気軽に本格ピザが焼ける「段ボールピザ釜」のススメ
みなさん、ピザはお好きですか?
本格的なイタリアンのお店でたまに見かけるピザ窯ですが、あれで焼かれたピザは、別格の味ですよね。
BBQ場など友人たちの前で腕を振るうときにmyピザ釜があったら、あのレベルのピザを作れてしまうかも……なんて思ったことはありませんか?
今日はベランダやBBQ場などの屋外で、好きなときに本格ピザが焼ける「段ボールピザ釜」の作り方をご紹介します。
材料費はとにかく激安。近所に100円均一のお店があれば、わずか400円。作り方も簡単で、小さなお子さんと遊びながら作れてしまいます。
自宅のオーブンでも簡単にピザは焼けますが、せっかくなら本格的に「釜」で焼きたい。BBQでヒーローになりたい。はたまた災害時などの備えとして知っておきたい。そんな方は、ぜひ試してみてください。
※手を汚さず、簡単にピザ生地を作れる裏技もご紹介しています。
漁港でも本格ピザが焼ける
私が「段ボールピザ釜」に出会ったのは、愛媛県・佐田岬の漁港へ「しらす漁」の取材に伺ったときでした。
▲船上で獲れたてのしらすを頬張る筆者
しらす漁を見て、獲れたてのしらすを船上で味見し、港に戻って丼で食べる……と聞いていたのですが、漁を終えて港に戻ると、謎の段ボールを抱えた1人の男性が。
▲食文化・料理研究家の中村さん
この方こそ、10年間で11,000人に「段ボールピザ釜」の作り方を教えてきた、「段ボールピザ釜」の申し子、中村和憲さんです。
中村さん:はじめまして。料理監修やフードコーディネートなどの仕事をしている中村です。今日は新鮮なしらすでいろんな料理をしてくださいと言われてきました。シンプルに丼も美味しいのですが、せっかくならピザも焼けたらと、ピザ釜の準備をして待っていました。
──はじめまして。今日はよろしくお願いします……って、お会いした早々につっこむのもアレですが、ピザ釜なんてどこにあるんですか?
中村さん:これですよ、これ。
──え、これって段ボールですよね。でもよく見たら、中にいろいろ入ってる。
中村さん:はい、段ボールをベースに簡単な工作をするだけで、立派なピザ釜ができるんです。せっかくなので、一緒にやってみませんか?
──ぜひ、お願いします。
「段ボールピザ釜」の原材料
▲これだけの材料でピザ釜ができる
中村さん:まず原材料。用意するのはこれだけです。2Lペットボトルが6本入るサイズの段ボール。なるべく破れや凹みのない、綺麗なものを使ってください。あとは100円均一のお店で購入してきた、ガスコンロ用のアルミパネル(防炎効果のあるもの)、長方形の焼き網、丸形の焼き網、バットです。
──これだけですか? 100均のショップで買えば、原材料費はたったの400円。しかも工具も必要ないんですね。
中村さん:ピザ釜はこれだけで作れます。もちろん別に炭は必要ですが。
──そうか、炭は別なのか。でも最近は炭も100円均一などで手に入るし、BBQなどで既に炭を使っている最中だったら、手間要らずですね。
「段ボールピザ釜」の作り方
中村さん:では、さっそく作っていきましょう。工程1、ここが正念場です。
──いきなり正念場。
中村さん:ガスコンロ用のアルミパネルで段ボールの内側を覆います。ここで隙間ができると熱が漏れてしまって、ピザがうまく焼けません。また最悪の場合、段ボールが燃えてしまう可能性があるので、要注意です。
──ええ、なんだか難しそう。
▲まずは段ボールのまわりをぐるりと囲む
中村さん:大丈夫。段ボールの外側を包み込むように型をとり、それを段ボールの中に入れれば良いんです。
▲底もしっかり型取る
中村さん:内側よりもひと回り大きい型がとれるので、内側に押し込むと、自然にアルミパネルの端が重なり、このように隙間ができません。
▲底まで隙間が無いようチェック
中村さん:この方法でまずうまくいきますが、お子さんと作られる際は、念のために大人が最終チェックをしてくださいね。
──本当だ、この方法なら簡単ですね。内側に押し込む際に、ガスコンロ用アルミパネルを破らないように気を付ければ、お子さんでもできそうです。
▲段ボールの幅より少し短めに
中村さん:工程2、長方形の焼き網をコの字に折って、段ボールの内側に上段・下段を作ります。段ボールの短辺に網をあてて折る位置に目星を付け、グッと折ります。
▲机などの角を使って、グッと折る
中村さん:机などの角を使うと、女性やお子さんなど、力が弱い方も折りやすいと思います。
▲少しくらいなら斜めでも大丈夫
──良い感じにコの字形の台が完成しました。
▲製作時間10分足らずで完成
中村さん:工程3、上段に丸い焼き網、下段にバットを入れたら完成です。実際に使う時は、丸い焼き網にピザを、バットの中に炭を入れます。
──驚くほど簡単ですね。数分でピザ釜が完成しちゃいました。これは小さいお子さんでもできそうです。
「ピザ生地」も簡単に手作りで
▲口を閉められるビニール袋が便利
中村さん:せっかくなので、生地から作ってピザを焼きましょう。こちらも簡単な裏技があるんです。
──ビニール袋に白い粉、それに水ですか?
中村さん:ビニール袋に入っているのは「薄力粉」と「強力粉」を混ぜたものです。比率はお好みですが、薄力粉を多くするとクリスピーと言われるような、サクッとした食感に。逆に強力粉を多くすると、もっちりとした重みのある食感が楽しめます。
──どのくらいの割合にすればいいのでしょう?
中村さん:強力粉が多すぎると弾力が増し過ぎて生地を薄く伸ばせなくなるので、最初は薄力粉:強力粉を1:2くらいの比率で作ってみて、お好みで調整するのがおすすめです(ドライイーストを入れると、よりふっくらとした生地になります。その場合、薄力粉+強力粉の1/60gほど)。
【ピザ生地・材料(1枚あたりの目安)】
- 薄力粉 60g
- 強力粉 120g
- 水 90ml
- ドライイースト 3g(お好みで)
- オリーブオイル 分量外(お好みで)
【今回のピザの具材】
- とろけるチーズ 適量
- オリーブオイル お好みで適量
- しらす 好きなだけ
- ルッコラ 適量(バジルでも可)
──使う分の粉だけをあらかじめ配合してビニール袋に入れて持っていけば、荷物も少なくて楽ですね。
中村さん:ビニール袋を使うのは、もう一つ嬉しいポイントがあるんです。なんと、生地づくりをビニール袋の中だけで終わらせることができます。
──え、ボウルは必要ないんですか?
▲粘度遊びのようにモミモミ
中村さん:ビニール袋の中に水を入れて、袋の入り口を閉め、あとは手で揉み込めばOKです。これなら粉で手が汚れないし、洗いものも増えません。
──外遊びで手が汚れていても、そのまま料理できちゃいますね。
中村さん:お子さんも遊び感覚で料理に参加できるので、好評なんですよ。お水は揉み込む直前に、粉の重さに対して1/2g(ml)を目安に加えてください。またオリーブオイルを少量加えると、コクが出るし、生地のキメも細かくなるので、余裕があればぜひ。
──話しながらなんとなくモミモミしていただけなのに、生地っぽくなってきました。
▲日光浴する生地。気持ちよさそう
中村さん:いいですね。それでは袋の中で軽くまとめて、日光があたるような暖かい場所に置いておいてください。30分ほどで発酵が完了します。
──お日様で発酵させるんですね。これは休日のバルコニーや、アウトドアでやりたい。なんだか気持ちまで温まります。ちなみに、もし曇りや雨の日にピザを作りたくなったら、どうやって発酵させればよいですか?
中村さん:その時は、懐(ふところ)に入れて30分ほど温めてあげてください。イースト菌は30度前後の温度で発酵するので、このやり方でも大丈夫です。
──「懐で温める」って、ますますほんわかした気持ちになりそうです。
~30分後~
(※この待ち時間に段ボールピザ釜と炭の準備をするのがおすすめです)
▲2倍ほどに膨らんだ生地
──おお、生地が膨らんでツヤツヤしています。
中村さん:うまく発酵しましたね。それでは生地を伸ばして具材をのせましょう。
▲薄力粉を別のビニール袋に入れて持ってくると、生地がくっつかない
──使い捨てのビニール手袋があれば、この作業も手を汚しませんね。オーブンシートがあれば机の上とかで作業できるし、手が汚れない&洗い物がでなくて本当に楽です。そして今日は麺棒があるけれど、手でも伸ばせそう。ハートや星など、好きな形にするのも楽しそうですね。
中村さん:形も具材も、自由な発想で作ってもらえたら。今回はせっかくなので、獲れたてのしらすをたっぷりのせてください。
▲チーズ、しらす、ルッコラをたっぷり。オリーブオイルもおすすめ
──焼く前から美味しそう。好きな具材を好きなだけのせられるって、自分で作るからこその醍醐味ですね。
実際に「段ボールピザ釜」で本格ピザを焼いてみた
中村さん:それでは、いよいよ段ボール釜でピザを焼きましょう。生地を発酵させている間に熱した炭を入れておいたので、もう段ボールの中は熱々です。炭の量の目安としては、ピザを2〜3枚焼くとして炭1〜2kgくらいと考えていいと思います。
▲周囲にぶつからないよう慎重に
中村さん:丸い焼き網にオーブンシートごとピザをのせて、釜の上段に入れてください。
──たしかに熱気を感じます。
▲中は高温なので、開閉は慎重に
中村さん:ピザを入れたら、アルミパネルをしっかり閉めます。やけどをする可能性があるので、ここは気をつけてくださいね。軍手やトングなどの道具があったら、ぜひ使ってください。
──よし、バッチリ。焼き上がりが楽しみです。
▲空き箱と間違って捨てられそう
──……うーん、ただの段ボールが転がっているようにしか見えないですね。
中村さん:BBQ場などでチャレンジする際は、ゴミと勘違いされないよう見守っていた方がいいかもしれませんね(笑)。
──何分くらいで焼き上がるんですか?
中村さん:生地の厚さや具材によっても変わりますが、10分前後が目安です。何度も蓋を開けて確認すると、ピザ窯の中の温度が下がってしまうので、気をつけてください。
〜10分後〜
──相変わらず、ただの段ボールですね。少しだけ煙が出ている……かな?
中村さん:開けてみましょう。
▲生地が膨らみ、焼き色もばっちり
──わ〜、いい香り。表面やふちに焼き色がついて美味しそうです。お店のピザみたい。
中村さん:段ボールでもここまで本格的なピザが焼けるんですよ。
──さっそく実食しましょう。
「段ボールピザ釜」で焼いたピザを実食
▲生地より具材の厚みがすごい
──チーズがトロリと、その上の具材はふっくら焼き上がっていますね。
中村さん:具材を欲張ってのせ過ぎて若干チーズがわかりにくいですが(笑)、綺麗に火が通っていそうで良かったです。
▲ちゃんと熱々もっちりのピザに仕上がった
──パクリ。こ、こ、これは美味しい。生地も具材も、もっちり、ふっくらしています。釜で炭焼きしたおかげで、香ばしさも加わって本格的。段ボールで焼いたとは思えないです。
中村さん:気に入っていただけて嬉しいです。どこでも誰でも気軽に本格ピザが焼けるので、ぜひ皆さんに知っていただきたいです。
──美味しい・楽しい・簡単で、本当に良いですね。友達とBBQするときに再現して、思いきりドヤりたいです。
中村さん:美味しい段ボール釜ピザを、たくさん焼いてくださいね。
復習:段ボールピザ釜の作り方
【材料】
- 2Lペットボトル6本入りの段ボール(0円)
- ガスコンロ用アルミパネル(100均)
- 長方形の焼き網(100均)
- 丸い焼き網(100均)
- バット(100均)
【作り方】
- アルミパネルを段ボールの外側に巻き付けて、ざっくり型をとる
- 型をとったアルミパネルを段ボールの内側に入れて、隙間ができないよう調整する(ここが重要)
- 長方形の焼き網の長辺を、段ボールの短辺より少し短くなるよう、コの字に曲げる
- コの字に曲げた長方形の焼き網を段ボール(アルミパネル)の内側に入れる
- 焼き網の下段にバットを入れて完成(丸い焼き網はピザを焼く際に使用)
【使い方】
- 熱した炭をバットに入れて、段ボール内が温まるまでしばらく待つ
- ピザをのせた丸い焼き網を、コの字に曲げた長方形の上段に入れる
- アルミパネルを閉じて入り口を塞ぐ
- 10分ほど待って様子を確認。焼けていそうだったら完成
段ボールピザ釜は驚くほど材料費が安く、慣れれば数分で完成するほど作り方も簡単でした。
これなら自宅の庭はもちろん、BBQ場、海水浴場、キャンプ場など、さまざまな場所で本格ピザが楽しめます。
家族や友人とのアクティビティとしてもおすすめなので、ぜひチャレンジしてみてください。
あ、もちろん炭火の扱いにはくれぐれも注意してくださいね!