映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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内景 廊下 夜

リプリーが暗い廊下を引きずられていく。

院長
(声のみ)
邪悪なるものがアルケオンに来た…


内景 法廷 夜

院長の台詞が続く中、カメラは修道士たちのいかめしい顔を写していき、最後に院長を写す。

院長
君たちはブラザー・グラハムが羊毛の中の悪魔の話をしたのを聞いたな…

彼は群衆の中に座っている、あのヒステリックな修道士の方を指す。

院長
邪悪なるものはこの女が科学の船で持ち込んだのだ。

カメラが引いて、部屋の全景を写す。

高さ30フィートの木製の壁に囲まれた、大きな円形の部屋だ。ステンドグラスの窓からわずかな光が差している。

法廷を見下ろす中二階の桟敷に数百人の修道士が座っている。法廷では、

証人席に向かい合った長いテーブルに、院長と最も年長の修道士が五人座っている。証人席にいるのは…

リプリーだ。

リプリーは自分を取り囲むいくつもの顔について考えている。恐怖の顔。憎悪の顔。

リプリー
こんなのあり得ないわ。

裁判官の禿げた修道士
この法廷での発言は許されていない。

リプリー
私の話を聞いて!あなたたちはみんな恐ろしい危険にさらされているのよ!あれは私と一緒に船に乗ってきて…

院長
それはわかっている。はじめ、我々はあの船の到着を吉兆だと信じた。だがあの船は悪疫を持ち込んだだけだ。羊が死んだ。魚が死んだ。

裁判官の禿げた修道士
邪悪だ。

リプリーは院長の方を向く。

リプリー
ええ、あの船が持ち込んだわ。邪悪なものじゃない。エイリアンを持ち込んだのよ。言ったでしょう、あれはここにいるのよ。

院長
あの船が持ち込んだ邪悪の名を我々は知っている。持ち込んだのは科学技術だ。地球を滅ぼしたように、間違いなく我々の星を滅ぼす科学技術だ。

観衆の中の修道士
破滅だ!

リプリー
私は一年足らず前に地球にいたのよ。地球はまだある。人も街も、何もかもまだあるわ!

観衆の間にざわめきが広がる。彼女の話を聞く者もいる。
アボットは周囲を見回す。彼は指導者であらねばならない。

院長
(当然のことのように)
すべて滅んだのだ。

リプリー
(叫ぶ)
滅んでなんかいない!

彼女に冷静さを失わせて、院長は内心でほくそ笑む。彼は立ち上がり、歩き回り始める。

院長
おまえが一年前に地球にいられたはずがない。なぜなら地球は存在しないからだ…少なくともこの二十年間は。

リプリー
私は二十年も宇宙を漂流していたわけじゃないわ。私を救助艇に行かせてくれれば証明してみせる。

裁判官の禿げた修道士
だめだ。この女をあの地獄の機械に帰らせたら、どんな新しい悪を放たれるかわからない。

観衆の中の修道士
だめだ!その女を行かせるな!!

裁判官の一人
この女は危険だ。この女は新しい暗黒時代を認めない。真実を認めない。

リプリー
真実はこうよ。この小惑星の中に怪物がいる…エイリアンがね。私の船の中にいたに違いないわ…それが…
(大きく唾を飲み込んで)
ニュートを殺したに違いない。私が連れていた女の子を殺したの。あなたたちには止められない。そいつは卵みたいにあなたたちの身体の中に入り、育って…
(身振りをして)
身体を破って出てきて…怪物みたいなものへ成長を続ける。あなたたちを殺す…あなたたち全員を殺すわ…。

彼女は周囲にいる中世の人々を見る。
彼らは完全に混乱した目つきで彼女を見ている。
彼女の言葉は、彼らには狂女の言葉のように聞こえているのだ。

リプリー
あなたたちは何なの?自分を見てごらんなさい…あなたたちみんなよ…自分の着ている服を。今は中世じゃないわ。あなたたちは宇宙に…人工の星の上にいるのよ。ここで何をやっているの?

中二階の桟敷の上の方に…ジョンがいる。二人の目が合う。彼女は訴えるような眼で彼を見る。

リプリー
誰か聞く気のある人はいないの?

ジョンはリプリーから院長へ視線を移す。
院長は彼を睨みつける。
ジョンは背を向ける。

リプリー
(負けを悟って)
いないみたいね。こんなの信じられない…

法廷の木槌の音。
院長は座ってしばらく黙考する。

院長
では、他に選択の余地はない。

四人の修道士が乱暴にリプリーを捕まえ…腕を縛る。

院長
(リプリーに)
邪悪なるものはおまえの中にある。私はおまえを地下に投獄する。
邪悪を封じるために。おまえの魂に神の慈悲のあらんことを。

急激にカット替わって

縦坑 昼間

中世のエレベーター・シャフトだ。「エレベーター」に相当するのは荒い編みの太い綱でぶら下げられた木製の檻だ。
縛られたリプリーが連れて来られる。

彼女は入口のドアに集まった修道士たちに振り返る。

リプリー
あんたたちにあれと戦うことはできない…
あんたたちにはあれが何かもわからないわ…!

彼女は檻に入れられる。檻の扉が閉められる。
二人の修道士が綱を引き始める。檻は深い穴…広大な地下空洞の上に吊るされる。

他の修道士たちが近づいてくる。穴の縁のすぐ近くまで…ジョンは彼らを押しのけて進み、穴の縁まで来て見つめる…檻はゆっくりと降ろされていく…

リプリーはまっすぐジョンを見つめている…

リプリー
あんたたちは自分に死刑を宣告したのよ!

彼女は暗闇の中へ降ろされていき、ジョンは見守っている…
そして振り返り、群衆を押し分けて進んでいく…
廊下を進んで…

法廷

今は院長と裁判官たちを除いて誰もいない。
彼らは抑えた口調で話している。
ジョンが戸口に姿を現すが、歩みを止める…
院長たちの話をなんとか聞き取ろうとしている。

裁判官の禿げた修道士
…あの女が隠遁者の階層に降りる前から、彼らはもう作業を始めている。

院長
問題はないのか?

裁判官の禿げた修道士
あの船のための材木をどうやって見つけるかだけだ。だがアンダーソンの小屋はあの大きさだったし、彼が死んでからもう三ヶ月も経つ。

院長
あの材木は次の冬に修道院のために使うつもりだったんだが。まあ、この件に対処しなければ次の冬は迎えられないがね。冬が来るまでには告解者の監房を解体できる。誰も入っていないからな。

別の裁判官の修道士
材木は永遠に残るものじゃないからな。

院長
我々もそうさ…

彼はジョンがいることが気になってきて、他の裁判官たちに部屋から出て行くように手振りで命じる。ジョンが院長のところへ来る。院長は何が始まるかわかっている…

院長
話したまえ。

ジョン
この女性のことです。リプリーです。私が手当をした…

院長
そうだ、君はよくやった。君が責任を感じる必要はない。君は知りようがなかったのだから…

ジョン
お願いです、最後まで話をさせてください。彼女の言うことには何かあるような気がするのです。

院長
何もないよ。

院長は自分の机の方へ行き、木槌やノートを片付け始める。ジョンは彼を追っていき…

ジョン
あなたのなさっていることが私にはわかりません。

院長
私にはこのコロニーに対する責任がある。私はこのコロニーを守っているのだ。

ジョン
何からです?あの女性から?あなたはあの女性にチャンスも与えなかった。あなたはどうしてそんなにご自分が正しいと思えるのですか?

院長
もっと良い質問は、君はどうして私が間違っていると思うのか?だね。

ジョン
あなたはこの生き物を見ていません…この悪魔を…ブラザー・グラハムと私…私たちは二人とも見たのです。

院長
(その意味を悟って)
その通りだな。君たちは見た。
(少しの間)
それで、その生物は何だったのだ?

ジョン
私は…私には何なのかわかりません。しかし、リプリーがその仲間だったとは思いません。

院長
あの女は自分が持ち込んだと認めているぞ。

ジョン
ですが、彼女は私たちに警告しようとしました…

院長
君も悪魔がどういうことをするかは知っているだろう。
欺瞞だよ。

ジョン
ですが私は彼女を信じています。どう言えばいいかわかりませんが…そういう感じがします。

院長
君は三十年も女性を見ておらんのだろう。その感じはどこから来ておるのかね、ジョン?

ジョン
(自分の頭を指して)
ここです。

少しの間。

院長
私は君を信じる。だが君の「感じ」は君を惑わせているな。

ジョン
彼女の…彼女への判決のことですが。私は考えたのですが…

院長が鋭い口調で言う。

院長
考えるな。

ジョンは院長のその口調に後ずさる。彼がこれまで聞いたことのない口調なのだ。院長は薄くなった頭髪を指で梳かす。
無理に笑顔を作って、

院長
今夜は長い夜だった。我々全員にとってね。
君はここで何を相手にしているかわかっていないのだ。

ジョン
それはまさに彼女が言っていたことです。

院長はいらだつ。

院長
これは我々が生きているこの体制を脅かす考えなのだ。怪物は死んで、あの女はいなくなった。忘れてしまえ。両方ともだ。行って本を読め。行って釣りをしろ。どこへでも行くがいい。だが、この件には近づくな。

ジョン
ですが、私は…

院長
近づくな。私がフィリップに言って、マティアスを図書館に入れられるようにしてやろう。いいな?君の身のためだ。この件には近づくんじゃない。

ジョンは何か反論しそうな様子だ。

院長
本気で言っているんだぞ。

ジョン
(のろのろと)
わかりました。

ジョンは背を向けて部屋を出て行く。
院長は彼の背中を見つめている。

 

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