#438~「SACRED SONGS」 / DARYL HALL (1980)~
特定のグループに属すメンバーがソロ・アルバムに求めるものは、自身の音楽ルーツであったり、趣味であったり、或いは異ジャンルへのチャレンジ等、様々だと思いますが、それぞれに意義あるものであると思います。アメリカのポップ・デュオ、ホール&オーツの大きい方(笑)、ダリル・ホール初のソロ・アルバムとなった「セイクレッド・ソングス」の場合は異ジャンルへのチャレンジに当るのでしょうか?、本作はダリル名義ではありますが実質はロバート・フリップ(言わずと知れたキング・クリムゾンの創始者でありリーダー)とのコラボ作と言われているように彼ら二人が意気投合して制作された作品であり、当時音楽業界から遠ざかっていたフリップ卿の復帰作となったことでも重要な作品として位置づけられているようです。アルバムは軽快なロックン・ソウル・ナンバーの【セイクレッド・ソングス】で幕を開けます。オープニングこそダリルらしいソウル・フィーリングに溢れたポップなナンバー曲ですが、曲が進行すると次第にフリップの影がちらついてきます。実は本作は77年に制作されましたが、その時のリリースは見送られました。当時ホワイト・ソウルの先駆者として人気上昇中であったホール&オーツ(以下H&O)ですから、プログレ界の最重要人物ロバート・フリップが大きく関わり、内容的にもH&Oとはかけ離れた本作のリリースはリスキーであるとレーベル側が判断したとか。たしかに冷ややかなインスト曲【都会の情景】や、フリップ卿との共作となった【NYCNY】等はアバンギャルドかつ金属的であり、H&Oのポップなイメージを破壊するサウンドであります。軽快なタイトル曲を除けば全体的に硬質な雰囲気が感じられるアルバムで、フリッパートロニクス(フリップ独自のギター・サウンド・システム)が初めて導入される等、サウンド的にも実に興味深い作品であると思います。フリップとのコラボといえばデヴィッド・ボウイの「スケアリー・モンスターズ」も有名ですが、ヴォーカルの雰囲気も含めてこれに相通じるものを感じました。晴れて本作が世に送り出されたのは制作から2年半後となりましたが、もしも制作時にリリースされていたならば、ダリルのアーティスト性がより高く評価されていたのではないか?と思う一方、H&Oへ何らかの悪影響を落していたかもしれません。ちなみに本作は『MOR3部作』の第1弾に数えられています。※『MOR3部作』とはフリップ復帰後の3作品-すなわちフリップがプロデュースを手掛けたダリル・ホール「セイクレッド・ソングス」、ピーター・ゲイブリエル「Ⅱ」および自身の初ソロ作「エクスポージャー」に至る3作を指すものであり、"表現方法の一つであるポップソングの研究"を目的とする。
曲は【SOMETHING IN 4/4 TIME】。
もう1曲は【NYCNY】(ニューヨーク・シティ)。
コチラでどーぞ→http://www.youtube.com/watch?v=epLXwup4bpA
もう1曲は【NYCNY】(ニューヨーク・シティ)。
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