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【社会】

「継続的対応なく保護解除」 野田虐待死、県検証委が報告

 今年一月、千葉県野田市の小学四年生栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が虐待死した事件を巡り、児童相談所などの対応を調査していた県検証委員会は二十五日、報告書を森田健作知事に手渡した。心愛さんがアンケートで虐待を訴えていたことを挙げ、「本人が勇気を持って訴えるのはまれで、何としても守られるべきだったし、救える命であった」と一連の対応を批判した。 (中谷秀樹、山口登史)

 検証委の委員長で、虐待問題に取り組む「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の川崎二三彦(ふみひこ)センター長は記者会見で「一つ一つの事例に丁寧に対応していく体制がなかった」と述べた。

 心愛さんは二〇一七年十一月、学校のいじめアンケートに父勇一郎被告(41)=傷害致死罪などで起訴=からの暴力を訴え、県柏児相が一時保護した。心愛さんは、被告からズボンを下ろされる性的虐待を受けたことも告白。しかし児相は、父方の祖父母が引き取る条件で約五十日後に保護を解除した。報告書は「野田市などから意見聴取もしていない。家族に返すことありきだった」と指摘した。

 一八年一月、野田市教育委員会が要求に応じ、心愛さんのアンケートを勇一郎被告に渡した行為を「誰がどう対応するか組織的判断を下す体制がなく、個人情報に関する知識も乏しかった」と批判した。

 勇一郎被告は心愛さんに「お父さんにたたかれたのはうそです」と手紙に書かせて児相職員に示し、一八年三月に祖父母宅から自宅に連れ帰った。心愛さんは同月、児相職員に「手紙はお父さんに書かされた」と話したが、再び保護する措置を取らなかった。

 同年四月に担当の児童福祉司が交代したが、心愛さんが死亡するまで継続的な対応がなかった。報告書は「ミスがミスを呼び、リスク判断が不十分なまま保護が解除され、漫然と推移した末に痛ましい結果を招いた」と結論付けた。

 森田知事は「このようなことが二度とないよう、厳しい指摘を胸に刻む」と述べた。野田市の鈴木有市長は「報告を真摯(しんし)に受け止める。市と児相との連携に特化した児童虐待防止マニュアルの改定を急ぐ」とコメントした。

 事件では、心愛さんに自宅で冷水シャワーを掛け続けるなどの暴行で死なせたなどとして勇一郎被告が傷害致死罪などで起訴された。千葉地裁で公判前整理手続きが行われており、公判期日は未定。傷害ほう助罪に問われた母親(32)は、今年六月に千葉地裁で懲役二年六月、保護観察付き執行猶予五年の有罪判決が言い渡され、確定した。

 

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