映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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図書館の中世の区画

最も古い本が並んでいる。
ジョンは本棚へ近づく。
マティアスはとあるベンチへゆっくり駆けていき、腰を下ろす。
そこが彼のいつもの場所なのだ。

本棚

ジョンは爪先立ちになって古い大きな本を引き出す。
彼は慣れ親しんだ革綴じに指をすべらせる。
彼の唇に笑みが浮かぶ。

彼はその本を運び、鎖に余裕ができるようにテーブルの端に置く。
犬のそばのベンチに腰を下ろす。
咳払いをして本を開き、読み始める…

ジョン
(音読する)
西暦1348年のこと、私、大修道院のブラザー・ゲルハドは修道院長と我が同輩たる修道士六十人の埋葬に手を貸し…

(声のみ)
君はそれに似ているなあと思うことがあるよ。

ジョンは振り返って、見つける…

修道院長だ。

彼はこの修道院の指導者だ。七十代だが、もっと若々しく見える。彼のカソックの紐状の帯があるあたりは、見事な彫刻が施された大きな木製の鎖で飾られている。彼はテーブルに近づく。

ジョンは本を閉じて立ち上がり、敬意を表して頭を垂れる。

ジョン
院長、私は…誰もいないと思ったもので…

アボット
私が気にするかって?もし知っていれば、フィリップは気にするだろうがね。ここへ上がってくるときに彼とすれ違ったよ。彼は君が一人で来たと言った。私の方がよくわかっていたわけだね。

彼はマティアスの首の後ろを掻いてやる。

院長
やあ、マティアス。ご機嫌はどうだ?

犬は返事に鼻をくんくん鳴らす。

院長
フィリップがマティアスの毛や臭いについて何と言うかわかっているだろう。ここから出さなければだめだ。

ジョン
彼は私が本を読んでやるのが好きで…それで、私には…

ジョンは気弱にうつむいてしまう。院長がいると、彼は四十も近いというのにまるで子供のような気持ちになってしまうのだ。
院長はポケットから大きな鍵を取り出す。

院長
(微笑んで)
誰かが鍵をかけ忘れたにちがいないな。
その本は持って行きなさい。

彼はジョンに鍵を渡す。ジョンは驚いている…これはとても名誉なことなのだ。

ジョン
院長、私が…?

院長
君が今日、ガラス工房で見事な手当をしたとカイルが教えてくれたよ。

ジョン
私は患者が生き延びるまで、手当の良し悪しの判断はしません。

ジョンは本棚に近づき、本の鍵を外す。
彼は鍵を返す。

院長
君はもっと慣れていくだろう。アンセルム神父は…急に亡くなった。君はよくやっているよ。

院長はドアの方へ歩いて行く…

院長
その本は昼食が終わるまでに戻しておきたまえ。
おっと、それから…私はここで君に会っていないからね。

ジョン
ありがとうございます。
(マティアスに)
上へ行こう。

ジョンは本を抱えて…木製の螺旋階段へ向かう。
マティアスは彼の足元に付き従っている。
彼らは階段を登って…

鐘楼の中へ

鐘楼の内部機構はすべてロープと木製の歯車で、それらが恐ろしげな影を投げかけている。
戸口を抜けるとそこは…

修道院の屋根

砂埃が厚く積もっている。薄い板を貼って修理したすき間から骨組みの材木が見えている。
カメラが引いて、修道院の屋根だと思っていたものが実際には何なのかが見える…

アルケオンの表面 夜

ドアが開くと、そこは小惑星の表面なのだ!
弧を描く地平線を乱しているのは、一段高く突き出している修道院の鐘楼の先端だけだ。
地表にはめこまれた排気口から煙が立ち上っている。
この星の地表の、一段低くなった部分は海になっている。

この星はアルケオン
人工の衛星だ。
骨組は軽量の発泡鉄骨で作られ、直径は五マイル。
居住可能なレベルなら、利用者に適したどんな素材でも使って構わないという特別命令に基づいて企業が建造したものだ。
後に明らかになる理由に基づいて、この衛星は全体を木材で覆われている。

ジョン

内陸に入り込んでいる海の、浜辺へと歩いて行く。
むき出しの木の補修板の上に腰を下ろす。上を見上げる。
彼の眼が夜空に慣れてきて…

夜空 ジョンの視点

小さな光の点が散らばっている。
星々だ。インクのように黒い空間に広がっている。
アルケオンの表面をそのすばらしい輝きで照らしている。

ジョンはマティアスに微笑み、深呼吸する。
この高さでは空気は薄いが、しかし新鮮だ。
彼は本を開く。
声に出して読み始める…

ジョン
西暦1348年のこと、私、大修道院のブラザー・ゲルハドは修道院長と我が同輩たる修道士六十人の埋葬に手を貸した。来る日も来る日も、一人また一人、私が最後の一人となるまで。私は耐えられるかぎりそこにとどまった。私の犬の…

ここでマティアスが耳を立てる。彼のお気に入りの箇所なのだ。

ジョン
フレドとともに。私はこの疫病、この黒死病が私の手を止めることのないよう、この羊皮紙に書き留める。
(少しの間)
この文章はもう一方の手で書かれたものなのか…

ジョンは本を閉じる。何かが彼の視線をとらえる…
空に浮かぶ無数の光点の間の何か。
何百万マイルのかなた。

星々の一つ

他の星よりも明るい。動いている。
かすかに航跡が見えるほどの高速で動いている。
星々の間を進む。そして落ちてくる…
彗星だ。

ジョンは立ち上がる。じっと見つめる。


どんどん明るくなる。
どんどん近づいてくる。

ジョン

他の修道士が三人、彼のそばに来る。
彼らはジョンよりも年長だ。
四人は空を見つめる…


さらに明るくなっている。近づいている。

さらに多くの修道士たち

二十人。百人。
衛星の表面を通って上がってくる。
木製の落とし戸から出てくる。他の修道士たちに加わる。
衛星の昼間の時間が過ぎていく。
今では三百人もいる。
首がのけぞっている。
口がぽかんと開いている。

字幕が表示される…

宗教衛星 アルケオン
-----------------------
人口 追放者350名
罪状 政治的異教の信仰


空を埋めつくさんばかりだ。
小惑星の大気圏に触れて、さらに明るく燃え上がる。

アルケオンの地表

数百人の修道士たちが目を覆い、宇宙船…あの星だ…が轟音を上げて彼らの頭上を飛び去る。炎の尾を引いて…

ジョンは…その星に触れようと…両手を突き出す。星が彼の頭上を飛び去り、手には水ぶくれができる。彼は振り返ってじっと見る。
星は弧を描いて落ちていき…

海へ

ジューッ!!
空中に蒸気の柱が立ち昇る。
水が沸騰する。魚が水面に浮かんでくる。膨れ上がって死んでいる。

ジョン

最初に浜辺へ走って来る。
革と木でできた小さな釣り船が波に揺られている。
彼の船が最初に海へ出る。
他の修道士たちが走って追いついて来る。
危ないぞと叫ぶ彼らの声もジョンには聞こえない。

海の上 夜明け

黒い水面の上に太陽が昇る。
ジョンは作りの粗い木製のオールを漕いでいる。
水ぶくれのできた手のひらが開く。
血が流れている。
彼はカソックから生地をちぎり取り…
歯で噛んで裂いて…
血まみれの手に巻きつける。
そしてオールを漕ぐ。


その星は船だ。宇宙船だ。
スラコ号の四号脱出艇が水面で揺れている。
白い金属の外殻は熱で黒ずんでいる。

 

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