モモンガ式領地経営術   作:火焔+

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03. 新たな門出

 

―第9階層― アインズの自室

 

 ナザリックの皆に打ち明けた想いは、拍子抜けする程にあっさりと受け入れられた。

 悩んでいた自分がバカらしいとさえ思えるほどに。

 

 

 流石に話した内容はオブラートに包みはしたが。

 

(みんなの前で泣き言なんて恥ずかし過ぎるだろ?)

 

 勝手に背負っていた重荷を降ろすと気分は随分と晴れやかだった。

 アンデッドに戻ったモモンガは自室のベッドに大の字で倒れこむ。

 

 

(今までから変更があるのは――――)

 

 まず、デミウルゴス牧場の閉鎖。

 デミウルゴスは俺が認知していると思っていたらしく、申し訳ない事した。

 代わりに犯罪者、六腕のゼロだったか?

 そういう犯罪者の皮を剥ぐ施設として再稼動する事にした。

 

 殺した分、贖罪として人々の役に立って貰おうという考えからだ。

 後は、やはりデミウルゴスの趣味を奪うのは可哀想かな?という想いもある。

 

 

 次に、帝国との接触からそれ以降の方針だ。

 この後の予定ではワーカーをナザリックに誘い込み、それをネタに帝国に接触を計り、最終的に王国を作る計画だったが、帝国の臣下になる道を選択した。

 アルベド達は俺が誰かの下に付く事を快く思わなかったが、そこは何とか説得した。

 正直、都市運営なんて俺には不可能だ。

 帝国の法律や運営方法を学んでアルベド達の知恵で最適化するのが最も効率的だと判断したからだ。

 

 

 次に、自分の名前をモモンガに戻した事だ。

 今回の事でアインズ・ウール・ゴウンを名乗るには自分の力量が足りないと判断したからだ。

 今のままでは仲間が見つかる前にアインズ・ウール・ゴウンの名が地に落ちてしまう。

 

(何故かアルベドはモモンガに戻ると宣言した時、とても嬉しそうだったが……まぁいいか。

 それよりも衝撃な事もあったし…………)

 

 

 最後に、世界征服の方針を決めた事だ。

 我々ナザリックが統治する領地は、人間種、亜人種、異形種区別なく努力をすればそれなりの見返りがある場所にする事だ。

 

 そして征服の方法も極力武力を使用しないつもりだ。

 自身の庇護する民以外は滅びてもいい訳ではないのだから。

 

 亜人種に多くある、俺を従えたかったら俺に勝ってみろ!というヤツには容赦なく武力を用いるが。

 

 

(う~ん。他にもあったはずなんだが、最後のインパクトが強すぎて忘れてしまった事も多いな。)

 

 

 そして、あの時の事を思い出す。

 

 

 

――――――――

 

「――――以上だ。意見があれば忌憚無く言って欲しい。」

 

 皆の視線が俺を捕え、しばし沈黙の時が流れる。

 その沈黙を破ったのはアルベドだった。

 

「無礼を承知でお聞かせ下さい。」

 

 アルベド真剣な眼差しが俺を見据える。

 一体どのような話が、と身構えていると。

 

「その御姿のモモンガ様には…………」

 

 アルベドは言い辛そうに口ごもる。

 

「アルベドよ。構わない、言ってくれないか? 私は決して怒りはしない。」

 

 アルベドはまだ戸惑っているのかもしれないと、俺はアルベドに話すよう促す。

 

「はい。それでは――――」

 

 意を決したようにアルベドは口を開く。

 

 

 

「その御姿のモモンガ様には…………その……ツイていらっしゃるのでしょうか?」

 

 

 

(――――え?)

 

 

 理解が出来なかった俺は、何について話しているのかと考えようとした、その時――――

 

「アルベド!! この大事な時に無礼にも程があります!」

 

 一番初めにアルベドの意図を察したのは、やはりデミウルゴスだった。

 それにしても一体何が無礼なのかを考えようとすると――――

 

「だって! これも大事な事よ!!

 貴方だって跡継ぎは必要だといってたじゃない!!」

 

「そ、それは――――それはそうですが……

 だからといって、今聞く話では――――」

 

 アルベドの必死な顔とデミウルゴスの冷や汗をかいた困り顔が視界に映る。

 

 

 

(跡継ぎ……? ツイてる……? この人間の姿……? ――――――――!!!!!????)

 

 

 

「えええぇぇぇぇェェェェエエエエエエ――――!!!!!??????」

 

 

 

 この後の事はよく思い出せない。

 人化していたので精神沈静化も全く働かず、パニック状態に陥っていたからだ。

 俺も守護者達も他のNPC達も、しっちゃかめっちゃかになっていた様な感覚だけは残っている。

 

 確か在るとは答えた気がするのだが……忘れよう。

 

 

 

――――――――

 

―第9階層― アインズの自室

 

(まぁ、それだけ心の距離が近くなったのだと思えば悪くはないか。)

 

 ふとアインズ当番改め、モモンガ当番のリュミエールを見るとキラキラと不思議な光りを纏う金髪よりも輝く笑顔でニコニコと笑っていた。

 

「何か良い事でもあったのか? リュミエール」

 

「はい。なんだかモモンガ様が御近くに居る、そんな感じがして嬉しくて。」

 

 リュミエールの笑顔に釣られて、自分も笑ってしまう。

 

「そうだな、随分と背伸びをしていた気がするよ。

 苦労をかけることもあるかもしれないが、改めてよろしく頼むぞ? リュミエール。」

 

「はいっ!」

 

 やっぱり言ってみてよかった。

 リュミエールの笑顔を見ると、そう実感する。

 

 

「ところで、週休二日制というのは――――」

 

「承服しかねます♡」

 

 先ほど変らない素敵な笑顔だが、キッパリと断られてしまった。

 ワーカーホリックめ。

 

(ナザリックの皆も幸せにする。世界も幸せにする。やっぱり両方やらなきゃあならないよな。)

 

(とすると、行き成り最終目標の週休二日といったのがミスだったかな?

 いや、寧ろ週休二日から譲歩した(てい)で休みを一日増やす様に譲歩を引き出すのもアリか?)

 

 チラっとリュミエールの方を見ると笑顔の中に「断固拒否」と書いてある様に見えた。

 

 

(負けないぞぉーー!)

 

 

 




 回想でモモンガがテンパってからは
 ドリフのオチで流れるテーマをイメージしてます

 ドゥゥゥゥーーーーーーン!
 テッテト テッテトテッテ テッテトテッテ テッテテテ!!
 テッテト テッテトテッテ テッテトテッテ テッテテテ!!
 ティッティティティティッティィッッ!!! ペプーペプーペ
 ティッティティティティッティィッッ!!! ペプーペプーペ


※ワーカホリック
ナザリックの面々はワーク・エンゲージメントが正しいのですが、馴染みの無い言葉なのでワーカホリックという言葉にしておきました。
モモンガから見たらワーカホリックと感じても無理はないのかもしれませんが。

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