後を絶たないエイズ検査目的の献血の実態

2013年11月30日 11時00分

 恐れていたことが起きてしまった!「エイズが心配なら、献血するとソッと教えてくれる」。こんな悪質な噂に乗っかった男性のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染血液が、検査をスリ抜け、2人の患者に輸血されてしまった。うち1人は、HIV陽性に。実は、エイズ検査目的の献血は後を絶たないという。身に覚えのない患者にエイズウイルスを感染させる悪質な献血は、いってみれば“無差別血液テロ”に等しい。こんなテロリストたちには今後、厳しい刑事罰が与えられるかもしれない。

 問題の血液を献血したのは40代男性。11月上旬に献血した際、日本赤十字社による献血血液の安全検査でHIV感染が判明したが、輸血に使われていなかった。男性は2月にも献血しており、日赤が保管検体を調べたところ、HIVが検出された。2月の血液は安全検査をスリ抜け、2か所の医療機関に提供されて患者に使われた。1人の患者はHIV陽性反応を示し、もう1人の患者は検査中だ。

 輸血された血液は感染初期のもので、ウイルス量がごく微量のため検出できない「空白期間」だったとみられる。HIVの場合、この空白期間は平均40~50日。つまり感染後2か月ほど経過しないと血液から陽性反応は出ないということだ。

 日赤などの聞き取り調査に対し、男性は2月の献血の約2週間前に、感染リスクのある性的接触を持ったと認めた。献血時の問診ではこの事実を伏せ虚偽の回答をしており、厚生労働省はHIV検査目的の献血だったとみている。

 献血でHIV陽性が判明した場合、日赤から通知されることはない。ただし、担当する医師は別だ。厚労省の血液対策課によると、「献血を担当した医師が個人的に『治療してほしい』という理由で連絡することについて、日赤が止めることはできない」。

 献血者からHIV陽性者が出る人数は、ここ10年で年間70~100人。献血者10万人当たりでは1・5~2・0人だが、「感染者の人口は欧米より少ないのに、この数は欧米に比べて桁違いに多い」(同課)。

 つまり、献血でHIV検査をしてしまおうという人間が日本ではあまりに多いのだ。日赤広報も「いまだにHIV検査目的で献血に来る人はいる」と話す。保健所では無料・匿名で検査できるが「心理的に行きづらい」というバカな声が多い。

 いずれにせよ、発端となった男性は最初からしかるべき施設で検査するべきだった。もちろん検査献血も自分の体が心配で行うもので、他人に感染させることが目的ではない。だが、何の落ち度もない患者が命にかかわる病を引き起こすウイルスをうつされたことになる。結果を見れば“血液テロ”だ。しかし、こんな“テロリスト”たちは現状では罰せられることはない。

「シンガポールなどでは、献血で意図的にHIV検査する者に罰則が与えられます。日本国内でも『法整備をして刑事罰を与えよう』という意見もあります」(同課)

 一方で、ほとんどの献血者が善意の人なので、罰則は行き過ぎという声もまた大きい。

「病院の検査に通うヤリチン・ヤリマン」と「遊びはほどほどだが、検査に行ったことのない男女」。HIVをバラまくのは後者。早急な意識改善が必要だ。