映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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内景 横木の空間 牢獄の階層

牢獄と牢獄との間にある広大な空間。
牢獄区画の裏側にある壁には、廊下へ続く開口部が四階分の高さにハチの巣状に並び、古いねじれた梯子でそれぞれが結ばれている。インディアンの洞窟住居を思わせるが、こちらは木製だ。

この空間はフットボール場数個分の長さで彼らの前に広がっている…下の方は暗くてよく見えない。

彼らは無言のままでしばらく立っている。この空間の大きさに比べて彼らはひどくちっぽけで、彼らの前には果たさなければならない務めが待っている。そしてやっと…

リプリー
とにかく、地球のことは完全に忘れましょう。私が正しかろうとあなたが正しかろうと、大事なのはここから脱出することよ。ここから私の船は…?

ジョンは天井を指さす。

アンソニー
天国にある。

リプリー
なるほど。するとここは…

アンソニーとジョンがうなずく。

アンソニー
この衛星は、中世の地球の概念に倣って作られているんだ…。
(空中に輪を描いて)
上半分は「天国」と呼ばれている。

ジョン
修道院や、庭園のあるところだ…

アンソニー
下半分が「地獄」だ。僕たちのいるところだ。

リプリー
ふさわしい呼び名ね。真ん中には何があるの?

ジョン
海だ。

アンソニー
本当かい。

リプリー
話を戻しましょう。この星の地表に戻るまでどのくらい距離があるの?

ジョン
そうだな…中央を通って五マイルというところだ。

リプリー
それから…私を降ろしたエレベーターで?

ジョン
ロープが切れている。

アンソニー
洒落ているね。ジョンはまず皆の逃げ道を絶ち、修道院を一階ずつ降りて生ける者のいないところまできたわけだ。興味深い…

リプリー
けっこうね。私はいいから、あなたは彼に感謝してて。私はあなたを黙らせる方法を探すから。わかった、アンディ?どうやって上の階へ登るの?

ジョン
梯子がある。

彼女の足が止まる。ジョンとアンソニーはそのまま数歩進み、それから立ち止まって彼女のところへ戻ってくる。

リプリー
エイリアンがいて、ここからそこまで五マイルですって?坊やたち、幸運を祈ってるわよ。

彼女は背を向けて、自分がいた牢獄の方へ歩き始める…
ジョンが彼女の肩をつかむ…

ジョン
だめだ…

リプリー
何がだめなの?あなたが死にに行く手伝いをしないから?そんなのもうたくさんよ。

ジョン
君が必要なんだ。私一人では無理だ。

リプリー
私はこの生物と二度戦ったことがある。殺すのはとても大変だったわ。重武装していてもね。

アンソニー
ここには武器はないんだ。

リプリー
私たちが武器を作れる材料はないの?そういうもの…何か近代的なものはないの?

ジョンが激しく首を振る。

ジョン
我々は科学を捨てたんだ。それが悪疫を引き起こしたんだから。

リプリー
ここは人工の星なのよ。ここの空気や水を再循環させているものがあるはずだわ。

ジョン
神かな?

リプリー
勘弁してよ。

ジョン
わからないんだ。それは当然のことだと思っていたから。

リプリー
大抵の人はそうよね。科学技術が何もないんじゃ勝ち目はないわ。

二人の背後から

アンソニー
科学技術はある。

ジョンとリプリーは振り返って彼を見る。

アンソニー
部屋がある。科学技術のある部屋だ。そこから新鮮な空気と水が出てくるんだ。

リプリー
大気処理施設ね…

アンソニー
アルケオンの心臓と肺だよ。

リプリー
それはどこにあるの?

アンソニー
地下の海の、一階層下だ。

ジョン
ここから五階上だな…

アンソニー
(暗がりを指さして)
この衛星の反対側だ。

ジョンはリプリーを見る…

ジョン
「勝ち目」だよ。

リプリーはジョンの真剣な顔から暗闇へ、そしてまたジョンヘ視線を移す。

リプリー
わかった。今のところはあなたに従う。でも忘れないで。私たちが上に戻ったとき、あなたの信者仲間が何人生き残っているかはわからない。けど船まで辿りつけたらあなたたちは全員私と一緒に来る。あなたの貴重な本も持てるだけ持って行くけど、ここには誰も残らない。私はまた自分だけ生き残るためにあの生き物と戦うわけじゃない。わかった?

ジョンはうなずく。

リプリー
どうせ私たちみんな死んだも同じよ。もしかしたら…

彼女は腹に刺すような痛みを感じる。身体を二つに折る。アンソニーとジョンがそれぞれ腕を抱える…

リプリー
ううう、大丈夫よ。

彼女は深呼吸をする。

リプリー
私はまだ解凍中なのよ。冷凍睡眠は嫌いだわ…
行きましょう。

カット替わって


内景 アルケオン 修道院の階層 夜

以前は牧歌的だった風景は、焼け焦げた戦場へと変わってしまっている。木製の小屋が潰れている。あちこちで小さな火事が起きている。空気は灰と油っぽい煙でいっぱいだ。

ある一角で、数十人の修道士たちが角砂糖にたかるアリのように群れをなして移動している。片手にはロウソクや松明を、もう片方の手には鎌やピッチフォークや鍬や、何でも手に入ったものを持っていて、哀れなほど場違いに見える。
何人かは先を尖らせた杭を地面に突き刺している。他の者は急ごしらえのバリケードに手押し車を足している。

修道士たちの一個小隊が木製の「地面」に開いている落とし戸の周りに集まっている。下へ梯子が続いている。
彼らは降りていく…

地下の小麦畑 夜

衛星の修道院のある階層のすぐ下。地下の小麦畑がある。数マイルにわたって黄金色の背の高い草が広がり、十五フィート上の修道院を支える太い木の柱の周りで優しくそよいでいる…

天井

格子状に組まれた樋と木製のパイプが吊られている…
修道院の地下構造の「配管」だ。

修道士たち

一列になって梯子を降りてくる。彼らの多くは話を聞かされただけだが、全員の顔に恐怖が浮かんでいる。彼らは用心深く麦畑へ入っていく。彼らは散開し、畑の中に不ぞろいな横列を作る。

院長

院長のカソックには、禿げた裁判官の修道士の乾いた血が飛び散っている。彼は誰も乗っていない木製の荷馬車の上に立っている。この見晴らしの利く位置から、彼は畑にいる修道士たちを見つめている。

麦畑の修道士たち

前方を払ったり突いたりしながら、背の高い草に跡を残して進んでいく。
彼らが畑全体に散らばってしまったため、整然と前進しようという目論見はすぐに崩れてしまう。

院長
(そっと)
離れるんじゃない。離れるんじゃない…

院長の眼が別の動きを捉える…
修道士たちの前方…麦の穂が風に逆らって動いている。
波打ち始め…麦が押し倒される。
それが航跡になっていく。
何かが背の高い草の中で動いているのだ。
先頭の修道士へ近づいていく…急速に。

院長はまるで警告を叫ぼうとするかのように口を開く…動く航跡に一番近い修道士とは距離がありすぎて、彼の声は届かないというのに。彼が声を出す前にエイリアンは距離を詰めてくる。
恐ろしい無力さを感じながら彼が見守るうち、

うわあああーあ!
先頭の修道士が苦しげな悲鳴を一声上げて、背の高い草の中に消える。彼のロウソクが長い、乾いた草の中に落ち…煙が上がり始める…

院長には彼の修道士たちに見える前から、航跡が彼らの方へ進んでいくのが見えている。彼はやっと声を出すことができる。

院長
逃げろ!逃げろ!

最初の修道士が院長へ悲鳴を上げたあたりで、畑にいる他の修道士たちは振り返り…今ではまた動いている航跡に背中を向けている…

院長
だめだ、だめだ。あれが…

エイリアンが修道士たちの散兵線に横合いから襲いかかる…
鎌で麦を刈るように、五人の修道士をなぎ倒す。
エイリアンの尾と、両腕が振り回され…
修道士たちの背骨が薪のようにへし折られる。
落ちた松明で麦に火がつく…

麦畑が燃え上がる。
空気は煙でいっぱいになる。

煙が立ち込めるパニックの中、修道士たちは列を乱して逃げ始める。
身体の前に武器を構え…乱暴に振り回している。
絶叫。悲鳴。死。

ある怯えた修道士がピッチフォークを持って、別の修道士の方へ逃げている。別の修道士は何かが草を踏んで自分に向かってくる音を聞いて、持っている鎌を親友であるその修道士の胸に突き立ててしまう。

このパニックのさなか、エイリアンは至るところにいるように見える。
白い煙に隠れて、エイリアンは畑のあちこちで切り裂き、引き裂いていく…

院長

恐怖に凍りついてその場から動けない。彼の修道士たちに何が起きたのか煙ごしに見ようと目をすがめる。負傷者の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。

波うつ草が平らに押しつぶされ、エイリアンが彼に向かってくる…

彼はやっとのことで荷馬車の上から降りる。
彼は床に降り立つ。足が木の床に触れたそのとき、彼は自分の上に影が落ちるのを感じる。彼の首の後ろのわずかな毛が逆立つ。彼はゆっくりと振り返る…

エイリアン

聖職者の前に、草の中から姿を現す。
ゆっくりと立ち上がったその身長は約三メートル。
その長くなめらかな頭部は、もう黒くぬるぬるしたものではない。

その頭は金色をしている。
ケーブルのような両腕は、麦わらに似た外被の中に収納されている。
エイリアンは周囲の麦畑に合わせて変化したのだ。今では草のように見えるその唇が後ろへ引っ張られて、笑い顔の恐ろしいパロディに変わる。

院長は悲鳴を上げて逃げ出す。

 

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