厳冬期北海道一人旅を無事に終えて九州に帰ってきました.
本編全7回の記事はこちらです.
本記事では旅のおまけとして
装備
自転車
厳冬期の北海道,予想と実際
の3点についてお役立ち情報を記してみます.(役立つ人いるのかなあ...)
装備
この旅で最も神経を遣ったのが装備の選定です.
私はこれまでまともに氷点下の世界を体感したことがなく,一歩間違えれば命に関わる服装やシュラフも何を選べばいいのか全くわからない,ゼロからのスタートでした.
いままで春・夏しかツーリングしてこなかったツケですね(?)
真冬の北海道を一人旅したことのある莫迦人が周りに居なかったので,気軽に人に訊いてどうにかなるわけでもなく.
夜な夜な検索して辿り着いたのは「雪山登山」というキーワードでした.
極寒地で汗をかく雪山登山.どうやらこの自転車旅とシチュエーションが似ているようです.
レイヤリング
雪山登山で基本となる「レイヤリング」
これは,「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」「アウターレイヤー」と3層以上の構成にし,天候や運動量に応じて着脱することで温度調節を行うというものです.
ベースには吸湿拡散・保温性能に優れたメリノウールを.
ミドルには保温・通気性能に優れたフリースとダウンを.
アウターには防風・防水・撥水・透湿性能に優れたハードシェルを.
体温が上がる走行中はダウンを脱ぎ,就寝時はシュラフに熱を伝えるためにハードシェルを脱ぐなど,臨機応変に着脱を繰り返しました.
ちなみに発汗量の多い手足を守るインナーグローブ・靴下もメリノウールです.
手足もそれぞれインナーの上にはアウターとして,防水・防風・透湿性能のあるグローブやスノーシューズを装備していました.
足先は凍傷を防ぐため,常にカイロを貼りつけ.
指にはそんなスペースがないため,痛みが限界を迎えるたびにポケットに忍ばせたカイロで温めていました.
あとはサイクリングキャップで頭皮の冷えを抑えたり,ネックウォーマーで首元からの冷えを抑えたり.
寒さに弱い耳はイヤーマフで守りました.
装備一覧
携行した装備は以下です.
カイロ(高温貼らない・貼る・足貼る)
エアマット
クローズドセルマット
エマージェンシーシート(シュラフカバー状・シート状)
シングルウォールシェルター(本体+ポール)
簡易トイレ
トイレットペーパー・ティッシュ
歯ブラシ・シェービング類
リップクリーム(UVカット)
ウィスキー
水筒・コップ
コッヘル・バーナー
コーヒーセット
着替え3日分
グローブ(2レイヤー)
ネックウォーマー(2レイヤー)
サイクリングキャップ(2レイヤー)
小説
日記帳・メモ帳・筆記用具
ミラーレス一眼(+レンズ4本)
アクションカム×2
三脚・セルカ棒
モバイルバッテリ×2(計25000mAh)
各種バッテリ,ケーブル類
ラジオ
コンパクトランタン
温度計・コンパス
財布
ヘルメット
ライト
GPSサイコン
パンク修理キット
携帯ポンプ
鍵
マルチツール
これらの中からいくつかピックアップして説明します.
寝床周り
ここはかなり気を遣いました.寝てる間に凍死したくはなかったので.
まずはテント.アライのライズ1(シングルウォール)です.
ダブルウォールのテントに追加でスノーフライを購入するのが最も取り回しがしやすく,快適に過ごせそうでした.
しかしかなり高くつく.
金銭的に限りがある旅だったため,防風・保温性能はひとまず置いておき,とりあえず吹雪くらいは凌げる性能のシェルターを選びました.
シングルウォール故に通気性能は絶望的,とんでもなく結露します.
結露するとはいってもテント内が氷点下のため,水滴がしたたることもなく,管理は楽でした.
次にシュラフ.
体温の保持はこのシュラフにかかっています.
ここはしっかりお金をかけるべきところ.
求めるスペックとしてはコンフォート温度が-20℃あたり,リミット温度が-30℃くらいのもの.
mont-bell・ISUKA・NANGA「5万円くらいでどうよ」
安心と信頼のメーカーが提供する厳冬期シュラフは非常に高価です.
自転車買っちゃったしな...それはちょっと厳しい...
唸りながらAmazonを探し回っているとLMRというメーカーを発見.
中華ギアですが,求めるスペックのものが9000円程度で入手できました.
信頼のメーカーではなかったので,念のためシュラフカバーとしてSOLのエマージェンシーシートを被せて使用.
-15℃の夜,寒くなかったといえば嘘になりますが,衣類も重ね着してなんとか凍死は免れました.
伸縮性に難ありでしたが粗悪品ということもなく,非常にコスパの良い寝袋でした.
最後に床.
「空気の層を作れ」
レイヤリングについて調べていた時から,冬の装備の基本として何度もこの文字を目にしました.
ダウンシュラフはふかふかのダウンに空気を纏って体温を守りますが,背中のダウンは体重で潰れてしまうため性能を発揮できなくなります.
底冷えを防ぐべく,クローズドセルとエアマットが成す2重の空気の層によって,地面からの冷気も軽減させています.
ウィスキー
「そんなに酒が好きか!?」と思った方.その通りです.
が,ウィスキーを持って行ったのにはちゃんと理由があります.
山岳救助犬が雪山で遭難者を救助する時に首からブランデーをぶら下げているそう.
アルコールは瞬時に体を温める効果があるので,低体温で危険な状態になった場合に飲もうと携行していました.
(※日中は自転車に乗るため飲んでいません.ストップ飲酒運転.)
簡易トイレ
見落としがちだったこの項目.
当初野宿予定していた場所のトイレはことごとく冬季閉鎖.
(冬季,屋外のトイレは水が凍結してしまうため,運用するには高コストの暖房代が必要となる)
ヒトにとって食べることと同じくらいに出すことは大切です.
上手く日中にコンビニ等のトイレを活用したため結果として使う機会はありませんでしたが,冬の北海道自転車民にとっては緊急時用として不可欠です.
自転車
「雪道を走る時に困るのは何だろう」
検索結果と雪道の想像から,自転車の選定の際には「タイヤ」と「ブレーキ」の2点に着目しました.
タイヤ(太さとスパイク)
細いタイヤでは狭い面積に重量がかかるため,車輪が雪に埋まってしまいます.
雪道を快適に走るにはなるべく太いタイヤを.
また,路面が凍結するアイスバーンではタイヤが太くともスリップしてしまうため,路面に噛みつくメタルの付いた「スパイクタイヤ」が必要です.
ディスクブレーキ
クロスバイクやロードバイクにみられる「Vブレーキ」や「キャリパーブレ―キ」は,ホイールのリムをブレーキシューで挟み,摩擦で回転を止めます.
雪がリムに纏わりつくと,ブレーキの制動以前に車輪が回らなくなるようです.
そこでディスクブレーキ.
ハブ付近はタイヤと離れているため,雪がくっつくことも少ない.
ついでにディスクブレーキは制動力が高いのもGoodです.
選ばれたのは
MASI GIRAMONDO 27.5 (2017年モデル) + Schwalbe ICE SPIKER PRO
これにリアキャリアとフォークキャリアを付けて,自転車は完成です.
厳冬期の北海道,予想と実際
お財布事情も考えつつですが,できる限りの最善の装備を揃えて臨んだこの旅.
イメージしていた北海道旅と旅が終わった後の感想を列挙し比較してみます.
予想 | 実際 |
---|---|
寒い | 痛い |
スパイクタイヤ履けば走れる | 圧雪路の路肩が非常に走りにくい |
- | 車がこわい |
走行中も防寒着が手放せない | どんなに気温が低くても走っていると暑くなって薄着になる |
夏の半分くらいの距離は走れる | 内陸は雪深く距離が稼げないが,雪の少ない道東は走りやすい |
夜はウィスキー飲めばどうにかなる | 体温を無理やり上げた後の反動が怖くてあまり飲めない |
セコマは神 | セコマは神 |
最後に
温暖な気候の九州に住み,寒さと悪路を少し舐めていたなと思いました.
セコマは3年前の夏と変わらず神でした.
危険を伴うので決しておすすめはしませんが,厳冬期の北海道を走ってみたいという方は参考にしてみてください.
(吹雪いてなければ)雪景色はとてもきれいで幻想的です.