映画のボツ脚本・準備稿を訳して読んでみるブログ

海外のSF映画やホラー映画のボツ脚本や準備稿をぼちぼち和訳して読んでみるブログです。

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エイリアン3
脚本 ジョン・ファサーノ
原案 ヴィンセント・ウォード&ジョン・ファサーノ
第一草稿
1990年3月29日

「だがナルキッソスよ、あなたには母がいないのに、あなたの番が来たとき、どのように死ぬつもりなのか。母のないものに、愛することはできない。母のないものに、死ぬことはできない。」

-ヘッセ

エイリアン3

スクリーンは真っ暗だ。

小さな光の点が現れる。
赤い。小さな残り火だ。
見えないふいごが空気を吹きつける。

ガラスを溶かす炉だ。

残り火が大きくなる。炎が上がる。
火が輝く。

溶けたガラスの川。

ガラス炉で華氏1300度以上に熱せられている。
白熱している。

ガラス工房

明滅する炎が木の壁に踊る影を投げかけている。仕上げの粗い木だ。長年強い熱にさらされて、水分が抜けきっている。割れている板もある。新しい板を当てて修理されているが、その板もまた古びて乾ききっている。


壁に沿って這い昇ってくる。
アーチ型天井の梁や桁の間に、怒った黒い雲のように漂っている。煙はほとんど覆い隠している…

一人の男を。

男はガラス工房の床から20フィートほど上方の壁にある、狭い張り出しの上にいる。
彼の服装は中世のものだ。織りの粗いカソック。
彼は修道士なのだ。

壁にはいくつか鎧窓がある。彼は鎧窓を開く。
煙が窓から逃げ始める。

修道士は振り返り、両腕を上げて高みから飛び…
ロープを降りる原始的な滑車の力を借りて、ゆっくりと地面へ降りてくる。
彼はガラス炉のそばへ着地する。そこには他の修道士たちがいる。

同じような僧服を着て、ガラスの吹き竿を持っている。彼らは吹き竿で溶けたガラスを吹いて形を作る。完成したガラス細工を折り取る。昔ながらのやり方だ。

ある修道士

黒い肌で、五十代の初めだ。長さ5フィートの鉄の吹き竿で溶けたガラスをかき混ぜているが、他の何かを見つめている。その何かが彼を歌わせる。
軽やかなテナーが宙に舞っていく。
彼はブラザー・カイル

ブラザー・カイル
さあて、患者の運命が決まったら、星になって空に登るのだと彼は思う。
冷たいのや熱いのや湿ったのや乾いたの、どんな病気の原因も彼は知っている、
ブラザー・ジョンはきっと立派なお医者さま。

彼が歌のネタにしている相手が見える。

ブラザー・ジョンだ。

彼はまだ四十歳前。力強い顔立ちだが、その眼の奥には怯えがある。内心に自信がないことから来る怯えだ。
それでも彼は整った顔立ちだ。
彼は乳鉢の中のどろりとした薬をかき混ぜている。
彼のそばで別の修道士が彼の前に腕を突き出して座っている。
カソックの袖がまくりあげられ、ひどい火傷が見えている。

ブラザー・カイル
彼はすぐに手当してくれる、棚から薬瓶を取り出して。
だけど楽には治らない、自分自身の病気はね。

ブラザー・ジョンの薬を混ぜる手が止まる。

ブラザー・ジョン
(カイルに)
もういいよ。

彼は指で鉢から軟膏をすくい取り、火傷をした修道士の腕に塗る。冷たい薬が傷口に触れて、火傷をした修道士は鋭く息を吸い込む。

ブラザー・ジョン
(火傷をした修道士に)
気を楽にして。
(カイルに)
肺はもっとましなことに使えよ。

ブラザー・カイル
わかりました、先生。

カイルは笑い、吹き竿を溶けたガラスから引き抜く…白熱したガラスの塊が先端にくっついている。

彼はその塊を平らに磨かれた鉄床の上で転がし、瓶の形の容器を吹き始める。

ジョンは火傷に端のほぐれた布の包帯を巻く。

ジョン
ここを濡らさないようにね。午後の食事の時間になったら部屋に帰って、今日は仕事に戻らないように。

火傷をした修道士
でも、ジョン…

ジョン
院長には私から言っておく。いいから今日は休むんだ。ガラス炉の側面に触れて火傷をしただけなのは運がよかった。もしあのガラスが腕にかかっていたら…

彼は前腕の肘に近い箇所を指さす。

ジョン
腕の反対側までぜんぶ火傷していたかもしれない。

彼は手の先までガラスが垂れるところを手真似してみせる。火傷をした修道士はそう考えて身を震わせる。

鐘が鳴る。 

ジョン
午後の鐘だよ。さあ、行くんだ。

火傷をした修道士
ありがとうございます、ジョン、私は…

ジョン
礼には及ばないよ。行くんだ!

火傷をした修道士は、傷ついた腕を胸の前に掲げて歩いて行く。ジョンは乳鉢やすり棒、余った包帯を麻布の袋に片付ける。カイルが近づいてくる。

カイル
いい手際だ。

ジョン
わかってるよ、でも私はアンセルム神父さまじゃない。

カイル
あんたはあんたさ。そっちの方がいい…

カイルはドアを押し開けて…

廊下に出る。

廊下はカソックを着た修道士たちでいっぱいだ。
彼らが低く詠唱する声が建物全体に響いている。
集まった彼らの体重で木の床板がきしんでいる。
明らかにここは中世の修道院だ…

カイル
院長が喜ぶよ。

ジョン
だめだ。

カイル
何がだめなんだ?

ジョン
彼には言わないでくれ。少なくとも、化膿しないかどうかわかるまでは。

カイル
あんたはこの修道院の医者になりたいのに、第一のルールを覚えていないんだな。
「患者の心配はするな」だ。

ジョンの顔が暗くなる。

カイル
言うべきじゃなかったな。すまない。なあ、あんたがどのくらい苦労しているかはわかってるんだ…

ジョン
わかりはしないよ。でも、とにかくありがとう。

廊下の突き当り

広い階段がある。修道士の列が整然と階段を降りていく。上の階から降りてきて、昼食に向かっているのだ。カイルも階段を降り始める。ジョンが歩き出す…

カイル
下へ行かないのか?

ジョン
待たせてる人がいるんだ。

カイルは修道士たちの中に消える。
ジョンは階段を上がっていく…

階段

茶色のカソックの流れが階段を降りていく。
ひとりジョンだけがその流れに逆らって進んでいる。
彼は階段を出て…

一つ上の階

ドアが並んだ細い廊下。
ジョンはあるドアのところへ行く。
彼はろくに見もせずにドアノブを握る。
ここは彼の部屋なのだ。

彼はドアを開ける…


内景 ブラザー・ジョンの部屋

年取ってくたびれた一匹の犬が、古いくたびれたカソックを寝床に横たわって待っている。
ジョンを見ると犬は立ち上がる。

ジョン
おいで、マティアス。

その犬、マティアスは廊下のジョンのところへ来る。
修道士と彼のペットは階段を上がって見えなくなる。
降りてくる十人ほどの修道士たちとすれ違う。


内景 図書館

床から天井まで届くたくさんの木製の棚の間に、木製のテーブルと低いベンチがずらりと並んだ広い部屋だ。本棚は様々な形と大きさをした大量の本でいっぱいだ。見たところ数百万冊はあるだろう。
それぞれの本からは長い鎖がぶら下がっていて、一番近くのテーブルまでしか持って行けないようになっている。

太った修道士-ブラザー・フィリップ

五十代の厳格な司書で、大きいがやはり古いオークの机の向こうに陣取り、ベルトから大きな鍵をぶら下げている。彼は残っていた何人かが鎖に繋がれた本を棚に戻してドアへ向かうのを見張り、それから立ち上がって、彼らの後に続く…

図書館の外の廊下

フィリップが出てくる。ジョンは壁にもたれている。マティアスの姿は見えない。

フィリップ
ブラザー・ジョン。

ジョン
ブラザー・フィリップ。

フィリップ
また身体ではなく心に食事を与えるのかね?

ジョン
私は飢えているものに食事を与えよと教育を受けましたよ。

フィリップは太鼓腹をぽんと叩いて、廊下を歩いて行く。

フィリップ
私もそうさ。君だけなら構わない。楽しみたまえ…忘れるなよ、図書館から本を持ち出すのは禁止だぞ。

ジョン
忘れるわけないでしょう?食事を楽しんでください…

ジョンは肥った司書が階段を降りていくのを見つめる。彼が視界から消えると、ジョンはカソックの裾を持ち上げる。その中にマティアスの姿が見える。

ジョン
完璧だね。

彼らは図書館へ入っていく…。

 

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