アマゾンの制裁で会社を潰しかけた36歳の告白

月500万円の売上がアカウント停止後に凍結

アマゾンが出品者に対し一方的に行う突然のアカウント閉鎖。理不尽な制裁を受けてもアマゾンに頼らざるをえない出品者の心情とは(写真:tuaindeed/iStock)  
公正取引委員会は10月31日、ネット通販やアプリストアを運営する巨大IT企業について、出店者に対する独占禁止法に違反する恐れがある行為の公表に踏み切り、政府も規制に動き出している。その代表であるアマゾンでは、どんなことが行われているのか?
ジャーナリストの横田増生がアマゾンのさまざまな現場に忍び込み、「巨大企業の光と影」を明らかにした『潜入ルポ amazon帝国』から一部抜粋してお届けする。

「首の皮一枚のところで倒産を避けることができ、本当に助かりました」

そう話すのは、アマゾンのマーケットプレイスに出品して5年になる永井亮(仮名、36歳)だ。2015年6月にアマゾンの出品者として本腰を入れるため法人登記した。首都圏の民家を借りて、数人の従業員を雇い、物販事業を営んでいる。私が訪れた民家には、発送する商品が山のように積まれ、その一角には商品を撮影する簡易スタジオがあり、台所では3人の従業員がパソコンに向かって注文を処理する作業を行っていた。

アマゾンから届いた「著作権侵害」の通告

その会社があわや倒産という危機に直面するのは、会社立ち上げから2年後の2017年6月のこと。《セラーセントラル》という、商品の販売データを閲覧したり、出品者とアマゾンや、出品者同士がやり取りしたりするページ上で、アマゾンから、永井が出品している商品が「知的財産権とその他の権利を侵害」しているというメッセージが届いた。

メッセージの送り主は、アマゾンの《アカウントスペシャリスト》。はじめは何かの勘違いだろうと思いながら対応していたら、アマゾンが自分のアカウントを閉鎖するつもりであるのを知り、永井は慄然とする。

50品目ほどをマーケットプレイスに出品していた永井は当時、すでに販売されている商品に相乗りしていた。商品の相乗り自体は、アマゾンが推奨する行為である。多くの出品者が同じ商品を出品すれば、商品の価格は下がり、消費者が安価な商品を購入することができるからだ。永井が相乗りした商品の1例としては、犬の無駄吠えを防止する首輪があった。

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  • 如月五月ブログ6407c324596e
    そもそも、

    ECサイトで最大手となったAmazonには、様々な批判が
    出ているのは事実。

    記事では「出品者」として被害を被った事例が紹介さ
    れているが、私の場合は「レビュアー」として被害を受けた。

    具体的には、当時ランク87位の「ベスト100レビュアー」
    だったのだが、いきな「Amazonのポリシーに違反したので
    レビューを削除する」との通告があり、
    300本以上のレビューが削除、新規投稿も不可能となった。

    「どのレビューのどこに問題があったのか」について
    は、Amazonに質問するも何の回答もなし。

    途方に暮れていたら、一か月後に突如「調査の結果、問題は
    なかった」との連絡があり、過去のレビューは復活、新たな
    レビューも可能になった。

    とはいえ、何が問題だったのかは依然不明のまま。

    記事にあるような出品者やレビュアーへの対応は、いずれ
    消費者の不信感につながると思うのだが。
    up180
    down20
    2019/11/26 08:00
  • 今日のご飯はf81b0319ab5a
    そもそも、アマゾンとかのレビューや商品をパトロールしているのは、誰なのでしょうか。社員、アルバイト、外注?なのでしょうか。

    この記事にあるように、「死活問題」となる人も多いと思いますが、その判断する人が「アルバイト」だと怖いですね。
    ちゃんとしたチェック体制はあるのでしょうか。おそらく「疑わしければ出店拒否」だと思います。

    ビジネスとしては間違っていないかもしれませんが、インフラになった今では、ちゃんと「精査」や「協議」をするべきだと思います。
    up76
    down16
    2019/11/26 08:42
  • cicero513b5170a733
    出品者も、ピンキリで、ひどい目に遭うこともある。悪意はなくとも、メーカーから横流しだけしていて、自分が売っている商品の取説も見たことがないようなのがいる。クレームすると、メーカーと直接話をしろ、とたらい回しにしようとする。
    そういう経験をした購入者としては、AMAZONが、出品者に対して一定の厳密な態度で望んでいる、ということがわかって、逆に安心した。
    共通の問題というなら、クレームをするにしろされるにしろ、特有の顔のなさ、かな。僕がクレームしたときも、AMAZONの誰が答えてくれているのかわからないし、説明を理解しているとも思えない無色で機械的な回答に憔悴させられた。無数の担当がただ機械的に処理していて、個々の案件の特殊性は関知しない、という、感じ。結局、何度かクレームしたら、突然、出品者に代わり、全額代弁します、ということに。まあ、そういう会社と割りきって付き合っていくしかない。
    up71
    down34
    2019/11/26 08:00
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