会社員が年末調整で「節税」のためにできること
年末調整でやるべきことと確定申告でないとできないことがあります(写真:SaRaPaPa/PIXTA)
サラリーマンにとって毎年やらなくてはいけないけど毎回わかりにくいのが年末調整です。『自分ですらすらできる確定申告の書き方 令和2年3月16日締切分』から今回は、年末調整でやるべきこと、確定申告でないとできないことという観点で節税ポイントを解説します。
年末調整でお金が返ってくるのはなぜ?
年末になると税金が返ってくる「年末調整」。会社員にとっては楽しみなものですが、そもそもなぜ税金が返ってくるのでしょうか。
みなさんの毎月の給料明細を見ると、例えば、額面が30万円あっても、税金(所得税・住民税)や社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)などが引かれて、実際の手取り額は30万円より低くなっているはずです。
給料から引かれているもののうち、所得税は概算額として見積もられています。そのため、1年分をトータルすると、税金を多くもらいすぎていたり、場合によっては少なすぎたりすることがあるのです。
そこで、会社は1年の締めとして年末調整を行い、税金をもらいすぎていれば返し、万一、足りなければ新たに徴収を行います。大抵の場合は給料から引いている税金のほうが多くなるので、税金が戻ってきます。
では、年末調整で会社員が節税のためにできることには何があるのか、年末調整の手順を見ながら解説していきましょう。
年末調整では、まず会社が毎月の給与の額面額を足して年収額を計算し、その年収額を基に給与所得の金額を計算します。
続いて、その所得から「所得控除」といわれるものを引いて、「課税所得」を出します。実は、この「課税所得」が問題です。税金は「課税所得」に対してかかるので、会社員の節税策は、所得控除をできるだけ大きくすればよいことになります。
「所得控除」の節税ポイント
会社員が年末調整で受けられる所得控除には、主に次のものがあります。それぞれの節税ポイントを見ていきましょう。
●社会保険料控除
月々の給料から引かれた社会保険料は、「社会保険料控除」の対象になります。会社員が押さえておきたい節税ポイントは、「家族分」です。
例えば子どもの国民年金保険料を自分が支払っている場合も、控除の対象になります。市区役所などから証明書が送付されますので、家族分も漏れなく年末調整に加えてもらいましょう。
●生命保険や地震保険料控除
生命保険、年金保険、介護医療保険(平成24年以降の契約分)を掛けているときには、「生命保険料控除」を、地震保険などを掛けているときは「地震保険料控除」を受けることができます。
この場合も、節税ポイントは「家族分」です。家族分の保険料も、自分が支払っていれば年末調整の対象に含めることできます。会社には、「保険料控除証明書」の提出が必要です。10月頃に保険会社から送られてくるので、家族の分もとっておきましょう。
●扶養控除、配偶者(特別)控除など
養っている家族がいるときは、「扶養控除」を受けることができます。遠方の家族であっても生活費を送って養っていれば扶養控除の対象になるので、漏らさないようにしましょう。
妻や夫がいるときは、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けることができます。ただし、配偶者控除は配偶者の年収が103万円以下、配偶者特別控除は年収が103万円超201万6000円未満のときでないと、受けることができません。
自分や家族が障害者のときは、「障害者控除」を受けることができます。ご家族に、65歳以上で寝たきりの方がいるときは、いわゆる障害者でなくても、市区町村や福祉事務所長の認定を受けて、「障害者控除」の対象にできることがあります。一度、問い合わせてみるとよいでしょう。
また、自分が寡婦や寡夫であるときには、「寡婦(夫)控除」を受けることができます。
●iDeCo(個人型確定拠出年金)
年末調整では、「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。会社に掛け金の証明書の提出が必要になるので、とっておきましょう。
●住宅ローン控除での注意点
大きな節税策として、住宅ローン控除がありますが、1年目は確定申告をしないと受けることができません。年末調整で受けられるようになるのは、2年目以降です。なお、年末調整で上記の資料を会社に提出し忘れた場合は、確定申告でフォローすることができます。
年末調整ではできないこと(確定申告ですること)
では次に確定申告の節税ポイントを解説していきましょう。
毎年、年末調整で税金計算がすめばよいのですが、例えば「医療費がたくさんかかった」「ローンでマイホームを買った」「不動産を売った」などのケースでは、確定申告を行うことになります。
確定申告とは、1年間に得た所得とそれに対応する税金などを計算し、申告書に記載して税務署に提出する手続きのこと。
一方、年末調整は、いわば会社員専用の「確定申告のミニ版」で、会社員がよく受ける控除に限って、会社が代わりに税金計算をしてくれることになっています。
言い換えると、普段と違うイレギュラーな収入や支出があるときには、確定申告をすることが多くなるということです。
① 確定申告をすると節税できるケース
確定申告をすると税金が返ってくることがある主なケースは、次のとおりです。
●自分や家族の医療費が10万円超かかったとき、税制対象のOTC医薬品を1万2000円超購入したとき(年収311万6000円未満の方は、医療費が10万円超かかっていなくても、医療費控除の対象になります)
●ローンを組んでマイホームを購入したとき
●2000円超の寄附をしたとき(ふるさと納税については、自治体へ「ワンストップ特例」を申請していれば確定申告は不要です)
●上場株式の配当があり、課税所得が900万円未満のとき
●年末調整の取りこぼしがあるとき(保険の控除証明書を会社に未提出など)
●原稿料や講演料収入などの副業収入から税金が引かれているとき
●台風・地震・火災などで家財に損害を受けたとき
●令和元年中に会社を退職して再就職をしていないとき
なお、税金は還付されませんが、上場株式投資で損を出した人も申告しておくと、翌年以降利益が出たときに、その損を利益から引くことができるようになります。
確定申告を“しなければならない”ケース
②副業収入が20万円を超えるときは確定申告が必要
一方、確定申告を“しなければならない”ケースもあるので注意しましょう。
例えば、不動産の売却収入、不動産の賃貸料収入、所得が20万円を超える副業収入があったケースなどです。
また、会社員であっても、年収が2000万円を超えたり、2カ所以上から給料をもらっている方(下図の条件に該当する場合)は確定申告が必要です。
主な例は下図のとおりですので、該当する方は確定申告をしましょう。
なお、確定申告では、年末調整後に渡された「源泉徴収票」が必要になります。なくさないように、とっておきましょう。
(構成:前窪明子)