空システム)本部 昼間
左右の壁に最新の追跡システムのコンソールが並んだ、薄暗いハイ・テクの部屋。管制官たちが忙しくボタンを押し、モニターを見つめている。とても冷静で実務的な様子だ。
衛星の試験をする管制官が自分のコンソールの画面に表示される情報をじっと見つめている。彼の指揮官はそのそばに立って、コーヒーをすすっている。
画面がさっと替わって
外景 宇宙空間
小惑星が回転しながらカメラに向かって飛んでくる。もはやどうすることもできない…
外景 宇宙空間 軌道を回る人工衛星
ゆっくりと優雅に回転している。少しの間があり…そして小惑星が画面に飛び込んできて、真空の空間で人工衛星に衝突する。カメラに向かって火花と破片を飛ばしながら…
人工衛星のクローズ・アップ ミサイルの発射庫
破壊されながら、ミサイルの発射を示す緑色のランプが点灯し、サイロから核ミサイルが1基発射される。
外景 宇宙空間 引いた画面で
遠くで衛星が爆発し、発射されたミサイルがカメラに向かって飛んでくる。
外景 宇宙空間 地球
ミサイルはカメラのそばを飛び去って、赤く輝きながら地球の大気圏に突入する…
NORAD司令部 レーダー・スクリーンのクローズ・アップ
レーダー・スコープの画面で緑色の光点が点滅し、緊急事態を知らせる耳をつんざくような警報サイレンが司令部に鳴り響く!
内景 NORAD本部 追跡システムのコンソール
興奮した管制官たちが切迫した様子でヘッドセットのマイクに喋っている。モニター・スクリーンの緑色の光が彼らの顔を気味悪く照らしている。
さきほど退屈そうだった指揮官は、今ではパニックを起こしている。
いかにも将校らしい外見のジャック“バズ”カービー将軍が現れ、指揮を交代する。どうしていいかわからない管制官たちは、指示を求めて彼を見る。
内景 サイロの発射台 昼間
男根を思わせる、MXタイプの核ミサイルの発射台。水圧で作動している。シューッと蒸気が上がり、発射台の支持アームが収納されていく。
内景 NORAD本部 超クローズ・アップで
指が発射ボタンに近づき、そして…
外景 ミサイルのサイロ 上からのショット 昼間
炎と煙が激しく噴出し、猛烈な噴射音とともにカメラに向かってミサイルが打ち上げられる。
内景 NORAD本部 昼間 非常に緊張した雰囲気
将軍の顔は、もちろんわかっている、と示している。
カメラは追跡管制官に寄って、
外景 青空 昼間
衛星から発射されたミサイルが、恐るべきスピードでカメラに向かって飛んでくる。
外景 海面上空 巡航ミサイル
核ミサイルを迎撃すべく、意思を持っているかのように飛行していく。
外景 ポリネシアの村 昼間
茅葺の家々。動物たち。裸の子供たち。村人たちが砂利道に出て来て、原始的な恐怖を抱いて空を見上げている。彼らは空を指さし、早口の現地語で静かに話し合っている。
外景 ポリネシアの村 空を写して 昼間
制御不能になった核ミサイルが、弧を描いて空を渡って行く。
外景 海面 昼間
核ミサイルが海に飛び込み、そして…
外景 海面 巡航ミサイル
やはり海に飛び込み、弾丸のようなスピードで水を切り裂いて潜っていき、そして…
外景 海 引いた画面で 昼間
一瞬の静かな間。そして水面下で閃光が起きる。オレンジ色の巨大な火の玉が膨れ上がり、爆発と雷鳴とハリケーンが一つに混ざったような轟音がそれに続く。
まるで復讐のためにすべてのクジラたちが同時に潮を吹いたような、海水の巨大な水柱が噴き上がる。そして爆発は静まり、また静寂が戻ってくる。
急にカット替わって
内景 NORAD本部 昼間 追跡管制官
カメラが引いて、集まっている管制官や技術者たちが歓声を上げる。全員が安堵し、背中を叩きあったり握手したりしている。破滅は避けられたのだ。
指揮官はカービー将軍を見つめてほほえむ。将軍は重々しく、額をハンカチで拭う。
外景 南太平洋 海上 昼間
遠くにツァモト諸島が見える。カメラは水面下に入っていき…
水中 濁った水 カメラは水中に潜っていく
カメラは緑青色の渦を巻く深海へ潜っていく。爆発が泥と死んだ海生生物たちを撒き上げている。カメラはさらに深く潜っていき、周囲の水はさらに暗くなって、何も見えない。海底がぼんやりと見え、そして…
海底
奇妙な火山性の光が、起伏のある海底の地形を照らしている。爆発が引き起こした水の動きや破片に関係なく、ここは奇妙なほど穏やかだ。静かで、平穏だ…。
そして突然…融けてひび割れた岩から気泡と熱が立ち上り…亀裂が口を開けて…カメラは急速なアップになり、巨大な爬虫類の爪が海底から突き出して、カメラにつかみかかる…
メイン・タイトル「怪獣王ゴジラ 3D」
クレジットが流れ、カメラは再び上昇していく。クレジットが終わりに近づき、水はじょじょに明るく、鮮やかな青になっていく。そして…
字幕 大平洋 メキシコ グアタルペ
クレジットが消え、カメラが海面に出る。
外景 海上 メキシコの漁船を見上げるアングルで
長年使われてきて、がたの来た小さな船。
外景 メキシコの漁船の甲板 昼間
トランジスタ・ラジオからメキシコの音楽が小さく流れている。この漁船のもうろくした年寄りの船長・パコが船室の外に座って、女学生のようにあや取りをしている。
彼の背後で、若いメキシコ人の漁師がロープを巻き終わり、船首の方へ歩いて来る。彼がパコのそばを通るとき、老船長は自分が作ったあや取りをさしだして見せる。
もうろく爺さんはぶつぶつ独り言をつぶやき、漁師は同僚の、二人目のメキシコ人漁師のところへ行く。
2人は訳知り顔で笑い、また仕事に戻る。漁師の片方が右舷に何かあるのを見つけ、もう一方に指差してみせる。
彼らの視点で 大平洋 救助作戦
はるか彼方に、わけありそうな海軍の船が二隻いる。
漁師たちに戻って
2人は好奇心と当惑で、その様子を眺めている…彼らの背後で、人影がひとつ船の側面から上がって来る。口にナイフを咥えた、ウェット・スーツ姿のダイバーだ。
その男はナイフの刃を持ち、投げる…
…鈍いザクッという音がして、片方の漁師が顔をゆがめ、肩甲骨に刺さったナイフに手を伸ばそうとして、くるりと回り…そして海に落ちる。彼の同僚は振り返って見る…
あのフロッグマンが、クレーンからぶら下がっている錆びた大きなフックを持っている。彼はフックを漁師に向かって投げつける。漁師が避けるどころか考える暇もなく、フックは彼の顔に命中する。そして…
いくつかの連続ショットで ロシア人工作員たち
全部で6人が甲板に上がって来る。全員黒いウェットスーツ姿だ。リーダーが手で合図すると、工作員たちは静かに、密やかに、多くの訓練を積んできたと思わせる動きで散開する。
内景 船室 昼間
もうろく船長が楽しそうに船室に入って来る。外のトランジスタラジオから、メキシコのディスコ・ソングが流れてきて、彼はスペイン語の鼻歌を歌う。彼が舵輪に手をかけたとき、ウェット・スーツを着た腕が彼の首に回り、もう一方の手が口をふさぐ。そして…
手首に金属の装置を付けた、厚みのある手が見える。指が曲がって手の平のボタンに触れると、その装置からカメラに向かって、幅の広い矢じりのような形状の鋭い刃が飛び出す。
ボリス・クラスチコフは手首の刃をパコ老人の目の高さに掲げ、そして…
歯をむき出して刃を前に突き出す。ザクッ!と嫌な音がして、血が弧を描いてクラスチコフのウェットスーツに飛び散る。
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