映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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108 キャンプの近くの荒野 夜

黒のマシンはゆっくりとキャンプから離れていく。犬がいらだって唸っている。マックスは自分のショットガンを握る。
ドスンという音!屋根の上に誰かが着地したのだ。犬が窓に駆け寄って唸り声を上げる。マックスはショットガンの銃口を屋根に押し当てる。顔が現れる。フロントガラスに寝そべってマックスを覗きこんでいる。野生児だ。
彼はにっこり笑い、助手席の窓から転がり込んでくる。彼はマックスの手を握り、握手する。
野生児は笑い、シートに座り込む。
車は走り続ける。

マックス
出て行け。
シッ!帰るんだ。

野生児は困惑して彼を見て、そして頭をのけぞらせて遠吠えする。
マックスは車を停め、怯えた様子で周囲を見回す。
地平線に朝日の最初の光が現れる。
マックスは野生児の方へ振り返る。

マックス
おまえはいい子だが、一緒に連れては行けない。おまえは学ばなくちゃだめだ…誰かと仲良くなるな。それはおまえを苦しめることになるかもしれない。

野生児は一言も理解できず、ただにこにこ笑っている。マックスは内ポケットにさっと手を入れ、手回しオルゴールを取り出す。
彼はオルゴールを野生児の手に押しつけると、ドアを開けて野生児を押し出す。


109 荒野 夜明け

野生児が立ち上がり、黒のマシンはスピードを上げて、ヒューマンガスの野営地がある丘へ走っていく。
大馬力の急速な燃焼が排気管の4つの栓を吹き飛ばす。巨大なエンジンが轟音を上げる。


110 キャンプを見下ろす丘 夜明け

ウェズがぱっと立ち上がる。彼の顔には一面に白い戦化粧が施されている。彼の眼が暗闇の中を探る。彼は走りだす…ヒューマンガスのマシンに向かって。ゲイボーイ・バーサーカーの一人が彼と一緒に走っている。二人が車に乗り込むと、犠牲者の柱近くの岩の上に座っていたヒューマンガスが立ち上がる。
ウェズがマックスを追跡すべく車を出し、ヒューマンガスは怒りで胸を喘がせる。車の前部に縛り付けられたままの二人の犠牲者が顔を上げる。


111 ヒューマンガスのマシン 夜明け

ヒューマンガスのマシンから、ウェズは他に6台の車両が黒のマシンを追って荒野を走って行くのを見る(レッカー車が一台、デューン・バギーが二台、乗用車が二台とバイクだ)。
ヒューマンガスのマシンの燃料タンクの下で寝ていたトーディーが、まごついた様子で姿を見せる。


112 キャンプ近くの道路 夜明け

黒のマシンは道路までたどりつく…
犬は助手席の窓から後方を見ている。追跡隊の最初の一台がガタゴトと道路に上がってくる…
マックスはスーパーチャージャーのスイッチを入れる…
大型のエンジンが甲高い音を上げる。
犬はまたシートの下に潜り込む。
ヒューマンガスのマシンが猛スピードで道路に上がってくる…そして追跡隊の他の六台を一台また一台と追い抜いていく…

ワイプ


113 ハイウェイ 早朝

マックスはアクセルをいっぱいに踏んで飛ばしている…
ヒューマンガスのマシンに乗ったウェズとゲイボーイ・バーサーカー、そしてトーディーは他の略奪者たちを大きく引き離している…
大型のマシンは黒のマシンに追いつきそうに見える。
ウェズが命令を叫び、ゲイボーイ・バーサーカーが彼のそばに来る。ゲイボーイ・バーサーカーが運転を代わり、ウェズは車両の前方へよじ登る。
ゲイボーイ・バーサーカーは下に手を伸ばす。彼の手は三本のガスボンベのそばのトグル・スイッチの上に構えられている。ボンベにはこう書かれている。

「亜酸化窒素」

車両の前方ではウェズが宙に突き出した太い排気管をつかんでいる。その熱さをものともせず、彼は排気パイプを台座からむしり取る。彼はゲイボーイ・バーサーカーに手で合図する。
ゲイボーイ・バーサーカーがぱちんととグル・スイッチを入れる。ヒューマンガスのマシンが急激に猛烈な馬力を産み出し、それに見合うものすごい轟音が響く…
車の前面にいる二人の犠牲者が悲鳴を上げる…マックスはその猛烈な加速にまごつく。
ヒューマンガスのマシンはすぐに黒のマシンの真横に並ぶ。
ウェズがフロントガラスをぶち破って…マックスの顔へクロームのパイプを振り下ろす。


114 ハイウェイのカーブ 朝

黒のマシンは標識を一本なぎ倒し…道路上で何度も横転する。
車の中では血まみれの顔をしたマックスと犬が、黒のマシンの運転席内のあちこちに叩きつけられている。
車は何度も何度も転がり続け、谷底へ落ちていく。


115 川床 朝

車の残骸は乾いた川床の砂利の上に、逆さまになって止まる。マックスはぐったりして、シートベルトでぶら下がっている…彼の顔と身体は血にまみれ、傷を負っている。何かが動いている…犬が残骸の中から這い出してくる。彼はマックスの顔を舐め、前足で叩く。マックスの片目が瞬きして開く。


116 丘 朝

ウェズが立って谷底を見下ろしている。別の車が到着する。ゲイボーイ・バーサーカー二人とトーディーがジェリカンを手に、残骸を目指して這い降りていく。

ウェズ
殺すなよ。生きてたら連れて来い。


117 川床 朝

ものすごい意思の力で、マックスはシートベルトから抜け出す…略奪者どもの近づいてくる音がして…彼は残骸の窓から這い出す。
彼は地面に倒れ、身動きの利かない身体で大きな岩の陰に這っていき、そこに隠れる。
犬は略奪者たちに向き合い、彼らと残骸の間に立って唸り声を上げている。
ゲイボーイ・バーサーカーの一人がクロスボウを構える…
マックスは強張った顔でじっと見つめている。犬が殺される。
三人の略奪者たちは車に駆け寄ってくる。
トーディーがガソリンを抜き出す用意をする一方、他の二人は壊れた運転席を覗きこんでいる。
当惑して、彼らは残骸をさらによく調べる。マックスを探して…
彼らの一人が川床を這いずって行った跡に気づく。
彼は別の略奪者に合図する…マックスは身を守る用意をする…トーディーが黒のマシンの燃料タンクのキャップを開ける。
ブービー・トラップが爆発し…燃料に引火して…三人の略奪者は巨大な火の玉に飲み込まれる。
マックスは炎を透かしてウェズをじっと見つめている。彼からじっと目を離さない…


118 路端 朝 

ウェズと他の略奪者たちが、太い煙の柱が空へ立ち昇っていくのをじっと見つめている。
彼らは自分の車両へ戻っていく。


119 キャンプの中 朝

ジャイロ・キャプテンがラスティ・ガールに手を貸し、小さなテントの一つを畳んでいる。背景ではキャンプの車両たちに一杯に荷物が積み込まれ、出発の準備ができているのが見える。メカニックのチームはまだ牽引車で作業をしている。塔からピスモが叫び、ジャイロ・キャプテンは顔を上げて、残骸から空へ立ち昇る煙を見る。
ジャイロ・キャプテンは呪いの言葉を低くつぶやくと、自分のマシンへ走り出す。


120 川床 昼間

一歩また一歩、マックスは重い足取りでキャンプを目指して川床を進んで行く。彼の頭と顔の傷から血が流れている。彼の両脚は役に立たず、両手には彼の革ジャケットからちぎった布が包帯がわりに厚く巻かれている。
彼の背後、はるか遠くには、まだ煙を上げている黒のマシンの残骸が見える。
マックスはあがき続け、痛みはひどくなり、太陽が昇って気温が上がっていく。彼の心はさらに熱に浮かされたようになる。荒野が陽炎の中にぼやけていく。彼の顔の周りで蝿が立てる羽の音が、くぐもったエンジン音に変わっていく。
彼の真上にジャイロ・コプターが現れる。


121 ジャイロ・コプターの機上 昼間

ジャイロ・コプターのシャーシに縛りつけられたマックスが、ぼんやりと意識を取り戻す。
彼はキャンプが彼らの方へ近づいてくるのを見る。ジャイロ・コプターは着陸すべく接近する。
彼はまたぼんやりと意識を失う。映像はぼやけ、溶けていく…


122 キャンプの中 パネル・バン 昼間

調子はずれの「ハッピーバースデー」の曲が聞こえ、マックスの両眼がひくついて開く。彼は必死で周囲の状況を理解しようとし、我々には彼の傷が縫い合わされ、包帯を巻かれているのが見える。彼は頭を上げ、パネル・バンの後部ドアから外を見る。
バンの屋根に野生児が座って、手回しオルゴールを回している。
そして眼の焦点が合ってきて、彼は野生児の向こうに、タンク車へ接続された牽引車を見る。タンク車の前面には機関車の排障器が取り付けられ、ボンネットには装甲板が、車体の両側にはタイヤを守る金属の覆いと有刺鉄線の網が取り付けられている。
マックスの視界がはっきりしてくる。彼はキャットウォークに立ったパパガロがキャンプの人々に演説しているのを見る。
マックスはまた頭を横たえ、もう片側に目をやる。むくんだ顔が彼を見返す。
「静かなる男」が意識不明のまま、彼の隣の担架に横たえられている。
マックスはあわてて頭を上げ、周囲を見回す。彼は自分がパネル・バンの中にいることを理解する。バンの天蓋は取り外され、彼の担架は並んだ44ガロン入りのドラム缶の上に載せられている。


123 キャンプの中 キャットウォーク 昼間

パパガロはキャットウォークの上を歩き回りながら、眼下に集まったキャンプの人々に最後の指示を与えている。

パパガロ
俺たちはタンク車と二台の車を使って強行突破する。
もし俺が正しければ、あいつらはみんなタンク車を追うだろう。それで残りの君たちにはチャンスが生まれる。


124 内景 パネル・バン 昼間

マックスは身体を起こし、自分の足を包帯できつく締め付け、金属製の補装具を着ける。

パパガロ(声のみ)
ばらばらに分かれろ。できるだけのスピードを出して行け。北へ二百マイル行ったところに橋がある。パウダー・リバーにな。もし俺たちがうまく脱出できたら、そこが合流地点だ…

マックスは必死にバンの外へ出る。野生児が彼に装備ベルトを手渡す。

パパガロ(声のみ)
そこは防御しやすい場所だし、燃料の補給もできる。


125 キャンプの中 昼間

マックスは強張った顔で、タンク車の方へ歩き始める。
彼の脚の包帯から血がにじみ出す。

パパガロ(声のみ)
だがな!俺たちを待つのは日暮れまでだ。それまでに俺たちが来なかったら、移動を続けるんだ!

パパガロはキャットウォークから飛び降りると、タンク車の運転席に向かう。
集会は解散だ…キャンプの人々はさまざまな車両で自分の持ち場につくべく歩いていく。

マックス
俺がタンク車を運転しよう…

皆が足を止め、振り返って彼を見る。

マックスはわずかにふらつきながら両手を固く握り、パパガロを見つめている。

マックス
あんたらが危ないところを切り抜けるまでな…

カーマジョンが割って入る。

カーマジョン
こいつは冗談を言ってるのさ!

パパガロ
自分のざまを見ろよ。

マックスはうなずく。

マックス
だがな、それでも俺は最高の腕だぜ。

パパガロは長い間考えこんで、

パパガロ
あんたにはこれが必要になるな…

彼はマックスに銃身を切り詰めたショットガンと、六個の散弾が入った弾帯を手渡す。

 

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