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【社説】

相次ぐ風水害 反省を次に生かしたい

 今年は台風が首都圏を相次いで直撃した。大規模で長期間の停電が発生し、車が水没するトラブルも多発した。自然災害は毎年、どこかで起きる。この教訓を次に生かしたい。

 九月に台風15号が房総半島に上陸、十月には19号が静岡県の伊豆半島に上陸して関東地方を通過。さらに21号が接近して、大雨を降らせた。千葉県は三度とも被災。15号では大規模な停電が発生した。19号では東京都心などでも浸水被害が出た。

 都市化、情報化で災害の様相も変わった。携帯電話を通じて情報を集めることから、通信網や電力の重要性が高くなった。避難で車を使う人も多かった。対応策も時代に応じて変わる。

 経済産業省で停電をテーマにしたワーキンググループの会合が開かれている。

 15号では全国で百万戸近い停電が起きた。風で飛ばされた大きなシートが電線に引っ掛かったり、倒木に巻き込まれたりしたケースもあった。

 実は昨年も台風21号によって、関西電力で百七十万戸、中部電力で七十万戸が停電した。今回と同じワーキンググループは昨年「復旧作業の妨げとなる倒木等の撤去を迅速に行える仕組みの構築」を提言していた。だが、東京電力は倒木の撤去に手間取り、99%復旧まで約二百八十時間かかった。教訓は生かされなかった。一方、ドローンで被害状況の把握に努めた。次につながる工夫である。

 多摩川沿いの十一自治体の首長らでつくる多摩川流域連携会議は、各地で避難所がパンク状態になるなどの経験から、反省点や改善点を共有して次の災害に備えるという。都県境を越えたつながりで、災害対応力を高めてほしい。

 移動中に冠水して動けなくなる車が多く、亡くなる人もいた。日本自動車連盟(JAF)は栃木、千葉、長野、福島の四県で冠水に関するサービスが少なくとも千二百二十五件あったという。車はマフラーまで冠水するとエンジンが止まる。水量が多くなると、浮き上がって流され、脱出が困難になる。ギリギリで助かった人もいたはずだ。注意が必要だ。

 千葉県茂原市内の中学校では、学校にある備蓄食を生徒に食べさせるかどうかの判断が、学校によって分かれたという。マニュアルですべてを想定するのは難しい。マニュアルの最後に「責任者が最善と考える行動を取れ」と入れるべきではないか。

 

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