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【静岡】

障害児も一緒に学ぶ場を 富士の父親、ネットで署名活動

談笑する小川さん一家。右から昌夫さん、諒也さん、こずえさん、裕也さん=富士市で

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 障害がある二人の息子の父で、富士市の会社員小川昌夫さん(39)が、次男が通う市立小学校の特別支援学級の施設整備や教員増員を訴え、十月からインターネット上で署名活動を始めた。市はより設備などが整う県立特別支援学校への転校を提案しているが、昌夫さんは、障害者も健常者も共に学べる地域の学校の実現を求めている。 (前田朋子)

 小川さんの長男諒也(りょうや)さん(15)は知的障害があり県立特別支援学校の中学部三年生。身体の障害もあり、ほぼ寝たきりの状態だ。次男裕也さん(10)も知的障害があるが、自宅そばの市立小にある特別支援学級に通っている。現在四年生だ。

 市立小への通学は妻こずえさん(40)の強い希望だった。毎日諒也さんを車で送迎するが、家と学校の往復だけなため、近所の人が、子どもがいることをあまり知らなかった。裕也さんも支援学校に進めば、地域とのつながりがより希薄になる危機感があった。

 一方、昌夫さんは市立小でハンディキャップに対する理解の広がりを感じている。ある年の運動会で徒競走後、まごつく裕也さんを普通学級の子たちが優しく誘導した。お礼を言うと「困っていたら助けるのが当たり前」と応じてくれた。

 こうした中、富士市の就学支援委員会(医師など第三者で構成)は毎年、裕也さんについて、特別支援学校への通学が望ましいと判定している。市教委によると支援学校、支援学級のどちらを選ぶかは、最終的には保護者や本人の希望を基に学校側などと話し合い決めるが、「学校」は障害の重い子、「学級」は軽い子が多いうえ、「学校」には特別支援学校教諭の免許を持つ職員が手厚いためだ。

 市立小が家から近く、友人もいる裕也さんは「支援学校はイヤ」とはっきり口にする。昌夫さんは市立小の負担も考え、自分の勤務日を減らし、家族・知人らと交代で教室に入るなどサポートしている。ただ後に続く子どもたちのことも考えると、より根本的な対応を求める必要がある、と署名に踏み切った。

 署名サイトは「change.org」の中の「ハンディキャップを持った子供でも地域の学校で学べるシステムを!」。数千人分集め、県や市に提出するのが当面の目標だ。

 ◇

 小川さんの訴えについて、富士市教委の斉藤隆裕教育指導室長は「転校を強制することはない。学校と保護者で丁寧に話し合いを重ね、保護者の意向を尊重することが重要だと考えている。市でも特別支援学級にサポート員を配置し、計画的に増やしている。予算の問題もあり劇的な改善は難しいが、徐々に進めている最中だ」と話した。

◆保護者の思い尊重すべき

<特別支援教育に詳しい姉崎弘・常葉大学教育学部教授の話> 保護者に特別支援学校に行かせたくないという強い意向があるなら、その思いを最大限尊重すべきだ。学校は「障害が重いから」と排除せず、どの子も生活や学習がしやすいようにあり方を見直し改善を図る努力をしないといけない。近くにある特別支援学校の教師に指導内容・方法を教えてもらうなど、校内指導体制の見直しと教師の専門性を高める研修が必要。先進国では障害の重い子も地域の学校で学び、特別支援学校が減っている実態もある。どんな子も温かく包み込む学校づくりを目指すべきだ。

 

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