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無駄に「速く・たくさん」本を読む意味ある?
結論から言いますと、意味ないです。
皆さんもSNSや知人に「俺(私)はジャンル関係なく、一日10冊読んでるだよね」と言う人を見かけたことはありませんか?
そう言う人には、「読んだ中で一番印象に残った一冊は何ですか?」とか「内容を5分程度で説明してくれませんか?」と聞いてみるといいでしょう。
多分、そう言った質問を5個もしないうちに無言になると思いますが。
当たりまえですが、早く読めることと内容を理解していることは別物です。
例えば、精神科医の樺沢紫苑氏によれば、本を「読んだ・理解した」の定義は以下のようなことだそうです。
私が考える「本を読んだ」の定義は、「内容を説明出来ること」、そして「内容について議論出来ること」です。感想や自分の意見を述べられなければ、本を読んでいる意味がないのです。
「内容について議論できる水準」というと、かなりハードルが高いように思えますが、飲み会で一冊の本についてみんなで10~20分話して、大いに盛り上がることができるのなら、それは十分「議論できる水準」といっていいでしょう。
出典元:精神科医が教える読んだら忘れない読書術
これは、私的な見解になりますが実用書やビジネス書ではない小説とかは、しっかりと読んで本の世界観を理解したり、筆者の考えを読み取る事に力を向けた方が楽しめると思います。
たまに、「小説とか早く読みたい」という人が散見されますが、別に読書スピードが遅くて何か不利な事があるのでしょうか?
理由も無く漠然と読書のスピードが遅いことに悩んでいるのは無駄だと思います。
もちろん間違えてはいけないのが、速読や多読そのものを否定してるわけではないことです。
そして、ここからは速読や多読を実際に行う時はどうすれば良いかを、参考文献を元にして考えて行きます。
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速読について
速読術が意味ないという事は(1) (2)、読書に興味がある人にとっては既知の事だと思います。
しかし、「速読術」は基本的に意味は無いですが、「速読」にはメリットもあります。
そして、一か月に300冊以上読む元外務省主任分析官の佐藤優氏は、速読について以下の見解を述べています。
「時間は有限であり希少財である」という大前提を忘れてわいけない。速読はあくまでも熟読する本を精査するための手段にすぎず、熟読できる本の数が限られているからこそ必要となるものだ。速読が熟読よりも効果を挙げることは絶対にない。
出典元:読書の技法
つまり速読とは本来、「本当に自分の知識になるべき本を見つけるための手段」であることが望ましいわけです。
ところが、巷では速く読めることを声高らかに吹いて回っている人がいます。
もう一度、あなたの周りの速読家を見てみてください。
大抵、彼らは「自分は速読が出来ていると思い込んでいる」だけでしょう。
再度言いますと、速読は本来「自分の知識になるべき本を見つけるための手段」であると。
例えば、あなたがいまから英語を覚えたいとします。
普通は参考書や教科書を購入して勉強しますが、速読家たちはページをペラペラめくって文末に辿り着くと「いい教科書だった」といいました。
ここまでは問題ないでしょう、大事なのはそこから先です。
自分にとって「いい教科書だった」と分かったのなら、文頭に戻って今度は熟読をしなければ行けません。
流石にペラ読みしただけで英語が覚えられるわけが無いです。
ところが、速読家の中にはそれで覚えられたと考える人がいる。
読み終わった事に満足してそれ以上先に進まない人が。
これは本来の速読とかけ離れた使い方です。
どれだけ速く読めたかではなく、速読によってどれだけの熟読書に出会えたかを大切にすべきなのです。
多読について
皆さんの中にある多読のイメージは何でしょうか?
多読とは、読んで字のごとく「本をたくさん読む」です。
多読やり方に関しては、人によって十人十色でなかなか「これだ!」と言えるものがありません。
そもそも多読をする意味は何ですか?
即答できる人があまり居ないように感じます。
例えば、ある本で得た知識を同系列の別の書籍で確認する。
イメージして欲しいのは、自分が過去に読んだ本の知識が載っている別の本に出合った時です。
「この話は前に覚えたことがあるな。でも他の本にも出てくるなら、かなり重要に違いないから覚えなおそう」と言っているところです。
これって意味がありますか?
参考として、一日に20~30冊を読むメンタリストDaiGo氏の言葉を引用してみました。
英誌「エコノミスト」が「過去の10年間で最も影響力のある経済学者」と評し、読書家としても知られるタイラー・コーエンは、「読めば読むほど、1冊あたりの情報の価値は低下する」とも言っています。
これは、あるジャンルに精読していくと読めば読むほど新しい情報が少なくなり、読むべき本がなくなっていく、というせつない話。本の価値が減るということです。
出典元:知識を操る超読書術
つまり「知っている事を何度も覚える時間は無駄である」と言うことです。
本来は、「知っている・覚えている」知識は飛ばして行くのです。
例えば、これから小学生の算数を学び直すとして「かけ算九九を覚えなきゃ!」とはならないですよね。
それは、既に知っているからです。
だからそれ以外の部分を覚えようするはずです。
これと同じように、例えばある英単語帳を全部覚えたとして、別の英単語帳で同じ単語を再度覚え直すようなことはしません。
むしろ重複していない、新しい単語を重点的に覚えようとするはずです。
重複しない部分を学ぶために、たくさん別の本を読む。
そしてこの方法は結果として、速読にもなります。
知っているところは飛ばして行くので、一冊の読むべき部分がどんどん少なくなります。
つまり、読めば読むほど知らない知識が無くなって行くのです。
そして、これが多読の本来のやり方なのです。
本を汚くする意味ある?
結論は、多分ないです。
よく覚えたい箇所にマーカーを引いて覚えると言うのがありますが、本当に効果があるのでしょうか?(3) (4)
教科書のハイライトを見ると、人間の脳は「これが重要なポイントなのだな」と自動的に判断します。そして、大事なところをチェックした安心感から、心の中にリラックスした感覚が生まれます。
ここまではいいのですが、問題なのは、ハイライトを引いただけで脳が満足してしまう点です。この時点では、脳はあくまで「重要な情報」を選別しただけで、「この内容には覚える価値がある」とまでは考えないのです。
出典元:最短の時間で最大の成果を手に入れる超効率的勉強法
我々には少々耳が痛い話ですが、この本の主張にあるのは2013年にケント州立大学が過去の様々な学習のレビュー行った結果から来ています。
つまり、通常言われている読書術では「本はマーカーやペンで汚した方がいい」と辞書のようなやり方を採用してますが、どうやら正しわけではないようです。
私の見解では、「本はマーカーやペンで汚した方がいい」と言う方法が蔓延っている理由として、そもそも発言者の基礎能力が高いため、多少の非効率性では影響が無いことが原因だと考えます。
例えば、ある東大生の勉強法をあなたがマネしても同じ結果は得られないでしょう。
何故なら、知識も学び方も違うのにいきなり他人のマネをしても、それがあなたにとって効率的な勉強法とは限らないからです。
読書は読む前で決まる
今までは、読み方や読んでいる最中の話でしたが、一番大事なのは本を読む前です。
ここで書籍を上手く理解できるか出来ないかが大きく分かれてしまいます。
例えば、本を読む前にする事について、以下のような考えがあります。
多くの人は、「自分が理解できるレベル」で読んでいきます。なんとなくわかったつもりで読み進め、結果として本の読み込みが浅くなってしまいます。
感想を前提に読むと「他者に説明できるレベル」で読むようになります。出来上がりの感想文をイメージし、「説明する」「教える」ための材料を探します。浅い読み方では「説明する」「教える」ことは不可能なので、自然と読みが深くなるのです。
出典元:インプット大全
つまり本を読む前に、「本の感想を書く」や「内容を知人に説明する」という事をイメージしながら読むことで、より内容を理解することが出来ると言っています。
確かに、人に何かを教える時に私達は熱心に学ぼうとするように思えます。
例えば、心の中で「友達に紹介するつもりで読む」を意識していれば、いつもより深く覚える事が出来るのではないでしょうか。
更に別の方法では、本を読む前にあることをすると、読書の効果を高めてくれる事もあるようです。
こうした人の心の動きに着目し、挫折を避ける方法としてハーバード大学の心理学者であるショーン・エイカーが提唱しているのが、メンタルマップです。
何か行動を起こすときに、その理由、もたらされるメリット、期待していることなどを3つ箇条書きでメモに書き出します。そして、何らかの迷いが生じたとき、メンタルマップを見直します。すると、脳が自分の行動の意義を再認識し、やる気を取り戻すことができるという仕組みです。
出典元:知識を操る超読書術
この後、具体的な方法を提示してくれますがそれは書籍を購入して確かめてください。
ここで言いたいのは、そもそも読む前の準備が出来てないのに「覚えられない」と言った感覚を持つことがおかしいという事です。
一般的には、読んだ後に感想文を書くといったような手法が流行っていますが、それよりも先に「読む前のモチベーション」(5).(6)意識しておいた方が重要だという事が分かります。
モチベーションを上手く維持できるようになれば、書店で買った本をいつまでも積み上げておく必要はなくなるわけですから。
上記の事を参考にして付箋などに、自分が「なぜその本を読むのか」の理由を明確にしてから読むようにしたらいいと思います。
終わりに
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は、速読や多読についてお話でしたが、相も変わらず巷では「速読悪い」だの「多読はいい」だのと言っていますが、それホントなの?思って参考文献を使って記事を書いてみました。
当たり前ですが、信じるか信じないかは読者の皆さんにお任せしていますので、自分が良いと思う読書術を身に付ければいいと思います。
もし「良い」と感じてもらえたら読者登録やはてなスターを付けてくださると嬉しいです!
*この記事は、参考文献を元にした立ち読み本屋の独断と偏見による一説であり、その真意を確定するものではありません。
併せて読みたい記事はこちら!
参考・引用文献
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書籍
- 樺沢紫苑「学びが最大化するインプット大全」(サンクチュアリ出版、2019年)
- 樺沢紫苑「読んだら忘れない読書術」(サンマーク出版、2015年)
- 佐藤裕「読書の技法」(東洋経済新報社、2012年)
- メンタリストDaiGo「知識を操る読書術」(かんき出版、2019年)
- メンタリストDaiGo「最短の時間で最大の成果を手に入れる 超効率的勉強法」(学研プラス、2019年)
- ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、マーク・マクダニエル「使える脳の鍛え方 成功する学習の科学」(NTT、2016年)
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論文