映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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細い廊下

天井は低く、彼らは松明を体の正面で持たなければならない。
リプリーは二人の修道士より早く歩きすぎないよう努めている。


内景 梯子の立坑

何もない空間に長い梯子が一本伸びている。
少なくとも一マイルはありそうだ。
一行は昇って行く…

曲がりくねった廊下

頭上の天井板から液体が滴っている。
傾いた床の赤い水たまりに落ちる。

ジョンはひざまずいて、水たまりに指先を付ける…

ジョン
血だ。
(においを嗅いで)
海水と混じり合っている。

アンソニー
私たちは円の中心に近づいているんだ…海の近くに。

リプリー
血なの。

ジョン
近づいている…

ジョンが物音を耳にする。
「止まれ」と片手を上げる
一行は止まる。壁に貼り付いて身を隠す。

ジョンはアンソニーの棍棒を受け取る。
身体の前に棍棒を構えて前進する…
すばやく角を曲がって…
何者かを壁に押し付ける…
ドスン!
そいつは暴れる…

リプリーとアンソニーが駆け寄る…鎌を構えて…
そこにいたのは…

リプリー
院長。

院長のカソックは破れ、汚れている。髪は乱れ、眼がぎらついている。
アンソニーの棍棒が院長の喉元に押し付けられている。
ジョンは下がる。

ジョン
神父さま…

リプリー
(皮肉っぽく)
こんなところで何をしてらっしゃるのかしら、神父さま?
あなたは存在しないものを見たみたいに見えるわよ。

院長は指で髪をとかし、撫で付ける。

院長
私は彼らの精神的な指導者だ。戦で彼らを指揮する用意はできていなかった。あの生物との戦では。

ジョン
誰にもできませんでしたよ。

リプリー
あなたは邪悪は私の中にあると言ったと思ったけど…私を閉じ込めて問題は全て解決じゃなかったの?

院長
破滅だ。おまえが我々に破滅をもたらしたのだ!

リプリー
私はあなたに警告しようとしたわ。

院長
おまえはこの女と何をしているのだ…?

ジョン
我々は「科学技術の部屋」に向かっています。
何か戦う方法を見つけようと…

院長
悪魔と戦うために悪魔の仲間となってはならん。

アンソニー
彼女は我々を助けて…

院長
詐欺師の肩を持つ者が誰かを見たまえ…人間ですらない奴だ。ジョン、君は何が起きているかわからないのか?古代の地球、黒死病の時代…多くの者が神は自分たちを見捨てたと信じ、悪魔に助けを求めた。悪魔に群がって自分たちの肉体を助けてくれと望み…魂を失ったのだ。

リプリー
神父さん、私たちはみんな同じ怪物から逃げてるんだから、いつもの火だの硫黄だののごたくに頼るのはやめて。あなたの「運動」のことは聞いているの。異端者の星で異端者あつかいされるなんて、笑えるわ。

ジョン
お願いです。

建前の時間は過ぎる。

院長
わかった。私は君を黙らせておこうとしたんだ。

ジョン
院長…?

院長
私は兄弟たちを団結させておくために必要なことをしているんだ。我々はみな遠い昔に地球での信仰をあきらめた。君たちの追放には何の意味もなかったと聞かされたら、彼らはどんな気がすると思う?君たちが避けようとした破滅は起きなかったと聞かされたら?上にいる彼らはそれを信じて生きてきたんだぞ。

リプリー
それに、あなたを自分たちの指導者としてね。

院長は微笑む。リプリーの口調は鋭い。

院長
君はこの現状に対する脅威なのだよ。

リプリー
あなたもそうね。自分は知識と真実の守護者だと彼らをだました。

院長
君の件についてだけだ。他の件については私はまだ信じているよ。もし地球がまだ太陽の周りを回っているのなら、未開の状態へ落ちぶれずに済んだはずがない。

リプリー
あなたは企業と同じぐらいたちが悪いわ。

ジョン
リプリー…

リプリー
だからあなたは逃げたのよ。口は達者でも、死があなたの顔を見据えたら、あなたは怖くなった。

院長
死を恐れはしない。

リプリー
エイリアンをよ。

アンソニー
あの生命体を。

院長
悪魔だよ。


内景 科学技術の部屋の廊下

今では四人となった逃亡者たちは、最後の廊下へとやってくる。
周囲は暗い。急な角度で曲がっている。先の見えない細い道。
床は古びて捩れた木ででこぼこだ。
何年もの間、上から落ちてきた水滴で歪んでいる。
一行は暗闇の中へ進んでいく。ロウソクを高く掲げて…

アンソニー

しんがりに付いている。杖を地面に突く…
ガチャン!!
その音の全員が動きを止める。

院長
今のは何だ?

アンソニーが自分の棒を引き抜く。そこにあったのは…

アンソニー
人罠だ。

彼らはロウソクを下げる。そして見る。


板張りのそこら中に…
バネ仕掛けの、鋼鉄の歯のついたケモノ罠が置かれている。
錆びて、開いた状態のままだ。彼らの周りじゅうにある。

アンソニー
誰かが中に入って科学技術に触れようとするのを防ぐためだ。

彼ら四人は、人罠の地雷原の真ん中に立っている。誰も動かない。

院長
どうするのだ?

リプリー
動かないで。息もしないで。

院長
ただここに立って待っているわけにはいかないぞ。

リプリー
床が不安定すぎて、罠をよけて歩くのは無理だわ。

ジョンは廊下の壁から外れかけの板材を取る。
振り返って、彼の正面にある罠の前に膝を突く。
板の端を罠の口の中へ差し入れる。
ガチャン!

他の三人はその音に飛び上がり…

院長
ジョン…何をしているのだ?

ジョンは錆びた罠から板を引き抜く。
次の罠に近づき…
ガチャン!

リプリー
彼は指導者らしくものを考えているわ。みんな、板を持って。罠を閉じさせて、道を拓くのよ。
(ジョンを誇らしく思って)
よくやったわ、ジョン神父さま。

ジョン
修道士だよ。

リプリー
修道士さまね。行きましょう。

リプリーはそばの壁から厚板を取り外す。
その下の表面がちらりと見える…
金属だ。

彼女はその冷たい、慣れ親しんだ材質に手を触れる。微笑む。
彼女は今、これが夢ではないことを理解する。
彼女は振り返って、目の前の罠を作動させる。
ガチャン!!

四人組

ゆっくりと廊下を進んでいく。片手はロウソクを高く掲げ、もう片手で板材を目の前の罠に差し入れながら…ガチャン、ガチャン…ガチャン、ガチャン
まだ閉じていない罠を注意深く迂回しながら歩いて行く…

科学技術の部屋へ通じるドア

ノブもハンドルもない巨大な木製のドアだ。まるで壁の一部のように見える。ジョンとリプリーが最初にやってくる。二人は持っていた板材を下ろし、何か手がかりはないかとドアの縁を手探りしはじめる。
院長も二人に加わる。

廊下に戻って

アンソニーが遅れている。彼は廊下に何かの気配を感じる。
自分の背後で物音を聞く。
我々にも何かがちらりと見える…
彼は音のする方向へ振り向く…

誰もいない廊下があるだけだ。

彼は考える。また前へ進み始める…耳をそば立てたままで…ガチャン!

科学技術の部屋のドア

リプリーとジョン、院長がドアや壁を叩いている。
リプリーは苛立ち、疲れ果てて壁に頭をもたれさせる。
こんなに長く歩いてきて、締め出されるなんて。
彼女は胃にむかつきを感じる。
最後に食べてから、どのくらいになるだろう?
彼女はジョンの方を見る。
ジョンは彼女を見つめている。
リプリーと目が合って、彼は赤くなる。キュートだ。

ジョン
私は…君、大丈夫か?

リプリー
動けないわ。眠らず、食べずで…年を感じるわね。
(微笑んで)
冷凍睡眠の期間を入れたら、私はもう百歳だもの。

彼女は額を拭って、また壁を叩き始める…

ジョン
何だ?

彼が叩いている壁は空洞のような音がする。
爪が板材の引っかかりを見つけ、引っぱる…
錆びた小さな圧力ピストンが作動し、その部分の板材が横へスライドする。

板の向こう

原始的なキーボードがある。おそらく二十世紀後半のものだ。

ジョン
これがそうだと思う。

リプリーと院長が近づいてきて、見る。

院長
科学技術だ。

リプリー
ええ、百年も前のね。骨董品だわ。

院長
(リプリーに)
どうぞ。

リプリー
どうぞって何が?

院長
ドアを開けたまえ。

リプリー
私が開けてあげるわよ、でも聞きなさい…
あなたは中世に生きてるようなふりをしてるけど、私を修道院にあるものや…ホテルのメイドみたいに扱ったりはできないわよ。

 

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