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(喜美子)社長さんが!社長さんが亡くならはりました。
丸熊陶業の社長 照子のお父さんが亡くなりました。
喜美子が照子に会えたのはしばらく あとのことです。
(笑い声)
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
(照子)あ~ 食べた食べた。ぺろりやったな。
久しぶりに ぺろりやここんとこ 食欲なかってん。
そら そうやろ…。お父ちゃんのことだけやない。
おなかに赤ちゃんいんねん。えっ!?
気付かんかった? フフフ…まあ 目立たん方や言われたもんな。
それもあってな葬儀は うちの体のことを考えて静かに内々でやろういう話になってん。
そやったん…。
ご愁傷さまと おめでとうが 同時到来や。
ご愁傷さま… おめでとう…。
お父さん知ってはったん?知ってたで。
喜んでなあ 長生きせなあかん言うてたやさきに ぽっくりや。
本人が一番びっくりしてるんちゃう。
信作とな声かけようか言うててんけどな…弱ってるところ見られるん嫌いやしな。
ほや あんたらの顔見たら腹立つとこやったわ。
結婚も出産も 親の死も…あんたらより先に経験してるわ。
大人になってくなあ。はよ追いつけ。
泣いたん?うち?
ちゃんと泣いた方がええで。
そんな急いで大人にならんでも…。
誰が泣くか!
♪~
お母さんは? 大丈夫か?思てたよりは 元気やで。
から元気ちゃうの?
うちは 先に家族を1人亡くしてるさかいお母ちゃんにしてみればお兄ちゃん亡くした時の方が理不尽やったんちゃう?
お父ちゃんは戦死やない 病気や。寿命やったんやなあ言うてるわ。
そうか…。うん…。
敏春さんもいてくれて 助かったな。うん。 それは えらい助かった。
加山さん ここと ここ直しといて下さい。
(加山)あっ すんません。
社長 お願いします。分かった 見とくわ。
こまごました面倒なことも全部やってくれはって…。
お母ちゃんと うちだけやったらかなわんかった。
よかったな。よかった。
赤ちゃんもいるしな。うん。
環境が これから急激に変わるで。うちだけやない 喜美子もな。
うち?丸熊陶業… 大改造や!大改造?
新しい社員さん 来たやろ?うん それは知ってる。
商品開発するいう。それも知ってる。
若い世代を中心にするんや。
火鉢の生産も大幅に縮小される。
えっ?ここも どうなるか…。
絵付係なくなんの?いや なくなるかどうか…。
なくす言うてんの!?これからは 電気やガスの時代や敏春さん言うてた。 そりゃ そうや火鉢はどこの家庭でも要らんようになってく売れんようになってく。当然 絵付け火鉢も…。
お父ちゃん亡くなる前に深野先生と 話 してるはずや。
いずれ 深野先生から話があるやろ…。
喜美子 よう考えて深野先生とも よう相談してな?
♪~
(池ノ内)こんばんは。
(赤松)先生。
(深野)おう。(池ノ内)すんませんもう来てはったんですね。うん。 先に来て飲んでた。
ああ… すんません。(磯貝)すんません。
何ですやろ 話って。うん… まずは 2人に思てな。
もともと ここ信楽には社長さんに呼んでもろて 来た。
はい。
その社長さんが亡くならはった。
まあ その前からぼんやりと考えとったことなんやけどな。
信楽を去ろ思て…。
回想 いずれ 深野先生から話があるやろ…。
(百合子)お姉ちゃん。うん?ちょっとええ?
あ… これ 済んだらな。今。
お父ちゃんが行水してる間に言いたいねん。何?
先生がよ 明日 うちまで来てくれる。お父ちゃんと 話 しに。
ああ 進学の話?
喜美子姉ちゃんにいてほしいねん。
(マツ)せやけど 仕事やもんなあ。
早く帰ってくることはできるよ。いた方がええの?
助かるぅ。無理せんでええよ?
お母ちゃんだけやと 心細い。そら 分かる。
分かるけど…。分かった 百合子の大事な話やはよ帰ってくるわ。ありがとう!
喜美子も よう知ってる 寺岡先生や。
ええ! 寺岡先生!?お姉ちゃんの時も来た言うてたよ。
来てくれたよ。 楽しみやなあ。・(常治)あ~。暑い もう…。
はあ… 出た途端 汗だくやがなこれ どないなっとんねん もう。
もう一回 浴びてきぃ。おう せやな。 そうするわ… アホか!
何 作っとんの これ。あかん! 生や! 食べ… あ~!
おえっ。 プッ!もったいない もう!
すぐ食われへんもん作んなや もう…。何してんねん これ…。
あかまつ行ってくるわ もう。行かんでええ!
行くわ お前。だって お前 酒飲んだら 汗ひくんやで?
ひかへん ひかへん 水飲んどけ。ほな 水 水 水 み…。何や 百合子 また勉強しとんのか。
宿題やな? 夏休みの宿題や。夏休み まだ始まってへんやろ。
お前 うちの家訓 言うたな。ああ?「女に学問は必要ない」。
(常治)おう そや。 明日 先生来てもそうやって言うからな。
寺岡先生?
楽しみやな~ 会いたいわ~!
会わんでええねん!会いたいな~。
会わんでええねん もう。あかまつ行ってくる。
行かんでええ!行く!行かんでええ!行く!
行かんでええ!行けへん。行け! あっ…。
ほら 言うたな お前 行ってくる。行かんでええ 行かんでええ。
お前が「行け」言うたやないか!びっちゃびちゃやん これ… もう!
深野先生の考えたはることは分かりました。折よく言うてはなんですけど丸熊の主軸も今後 火鉢から植木鉢へと移します。
(八郎)お待たせしました。(加山)ご苦労さん。
十代田は お茶くみさんやないですよ。
あ… やかん持ってきたついでやし新入りやし思て… すんません。
堪忍な。いえ。
ありがとうな。いえ。
ほな 早々に旅立ちます。
(加山)ほやけど四十九日まで待った方が…。
いや。 それは こちらはかまいません。
(深野)僕にも師匠いうのがいてましてね。若い頃 絵ぇ描く以外にいろんなこと ぎょうさん学びました。
引き際は 潔くいうことも学びました。
はあ…。
若い世代を中心に丸熊陶業を大改造されるいうお話。信楽を離れて 遠くの地から応援させて頂きます。
♪~
フカ先生 まだですかねえ。何の話してるんやろ…。
あ… キュウちゃん今日 はよ上がるんやったよね?
ええよ もう。後片づけしとくし 帰りぃ。
そうですか?
ほな すみません。 お先に…。
これ お願いします。うん!
♪~
あの… 火鉢の生産が大幅に縮小されるいう話があるんです。
あ… ご存じでした?
ああ せやけどキュウちゃんは心配せんでもええよ。
ほやけど…。(池ノ内)絵付係は残るさかい。
そうなんですか?
僕ら フカ先生からきちんと 話 聞かしてもろたし。
ほんまですか?絵付係は なくならへん。
ああ… よかった…。(笑い声)
いずれ キュウちゃんにも話あるわフカ先生から。うん。
はい。 アハ… 安心しました よかった。ほな お先 失礼します。
すいません。気ぃ付けてな。はい!
また明日。
失礼します。
深野先生が信楽を去るとは言えなかった2人です。
そして もう一人…深野先生がいなくなることに言葉をなくして…。
ほな 失礼しますぅ。
先生。わっ…びっくりしたあ!
深野先生… どういうことです!?
お見合い!?ずるいなあ。
(陽子)うちやないよ?当たり前や もう。
信作や。だから せやから ずるい言うてんねん。
何で?喜美子にも お見合いしてほしかったんよ。
したらええやん。一生結婚せん約束 交わしてしもてん。
ええ… 喜美ちゃんと?
あかんわ そんな約束。
信にいは 何でお見合いするのん?
いや… 何や 分からへんけど急に その気になってくれやってな。
照ちゃんのお父さん亡くならはったんおっきいかも。
親の行く末考えるようになったんやねえ。どんな人とお見合いすんのん?
これからや。伊賀の親戚筋から あたってみんの。
それ! それ頼むわ。えっ?
喜美子にも ひとつ頼むわ もう。
お見合い?するわけないやん。
ええやん ひとつ 喜美子にも。なっ 白髪やるから ほら…。
要らんわ あるわ!ただいま~。
お帰り。お帰りなさい。お帰りなさい。
寺岡先生からな 遅れるいう電話もろたん伝えに来たんよ。
あ~。すっかり長居してしもた。
いつも すみません。お菓子もろたで ぎょうさん!
あら…。ありがとう。ええの ええの。
うち 百合ちゃんの食いしん坊な顔好っきゃねん! ヘヘヘヘヘ…。
すんません ほんま。ほなな お邪魔しました。
いつも ありがとう。(せきばらい)
ほな お邪魔しました。ありがとう。
寺岡先生はそれから しばらくして やって来ました。
(せきばらい)
♪~