映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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内景 縦坑の部屋 昼間

檻は降ろされたままになっていて、ロープは地下の空間へ伸びている。
ジョンが駆け込んでくる。ロープのところへ行く。本を地面に置く。
怪我をした手でロープを握りしめる…心がはやっている。
あの女性は知っているだろう。あれが何なのかを。どう戦えばいいのかを。
彼はロープを引く…

ロープには何の手応えもない。
彼は後ろへ倒れて尻餅をつく。

ロープは頭上の錆びた滑車をひゅんと抜けてしまう。
ジョンの前の地面にとぐろを巻いて落ちてくる。
彼はロープの端を持ち上げ、じっと見つめる。
苦虫を噛み潰したような顔。

カット替わって

修道院の中 一連のショット

ジョンが建物の中を駆け抜けていく。
この星の上半分を駆け抜けていく。
何階層も降りて行き、昨夜の出来事も、直面している危機のことも知らない何十人もの修道士たちとすれ違う。

機織りをしている修道士たち。
革のなめし部屋にいる修道士たち。
朝の祈りをしている修道士たち。
彼らすべてのそばを通り過ぎ、そして…


内景 修道院の地下の作業室 昼間

モップや箒が置かれている。
ジョンが入ってくる。彼は髪を乱し、ぜいぜい息をしている。
彼はあの本を医療用具の入った袋へ押しこむ。
彼が焚き付けの入った箱を脇へ押しのけると、床の板材に取り付けられた木製のドアが現れる。
彼がそのドアを開けると…

梯子がある。

この上部階層の下にある広大な空間へ梯子が降りている。
垂木に支えられた何本もの長い地下高架橋。そのそばを通って梯子は伸びている。
その向こうには…この惑星の中心を示す広大な地下の海がある。牢獄はその下にある。
そしてリプリーも。

ジョン

地下空間の湿っぽい空気の臭いを感じる。
彼は降りていかなければならない…厳しい道のりだ。
彼は暗闇の中へ降りていく…


内景 修道院の洗面所

非常に大きな部屋だ。長さはフットボール場ほどもあり、少なくとも百個のトイレの個室が、壁に取り付けられた百台の洗面台と向かい合っている。しかしこの状況は恐ろしい真実を物語っている…
カメラから一番遠い個室にはクモの巣が張っている。
個室のいくつかは薪にするために側面の壁板が剥がされている。
設置されている百個の洗面台のうち、まだ使われているのは二十個ほどだ…ここは今残っている住人よりも、はるかに多くの人数を収容するために作られた施設なのだ。

痩せた修道士が手を洗っている。

個室の中

カメラは並んだ個室を写しながら移動していく(ありがたいことに、胸の高さまでは隠れている)。いくつかの開いた個室と、いくつかのしかめっ面。最後から二つ目は院長だ…

院長
今夜は冷えるな…

…カメラは最後の個室へ移動する。あの裁判官の禿げた修道士がいる。

裁判官の禿げた修道士
一晩ごとに寒くなっていくよ。

院長
そして一日ごとにな。こんなにひどいのは初めてだ。建物からたくさん材木を剥がしたから、地表の風がコロニーの中を通るようになってしまったんだ。床の下をね…

冷たい風が床下の汚物溜めを通って便器の中の空気を冷やし、禿げた裁判官の修道士は身を震わせる。

禿げた裁判官の修道士
すぐおまえの尻にも来るぞ。こんな夜はちゃんと配管工事がしてあればと思うよ…おっと…!

彼は腸を引っ張られるような感覚を味わう…痔ではない。
少しの間。

院長
(声のみ)
どうした?

禿げた裁判官の修道士
わからな…ああっ…

何かが禿げた裁判官の修道士を下から捕まえ、彼は悲鳴を上げる…

(注記 以下5ページの半分は削除されている。可能なかぎり文章を復元した。)

何かが彼の直腸を揺さぶり、内臓の中へ潜り込んでくる!
彼は激痛で痙攣し身を震わせる。

何かを引き裂く恐ろしい音がして、禿げた裁判官の修道士は激しく下へ引っ張られ見えなくなる。
カメラはパン・バックして座っている修道士たちそれぞれの顔を写していき、彼らの怯えた反応が見える。彼らの足の下で、エイリアンが禿げた裁判官の修道士の身体を引きずっていく…

個室に座っている院長

彼は壁を叩く…

院長
マシュー?マシュー?一体どうしたんだ?

手を洗っていた痩せた修道士はこのすべてを見ていた。蛇口から血が噴き出してきて、彼はぐにゃりとなってしまう。

他の修道士たち

他の修道士たちはそれぞれの個室に座っている。便器から血が噴き出してくる!
血と臓物が壁に噴き付けられて…修道院は屠殺場へ姿を変える。

カット替わって

宇宙空間

衛星アルケオンを捉えたアングル

木製の球体は宇宙の海を背景に穏やかに浮かんでいる。

リプリー
(声のみ)
死よ…


内景 リプリーの牢獄 夜

真っ暗だ。どこかで水たまりに水滴が落ちる。リプリーは横腹を下にして横たわっている。頭は床の穴の近くにある。彼女の眼は閉じられている。

リプリー
どこへ行っても同じ。

穴から手がパンのかけらを押してくる。
彼女は眼を開けて食べ物を見る。白髪の男の頭が現れる…

白髪の男
食べるんだ。

リプリー
ありがとう。でも結構よ、アンソニー。

彼女は彼の名前を知っている。

アンソニー
君は肉料理でも待ってるのかい?彼らは僕がアンドロイドだって知ってるから、肉は出してくれないんだ。本当のところ食べ物は必要ないんだけどね。とにかく君にはパンの方がいいよ。消化しにくいから満腹感が大きい。

リプリー
お腹が空いてないのよ。

アンソニーが一口囓る。

アンソニー
んんんー。ちょっと硬いかな。

リプリーは体をひねって仰向けになり、天井を見つめる。

リプリー
時間の無駄だわ。

アンソニー
お嬢さん、食べないと飢え死にするよ。

リプリー
私をここに入れたのは、それが狙いだったんでしょ。あなたはどうして世話を焼いてくれるの?

アンソニー
僕が合成人間だから、君の世話を焼けないと思うのかい?

リプリー
あなたは私とその話をしたくはないと思うわ、本当よ。

アンソニー
君はアンドロイドに関してひどい体験といい体験をしたと言ったね。

リプリー
それぞれ一回ずつね。ということは、あなたはどちらにでもなり得るということだわ。この話をするのはうんざりよ。

彼はまたパンを彼女の方へ押し出す。

アンソニー
それでも君は食べなきゃだめだ。あいつらと戦わなければ…

リプリー
私は戦うのに疲れたわ。彼が私を見つける前に私は死んでいるかもしれない。彼は満足できないかもしれないわね。

アンソニー
彼?まるでこのエイリアンが君に対して個人的な恨みを抱いているみたいに聞こえるね。君が話してくれた生態…女王が卵を産み、幼生がいて、雄バチがいて…というのは昆虫によく似ている。昆虫はふつう、なにかに恨みを抱いたりしない。

リプリー
それにアンドロイドはふつう、自分を古代ギリシャ人だと信じる狂人たちに監禁されたりしないわ。

アンソニー
中世の修道士だよ。

リプリー
なんでもいいわよ。

アンソニー
それに彼らはそういう生き方を選んだだけで、自分たちがそうだと信じているわけじゃない…
(何か物音を聞いて)
あれは何だ?

リプリーは耳を澄ます。遠くでノックの音がする。誰かが壁をノックしている。
呼ぶ声がする…


内景 牢獄の階層の廊下 夜

ジョン
(抑えた声で)
リプリー!

彼は廊下を進んでくる。
数フィートごとに拳で壁を叩いて…
少しの間返事を待ち、そして次へ進んでいく。


内景 アンソニーの牢獄

アンソニーが床の穴から離れ、リプリーは彼の独房の中を見れるようになる。

アンソニーの牢獄の壁は木炭で描かれた絵でいっぱいだ。様々な種類の悪鬼や悪魔たち。彼女は眼をぐるりと回す。この男はアンドロイドなのに!

アンソニーは自分の牢獄のドアへ近づき、目の高さから外を透かし見る。


内景 牢獄の階層の廊下 アンソニーの視点

ジョンが板を打ち付けられた牢獄をノックしながら、彼の方へやってくる。

アンソニー
おおい…ノックしてるきみ…やめるんだ…みんな目を覚ましちまうぞ。

ジョンがアンソニーのいるドアのところへ来る。板の隙間から彼を見る。アンソニーは彼に見覚えがある。

アンソニー
ブラザー・ジョンかい?

ジョンはアンソニーのドアの閂を外す。
彼の着ているカソックには見覚えがある…

ジョン
アンソニーか?この十五年、君は死んだものだと思っていたぞ。

アンソニー
僕は造りが良すぎて死ねないんだよ。何をしてるんだい?

ジョン
私は…私は探しているんだ…院長が…

アンソニー
何だって?君は悪魔を見たようなひどい顔をしてるぞ。

リプリー
(声のみ)
見たのよ。

アンソニーは振り返ってリプリーを見て…ジョンにも穴から彼女の顔が見えるように脇へどく。

アンソニー
君はつまり、彼が…

アンソニーは振り返る…ジョンはいなくなっている。


内景 廊下

ジョンはいちばん外側の板を引き剥がし始めている。

リプリー
私は正しかった、そうでしょう?あなたはあれを見た、あなたはエイリアンを見たんでしょう?

その言葉にジョンの動きが止まる。
その記憶を思い出し、彼はぎゅっと目をつぶる。

リプリー
私にはあなたが見たんだとわかる。私は正しかった。あれは私と一緒に来た。
(壁に向かって、鋭く)
行って。

ジョンの手が止まる。彼は壁を見る。
リプリーの声が壁板ごしにはっきりと聞こえてくる。

リプリー
あなたが牧師様だかなんだか知らないけど、聞いて。あなたの望みはわかってる。私にはあなたを助けられない。他の人たちも助けられなかった。
今していることをすぐにやめて。もう行って。わかった?

ジョンが板の割れ目をこじ開け、リプリーの眼が見えるようになる。
彼は少しの間リプリーを見つめ、何と返そうか考える…
彼はまた板を剥がす作業に戻り、リプリーの告白は続く…

リプリー
神父さん、まだいるつもりなの?でも話をする気はないのね。いいわ。それでも話は聞けるわね。よく聞くのよ。あなたの院長さんは正しかったわ。私は罪深い。でも異教徒だからじゃない。人殺しだからよ。

再びジョンの手が止まる。
ただ彼女の眼を見つめている。

リプリー
ノストロモ号の乗員たちが殺された。
私がエイリアンに初めて遭ったのはその時だった。

その言葉が、ジョンにここへ来た目的を思い出させる。
彼は板を剥がす手を早める…

リプリー
いいえ、今ここにいるのと同じやつじゃないわ。もしかしたらそうかもしれないけど。もしかしたらあいつらは全部同じなのかもしれない。あのとき私は乗員たちを助けられなかった。助けられればよかった。でもできなかった。二度目に遭ったとき…

彼女の目つきが和らぐ。

リプリー
そのとき、私はニュートに会った。ニュートに。私は戦った…ニュートを死なせないために生き抜いた。それが埋め合わせになるかもしれないと望んで…

彼女の声が途切れる。彼女は壁にもたれて座り込む。

リプリー
そしてニュートも彼にやられてしまった。何の意味がある?
(また硬い声になって)
いいから行って。私を放っておいて。私を出したらあなたは私に助けを望んで、また同じことの繰り返しだわ。終わりにしましょう。

ジョンが壁を破り、松明のちらつく光が彼の周りの埃っぽい空気に差し込む。リプリーが彼を見上げる。

リプリー
私にはあなたを助けられない。

ジョンは板を剥がす作業で胸を上下させ、喘いでいる。
唾を飲み込んで…

ジョン
ふう。
(喘いで)お願いだから。

リプリー
終わりはないのよ。

 

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