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【社会】

ローマ教皇ミサ、東京ドームに5万人 袴田さん、救い見つめ

ローマ教皇フランシスコの大規模ミサに参列した、確定死刑囚の袴田巌さん=25日、東京都文京区で

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 ローマ教皇(法王)フランシスコは二十五日、東京ドームで大規模ミサを執り行った。説教では日本の現代社会に生きる若者の問題などを取り上げた。バチカンによると、約五万人が参列した。

 教皇が専用のオープンカーで会場に姿を見せると、観客席やフロアを埋めた参列者は日本とバチカンの旗を振って歓迎した。

 教皇は説教で、日本で若者との出会いを通じ「社会的に孤立し、自分の命や存在の意味を理解できない人が少なくないことに気が付いた」と指摘。利益や効率を重視する競争主義が人々を不安にしていると批判した。

 参列者は聖歌のほか、教皇来日のオフィシャルテーマソングを会場で響かせた。

◆袴田さん 拘置所で洗礼、招待受け参列

 一九六六年の静岡県の一家四人強盗殺人事件で死刑が確定し、静岡地裁の再審開始決定により釈放されている袴田巌(いわお)さん(83)が二十五日、東京ドームであったローマ教皇フランシスコのミサに参列し、祈りをささげた。袴田さんは拘置所で洗礼を受けたキリスト教徒で、ミサに招待されていた。死刑反対の立場を取る教皇に直接支援を訴えることはかなわなかったが、立ち上がって教皇の姿を見つめていた。 (小野沢健太)

 キリスト教徒らがドームを埋め尽くした大規模なミサで、袴田さんの席は前列に用意された。かねて弁護団や支援者が面会を求める手紙を教皇宛てに送っていたところ、ローマ教皇庁の報道官が今月十五日、袴田さんがミサに招待されていることを公表。日本のカトリック司教協議会が二十日、招待状を届けた。

 黒のスーツに蝶(ちょう)ネクタイ姿で参列した袴田さん。ミサ後に東京・霞が関であった記者会見では発言しなかったが、一緒に参列した姉の秀子さん(86)は「巌は教皇の話を穏やかに聞いていました。教皇が近くに来たときは立ち上がったりしてね」と振り返った。

 静岡県の旧清水市(現静岡市清水区)で一家四人を殺害したなどとして、八〇年に最高裁で死刑が確定した袴田さん。

 確定直前、東京拘置所から秀子さんに送った手紙で自身の罪を「でっちあげ」と記し、「死刑そのものが怖いのではなく、怖いと恐怖する心がたまらなく恐ろしいのだ」と吐露していた。

 袴田さんが拘置所でキリスト教の洗礼を受けたのは、その四年後。獄中日記などをまとめた書簡集「主よ、いつまでですか」の中で、洗礼について「唯一最大の栄光の絶頂であったのだ」と喜びをつづっている。

 袴田さんは二〇一四年、静岡地裁の再審開始決定を受けて釈放されたが、長年の拘束による拘禁症の影響からか、秀子さんらに「自分はローマ法王だ」と言うこともある。

 袴田さんは釈放後の一八年、東京高裁に再審開始決定を取り消されたものの、死刑と拘置の執行停止は維持された。今は最高裁の特別抗告審の結果を待つ身だ。

 会見で秀子さんは、キリスト教徒らに「それぞれのできる範囲で支援していただければ」と期待。同席した弁護団の西嶋勝彦弁護士は「教皇は袴田さんに何か言葉を掛けたかったと思うが、何万人も参列していたので特別な機会は設けられなかったのだろう」と残念がった上で、続けた。「ミサに招待されたことは世界中に発信される。日本の司法界は、その影響を無視して事を進めることはできないはずだ」

 

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