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外景 修道院の屋根 夜
リプリーの良い方の足が、脱出船の周りの燃える板切れを蹴り落としていく。リプリーが脱出船に乗り込み、ジョンとマティアスはその後ろに立っている。ジョンは周囲を見回す。
修道院のある階層は荒れ果てている。空気は煙でいっぱいだ。
修道院は燃えている。図書館も炎に包まれている。
ジョンは医療品の入った袋を見下ろす。
破れ、血にまみれ、焼け焦げているが、袋はまだ彼の肩からぶら下がっている。
中にあるのは、唯一残った本だ。
ジョンとマティアスは中に入る…
内景 スラコの四号脱出艇 夜
リプリーが照明のスイッチを入れる。
ジョンがマティアスを抱えてハッチをくぐらせる。
リプリーはある計器をチェックする。航海の経過時間だ。
彼女の眉がひそめられる。彼女は計器を指でこつこつ叩く。
彼女はいくつかボタンを押す。床下のどこかで推進源がブーンと音を立てて生き返る。ジョンの靴底を通じて振動が伝わってくる。リプリーは作業に没頭している。
彼女は開いたドアの方を手で指す。
ジョンはその区画へ入っていく。
シューッ…ガチャン!
彼の背後でドアが閉じる。
彼はドアにある窓から外を見る。
リプリーが彼を見つめて、ドアのそばにあるキーパッドに数字を打ち込んでいる。
マティアスがドアを引っ掻いている。
彼女は自分の腹のあたりに指を走らせる。
ジョンは医療品の袋から中世の大きな本を引っぱり出す。
彼は拳でドアを殴りつける。
彼女はドアに背を向ける。
彼女は聞いている…
リプリーは振り返り、彼をじっと見つめる。
カット替わって
本のページ
中世のエッチング版画だ。
一人の修道僧が悪魔を吐き出している。
カメラ引いて、ジョンがリプリーを脱出艇の床に寝かせる。
ジョンが彼女の目を閉じる。
本を閉じる。
彼は小さなプラスチックのカップに水を注ぐ。
薬草の入った小さな袋を取り出す。袋を開ける。
鼻にしわを寄せる…薬草が匂う…
彼はその古代の薬を、宇宙時代のカップに注ぎ込む。
彼はリプリーの後頭部を持ち上げて…
薬を彼女の喉へ流し込む。
ジョンは彼女の胴体をまたぐ。彼女に馬乗りになる。
祈るように両方の手を合わせる。
そして両手を一つに組む。
準備運動に深い呼吸をして…
リプリーが喉を詰まらせ始め…咳き込む。
彼女の身体が痙攣を始め…
ジョンは拳を彼女の腹へ打ち下ろす…
ドスン!!
リプリーが激しく身体を震わせて…空えずきをする…
ドスン!ドスン!
ジョンがリプリーの横隔膜を殴りつける!
彼女が唾を飛ばす…濃い粘液状のものを吐く…
胸が波打って…
リプリーの背中が弓なりに反り…
彼女は腸をねじ切られるような悲鳴を上げる…
怪物が上へ押し上げられ、胴体が膨らむ。
ジョンは彼女を押さえつけて…
彼女の肋骨の下を押し上げる…
チェスト・バスターを彼女の喉へ押し上げていく…
エイリアンが食道の途中にいるため、彼女は空気を求めて喘ぐ…彼女は窒息しつつある…
ジョンは十字を切る…深く息をする…
彼はリプリーに口を近づけて…
空気を吸う。空気を吹き込む。人工呼吸だ。
エイリアンのチェスト・バスター
リプリーの口から這い出してきて…
ジョンの口の中へ入っていく!!
爬虫類のような尾が振り回されて、ジョンの食道の奥へ消える。
ジョンは後ろのコンピューター・コンソールに倒れる。
喉を詰まらせている。必死で喋ろうとする。
リプリーは肘をついて身体を起こす。
エイリアンの粘液が彼女の顎に垂れている。
額で髪の毛がもつれている。
彼は開いたままの本を彼女の前に放る。
彼女はあのエッチング版画を見る。
ジョン
流れ出る粘液を飲み下す。
なんとか立ち上がろうとする。
リプリーは立ち上がろうとする…彼を追うために…
彼女は身体を起こすことができない…肋骨が粉々に砕けているように感じる
ジョンはよろめきながら脱出艇の床に立つ。背中を向ける。
彼は袋から羊皮紙を取り出す。
床にそれを落とす。
彼はドアを通り抜けようとする…
マティアスが付いていこうとする。
彼は脱出艇から出て行く。
リプリーは床の上を這っていく。
ドアまで這ってくる。外を見て、
ブラザー・ジョン
打ち壊された天井から夜明けの光が差し込んでいる。ジョンは煙の立ち込める屋根をゆっくりと歩いて行く。
炎上する修道院の地獄へと。
リプリーが見守る中、ジョンと彼の体内にいるエイリアンの恐怖は焼き尽くされる。
炎が発する熱が強くなる。
彼女は後ろに下がらざるをえない…
ドア・ハンドルに手を伸ばす。
ドアはドスンと音を立てて閉じる。
彼女は転がって仰向けになる。
彼女はすすり泣く。この数年で初めてのことだ。
彼女は赦されたのだ。
ギイイイイ!
脱出艇が傾く。
リプリーの両眼がぱっと開く…
脱出艇の下の屋根が崩壊し始めている。
リプリーは転がって腹這いになり、操縦士の席へ這っていく。身体をシートの上に引き上げる。安全ベルトを締めて…
スラコの四号脱出艇
人工衛星アルケオンの木製の外殻を突き破る。
轟音を上げながらこちらへ飛んできて…頭上を通り過ぎる。
内景 スラコの四号脱出艇 昼間
リプリーはマティアスを冷凍睡眠チューブに寝かせる。
彼の顎の下をくすぐってやる。彼と一緒にチューブに入ろうとしたとき、彼女は床に何か落ちているのを見つける…
ジョンの羊皮紙だ。
リプリーはそれを拾い上げ、広げる。
彼女にはジョンの声が聞こえる。
リプリーは指令コンソールにある、経過時間のカウンターを見る。ホルダーからペンを取る。彼女は文章を書き加える。
彼女は航路をセットする。
自分の冷凍睡眠チューブへ戻る。
チューブの蓋を閉じる。
深宇宙
脱出艇は真っ黒な虚空の中を飛んで行く…
アルケオン
彼女の背後で暗黒の中に小さくなっていく。煙を上げ、ゆっくりと消えていく残り火だ…
スクリーン、暗転
エンドクレジットが流れて…
映画館の後方にいる十代の若者が叫ぶ。
「犬の中にいるんだぜ!」
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