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内景 スラコ四号脱出艇(夢の中)
黄色い警告ランプが点滅している。あのいまいましいストロボ・ライトが明滅を繰り返している。頭上のパイプから蒸気が噴き出す。
火炎放射器の銃口で青く輝くパイロット・バーナーが、コンソールの向こうから慎ましげに顔を出す。火炎放射器を持ち主は用心深く進んでいく…
リプリーだ。
彼女は苦しげに息をしている。
彼女は汗びっしょりのタンクトップを着ている。
彼女の眼が左右へすばやく動く。そして上へ。そして下へ。
彼女は武器を前へ突き出したまま、冷凍睡眠チューブの方向へ進んでいく。
彼女は静かにニュートの睡眠チューブへ近づいていく。
チューブの中
ニュートが穏やかに眠っている。
リプリーは母親のような微笑を漏らし、そして思い出す。
彼女の手が火炎放射器を握りしめる。
彼女はスイッチを「高温」に切り替える。
冷凍睡眠チューブのそばを回って…
彼女の左で物音がする。
彼女はさっと振り返り…
火炎放射器の引金を引く…カチッ。何も起こらない。
彼女はもう一度引金を引く…生ぬるいガスが漏れるだけで炎は噴射されない。
彼女はパニックを起こしかけ…
エイリアンがいることを感じる。
左を見て、右を、上を見る…エイリアンはいない。
彼女は下を見る。
エイリアンの尾が彼女の脚と脚の間に入ってくる。
彼女は振り返り…
エイリアンの腕の中に捕まってしまう。
役立たずの火炎放射器は床を滑っていってしまう。
彼女は固めた拳で怪物をぽかぽか殴りつける。
エイリアンは彼女をくるりと回し…冷凍睡眠チューブの上に押し付ける…
まるで彼女を背後から襲おうとしているかのように!
リプリーは冷凍睡眠チューブの中を見下ろす。
ニュートはいなくなっている。
血だまりの中に、あの人形の首が転がっている。
エイリアンがリプリーの身体に腕を回す。
薄い唇が、キスを求めて後ろへ引っぱられる。
彼女は悲鳴を上げる。
内景 科学技術の部屋 現実 昼間
リプリーが眼を開ける。
ヒューッ…ヒューッ…
彼女はまだ、風車のある部屋にいる。
どうしたわけか、この部屋は彼女の夢よりも現実感がない。
彼女は辺りを見回す。
彼女の隣にはジョンが座っていて、羊皮紙に何かを書き付けている。
彼は安心したような微笑を浮かべる。
彼女は自分の左を見る。
アンソニーが眼に包帯を巻かれて、仰向けに横たわっている。彼の足首は腫れあがった塊だ。配線がはみ出している。
リプリーの右で床板の軋む音がして、彼女の注意を惹く。
院長だ。彼は歩き回っている。
リプリーは立ち上がろうとする…彼女の頭がふらつく。
ヒューッ…ヒューッ…
この部屋全体が風のリズムに満ちている。
院長がドアを指さす。
リプリーはドアのところへ行き、その冷たい表面に触れる。
彼女は風車を見る。
ヒューッ…ヒューッ…
彼女は部屋の奥へ入っていく。一基の風車の周りを歩く。
ヒューッ…ヒューッ…
ジョンは訝しげに彼女を見る。
ヒューッ…ヒューッ…
院長はまるで、マラソンの最後の数メートルで負けてしまった男のように見える。
アンソニーが身体を起こす。
院長の眼は遠くを見ている…
リプリーは歩いて行ってしまう…
ジョンは彼女を追っていこうとする。
院長が立って、彼の前に立ちふさがる。
ジョンとリプリーは振り返って院長を見る。
彼の口調がさらに早口になり始める。さらに早口に。
彼は震えている。震えはどんどん細かくなり…
彼の左耳から血が流れてきて…
バシャッ…!!
院長の頭が破裂する…!!
十階から舗道へ落とされた、熟れたメロンのように。
血と骨片と頭髪と脳髄がジョンにぶちまけられる。
ジョンは悲鳴を上げる。
恐るべきエイリアンのヘッド・バスター
血をまき散らす院長の首の上にあるのはそれだけだ。
それはまだ院長の脊髄にしがみついている…院長の身体はよろよろ歩き回り、両腕は脳からの神経信号を失って機械的に痙攣している。
リプリーは悲鳴を上げる。
エイリアンの幼体を頭に載せた死体が彼女の方へ倒れてくる…
彼女は床からアンソニーの棒を拾い上げて振る…
…まるでティー・バッティングをする子供のように…
グシャッ!
チェスト/ヘッドバスター部屋の向こうへ弾き飛ばす。
怪物は這いながら床に落ちる。風車と床の境目へすばやく這いこみ、姿を消す。
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