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内景 修道院 リプリーの部屋 昼間
暗闇の中を光の筋が動いていく。
木の壁に光と影の模様が映っている。
ここには荘厳な静けさがあるが、壁の向こうからは修道院の遠くくぐもった音が聞こえてくる…
鋸で木を挽く音。金槌の音。
祈りを囁く声。
軽やかな歌声。
カメラは壁から下がって手作りの木製ベッドを写す。
リプリーが落ち着かなさげに眠っている。
外景 アルケオンの海 夕暮れ
夜が近づいて、水面は波が高くなっている。白い波頭の上を風が吹き、修道士たちを濡らしている。彼らは太い麻のロープで自分たちの船とリプリーの宇宙船をつないでいるところだ…
彼らは宇宙船を浜辺へと引き始める…
内景 リプリーの部屋 夜
リプリーは眠っている…だが何らかの見えざる敵と戦っている…彼女は身体を起こそうとする…だができない。頭を振って、冷凍睡眠で生態活動が止まっていた影響を振り払おうとし…まだ開き切らない両眼を上げる。
ジョン
彼女の近くに座っている。ほとんど眠りかけている。
両手には白い包帯が巻かれ、膝の上には本が置かれている。
リプリーはジョンの背後にいる人影を見定めようと目をすがめる…その肌は明滅するロウソクの小さな光を拾って反射し、その人影が動くと光が波打って見える…
エイリアンだ。
大きな、黒く光る滑らかな頭部がロウソクの光の中に突き出される。エイリアンは彼女の方へ…ワイヤーのような両腕が身体の側面から突き出し…その足でぎくしゃく歩いてくる。リプリーは身体を動かし悲鳴を上げようとするが、できない。
彼女に動かせるのはその両眼だけだ。彼女はジョンを見る。穏やかに眠っている。彼はエイリアンに気づかない…
エイリアンは近づいてくる。
彼女はエイリアンの吐息を感じる…彼女の額の汗がその吐息に吹かれて乾く…彼女の身体を悪寒が走るが、彼女はまだ動くことができない。
エイリアンが彼女のベッドの横に立つ。
六本指の手を伸ばして…
優しく彼女の腹に置く。
首を傾げて…何かの音を聞いているかのようだ。
その意味するところは明らかだ。
リプリーはやっと声を出せるようになる…
彼女の両眼が見開かれる。
彼女はぱっと身を起こす。
彼女の額に手が伸びる。彼女の頭を優しく枕の上へ押し戻す。ジョンの手だ。
リプリーはたじろぎ、両眼はエイリアンが現れた所から離れない。ジョンは彼女の視線の方向を見て、肩ごしに後ろを振り返る。
何もいない。
リプリーの視線が離れる。
彼女はしゃべろうとする…そこにいたのよ。
彼女の手は身体の横で拳に握られている…
ジョンの手が彼女の手を包む。
指の力を和らげ、もう一度指を開かせる。
彼女は手のひらに、粗い包帯の生地を感じる。
彼は静かに「聖アウグスティヌスの告白」を読み始める。彼の柔らかな声が浜辺に打ち寄せる波のように流れて、彼女はまたうとうとと眠り始める…
外景 アルケオンの地表 昼間
砂嵐が唸りを上げている。修道士たちは小さな円形レンズのゴーグルをはめて、顔にぼろ切れを巻いている。彼らは大がかりなブロックと滑車を組み合わせて作業をしている…
何百本ものロープがぴんと張りつめる。
材木がぎしぎし軋む。
彼らはリプリーの脱出艇を持ち上げ…正面の門へと運んでいく。
内景 リプリーの部屋 昼間
リプリーは目を閉じて横たわっている。
ドアの外からくぐもった声が聞こえる。
そのジョンの声を聞いて、眠っているリプリーの唇にほんのわずかな笑みが浮かぶ。
二人は話を続け、リプリーは目を覚ます。彼女は眼を開く。
ベッドの上で横向きになる…
彼女のベッドのそばには窓がある。
彼女は肘をついて身体を起こし、外を見る。
彼女の視点から
庭園は地球のようなすばらしさだ…
すばらしく美しい青空の下、修道士たちが働いている…
リンゴを収穫し、小さな湖の水面で釣りをしている。
小さな木製の小屋で金槌と鋸を使って作業をしている。詩的な光景だ。
彼女は気分が良くなる。彼女はこの風景を眺めていく…
何百フィートも上へ伸びる木製の梯子の周りで、羊が草を食んでいる…リプリーはよく見る…
足場で働く人々
端に粗末な刷毛のついた棒を持っている…空を青く塗っているのだ。
修道院も、小屋も、彼女の窓の外の田園も同一の平面上にあるのだ。この星の内側に。
青空のように塗られたアーチ型の天井には大きなガラスの「窓」があり、日光が差し込むようになっている。この天井は実際には、この小惑星の外殻の裏側なのだ。
リプリーはまた地上の修道士たちに視線を戻す。彼らは小屋を修理するのではなく解体して、材木を手押し車に積み上げている…
突然…
スラコの脱出艇が彼女の前に姿を現す。
ロープに吊られて彼女の窓の前を通り過ぎる。
そして上へ吊り上げられていき、視界から消える。
リプリーは自分の脈を確かめてみる。
彼女はまたベッドに横たわる。
天井をじっと見上げる。
彼女の真上 修道院の屋根
修道士たちが脱出艇の周りを忙しく走り回っている。脱出艇は図書館の真上の屋根の、平坦な一角へと降ろされていく。
重々しいどすんという音を響かせて、脱出艇が屋根に載せられる。
リプリー
その音を聞き、そしてまた別の音がして…彼女の部屋のドアが開く。
彼女は振り返って、院長とジョンが戸口に立っているのを見る。
ジョンは戸口で待ち、院長はベッドのそばの椅子に近づいて、腰を下ろす。
彼は微笑む。あけっぴろげで、親しげに。
彼女は首を振る。
院長はぽかんとした顔でリプリーを見る。
恐ろしい現実が彼女を打ちのめし、院長はリプリーをじっと見つめる。
彼女は身動きを止める…あの悪寒が背骨を這い上がってくる…
彼女は自分がエイリアンを持ち込んだに違いないと悟る。
院長が身を乗り出す。
リプリーは院長のカソックをつかむ。
院長はサンタモニカと三番街の角で審判の日がどうとかブツブツ言っている狂人を見るような目つきでリプリーを見る。ズボンが膝までずり落ちているような男だ。
彼女は院長の目つきを見て、つかんでいた彼の服を放す。
院長は戸口に立っているジョンの存在が気になり始める。
彼はジョンに肩を向けて、
ジョンは少しの間そのまま待ち、そして背を向けてドアを閉める。
今度はリプリーがさっきの目つきで院長を見る。
アボットの顔に新しい表情が現れる。恐怖の表情だ。
今度は彼女が彼を怯えさせている…それとも彼女も怯えているのだろうか?
院長は急に立ち上がる。
彼はドアの方へ向かう。
院長はドアのところで立ち止まり、
院長はドアをバタンと閉める。
リプリーの部屋の外の廊下 昼間
院長は二人のたくましい修道士を呼ぶ。ジョンが近くに立っている。
番人たちは閂をかけるためにドアの方へ行く。
院長は背を向け、廊下を歩いて行ってしまう。
ジョンは歩き去る院長から、二人の番人の修道士へ視線を移す。
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